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絵とき「非破壊検査」基礎のきそ

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-06675-7
コード C3053
発行月 2011年04月
ジャンル 機械

内容

非破壊検査技術は、ものを壊さずに機械部品や構造物にある有害なきずを検出する技術。本書は、著者の専門学校での教育ノウハウをベースにして、非破壊検査の各種検査方法とその原理、最近の動向など基礎知識をやさしく解説する。

谷村康行  著者プロフィール

(たにむら やすゆき)
1951年4月 山口県生まれ
1976年3月 北海道教育大学釧路校卒業
1982年2月 (株)ホクハイ入社
1992年4月 (学)日本航空専門学校に勤務
1994年〜  (社)日本非破壊検査協会主催の技術講習会講師指導員
2006年5月 (社)日本非破壊検査協会 石井賞受賞

●主な著作物
「超音波探傷入門(パソコンで実技演習)」(日本非破壊検査協会,共著)
「非破壊検査入門(DVD)」(日本非破壊検査協会,編集委員)
「絵とき『超音波技術』基礎のきそ」(日刊工業新聞社)
「絵とき『破壊工学』基礎のきそ」(日刊工業新聞社)
「トコトンやさしい航空工学の本」(日刊工業新聞社,共著)

目次

はじめに

第1章 非破壊検査とは
1-1 壊さずにきずを探る
1-2 技術としての非破壊検査
1-3 きずと欠陥
1-4 きずの有害性
1-5 非破壊検査の目的
1-6 非破壊試験の種類と特徴
1-7 資格制度

第2章 目視試験
2-1 目視試験とその要素
2-2 ジェットエンジン 圧縮機動翼の目視試験

第3章 浸透探傷試験
3-1 像とコントラストの拡大
3-2 浸透探傷試験の基本手順
3-3 浸透探傷試験の原理
3-4 浸透探傷試験の種類
3-5 浸透探傷試験の実際
3-6 探傷器剤の管理
3-7 浸透探傷試験で注意すべきこと

第4章 磁粉探傷試験
4-1 磁粉探傷試験の原理
4-2 磁粉探傷試験が可能な材料
4-3 鉄鋼を磁化する磁界
4-4 磁化
4-5 磁束線と磁束密度
4-6 BH曲線(磁化曲線)
4-7 材料の磁気的性質
4-8 磁化の方向と検出できるきずの方向
4-9 磁化方法
4-10 磁粉の適用
4-11 磁化の確認
4-12 磁粉探傷試験の実際

第5章 渦電流探傷試験
5-1 渦電流によるきず検出の原理
5-2 インピーダンス変化の検出
5-3 コイルのインピーダンスと位相
5-4 渦電流の浸透深さ
5-5 渦電流の位相の遅れ
5-6 コイルの種類
5-7 単一方式と自己比較方式
5-8 渦電流探傷試験の実際

第6章 超音波探傷試験
6-1 超音波の基礎
6-2 探傷と超音波
6-3 超音波探傷のしくみ
6-4 超音波の送受信と圧電効果
6-5 超音波探傷器
6-6 エコー高さの比較
6-7 垂直探傷と斜角探傷
6-8 探触子の走査とエコーのピーク
6-9 超音波探傷の実際
6-10 新しい超音波探傷

第7章 放射線透過試験
7-1 放射線とは
7-2 放射線の減弱と透過写真
7-3 X線とγ線の発生
7-4 放射線の減弱と散乱
7-5 硬い放射線と軟らかい放射線
7-6 線源の大きさと幾何学的配置
7-7 写真の濃度とコントラスト
7-8 検出しやすいきずと検出しにくいきず
7-9 X線透過試験の実際

第8章 事故と非破壊検査
8-1 コメット号空中分解墜落─破壊過程のすべてがわかるわけではない
8-2 天井が飛んだアロハ航空機事故 フェイルセイフの限界
8-3 DC10ファンディスク破壊 不完全な非破壊検査
8-4 聖水大橋事故 手抜きをチェックし防止する検査
8-5 新幹線安全神話と非破壊検査

第9章 基礎知識
9-1 材料力学
9-2 非破壊検査に必要な数学

あとがき
参考文献
索引

はじめに

 非破壊検査は地味な技術です。一般にはそのような技術分野があることすら知らない人が多いでしょう。どこかで聞いたことがあったとしても、具体的にどのようなことをしているのかを知っている人は少ないはずです。
 飛行機や列車に乗って移動するとき、ビルの中に居住するとき、橋を渡るとき、その構造部材に非破壊検査技術がかかわっていないものはありません。火力や原子力で作られる電気は私たちの日常生活には欠かせません。ガソリンや灯油は原油から製油所で大規模な装置を使って精製されています。それらに代表される工業プラントでは定期的に安全確認の検査をしていますが、その中で非破壊検査は必ず重要な役割を果たしています。現在、全国には延べおよそ75,000人の非破壊検査資格の有資格者がおり、春と秋に行われる資格試験には毎回1万人を超える受験者が新規取得と再認証に挑戦しています。
 私たちの生活の広い範囲にかかわっている非破壊検査技術ですが、地味で目立たないのは、技術の適用結果において有形のものを何も残さないからです。建築技術では、たとえば東京スカイツリーなどは完成前からその偉容が人々の注目の的になっています。多くの技術は、対象物に働きかけてそれを変えて有用なものを作るというプロセスで成り立っています。それに対して非破壊検査は、ものを壊さずに構造物や部材に有害なきずがないかどうかを調べて確認します。対象物を何も変えないことが大前提の技術なのです。
 非破壊検査技術がその適用の結果生み出すものは「安心安全」です。「安心安全」は無形で、それが長く続けば続くほど空気のように忘れ去られていきます。構造物の破壊事故が起きると非破壊検査技術がクローズアップされることがあります。逆に言えば非破壊検査が人々の意識に上らない社会は安全が保たれているといえます。目立たないけれど、安全安心を保つ重要な役割を果たしているという誇りを胸に今日も全国各地で活躍する非破壊検査技術者たちがいます。
 ものを壊さない、ものを変えないことが大前提であるため、非破壊検査では、超音波・放射線・電磁気・特殊な液体など、きずの存在を教えてくれる間接的な手段を使って試験体に働きかけます。むろん非破壊検査技術は、特殊な能力を持つ人のみに可能な技術ではなく、一定程度の教育と訓練を受ければ、普通の人が再現性よく確実にきずを検出できるように組み立てられています。
 本書を最後まで読んでいただけるとわかると思いますが、非破壊検査技術は中学や高校で教わる物理知識の応用例であるといえます。音にしろ、電磁気にしろ、ものの振る舞いがわかれば、きずがあるときと無いときの違いを区別できる可能性があります。そのような事実の実験的確認のうえにシステムとして体系化されたものが非破壊検査技術です。
 本書では、広く一般的に普及している非破壊試験方法について、初めて学ぶ人が基本的に知っておくべき知識をまとめました。さらに詳しく勉強したい場合は、(社)日本非破壊検査協会(JSNDI)が発行しているテキストに進むことをお勧めします。
 本書が、初めて学ぶ人の躓きの石を取り除き、この技術の面白さと重要性を知るきっかけになれば、筆者としてそれ以上の喜びはありません。

2011年4月
谷村康行

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