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パナソニックの大転換経営

定価(税込)  2,052円

著者
サイズ A5判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-06676-4
コード C3034
発行月 2011年04月
ジャンル ビジネス

内容

パナソニックは、現・大坪文雄社長のもと創業者松下幸之助氏の精神を引き継ぎながら、技術とモノづくりをベースに世界をまるごと市場にする“ものづくり立社”、環境は製造業そのものであるとする“環境革新企業”として躍進を続けている。本書は、わが国を代表する国際企業、パナソニックの「大転換経営戦略」を解き明かす。

大倉雄次郎  著者プロフィール

(おおくら・ゆうじろう)
関西大学名誉教授( 商学博士)、公認会計士・税理士。
東証一部上場会社で宣伝、販売促進部門を経験後、関連事業統括部門、財務経理部門の部長、関係会社の社外監査役を併任。その後、大分大学経済学部教授に転任し、経営分析・財務諸表論・ゼミを担当。さらに関西大学商学部教授として学部・大学院で税務会計論・会計学入門・現代会計・ゼミを担当し、現在に至る。国際会計、連結会計、M&A、税務、監査を専門とする。
著書に『これで内定 パーフェクト就活ナビ』(新星出版社)、『パナソニックとキヤノンに学ぶ 経営戦略のための会計戦略』『企業評価入門』『企業価値入門』(以上、中央経済社)、『最新会計基準の基礎』『新会社法と会計』(以上、税務経理協会)等多数。
雑誌『企業会計』『税務通信』『会計』『経営財務』などに執筆の他、NHK テレビ『視点・論点』にも数回出演。
■連絡先
ホームページ(研究室・大倉会計税務事務所):http://www7.ocn.ne.jp/~okuracpa/

目次

まえがき 

第1部  大転換経営戦略

第1章 パナソニック経営の神髄を探る
1 経営哲学
(1)「衆知を集める」経営
(2) 環境革新企業へ
(3)「愚公、山をも動かす」の哲学
2 モノづくりの原点
(1)生産者の使命“水道哲学”
(2)イタコナ分析
(3)ライフ・ストリーム
(4)SDメモリーカードはいまや世界標準
3 技術者社長の誕生
(1)技術者社長誕生の土壌
(2)忘れがたい三つの経験
4 若い世代への提言
(1)石の上にも3年
(2)変革期こそ発展のチャンス
(3)社員は高位平準化を

第2章 松下からパナソニックへ
1 マーケティングの根本は経営理念から
(1)大坪社長の経営路線に継がれる創業者松下幸之助の理念
(2)経営理念「楽土を実現したい」
(3)命知
(4)マーケティングの基本
2 パナソニックブランド統一の狙い
(1)三つのブランド  ―松下電器産業・ナショナルからの決別 ―
(2)パナソニックに統一  ―真のグローバル企業に脱却する ―
(3)松下からパナソニックへ
(4)流通戦略
3 新しい発想で勝負をかける
(1)なぜ世界同時に発売するのか
(2)ボリュームゾーン戦略
(3)カスタマー・リレーションシップ・マネジメント軸 ―CRM ―
4 不況期のマーケティングとは ―松下幸之助に学ぶ ―
(1)昭和初期の不況から生まれた事業部制
(2)「熱海会談」から確立した商慣行
(3)ダム経営とは

第2部 世界をまるごと市場にするモノづくり作戦

第3章 モノづくり立社
1 モノづくり立社の考え方
(1)モノづくり立社が基本
(2)ITを駆使した開発・製造・販売
(3)寡占を実現する差別化技術
(4)イタコナ分析で原価低減
2 世界のモノづくり
(1)新興国に照準
(2)ボリュームゾーン戦略
3 テレビ市場を勝ち抜く
(1)大型薄型テレビ市場シェア ―「プラズマ」対「液晶」―
(2)設備投資でシェア争いに勝ち抜く
4 超・製造業
(1)超・製造業とは
(2)デバイス事業
(3)サービスが優れた商品を創る   
(4)エンターティメントの追求
(5)テレビ専用のネットサービス『ビエラコネクト』 
5 再チャレンジで市場拡大した商品群

第4章 世界をまるごと市場に
1 国際戦略はどのように決まるか   
(1)国際戦略を左右する為替対策
(2)各国の市場 -新興国の成長-
2 北米市場
(1)世界同時販売の三極体制のかなめ
(2)ベンダー・マネジメント・インベストメント
3 欧州への進出 ―製品の評価誌に売り込む ―
4 BRICs+V   
(1)ブラジル
(2)ロシア
(3)インド
(4)中国
(5)ベトナム
5 MINTs+B
(1)メキシコ
(2)インドネシア
(3)ナイジェリア
(4)トルコ
(5)バルカン諸国

第5章 “エコ”モノづくり戦略
1 エコは製造業そのもの
(1)新資源環境型経済へ
(2)エネルギー3兄弟によるエコ戦略
(3)新しい豊かさは環境との共存
2 創エネ戦略
(1)太陽光発電 ―三洋電機とのコラボレーション―
(2)家庭用燃料電池『エネファーム』
3 蓄エネ戦略   
(1)リチウムイオン2次電池
(2)リチウムイオン生産体制の充実
(3)自動車用鉛蓄電池
4 省エネ戦略
(1)CO2排出量の削減をビルトインした家電製品づくり
(2)ノンフロン冷蔵庫
5 四つのまるごと作戦
(1)家まるごと作戦
(2)工場まるごと作戦
(3)ビルまるごと作戦
(4)地域まるごと作戦 ―街の見守り・侵入者検出・不審人物追及システム ―

第3部 再編・強化されるグループ経営

第6章 グループ一体化によるスピード経営
1 事業部制からドメイン制への移行
(1)事業部制の実施
(2)事業部制からの訣別と事業ドメイン制への移行
(3)事業ドメイン制の経営上の意義
2 ドメイン構築のための周到な再構成
(1) 14の事業ドメイン
(2) 旧松下電器子会社の再編
(3)システム事業と固定通信事業の再編・統合
(4)日本ビクターを子会社から関連会社へ
(5)松下電工の子会社化
(6)三洋電機の子会社化
3 世界的規模の事業組織再編へ
(1)グローバル本社と地域統括会社
(2)三つのセグメントへの移行と狙い
(3)九つの事業ドメインと具体的戦略
(4)トランスフォーメーションプロジェクト
(5)実質上の3社解体、ドメイン会社で世界戦略

第7章 三洋電機・パナソニック電工の完全子会社化
1 グリーン革命に必要だった三洋電機
(1)グリーン革命の加速化が狙い
(2)三洋電機子会社化の背景
(3)三洋電機公開買付の実施
(4)太陽電池によるソーラー事業の取込み
(5)2次電池事業(モバイルエナジー)のトップへ
(6)コラボレーション委員会の発足と子会社化の効果
2 3社トップの決意
(1)3社トップの完全子会社化に賭ける決意
(2)2社の完全子会社化が目指すものとは
(3)公開買付価格(鑑定評価)と買付などの結果

第4部 戦略的経営組織の頭脳を探る

第8章 新しいビジネスを創る研究開発
1 不連続の連続に挑む技術革新
(1)10年先を読む先端技術研究
(2)経済構造の変化と三つのE
2 世界同時発売・同時垂直立ち上げの開発
(1)一夜城作戦
(2)統合プラットフォームによる開発
(3)他にない独自技術路線「ブラックボックス技術」で走る
3 革新的企業
(1)「革新的な企業」と「革新的でない企業」の研究開発費
(2)半導体事業に対する研究投資
4 リサイクル工場に見る開発設計
5 特許権
(1)知財なくして事業なし
(2)知的財産活動
6 経営力・人材も知的資産

第9章 組織づくりと人づくり
1 ITを駆使したシステム化
(1)IT革新の目指すもの
(2)フラットでウェブな環境
2 システム革新の具体例
(1)開発革新
(2)調達革新
(3)生産革新
(4)販売革新
3 サプライ・チェーン・マネジメント
(1)サプライ・チェーン・マネジメントが機能するための要件
(2)パナソニックのサプライ・チェーン・マネジメントとは
4 国際競争化の人づくり
(1)松下幸之助の人への考え方
(2)昭和40年から実施した週5日制
(3)働きがいの徹底
(4)終身雇用制の破棄
(5)企業年金の給付額の改定
5 人事政策
(1)知識労働者のマネジメントと役割給
(2)人材も知的資産 ―パナソニックグループ研修―
(3)部課長制廃止
(4)語学力と人材の多様性

第10章 目を見張る戦略会計
1 社内分社の連邦制経営を支える経理社員制度
(1)事業部制と経理社員制度
(2)経理社員に求められる能力
(3)パナソニックが求める経理社員像
(4)経理教育訓練の体系
2 部門業績の評価はどのようになされているか
(1)業績評価指標
(2)CCMの算出方法
(3)導入の効果
(4)CCMの対象
(5)事業ドメインの業績評価基準
3 財務革新―パトレス―
(1)パトレスとは
(2)金融子会社を設立
4 パナソニックの財務分析
(1)全体の推移
(2)事業別セグメント分析
(3)所在地別セグメントの活用法

参考文献

はじめに

 パナソニックは今や世界的に注目を浴びている大企業といえます。しかし、それは単に売上や利益を指しているのではなく、「経営戦略」という根本的な企業姿勢が注視されているのです。
 パナソニックは近年、いわゆる「大転換経営」(フェーズチェンジ)というキーワードで、大企業では困難な抜本的改革を進めてきました。
 本書は、そのパナソニックの「大転換経営戦略」の内容を解き明かすと同時に、真のグローバル企業のトップの先見性と、それを実行する組織のすごさの一端を読者のみなさんにお届けしたい一心で筆を執りました。
 この本の全体を通じて書き著してきたもの、それは現社長・大坪文雄氏の経営戦略です。
 大坪文雄社長が指揮をとるパナソニックは、創業者・松下幸之助氏の精神を引き継ぎながら、先端技術に裏打ちされたモノづくりそのもので成長戦略を突き進んでいます。その戦略の基本が、「環境革新企業」と、先進的な技術の進化をベースに世界をまるごと市場にする「モノづくり立社」であり、世界企業パナソニックの経営戦略の秘密といえます。
 こうしたパナソニックの企業改革のバックグラウンドには、創業者・松下幸之助氏の理念が現在でもはっきりと息づいています。
 松下幸之助氏は1894年(明治27年)に和歌山県海草郡和佐村で生まれ、9歳で店、その後自転車店で奉公をし、商売のコツを覚えたのち、1918年(大正7年)、「改良ソケットの考案」を機に松下電気器具製作所(今日のパナソニックグループ)を興しました。その後の松下電器の驚異的な発展は誰もが知るところであり、20世紀の日本の成長を支えたまさに立志伝中の人物の一人でしょう。
 松下幸之助氏は今から22年前に94歳の生涯を閉じましたが、今や経営の神様として歴史上の偉人になった感さえあります。しかし、この世の中にはいくら環境や社会が変わっても、決して色あせることのない、受け継がれてゆくべき不変の真理と時代を超えた共感が数多くあります。
 幸之助氏の教え、それがパナソニックの経営の屋台骨になっているのです。   

 大坪文雄氏を社長に後継指名した前社長(現会長)中村邦夫氏は、社長時代の6年間不振にあえぐ松下電器を不死鳥の如くらせ、日本のモノづくりのあるべき道を敢然と示しました。
 その中村改革の柱である「超・製造業」は、現社長の大坪氏にどう引き継がれ、大坪氏がどのように発展させていったのかも本書では解き明かしていきます。
 本書は、内容的には専門的な部分も少なからず出てきますが、読者諸氏がそれぞれの立場で一つでも多くのビジネスを考えるヒントをつかみ取っていただくことを願っています。
 トップマネージメント、国内外で活躍されている経営管理職、中小企業経営者、ビジネスマン、さらには次の日本を背負う学生諸君にそれぞれの観点から読んでいただければこれに勝る喜びはありません。
 今回の執筆に当たって、大坪文雄社長をはじめとしたパナソニックのトップマネージメント、また広報グループ(江川哲雄総括、福田枝里主事、斎藤涼子氏)や関係部門の方々にインタビュー、工場視察、資料収集などで大変お世話になりました。あらためてお礼を申し上げます。
 最後になりましたが、本書の出版をご快諾いただいた日刊工業新聞社の黒岡博明出版局長、編集にご尽力いただいた奥村功書籍編集部長、側面からアドバイスをいただいた辻總一郎氏に感謝いたします。

2011年4月
大倉雄次郎 

(本文中は敬称略、肩書は当時のもの)

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