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ジャンケン経営の実践
―2度の経営危機を克服した町工場会長の経営問答―

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ 四六判
ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-06667-2
コード C3034
発行月 2011年03月
ジャンル 経営

内容

鈴木達雄氏は東京・狛江でめっき業を二代目の経営者として展開、成熟産業にも関わらず好調な経営を続けている。しかし、二回にわたり経営危機に直面し、塗炭の苦しみを味わった時代もあった。ここで苦境を乗り越えて得た教訓、“信頼をつかんで(グー)”、“欲望を絶ち幸せを味わう(チョキ)”、“自らの利益を社会に還元する(パー)”、この「グー・チョキ・パー」に例えられる著者の経営哲学を本書で紹介する。

鈴木達雄  著者プロフィール

(すずき たつお)1941年横浜市鶴見で生まれる
1959年麻布高校卒
1964年慶応大学法学部卒
1964年安田火災海上保険入社、69年退社、同年千代田第一工業㈱に入社
1985年代表取締役社長に就任
2004年会長に就任 現在に至る

千代田第一工業(株)
はく離や摩耗に強く長寿命と評判の硬質クロムめっき「ダイクロン」を主力に事業展開。
従業員30名。
東京都狛江市。

目次

まえがき

第1部 経営の実践
第1章 激動期に経営力を高める
[I]生産管理のポイント
[II]品質管理のポイント
[III]営業管理のポイント
[IV]製品開発のポイント
[V]人事管理のポイント
第2章 会社のモチベーションを高める
[I]体力の強化
[II]経営力の強化
[III]経営者のモチベーションを高める
[IV]社員のモチベーションを高める
第3章 納税こそ会社成長の要諦
[I]節税の欺瞞
[II]黒字倒産への甘い道
[III]キャッシュフロー会計を機軸に
第4章 21世紀型経営を目指して
[I]理想の会社
[II]会社の理念(頭の部分)
[III]外から見えない経営心の在り方
[IV]企業の競争力(右手の部分)
[V]社会への貢献(左手の部分)
[VI]参加なくして近代経営なし(右足の部分)

第2部 経営の革新Q&A
〔人のハテナ〕
1 後継者への事業継承をどう考えたらよいのでしょうか?
2 有能な不良社員はどう評価、処遇すべきでしょうか?
3 3K職場の人材確保と育成をどうするべきでしょうか?
4 会社資産をどう兄弟で分配すればよいでしょうか?
5 気質の違う社員たちをうまく融合させるにはどうすればよいでしょうか?
6 後継者を選択するときに優先すべきことは何でしょうか?
7 社員が不正経理、対策をどう立てればよいでしょうか?
〔お金のハテナ〕
1 コスト上昇にどう対応すべきでしょうか?
2 黒字なのに綱渡りの資金繰り、どのように改善すればよいのでしょうか?
3 受注量は多いが利益の出ない仕事は切るべきでしょうか?
4 利益の有効な配分とは、どういうものでしょうか?
5 メインバンクをどのように考えればよいのでしょうか?
6 会社売却を決めましたが、本当によいのでしょうか?
7 雇用給付金の功罪を、どのように考えればよいでしょうか?
〔組織のハテナ〕
1 セクショナリズムの壁を崩すにはどうすればよいのでしょう?
2 岐路に立つチームワーク経営をどう直せばよいでしょうか?
3 曲がり角の工場アパート、どう考えればよいのでしょうか?
4 ビジネスパートナーはどう選べばよいでしょうか?
〔仕事のハテナ〕
1 異業種へ手を出してもよいものでしょうか?
2 未曾有の経済危機を、どう乗り切ればよいのでしょうか?
3 未来への投資は、どのようなものが効果的でしょうか?
4 コストをかけずネット事業へ参入することは可能ですか?
5 余剰工場を利用し新事業を開拓するのは難しいでしょうか?
6 超保守企業の進むべき道はどこにあるのでしょうか?
7 ナイナイづくしの零細企業の目指す道はどこにあるのでしょうか?
8 豊富な資産を持つ企業の未来戦略はどこにあるのですか?
9 昔お世話になった高飛車な企業との取引は、どうすればいいのでしょうか?
10 ハイテク町工場の経営戦略をどう考えるべきでしょうか?
11 ネット家具店の開業にあたり、留意すべきことは何でしょう?
12 10番手以下が2番手になるにはどうしたらよいでしょうか?
13 リスクの多い経営の本質をどう考えるべきでしょうか?

あとがき

はじめに

 人の心の変化はジャンケンのグー・チョキ・パーに例えることができます。勝つと思えば負けるという人生劇場の生き写しです。
 グーは、手を握りしめて、事を成就させるために強い心でがんばり続けて結果を出すことです。企業であれば顧客に喜んでいただいて利益を獲得することです。途中であきらめると挫折を味わうことになります。
 パーは、自分の喜びを周りに運んで幸せにすることです。企業であれば仕事で得た利益を社会に還元することです。還元してもなお手のひらの窪みに残った鋭気を大切に扱うことが経営の真髄だと思っています。
 チョキは、ほどほどのところで満足する、つまり“足るを知る”ということです。人間の欲望にはきりがありません。欲望を断つ(チョキ)ことは幸福への近道かもしれません。
 「グー・チョキ・パー」は幸せのリズムです。信頼をつかんで(グー)、幸せを味わい(チョキ)、超我の奉仕に励む(パー)、それがジャンケン経営の実践です。
 今までの人生の中で、私は2度の破たんを経験しました。1度目は高校生の時です。父が経営していた会社が人に騙され大きな借財を背負う羽目になり、借金返済のために全財産を手放すこととなり、豪邸生活から一挙に1家七人が4LDKの借家生活へ激変しました。6畳間に2段ベッドを2台入れての男兄弟5人暮らしになってしまいました。自分の物入れはダンホール箱1個だけとなり、思い出の写真のような大事な1部の物しか残すことはできませんでしたが、苦しい中で両親は進学を許してくれました。
 大学を卒業して、一般の会社に就職しましたが、サラリーマン生活に馴染めず5年で退社し、今の千代田第一工業に転職したのが昭和45年の2月で28歳の年でした。
 入社はしたものの、会社は資金繰り苦労の真っただ中で、資本金1200万円で繰越欠損が2800万円もあるという想像を絶する会社で、今でいえば債務超過で倒産寸前の状況だったのでしょう。当時は経営も何なのかも分からず、ガムシャラに働きました。繰越欠損を解消するのに13年かかり、41歳にもなっていました。さらに、これから4年かけて、2回目の苦しい破たんの道(第2期)に進んでいくのです。
 今から振り返れば、キャッシュフロー問題、マネジメント問題、マーケティング問題等に対する解決能力の未熟さに起因するのですが、当事者としては多くは語りたくないし、語れない事業継承という難しい暗黒の部分なのです。
 仕事は順調に拡大していきましたが、無節操な増員と無計画な設備等が災いして資金的な苦労と労働問題を常に抱えた余裕のない経営が続き、ついに行き詰まり先代の代表取締役社長が退任を表明し、私が代表取締役社長に就任して(45歳)第2期の幕が下りたのです。
 社長に就任して、今までの血の出るような苦労から学んだ体験を生かしながら、会社の基礎をつくる第3期に入ります。
 会社の苦労の内容は、全てを借金返済に優先させた第1期(28歳~41歳)、利益が出ているのに資金繰りに苦労して破たんした第2期(41歳~45歳)、会社の基礎を築いた第3期(45歳~55歳)によって違ってきます。
 倒産の恐怖に怯えながら経営しての第1期から学んだことの1番は手形の怖さでありました。発行を止めたいと思いましたが、実際には第3期に入ってから実行できたのです。
 資金繰りと経営管理ができなかった第2期から学んだことの1番は、設備投資によるキャッシュフローの減少であり、鵜合の衆では経営ができないという現実を思い知らされたことです。
 街に経営書は氾濫していますが、多くの場合に経営学の解説書です。私の体験でいう第3期の問題が多いように感じます。しかし、経営は第1期、第2期、第3期と続いているのです。
 皆さんの今の会社の状況(第何期に属しているか)によって対策が変わってきます。
 一般的表現で言い換えますと、第1期の目標は、手形の発行を止めて、利益を出して税金を払い資本金額程度の繰越利益金を作ることです。第2期の目標としては、借入金元金の返済を税引き後利益で返済できる体制を作ることです。第3期の目標は、利益の捻出だけでなく、社員、得意先、地域社会に目を向けた会社になることと思います。ここで当社の「夢工場」プロジェクトが始まったのです。
 このことをなるべく多くの中小企業の方々に伝えたい。この思いから日刊工業新聞社発行の月刊誌「工場管理」久保敏也編集長に適切なアドバイスと協力を得て出版したのがこの本です。
 本書は2部構成になっております。前編「経営の実践」は経営のハード部分であり、後編「経営の革新Q&A」はソフト部分であり、経営の調味料的役割を果たす大切な経営の心を解説しています。多くの人に読んでいただく本と言うより、1人でも多くの中小企業経営者の目に留めていただき、1社でも多くの中小企業の経営改善に役立てていただけたらこれに勝る喜びはございません。
2011年3月
鈴木達雄

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