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シェールガス争奪戦
―非在来型天然ガスがエネルギー市場を変える―

定価(税込)  1,680円

著者
サイズ A5判
ページ数 152頁
ISBNコード 978-4-526-06757-0
コード C3034
発行月 2011年09月
ジャンル ビジネス 環境

内容

天然ガスは原子力に代わる最も現実的な当面のエネルギー源の主役として期待される。従来技術では回収しにくかった「非在来型天然ガス」の一つ「シェールガス」は、技術の進歩により商業生産が本格化してエネルギー市場を一変させ、世界的に開発が進められようとしている。

伊原 賢  著者プロフィール

(いはら まさる)
1983年、東京大学工学部資源開発工学科卒業。1991年、タルサ大学(米国オクラホマ州)大学院石油工学修士課程修了。1994年、東京大学工学博士号取得。
1983年、石油公団〔現・独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)〕入団。技術部、石油開発技術センター、アラブ首長国連邦ザクム油田操業、生産技術研究室長、天然ガス有効利用研究プロジェクトチームリーダー、JOGMECヒューストン事務所長などを経て、2008年より石油・天然ガスの上流技術の調査・分析業務に従事。

目次

目次


はじめに

第I章  「ガス黄金時代」がやってくる
①福島原発事故後のエネルギー問題
②エネルギー論議のための10のポイント
③非在来型の開発で天然ガス供給量が急増
④天然ガスの価格体系
⑤天然ガスは化石燃料の中の優等生
⑥天然ガスの利用法

第II章  米国発のシェールガス革命
①非在来型エネルギー資源開発の背景
②シェールガスの起源・生成
③シェールガスの実用化を可能にした開発技術
④エネルギー市場に与えた影響

第III章  世界に広がるシェールガス開発
①米国における開発の動向
②カナダでも開発始まる
 2.1 カナダのシェールガスエリアの特徴
 2.2 シェールガス開発の課題
③欧州での開発評価
④中国での開発評価
⑤世界のシェールガス資源量の評価
 5.1 シェールガスのポテンシャル国
 5.2 資源量評価の手法
 5.3 EIAの調査から得られた知見

第IV章  シェールガス開発の環境問題と対策
①水圧破砕技術が環境に与える影響
②フラクチャリング流体の問題点
③水処理の問題点
④現状で適用可能なフローバック処理方法
 4.1 蒸留
 4.2 逆浸透膜分離
 4.3 化学的処理

第V章  その他の非在来型天然ガス
①非在来型天然ガスの資源量
②タイトガス
③コールベッドメタン
④メタンハイドレート

参考資料 シェールガスに関する日本の報道

はじめに

 国際エネルギー機関(IEA)は2011年6月、世界が「ガス黄金時代」を迎えたとするレポートを公表した。そのシナリオによれば、世界の天然ガス需要は2035年に08年比で62%も増加すると予測している。エネルギー全体の需要が年率1.2%で増えるなか、天然ガスは年率2%と約2倍の勢いで伸び続け、エネルギー構成での役割が飛躍するとの見方だ。それを支えているのが、地下からの回収がこれまで難しいと考えられていた「非在来型天然ガス」の存在である。
 回収技術の飛躍的な進歩により、世界中に眠っている膨大な量の天然ガスの存在が明らかとなり、非在来型ガスの技術的回収可能量は230.3兆m3と試算され、少なく見積もっても、残された在来型(404.4兆m3)の60%弱も存在することが明らかになった。その結果、「技術的回収可能量」の半分が経済合理的に地下から取り出せるとすると、世界の天然ガスの可採年数は在来型ガスの残存確認可採埋蔵量をベースとした60年から少なくとも160年を超えるのは確実になったのだ。
 非在来型天然ガスには現状、タイトガス、コールベッドメタン、シェールガスという三つの開発対象があり、その中でも、これまで手付かずの状態だったシェールガスの供給量が大きく伸びたため、2008年に米国の天然ガス日産量の50%が非在来型の天然ガスになったことは世界中のエネルギー関係者に衝撃を与えた。
 米国のエネルギー情報局(EIA)は2011年4月にシェールガスの「技術的回収可能資源量」を188兆m3と推定した。世界の在来型天然ガスの残存確認可採埋蔵量約181兆m3(2009年末)、年間の天然ガス消費量3兆m3(2008年)と比べても膨大なことがわかる。
 シェールガスの開発は米国の中堅企業により主導されたが、その資源としての規模の大きさに大手石油会社も続々参入した。水平坑井や水圧破砕などの技術の進歩が、20世紀までは地下からの回収が困難と考えられていたシェールガスを米国の新たな巨大天然ガス資源へと押し上げたのだ。この非在来型ガスを在来型ガスへ押し上げるうねりは、世界的展開を見せている。まずは、カナダ、欧州、中国への普及が注目されるところだ。
 シェールガスの登場によって増えた「世界のガスの大供給余力」は、原油価格にリンクさせているLNGの価格体系に変革を与えると思われる。日本もその恩恵を受け、現在の長期契約取引も変わるかもしれない。人口増や東日本大震災といった大災害、脱原発に対応した世界のエネルギーミックスを考える際に、天然ガスは検討の余地をひろげることになるだろう。21世紀に入ってから実現した天然ガスの大供給余力を背景に、天然ガスサプライチェーンの充実、天然ガスの利用技術の普及が望まれるところだ。
 本書は、著者が(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の駐在員として米国のヒューストンに滞在していた2005年から2008年の間に情報収集していた「シェールガス」という耳新しい資源を日本に帰国してからも追っかけているうちにいろいろとわかった「非在来型天然ガスがエネルギー市場を変えつつある現実」をまとめたものである。自分の専門である石油工学(石油や天然ガスを地下から採り出す技術)の進歩が、21世紀に入ってから「シェールガスの開発」に火をつけ、さらには「世界の天然ガス埋蔵量の急増」につながったことは、技術者の一人として感慨深い。
 このたび執筆の機会を与えていただいた日刊工業新聞社に心からの感謝の意を示したい。

 2011年9月    
 伊原 賢 

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