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モノづくりの老舗に息づく伝統と革新
―京浜工業地帯創成の主役たち―

定価(税込)  1,728円

編者
サイズ 四六判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06683-2
コード C3034
発行月 2011年04月
ジャンル 経営

内容

本書では、伝統と革新が織り成す「老舗」企業の強さの真髄に迫るべく、有識者へのインタビューとともに、「老舗」企業の経営理念継承や技術・技能伝承方法、新規分野への取り組みを徹底解説する。「守るべきところは愚直なまでに守り、大胆に変えるべきところは変える」―本業を重視し、伝統を守りながら、進取の気風が企業文化の奥底に世代を超えて受け継がれてきた「老舗」の強さを解明する。

目次

はじめに

第1部 今“老舗”が注目される理由            
Spirit of SHINISE協会会長 福澤武氏
帝国データバンク史料館学芸員 後藤佳菜子氏
明治学院大学経済学部教授 神田良氏
慶應義塾大学総合政策学部准教授 飯盛義徳氏

第2部 老舗企業の強さの秘密に迫る
(株)石川精器  「カム」を追い求める研究開発型町工場
大川精螺工業(株)  冷間鍛造技術で車部品の高度化に貢献
(株)オリエンタル工芸社 自社製品を手掛ける不屈の下請け企業
(株)勝亦電機製作所  顧客ニーズに対応し電力の安定供給に貢献
(株)加藤研磨製作所  品質で勝負、1000分の1ミリメートルに挑む
(株)上島熱処理工業所  ソルトバス(塩浴炉)に精通した技能者集団
(株)京浜工業所  徹底した直販体制で100年企業を目指す
(株)コトブキ  地域密着で歴史を刻む「中古や」
(株)サンコーシヤ  独創技術とM&Aで国際化を推進
三力工業(株)  環境に合わせてビジネスモデルを構築
(株)昭和製作所  超音波探傷用標準試験片で国内シェア100%
太洋塗料(株)  オンリーワンの特殊塗料を提供する開発型企業
タマチ工業(株)  武士道の精神息づく名門企業
(株)タンケンシールセーコウ  成長の原動力「探検心」でシール市場に貢献
(株)南武  自動車業界を席巻する「南武ブランド」
(株)西尾硝子鏡工業所  時代の半歩先を行く多角化で次代を切り拓く
(株)羽田パイプ製造所  独創技術と機動力を武器に、80年以上を生き抜く
フィーサ(株)  大田区発グローバル町工場
(株)粉研パウテックス  世界を舞台に粉体を自在に操る専業メーカー
堀口エンジニアリング(株)  匠の技能を継承し新たな伝統を創造
(株)三ツ矢  世界に羽ばたくめっきのスペシャリスト
(株)ヤシマ  24時間無人の最新鋭自動化ラインを構築

あとがき 

はじめに

 日本は世界で屈指の「老舗大国」といえるだろう。創業から100年を超える企業は、個人経営なども含めると10万社に及ぶといわれる。風雪に耐え抜いた老舗に共通するのは、本業を重視し、伝統を守りながらも、進取の気風が企業文化の奥底で世代を超えて受け継がれてきたことにある。その真骨頂は「守るべきところはしっかり守り、変えるべきところは大胆に変える」ということではないだろうか。
 新興国の激しい追い上げや円高の定着など、経済情勢が混迷の度を深めるなかで、老舗の経営があらためて注目を集めている。日本のモノづくりが構造的な変革を迫られる今だからこそ、老舗の強さの秘密を解き明かし、その生き方を学ぶことは意義深いように思われる。
 そこで日刊工業新聞社では、「モノづくりの老舗に息づく伝統と革新―京浜工業地帯創成の主役たち―」を主題とした本書を発行した。日本のモノづくりをけん引してきた京浜工業地帯、なかでも発祥地といえる品川区や大田区には、珠玉の老舗中小企業が数多く集積し、今も工業立国の担い手として、いぶし銀のような光沢を放っている。
 中小企業に着目したのは、技能伝承や後継者育成、経営理念継承など、長寿に不可欠な要素が創業期に近い姿をとどめ、世襲制が薄れ、コーポレートガバナンスなどの経営システムが確立した大企業に比べ、事業体がシンプルであるが故に、老舗の実像に迫りやすいと考えたからだ。
 京浜工業地帯の歴史をひも解くと、近代化の道をひた走る明治期から、第1次世界大戦のドイツ敗戦で日本に活躍の機会が訪れる大正期、軍需一色の第2次世界大戦期、朝鮮特需をジャンプ台に反転の機会をつかむ戦後復興期、昭和30年代前半から始まる高度経済成長期まで、いくつか興隆期が存在することがわかる。
 老舗をどう定義するかは、業種や企業規模、地域により考え方は異なろう。IT企業なら創業30年でも立派な老舗といえる。本書は機械・工具製造、機械加工、プラスチック成形、熱処理、めっきなどの工業系に焦点をあてるため、あえて創業から50年以上を老舗と定義し、高度経済成長期から明治期までさかのぼることにした。
 前段では、老舗をテーマに取り上げる今日的な意味合いを、専門分野の異なる4人の有識者に伺い、インタビューとして掲載した。後段では他社に真似のできない製品や技術で異彩を放ち続ける京浜工業地帯の中小企業22社を紹介。モノづくりの老舗がなぜ、ダイナミックな環境の変化に適合しながら、時代や市場の「かぜ」をつかむ経営を実践してこられたのかを探った。
 老舗を取材するなかで、ご年配の経営者が「リーマン・ショックは受注量がいきなり半分以下に落ち込んだが、終戦直後、ゼロから再出発したオヤジの代に比べたら…」と、しみじみ語っていたのが印象に残った。また「先代の汗がしみこんだは、何があろうと自分の代で降ろすことはできない」、「現状維持は後退を意味する。第2創業のつもりで取り組んできたから今がある」など、多くの経営者から老舗としての覚悟と強さが滲んだ話を伺うことができた。
 そうした老舗経営者のさまざまな思いを凝縮した本書が、意気消沈気味な日本のモノづくりに、元気な風を吹き込むの役割を果たせれば幸いである。なお本文では敬称略とさせていただきました。
2011年4月
日刊工業新聞 南東京支局 特別取材班

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