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天平の阿修羅再び
―仏像修理40年・松永忠興の仕事―

定価(税込)  1,512円

編著
サイズ 四六判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-06686-3
コード C3034
発行月 2011年04月
ジャンル ビジネス

内容

多くの人を魅了してやまない仏像。その仏像が創作された当時から現在まで受け継がれてきた過程は、保存技術なくしては語れない。本書は、国宝・重要文化財をはじめとする美術工芸品(彫刻および木工品)の修理を行う美術院で40年間、仏像修理や模刻に携わってきた松永氏の仕事について、阿修羅像の模造を中心に紹介し、仏像修理の実態、仏像模刻の意義を解説する。

関橋眞理  著者プロフィール

(せきはし まり)

フリーランスの編集者。 日本のやきもの、染織(着物・袱紗・風呂敷)、茶の湯(名物裂・懐石道具)など和の文化に関する本の企画・編集に携わる。趣味は寺社巡り。本書は松永氏から聞いた、模造阿修羅像制作の経緯に触発され企画した。

目次

はじめに


第一章 美術院国宝修理所と仏像修理
美術院国宝修理所とは
松永忠興氏と仏像修理への道

第二章 仏像の修理と模造制作
浄土寺・阿弥陀三尊像―修理
観心寺・如意輪観音坐像―模造
熊野磨崖仏―修理
興福寺・阿修羅立像―模造
     対談/阿修羅像の模造と彩色 加藤純子×松永忠興      
道成寺・千手観音立像―修理     
東大寺法華堂・弁財天立像―修理と模造     
平等院・雲中供養菩薩像―修理     
法隆寺金堂・天蓋―修理

第三章 対談/美術院と修理文化 鈴木喜博×松永忠興    
観心寺・如意輪観音坐像の模造      
円成寺・大日如来坐像の模造      
美術院と修理文化

第四章 和束工房   
江戸文化とお坊さん

おわりに

はじめに

二〇一〇年秋、奈良国立博物館で開催された「仏像修理100年」展の会場に、朱に輝く阿修羅像がすっくと立っていた。その姿は興福寺で見る阿修羅像とはあまりに違う趣。多くの人はこの見慣れない阿修羅に驚くだろうが、この模造阿修羅像の彩色こそが、造られた当初、天平の姿である。

阿修羅像の模造制作は文化庁の模造事業の一つで、財団法人美術院が行った。松永忠興氏はそのチーフとしてこの事業に参加、彩色は後輩にあたる、日本画の復元模写のエキスパートが担当した。松永氏は二〇〇八年に退職するまで、美術院国宝修理所で四十年間、仏像をはじめとする国宝や重要文化財の修理と模造に携わってきた。その中には京都・智積院など大本山の本尊制作も含まれている。

東京藝術大学大学院を経てこの道に入った松永氏には、修理や模造制作の過程で古典作品を学び、先人の知恵に追いつこうとする姿勢がある。それは「修理や模造はクリエイティブな仕事」という言葉にも表れている。本書は、そんな松永氏に修理技術者からの視点で、数多い仕事の中から九作品について語ってもらったものである。

我々は現存の仏像を見るとき、造られた当時の姿を想像することは難しく、木や土、金属、石などの素材で造られたそれらの制作工程についても多くは知らない。修理の現場を垣間見ることで、仏像を造った古の職人の仕事ぶりや、修理技術者の想い、仏像修理ということへの理解が深まることを期待したい。
 
本書には、模造阿修羅像の彩色を担当した加藤純子氏と、奈良国立博物館上席研究員(取材時)で、長年松永氏と一緒に仕事をしてきた鈴木喜博氏との対談も併せて掲載した。加藤氏とは実際の阿修羅像に残っている色を見つけていく過程と苦労を、鈴木氏とは当時の思い出と修理の意義について話していただいた。本書が、仏像を観るときの新たな楽しみの一助となれば幸いである。

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