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基礎をしっかりマスター
ココからはじめる熱処理

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-06665-8
コード C3053
発行月 2011年03月
ジャンル 機械

内容

本書は、熱処理を中心とした表面処理に関するひととおりの知識をわかりやすく解説。本書ではできるだけ平易に説明し、熱処理の各工程に沿った入門的なガイドブックに構成している。できるだけ目で見て理解できるように、約30項目に分け、図(イラスト)や写真を多くし(文章とイラストを半々に、立体的なイラストを駆使して)、初心者のニーズに応える内容としている。

坂本 卓  著者プロフィール

(さかもと たかし)
1968年 熊本大学大学院修了
同年、三井三池製作所入社,鍛造熱処理,機械加工,組立,鋳造の現業部門の課長を経て,東京工機小名浜工場長として出向。復帰後本店営業技術部長。
熊本高等専門学校(旧八代工業高等専門学校)名誉教授
(有)服部エスエスティ取締役
熊本県立大学非常勤講師
工学博士,技術士(金属部門),中小企業診断士


主な著書
『おもしろ話で理解する 金属材料入門』、『おもしろ話で理解する 機械工学入門』
『おもしろ話で理解する 製図学入門』、『おもしろ話で理解する 機械工作入門』
『おもしろ話で理解する 生産工学入門』、『トコトンやさしい 変速機の本』
『トコトンやさしい 熱処理の本』、『よくわかる 歯車のできるまで』
『絵とき 機械材料基礎のきそ』、『絵とき 熱処理基礎のきそ』
『絵とき 熱処理の実務』、『「熱処理」の現場ノウハウ99選』
『絵ときでわかる 材料学への招待』(以上,日刊工業新聞社)
『熱処理の現場事例』(新日本鋳鍛造協会)
『やっぱり木の家』(葦書房)

目次

はじめに
熱処理作業の流れ

第1章 熱処理の極意
1-1 熱処理の目的は何かを考える
1-2 熱処理する鋼を確認する
1-3 熱処理の前準備を行う
1-4 加熱炉の選定を行う
1-5 炉の能力と装入量を考える
1-6 炉内雰囲気の選定をする
1-7 温度を正しく測定する
1-8 火色により間接的に温度を測定する
1-9 冷却のスピードを決める
1-10 冷却剤の能力を維持する
◎確認問題

第2章 熱処理の基本的な作業
2-0 熱処理作業で用いる機器・作業具
2-1 焼なまし
2-2 焼ならし
2-3 焼入れ
2-4 焼戻し
◎確認問題

第3章 熱処理の特殊な作業
3-1 浸炭焼入れ作業
3-2 高周波焼入れ作業
3-3 ガス窒化作業
◎確認問題

第4章 熱処理をスムーズに行うための作業
4-1 準備作業
4-2 段取り
4-3 ショットピーニング作業
4-4 硬さ測定
4-5 割れ検査
4-6 打ち疵の防止
4-7 組織の観察
◎確認問題

第5章 こんなときはどうするか
5-1 初めての材料の熱処理
5-2 焼入れの失敗
5-3 変形や曲がりの矯正
5-4 焼割れしたときの対応
5-5 高周波焼入れと浸炭焼入れ後の硬さ不足
5-6 浸炭焼入れ後の変形や曲がり対策
5-7 ガス窒化後の問題解決策
5-8 事前対策と数値解析および記録化
◎確認問題

第6章 熱処理する主要な材料
6-1 炭素鋼と合金鋼、浸炭鋼
6-2 工具鋼と高速度鋼と
6-3 鋳鉄と鋳鋼
◎確認問題

第7章 安全な作業と管理を行う
7-1 安全作業の確立
7-2 付属設備を上手に使う
7-3 啓発と新技術情報の収集
◎確認問題

熱処理作業で使われる用語と解説

はじめに

 子供のころ村はずれに鍛冶屋があり、遊びの合間に覗くと薄暗い土間で鎌、包丁などの刃物を鍛造して成形し、研いだあと水に投入する作業を行っていました。ほかには馬の蹄鉄、鍬などの農機具も鍛造し、形ができあがると多くは水冷していました。そのとき、水冷作業は単に冷却して次の工程に移るためだと思っていましたし、「熱処理による鋼の品質向上」という考えは子供の頭に巡りませんでした。
 熱処理が鋼の性状をドラスティックに変えることがわかったのは、父が私の使い古して刃こぼれした肥後の守を竈で鈍して砥石で刃を揃えたあと、再び赤色になるまで加熱して水で急冷したことです。焼入れという言葉もそのとき知りましたし、どうして硬くなって切味が良くなるのか不思議でした。父から「焼入れすると小刀もシャンとなるんだ、人間も同じだよ」と聞いたことを憶えています。
 金属工学科に進学し鋼の熱処理の実験を重ね理論を学ぶにつれて、子供のころの不思議さは払拭されましたが、同時に興味が募りますます未知の技術を研究したい気持ちが湧き出ました。
 縁あって機械メーカーの熱処理工場に配属され、操業を安定して進めるとともに種々の研究も並行して行いながら、他工場の見学、学会参加、論文発表、研究会の幹事を務め、情報を収集しました。学校で学んだことが実業を経験して初めて理論を裏付けすることができ、新しいノウハウを体得しました。机上で学んだだけでは理論は画に書いた餅ですし、体験によって初めて得る技術の本質が理解でき、目の前の薄曇りが晴れ渡りました。日夜、工場内を密度濃く動き回って問題解決に勤しんだあと、入社6年目で旧弊の熱処理工場を最新の設備に改装することができ、付随して作業の効率と品質向上の実績を積み上げました。
 工場内の仕事はそれまで熱処理工場の範疇で考えていましたが、熱処理作業があくまでモノ作りの過程の1工程であることを考えると、前後の工程と有機的に連携しなければなりません。勤務する工場は大小各種の歯車を多量に製造していましたから、歯車の品質を最高に確保する中で熱処理を最も活かす必要がありました。新しい材料の選択と新規の熱処理設備も導入しましたが、さらに発奮して歯車の勉強を基礎から進め、提携先の独国某メーカーにおける実習と得た技術の社内への還元、社内の機械加工設備の新導入などを図った結果、歯車製造の技術を飛躍的に向上することができました。結果として勤務したメーカーは現在、国内で有数の遊星減速機の製造企業として発展し、諸改革と改善がその遠因に繋がったと思っています。
 熱処理は形状が変化する加工ではありませんから、初めて勉強する方にはなかなか理解しにくい技術と思われますが、そこには厳然とした理論が存在しています。熱処理作業は鋼の内部の改善を可能にしますが、反面、鋼の中味が判別できないために品質を評価することが難しくなります。その意味から熱処理作業は信頼性工学の範疇ともいえます。
 熱処理する品質は正しい作業を積み重ねて行くことにより確保できます。本書は実務的な熱処理の基本作業を主体に、「やさしい基礎をマスターするため」に書き著した「ココからはじまる」入門書です。とくに絵を装入して視覚により理解ができるように構成しています。

 2011年3月
坂本 卓

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