買い物かごへ

基礎からわかる水の応用工学

定価(税込)  2,592円

編者
サイズ A5判
ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-06670-2
コード C3043
発行月 2011年04月
ジャンル 化学

内容

環境問題の中で、今も昔も重要性を認識されている「水資源」。本書はその水の工学的な特徴の分析、利用、活用を、学術界と産業界の専門研究者が説き起こしたもの。

日本学術振興会「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会  著者プロフィール

【編集代表】
高井 治(日本学術振興会「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会委員長)
(名古屋大学 エコトピア科学研究所所長 大学院工学研究科教授)

【執筆者】(執筆順)
 白藤 立(大阪市立大学) 第1章
 藤間卓也(東京都市大学) 第2章
 和田洋六(日本ワコン株式会社) 3.1
 脇田慎一(産業技術総合研究所) 3.2、3.3
 葛谷昌之(松山大学) 第4章
 香田 忍(名古屋大学) 5.1
 黒田孝二(大日本印刷株式会社) 5.2、7.1
 早川享志(岐阜大学) 5.3
 近藤伸一(岐阜薬科大学) 5.4
 齋藤永宏(名古屋大学) 6.1
 石﨑貴裕(産業技術総合研究所) 6.1
 山﨑友紀(法政大学) 6.2
 井須紀文(株式会社INAX) 7.2
 西本右子(神奈川大学) 7.3

目次

まえがき
日本学術振興会「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会委員名簿
「水の応用工学」編者・執筆者一覧

第1部 水の科学
第1章 水と文明
1.1 地球の誕生と水
 1.1.1 宇宙における水
 1.1.2 原子核の誕生
 1.1.3 原子の誕生
 1.1.4 恒星の誕生と酸素の形成
 1.1.5 太陽系、地球、水、海の形成
 1.1.6 なぜ地球だけに?
 1.1.7 生命の誕生と水
1.2 水の歴史
 1.2.1 採集・狩猟の時代
 1.2.2 農耕・牧畜の時代
 1.2.3 エジプト文明
 1.2.4 メソポタミア文明
 1.2.5 インダス文明
 1.2.6 中国(黄河)文明
 1.2.7 水道の歴史(古代ローマ)
 1.2.8 水道の歴史(江戸)
 1.2.9 下水道の歴史
1.3 水の未来
 1.3.1 淡水の希少と偏在
 1.3.2 局所的水不足
 1.3.3 人口増加と水不足
 1.3.4 水と油の違い
 1.3.5 バーチャルウォーター(仮想水)
 1.3.6 水と安全・安心
 1.3.7 水と環境
 1.3.8 まとめ

第2章水の科学
2.1 H2Oと水
 2.1.1 水の分子構造
 2.1.2 電気陰性度と水素結合および分極
 2.1.3 軽水と重水
2.2 水の性質
 2.2.1 水の色
 2.2.2 水の状態図
 2.2.3 水の準安定状態
 2.2.4 表面張力
 2.2.5 粘性
 2.2.6 水の比誘電率
 2.2.7 電気伝導性と水の純度
 2.2.8 水の反磁性
2.3 水の特異性
 2.3.1 密度の温度変化
 2.3.2 高融点・高沸点

第3章 水と環境
3.1 世界の水循環
 3.1.1 はじめに
 3.1.2 世界の水需要と人口
 3.1.3 外国と日本の河川比較
 3.1.4 バーチャルウォーター
 3.1.5 新たな化学物質規制の動向
 3.1.6 水環境と水ビジネス
 3.1.7 水問題に関する世界の動き
3.2 日本の水環境
 3.2.1 日本の水環境の現状
 3.2.2 水環境の保全
 3.2.3 水環境の保全と水資源の利用
 3.2.4 日本の水環境の推移
 3.2.5 水環境の汚染源と環境影響
 3.2.6 水環境の指標
 3.2.7 環境基準
 3.2.8 排水基準
 3.2.9 公共用水の水質状況
3.3 水の循環
 3.3.1 水循環の概要
 3.3.2 地球の水循環量と水貯留量
 3.3.3 世界と日本の降水
 3.3.4 世界と日本の水資源量
 3.3.5 日本の水循環
 3.3.6 水循環と気候変動

第4章 水と生活
4.1 はじめに
4.2 水と健康
 4.2.1 健康科学
 4.2.2 ミネラルウォーター
 4.2.3 美味しい水と健康に良い水
 4.2.4 美味しいお茶
 4.2.5 水と薬
 4.2.6 水による治療効果
4.3 水と生命
 4.3.1 健康の仕組み
 4.3.2 水と人間の体
 4.3.3 水の吸収
 4.3.4 細胞外液とコラーゲン
 4.3.5 おわりに

第2部 水の工学
第5章 水の浄化と活用技術
5.1 新しい処理技術
 5.1.1 膜分離
 5.1.2 促進酸化法
 5.1.3 ナノバブル・マイクロバブル
 5.1.4 超音波
 5.1.5 超臨界
5.2 超純水
 5.2.1 純水とは何か
 5.2.2 水分子の性質を考える
 5.2.3 超純水製造システム
 5.2.4 超純水分析評価技術
 5.2.5 おわりに
5.3 機能水
 5.3.1 電解水
 5.3.2 電解によらない機能水
5.4 ミネラルウォーター
 5.4.1 日本におけるミネラルウォーターの消費量の推移
 5.4.2 ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン
 5.4.3 海外のミネラルウォーターの基準
 5.4.4 日本と海外のナチュラルミネラルウォーターの比較
 5.4.5 水質基準の比較
 5.4.6 まとめ

第6章 水を利用したマテリアルプロセッシング技術
6.1 無機材料(微粒子)
 6.1.1 水溶液からのめっき
 6.1.2 無電解めっきの前処理
 6.1.3 ナノ粒子の合成法
 6.1.4 ナノ粒子合成のための保護剤の役割
 6.1.5 ナノ粒子の合成例
 6.1.6 外部エネルギーを用いたナノ粒子の合成
 6.1.7 まとめ
6.2 有機化学(高分子)
 6.2.1 乳化重合(Emulsion polymerization)による高分子材料の合成
 6.2.2 水の中での有機合成
 6.2.3 高分子ゲル

第7章 水の分析技術
7.1 金属イオン
 7.1.1 金属イオン分析のための試料前処理
 7.1.2 検量線の作成
 7.1.3 試料の採取
 7.1.4 金属イオンの分析方法
 7.1.5 今後の金属イオン分析の方向
7.2 カビ、微生物
 7.2.1 はじめに
 7.2.2 水質基準と水質管理目標におけるカビと微生物
 7.2.3 一般細菌・大腸菌・従属細菌の測定法
 7.2.4 カビ臭の原因物質の測定法
 7.2.5 クリプトスポリジウムとジアルジア
 7.2.6 おわりに
7.3 水中の有機物分析
 7.3.1 分析対象となる水中の有機物
 7.3.2 水中の主な有機物の分析手法
 7.3.3 排水由来物質
 7.3.4 有機物による汚濁の指標項目の分析手法
 7.3.5 全有機体炭素
 7.3.6 おわりに

索引
あとがき

はじめに

 私たちにとって、水は最も親しい物質であるが、最もわかっていない物質でもある。水の状態として、液体の水、気体の水蒸気、固体の氷が知られているが、水の比重はなぜ4℃で最大になるか、水の液体としての分子構造はどうなっているのか、氷の結晶構造はいくつあるのかなど、単純そうな設問に対し、答えることは難しい。水は、調べれば調べるほどわからないことが多くなり、研究対象として研究者を悩ますとともに、魅了してきた。
 一口に水と言っても、半導体産業で使っている超純水、日常飲んでいる水道水やミネラルウォーター、エチルアルコールの含まれたお酒等々、いろいろな水が存在している。超純水と言っても、不純物は含まれており、理想的な純水は存在しない。私たちの周りにある水は、H2Oといわれる分子とほかの分子とが混ざった状態になっている。この混ざり方により、軟水、硬水といった分類やおいしい水、まずい水といった分類が生じる。ただし、このおいしい水といっても、何がおいしさの原因なのか突き止めることは難しい。
 水は、あらゆる産業を、また私たちの暮らしを支えてきた。いろいろなものの洗浄や各種の化学反応に使われ、また冷却剤や消火剤としても使われ、産業界では水はなくてはならない存在である。水の浄化、排水処理、海水の淡水化、機能水をはじめ、産業界の多くの分野においても重要な課題が山積している。
 水は、私たちの身体の50~70%(年齢により異なるが)を占めている物質であり、身体の主成分となっている。この水が、身体で果たしている役割は、酸素・栄養分・ホルモンなどの輸送、老廃物など不要の物質の輸送・体外排出、体温調整などいろいろあるが、この役割も十分わかっているわけではない。細胞内の水、脳の中の水、血液中の水など、いろいろな場所で、私たちの生命を持続するために貢献している。このように、医療・バイオ分野においても、水の重要性は高まっている。
 一方、水は、石油、石炭、天然ガス、各種鉱物などと同様に天然資源としての見地からも注目されている。水資源と呼ばれ、その争奪戦が世界各地で起きている。日本は水資源に恵まれているといわれているが、地域によって異なる。この重要な水資源を安全・安心な状態で持続的に確保することは、地球規模での極めて重要な課題である。
 このような水に関する様々な課題を解決するためには、産学が協同して研究に取り組むことが重要である。このため、2007年4月より2010年3月までの3年間の活動期間で、日本学術振興会において、「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会が認められ、活動を行った。本委員会のメンバーを次ページに記載する。本委員会の設立・活動にあたっては、平野眞一先生(独立行政法人大学評価・学位授与機構第3代機構長、名古屋大学名誉教授)、西澤潤一先生(学校法人上智学院顧問・上智大学特別教授、東北大学名誉教授)、増子 曻先生(東京大学名誉教授)、志水隆一先生(財団法人国際高等研究所フェロー、大阪大学名誉教授)に心より感謝する。本委員会は、「水の基礎科学」、「水と環境」、「水の機能性」、「水の応用」、「水と文明」といった見地から、水について取り組んできた。
 この委員会の活動の一環として、大学生への教養書、水関係の技術者への教科書として本書『基礎からわかる 水の応用工学』の出版企画が進められ、このたび刊行に至った。現在を生きる私たちにとって必要な『水に関する最新の知識』が、本書から得られたら幸いである。

 2011年3月25日

日本学術振興会「水の先進理工学」に関する先導的研究開発委員会
委員長 高井 治(名古屋大学)

買い物かごへ