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大規模電力貯蔵用蓄電池

定価(税込)  4,968円

編者
サイズ A5判
ページ数 248頁
ISBNコード 978-4-526-06652-8
コード C3054
発行月 2011年03月
ジャンル 電気・電子

内容

近年、大規模電力貯蔵用として各種の蓄電池の実用化が進んでいる。本書は、電力貯蔵技術研究会のこれまでの活動をベースに、大規模電力貯蔵用蓄電池の現状と展望をとりまとめた。産官学の第一線の研究者、技術者が執筆、研究レベルから実用レベルまで、最新の情報を掲載する。

電気化学会エネルギー会議 電力貯蔵技術研究会  著者プロフィール

執筆者および編集委員

研究会主査
太田 健一郎 横浜国立大学大学院工学研究院機能の創生部門(はじめに)
編集主査
野崎  健 (独)産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門(第7章)

委員
伊庭 健二 明星大学理工学部総合理工学科(第1章)
田中 晃司 東京電力(株)販売営業本部法人営業部兼技術部(第2章)
小川 幸治 日本ガイシ(株)電力事業本部NAS事業部(第2章)
重松 敏夫 住友電気工業(株)パワーシステム研究所二次電池部(第3章)
石川 勝也 川崎重工(株)車両カンパニーギガセル電池センター(第4章)
橋本  勉 三菱重工業(株)原動機事業本部新エネルギー事業推進部(第5章)
髙林 久顯 新神戸電機(株)名張事業所電池設計部(第6章6.1節)
高根 稔明 (株)明電舎エネルギーシステム事業部(第6章6.2節)
根岸  明 (独)産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門(おわりに)
内山 俊一 埼玉工業大学工学部生命環境化学科
佐藤 完二 (独)科学技術振興機構JSTイノベーションプラザ北海道
嘉藤  徹 (独)産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門
氏家  諭 関西電力(株)研究開発室エネルギー利用技術研究所

目次

はじめに/執筆者および編集委員

第1章 電力貯蔵システム 
1.1 電力貯蔵システムの概要 
1.1.1 揚水発電 
1.1.2 圧縮空気貯蔵(CAES) 
1.1.3 水素エネルギー貯蔵 
1.1.4 2次電池 
1.2 電力貯蔵システムのニーズ 
1.3 電力貯蔵システムの運用技術に関する研究課題 
1.3.1 電力貯蔵システムの全体最適 
1.3.2 電力系統の安定運用への寄与 
1.3.3 需要予測・発電予測 
1.4 スマートグリッド関連技術の実証プロジェクト 
1.5 スマートグリッドをめぐる国際標準化の動き 

第2章 ナトリウム硫黄電池(NAS電池) 
2.1 電池の原理と構造および開発の経緯 
2.2 NAS電池システムの種別と構成 
2.2.1 変電所設置NAS電池システム 
2.2.2 需要家設置NAS電池システム 
2.3 東京電力におけるNAS電池システムの設置・運転実績 
2.3.1 設置実績 
2.3.2 負荷平準化の効果 
2.3.3 分散電源を含む自立系統における活用 
2.3.4 自立運転試験の結果 
2.4 自然エネルギーの出力変動抑制活用 
2.4.1 島嶼における風力発電所連系の検証結果 
2.4.2 実際の風力発電所への適用実績 
2.5 海外への適用実績 

第3章 レドックスフロー電池 
3.1 レドックスフロー電池の原理・構成・特徴 
3.1.1 レドックスフロー電池の原理 
3.1.2 レドックスフロー電池の構成 
3.1.3 レドックスフロー電池の特徴 
3.1.4 レドックスフロー電池の基本動作特性 
3.2 レドックスフロー電池による電力貯蔵システムの開発動向 
3.2.1 開発の経緯 
3.2.2 鉄-クロム系(Fe/Cr系) 
3.2.3 バナジウム系(V/V系) 
3.3 レドックスフロー電池による電力貯蔵システムの事例(国内・外) 
3.3.1 国内の事例 
3.3.2 海外の事例 
3.4 レドックスフロー電池による電力貯蔵システムの今後の技術課題

第4章 ニッケル水素電池 
4.1 ニッケル水素電池の原理 
4.1.1 充放電反応 
4.1.2 過充電・過放電反応 
4.2 ニッケル水素電池の構造 
4.3 ニッケル水素電池の構成材料 
4.3.1 ニッケル水素電池の負極 
4.3.2 ニッケル水素電池の正極 
4.3.3 セパレータ 
4.3.4 電解液 
4.4 ニッケル水素電池の特性 
4.4.1 大容量ニッケル水素電池の充放電特性 
4.4.2 自己放電特性 
4.4.3 サイクル寿命特性 
4.4.4 高速充放電特性 
4.5 適用事例 
4.5.1 風力発電出力平滑化システム 
4.5.2 太陽光発電システム 
4.5.3 マイクログリッド 
4.5.4 鉄道用地上蓄電システム 
4.5.5 低床電池駆動LRV 
4.5.6 トランスファークレーン 
4.5.7 電動フォークリフト 
4.6 将来展望 

第5章 リチウムイオン電池-大型リチウムイオン電池およびそのシステム開発について-
5.1 リチウムイオン電池の原理・特徴 
5.2 大型リチウムオン電池の開発 
5.3 大型リチウムイオン電池を用いたシステム開発 
5.3.1 家庭用・業務用電力貯蔵システム 
5.3.2 系統連系円滑化蓄電システム 
5.3.3 ハイブリッドフォークリフト 

第6章 鉛蓄電池・電気二重層キャパシタ 
6.1 鉛蓄電池 
6.1.1 鉛蓄電池の概要 
6.1.2 電力貯蔵用鉛蓄電池 
6.1.3 風力発電出力変動抑制用鉛蓄電池 
6.1.4 今後の展望 
6.2 電気二重層キャパシタ 
6.2.1 バイポーラ型キャパシタの構成 
6.2.2 バイポーラ型キャパシタ―明電舎製MEICAPの性能― 
6.2.3 キャパシタ適用製品の紹介 

第7章 各種蓄電池の用語と横断的解説 
7.1 電力貯蔵用蓄電池と用語 
7.1.1 二次電池の分類と形式 
7.1.2 二次電池(セル)特性および性能 
7.1.3 電力貯蔵システムの記述と信頼性 
7.2 大規模電力貯蔵用蓄電池の横断的解説 

おわりに
索引

はじめに

 電池は大きく化学電池と物理電池に分けられる。物理電池には太陽電池、熱電地があるが、これは太陽エネルギーあるいは熱エネルギーを電気エネルギーに変換する機能である。一方、化学電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であり、一般に電池というとこの化学電池を指すことが多い。本書では、この化学電池が電気エネルギーの貯蔵に果たす役割を中心に扱うことにする。
 化学電池の歴史は古い。イタリアの物理学者ボルタは1799年に亜鉛と銅の組み合わせからボルタ電池を発明し、人類は初めて制御した状態で電気エネルギーを利用できるようになった。ダニエル電池、ルクランシュの乾電池の発明はその利便性をいっそう高めた。このあたりまでは化学電池は電気エネルギーを得る手段としてのみ考えられていた。一方で、プランテの鉛蓄電池、その後のエジソンらのアルカリ蓄電池の発明は電気を蓄える、あるいは電気エネルギーと化学エネルギーの相互変換を可能とするものとなった。
 19世紀の末、発電機が発明され、大規模に電気エネルギーを利用できる可能性が広がった。現代では、電気エネルギーは二次エネルギーとして使用する場ではクリーンであり、制御も容易であるので、あらゆるところで利用されており、今後も二次エネルギーとしての重要性はますます高まると考えられる。他方、電気エネルギーはつくるとともにただちに消費する必要がある。目下のところ、わが国では電力需要をあらかじめ予想して発電量を制御するという、芸術的な技術を使うことにより、大きな問題は発生していない。しかし、これからの電気エネルギーの需要増大、さらには時間変動の大きい再生可能エネルギーの導入増大による需要・供給のミスマッチを考えると、電気エネルギーの有効な貯蔵方法の開発は必須である。
 電力貯蔵にはいくつかの方法がある。揚水発電は大規模には有効な手段であり、可能性のある場所では積極的に利用されている。水電解による水素としての貯蔵は再生可能エネルギーをベースに開発が進められている。そのほか、超伝導を利用してコイルに蓄える方法、気体の圧力として大規模に蓄える方法も試されている。キャパシタも小規模には有効な手段として実用化されている。こういった中でも、古くからある蓄電池による電力貯蔵方法は厳然として重要な位置づけとして存在する。
 二次電池は、従来、鉛蓄電池とニカドのアルカリ蓄電池しかなかったが、1980年頃から、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池がわが国の技術で開発され、ポータブル電源として現在の情報社会を支えている。NAS電池、レドックスフロー電池は大型の電力貯蔵用の電池として開発が進められている。本書では、これら二次電池の電力貯蔵用としての機能に焦点をあて、技術の現状を紹介することを目的としている。再生可能エネルギーをベースにしたグリーンエネルギーネットワークを目指して本書が役立つことを願っている。

 2011年3月
電気化学会エネルギー会議電力貯蔵技術研究会 
主査 太田 健一郎

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