内容
製造業では、調達部署でのコスト・質の管理が益々重要になってきている。本書は、調達担当者の「何を?誰から?どう買うか?」とうい悩みに答えるため、この最適解をある程度自動的に導き出すための調達戦略の立て方、実践方法をわかりやすく解説していく。
村上三平 著者プロフィール
(むらかみ さんぺい)
株式会社S.P.M代表取締役社長
1949年3月3日生まれ。1974年鐘紡(株)に入社。生産技術研究所、食品研究所、技術管理本部、研究管理本部、新規事業開発本部を経て、クラシエホールディングス(株)(旧カネボウ(株))CPO(最高生産責任者)兼クラシエフーズ(株)専務執行役員を歴任。この間TPS(トヨタ生産方式)をモデルに、食品工場に代表されるプロセス型メーカー向け業界初のKPS(クラシエ生産方式)、およびクラシエ購買戦略を確立、その他RTC(Redesign to Cost),BCP(Business Continuity Plan)等を構築。2011年3月退社、同年4月、生産改革をベースとしたコンサルティング会社(株)S.P.M設立、代表取締役社長。
杉本大地 著者プロフィール
(すぎもと だいち)
ロベンダル・マサイ株式会社 マネージングディレクター。
1972年5月26日生まれ。2000年レーザー物理学の分野で理学博士を取得。科学技術振興機構(JST)の産官学共同プロジェクト参画の為、2000年から2006年まで機械メーカー勤務。新型レーザー発振器の開発に従事。2006年のプロジェクト終了と共にマサイ・ジャパン株式会社(現ロべンダル・マサイ株式会社)に入社。現在に至る。
コンサルティング実績のある業界としては、半導体、家電、通信機器、機械、建設機械、プラント設備、アパレル、高級ブランド、製薬、食品、化粧品、他。
目次
プロローグ-すべてのはじまり
まえがき
第1章 今こそ調達に「戦略」を!
外的環境変化
高まる調達戦略の重要性
複雑化する「何を」買うかの判断
高度化する「誰から」買うかの判断
調達力=戦略の質×施策実行段階の歩留まり
日本企業は「戦略」が苦手?―ポジショニングとは?
M&A実績からポジショニング力を検証
日本企業は調達が苦手?―教育機会各差
将来の夢は一流バイヤー?
外向き・内向き仮説
自動車産業の調達
戦略苦手説も調達苦手説も根幹は同じ?
本書の3つの特徴
第2章 調達戦略フレームワーク導出の流れ
充実度の低い、調達関連フレームワーク
調達は生産部門の一部?
高まる調達戦略フレームワークの必要性
調達戦略フレームワークを導く4つのステップ
第3章 理論編:そもそも戦略とは何か?
戦略とは何かを理解する
企業戦略の全体構造を理解する
良い戦略策定に必要な4つスキル
第4章 古典フレームワークを学ぶ
フレームワーク活用の3つのメリット
3つの古典フレームワークを学ぶ
第5章 統一理論の構築―3つのフレームを結合
調達フレームワーク構築への3つのステップ
統一理論の構築
準統一理論
統一理論
第6章 調達戦略フレームワークの導出
調達戦略フレームワークの導出手順
調達市場ライフサイクル―プロダクトライフサイクルを変換
購買力-サプライヤーとの力関係に着目
調達施策
調達戦略フレームワーク
第7章 調達戦略策定の5つのステップ
実践の「こころ」
仮説思考の重要性
調達戦略策定の流れ
事業戦略との整合性
第8章 実践編(1):目標の設定
属人的プロセスからの脱却の第一歩
コスト削減目標をどう設定するか―「目標コスト」と「予想コスト」
調達品目カテゴリの定義―「品目特性」と「金額規模」
コスト構造のモデル化―予想コストの算出
第9章 実践編(2):調達ドメイン法による施策の選定
調達戦略フレームワークの「こころ」―マクロ分析
調達市場寡占度の評価―HHIとは?
HHIの有効性―具体例をみてみよう
自社購買力の設定―HHIから評価する
ドメイン別施策の決定
第10章 実践編(3):カテゴリ特性分析による効果試算
効果算定の「こころ」―コストマネジメント
コストドライバー分析―コスト構造を分解する
調達ドメインとの対応
「交渉」によるインパクトの試算
「量的集約」によるインパクトの試算
「生産性改善」によるインパクトの試算
「仕様合理化」によるインパクトの試算
海外サプライヤーへの切替え
変更コスト
効果試算マトリクス
第11章 実践編(4):期待値分析によるリスクの評価
そもそも「リスク」とは何か?
「不確定性」こそがリスクの本質
業界によって異なる、リスク定量化の試み
ベストプラクティスに学ぶ
期待値の考え方
リスクの洗い出し
リスクのマッピング
リスクの定量化
便利なツール、イベントツリー
第12章 実践編(5):Pain/Gain分析による優先施策の決定
戦略とは、何をやらないかを決めること
2つのステップに分けて施策を取捨選択する
ステップ1、施策単位のPain/Gain分析
ハイリスク・ハイリターンからローリスク・ミドルリターンへ
ステップ2、シナリオ単位のPain/Gain分析
トップダウンとボトムアップのすり合わせ
事業戦略との整合性
結び
エピローグ―輝く未来に向けて
あとがき
はじめに
■今こそ調達に「戦略」を!
多くの日本企業にとって、「調達戦略策定」能力の向上は、残されたフロンティアである。なぜならばこの領域は元々日本企業の苦手分野であることに加えて、学習機会・教材の類が殆どなく、未だ改善幅が大きいまま放置されている業務分野であるからだ。
反面、調達コスト削減の取組みは近年益々その重要度が高まっており、関連書籍を目にする機会も格段に増えてきている。しかしそれらはほぼ全て、「施策実行」上のノウハウに力点が置かれた内容となっており、戦略策定部分の理論的土台の構築から、具体的な策定方法までを詳しく解説した本は見受けられない。
本書執筆の目的は、上述の様な状況を鑑み、経験と勘を基に日々打ち手を模索している調達担当の方々に、実践の場で役に立つ調達戦略策定の手順と各種ツールを、その理論的裏付けと共に提供することにある。
■本書の構成
本書の構成はまず第1章を導入部と位置付け、本書が提供しようとしている調達戦略策定なるものの範囲がどこまでなのかを明確化すると共に、今この領域に着目すべき構造的理由を仮説の検証を通して解説した。
第2章から第6章は理論編であり、調達を論ずる前にそもそも戦略とは何かを定義するところから書き起こし、企業の全体戦略と、構成組織の機能戦略がどの様な構造的関係になっているかを明らかにし、その中でさらに調達戦略がどう位置付けられているかを解説した。
次に事業戦略策定の代表的フレームワークを3つ紹介し、それらを独自の視点で体系化・統一理論化した上で、調達戦略構築に応用できる様に、売り手から買い手へと視点の変換を施した。本書はこの手の理論フレームの導出を解説した、日本ではおそらく唯一の書籍であると思っている。
次に第7章から第12章は実践編として、具体的な戦略策定の作業を、「目標の設定」、「施策の選定」、「効果の見積」、「リスクの評価」、「優先領域の決定」の5つのステップに分け、詳しく解説した。各ステップではどの様なインプットデータが必要で、それをどう分析し、分析結果を如何に解釈し施策に落とし込むか、という一連の流れを、可能な限り実例を交えて具体的に紹介することで、比較的経験の浅い調達担当者であっても理解を得やすいように心がけた。一方個別施策実行上のノウハウについては詳しい書籍が最近増えてきている為、基本的にはそれらに解説を譲るが、状況に応じていくつかのトピックについては取り上げている。
■すべての若手バイヤーへ
本書で紹介している調達戦略策定手順は、クラシエフーズ株式会社で長年生産現場と経営の両方に携わってきたモノづくりのエキスパートとロべンダル・マサイ社のコンサルタントとがプロジェクトを通じて構築したものである。しかしその適用可能範囲は必ずしも食品業界に限定されるものではなく、これから「調達戦略策定ノウハウ」について学習しようとする中堅から若手調達担当者に、理論と実践を踏まえた戦略策定の入門書として読んで頂くことを想定している。また調達担当者のみならず、経営企画や調達以外の部署で機能戦略策定に関わるビジネスパーソンにも十分興味を持って頂ける内容が含まれていると自負している。ご一読頂き、さらに実践で活用して頂き、大きな成果に結び付けて頂ければ幸いである。
2011年9月
村上 三平・杉本 大地












