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エクセルを使ったやさしい射出成形解析

定価(税込)  2,808円

著者
サイズ A5判
ページ数 288頁
ISBNコード 978-4-526-06711-2
コード C3053
発行月 2011年07月
ジャンル 機械

内容

射出成形加工現場では、問題やトラブルなどが発生した場合、統計解析を用いて対処するようにしている。ただ統計解析は理論自体が難解で計算も難しい。本書は理論を十分理解しなくてもエクセルに必要なデータを入力することでやさしく解析できるようにした成形加工現場必読の書。

横田 明  著者プロフィール

(よこた あきら)

技術士(化学部門、高分子製品)、特級プラスチック成形技能士
1977年 慶応義塾大学工学部機械工学科卒業
1991年 プラスチック成形加工学会技術賞受賞
1992年 日本合成樹脂技術協会賞受賞
1993年 特級プラスチック成形技能士合格
1993年 特級プラスチック成形技能士神奈川県最優秀賞受賞
1994年 技術士(化学部門、高分子製品)合格
日本製鋼所およびコマツにて射出成形機の設計開発、成形技術開発および人工知能(成形技術)の研究に携わる。上級主任研究員。射出成形工場統括責任者として子会社へ出向、成形工場の管理、合理化、品質向上、コストダウンなどを実施
射出成形技術士の育成および社内外の成形不良対策、成形効率化など多数
現在、外資系プラスチック加工メーカーにて中国、タイ、インドなどアジア地区を中心に、テクニカルフェローとして活動中
【主な書籍】
射出成形加工の不良対策、絵とき「射出成形」基礎のきそ、射出成形加工のツボとコツQ&A 以上日刊工業新聞など

目次

はじめに

第1章 本書の流れ
1 成形のばらつきと工程能力(第2章~第4章)
2 目標成形品質の探索方法と回帰分析(第5章~第7章)
3 溶融樹脂の圧力損失(第8章~第9章)
4 キャビティ温度分布とPvT(第10章~第12章)
5 金型温度変化(第13章)
6 層流と乱流(第14章~第15章)
7 水配管の冷却効率(第16章)
8 多変量解析(第17章)

第2章 統計解析と射出成形のばらつき
2.1 工程能力

第3章 射出成形現場での工程能力の改善方法
3.1 工程能力の改善の順序
3.2 ばらつきの減少方法の例
3.3 計量ばらつきの改善の例
3.4 「平均値」と「ばらつき」は変化したのか?
3.5 難しくないF検定とt検定
3.6 計量ばらつきの改善の検定(F検定1)
3.7 重量ばらつきの改善の検定 その1(F検定2)
3.8 クッションのばらつき検定(F検定3)
3.9 重量ばらつきの改善の検定 その2(F検定4)
3.10 成形品重量の変化の検定(t検定1)
3.11 成形重量の変化(t検定2)
3.12 成形品重量の安定化
3.13 成形重量の安定化の検定(F検定5、t検定3)
3.14 新条件での工程能力
3.15 客先データとの違いの検定(一対のt検定)

第4章 データのうねり
4.1 移動平均の利用
4.2 移動平均グラフの求め方
4.3 うねりの原因
4.4 ダービン・ワトソン比

第5章 成形品質の調整と単回帰分析
5.1 保圧と成形品重量
5.2 単回帰線の求め方
5.3 回帰線の信頼性
5.4 分散と単回帰式と平均
5.5 目標値をセンターラインに合わせる
5.6 多段保圧でのばらつきの例

第6章 樹脂の摩擦発熱と単回帰分析
6.1 エネルギー保存の法則
6.2 樹脂温度の摩擦発熱の詳細
6.3 樹脂摩擦発熱のデータの解析
6.4 てこ比

第7章 収縮率と多変量解析
7.1 収縮率が影響を受ける因子
7.2 収縮率の圧力と肉厚の影響 その1
7.3 収縮率の圧力と肉厚の影響 その2

第8章 溶融樹脂の粘度と多変量解析
8.1 溶融樹脂粘度曲線
8.2 3定数粘度式
8.3 3定数粘度式利用の近似精度向上策

第9章 ランナーゲートの圧力損失
9.1 スプルー・ランナーの圧力損失計算
9.2 実際の計算例入力部
9.3 スプルー部圧力損失
9.4 ランナー部圧力損失
9.5 ゲート部圧力損失
9.6 圧力損失のグラフ表示
9.7 樹脂温度上昇を考慮した圧力損失
9.8 スキン層を考慮した圧力損失
9.9 スキン層厚さについて

第10章 金型内樹脂冷却状況
10.1 金型内成形品冷却時間の計算式
10.2 伝熱の基礎
10.3 冷却状況の計算入力
10.4 冷却状況の計算
10.5 計算結果とその検算
10.6 熱の移動の見直し
10.7 キャビティ内の冷却状況
10.8 金型の両側温度が異なる場合

第11章 収縮率とは
11.1  金型内での成形品の収縮
11.2  PvT線図
11.3  PvT線図の多変量解析
11.4  PvT線図の多変量解析結果

第12章 金型内樹脂の比容積状況
12.1  比容積計算に使用する温度と圧力
12.2  比容積の計算部分
12.3  収縮率の計算
12.4  ゲートシール時間の妥当性
12.5  圧力と収縮率
12.6  温度と収縮率
12.7  溶融樹脂流入速度
12.8  温度と収縮率 続き
12.9  肉厚の影響
12.10 そり、変形対策

第13章 金型温度変化
13.1  樹脂温度変化に追加する内容
13.2  樹脂と金型の接触部の計算入力
13.3  計算内容
13.4  金型温度予備加熱の効果
13.5  冷却水配管の距離の影響
13.6  成形品平均温度と成形サイクル
13.7  成形サイクルの短縮

第14章 金型温調と乱流の重要性と単回帰分析
14.1  層流と乱流
14.2  レイノルズ数
14.3  密度/粘度の近似
14.4  レイノルズ数の簡単な求め方

第15章 流路の圧力損失
15.1  管摩擦係数
15.2  流路の圧力損失△p
15.3  管路内面粗さと摩擦係数
15.4  サンドペーパの粗さと番手
15.5  管路圧力損失の計算例
15.6  並列管の流量計算

第16章 冷却効率と境膜
16.1  境膜の概念
16.2  層流、乱流と境膜係数
16.3  成形品冷却と冷却水温度との関係
16.4  冷却水壁面温度上昇
16.5  壁面温度上昇
16.6  冷却水出口温度
16.7  まとめと計算

第17章 多変量解析の応用
17.1  重回帰分析
17.2  成形機の違いによる解析
17.3  判別分析
17.4  多変量解析の応用

はじめに

 これまで、筆者は、射出成形技術や射出成形の不良対策などについて、いくつかの書籍で紹介してきた。そこではなるべく計算式を使わずに、感覚的に理解しやすいような説明を心掛けてきたつもりである。反面、具体的な式や理論計算を入れたほうがいいという意見や、もっと計算を使って具体的に確認をする方法などを教えて欲しいなどの要望もあった。特に、海外支援をするようなときには、現場技術者だけでなく、管理者たちにも教えていかなければならない。そこでは理論的な説明が求められるのである。ところが、計算式を使うことは、「わかりやすさ」とは反比例してくるのではないかと考え、どうしたものかと悩んでいたこともある。また、計算式を使うことで、雲に巻くようなことにでもなると、目的にも反する。
 しかし考えてみると、最近では日常の業務にもエクセルを使って計算することは普通のようになってきている。エクセルを使うことに抵抗なくなっている人たちには、そこで計算をしてもらえば抵抗も少ないのではなかろうか。そこで、数多くの人が使い慣れているエクセルを使って、射出成形用にいろいろな計算ができることを本書に紹介してみようと思い立ったことが本書を書くきっかけになった次第である。
 品質管理に係る統計解析や、技術的な冷却解析、圧力損失の計算などは結構複雑で難解でもある。統計解析においては、t検定、F検定、自由度の概念、回帰分析では、偏微分の基礎的理解、冷却解析では、フーリエ解析、変分法など難解な数学理論がとめどなく出てくる。それだけで拒否反応を示す人も多かったのではなかろうか。かくいう筆者も統計解析を使うまでは苦労して悩んだものである。しかし、これら難解なことに悩むことなく、エクセルに任せれば、パソコン自体が、それを解析してくれるのであるから、これを使わない手はない。
 ここで、エクセルを使って計算するやり方を紹介する中身は、大きく分けると三つある。一つは、エクセルに備わっているアドインソフトの分析ツールの利用であり、主に統計解析の機能を使って、工程能力の計算や、良品条件の探索方法などを紹介する。
 二つ目は、統計解析の回帰分析を使って、いろいろな物理常数や、粘度やPvTデータを近似することを試みる。また、収縮率などもひとつの式にまとめて近似することもできるが、これは多変量解析の応用である。
 三つ目は、微分、積分の代わりに繰り返し計算を、エクセルのコピー機能を使って行うものである。理論の基礎さえ理解していれば、フーリエ解析や差分法などの数学の難かしさに悩むことなく結果が得られる。説明も基礎的なところに限定することができるため、読者にとっても理解しやすいであろう。この繰り返し計算に、先の近似した粘度やPvTの式を使って、圧力損失や冷却計算などの例を紹介する。
 これらの計算を行って、具体的な数値で考えることで理解がより深まるであろう。また、たとえば開発関係に携わっている人は、いろいろな解析計算に応用することができるし、工場の設備設計の人たちにも配水管の圧力損失の計算に使うこともできる。成形現場では、安定するための成形条件の探索のためのデータ分析やサイクルタイム短縮など、日常業務の改善にそのまま使こえることも多々あると考える。
 計算の単位については統一されていないが、これは計算結果を確認するために参考文献の元の式をそのまま使用したことと、射出成形の現場で日常使い慣れた単位に合わせたことによる。

2011年5月 筆者

EXCEL(エクセル)は、米Microsoft社の登録商標です。
その他本書に記載されている会社名・製品名は、各社の登録商標または商標です。

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