現在在庫がありません

気分のエコでは救えない!
―データから考える地球温暖化―

定価(税込)  1,760円

著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-06628-3
コード C3034
発行月 2011年02月
ジャンル ビジネス 環境

内容

地球温暖化の問題をめぐり、「エコ活動をして地球を救え!」という感情的な議論や不確かな情報が錯綜している。本書は昨今の「気分だけのエコ」の風潮や京都議定書体制に疑問を呈し、地球温暖化問題と日本のエネルギー政策に冷静な視点からメスを入れる。日本の進むべき道を提言した書。

杉山大志  著者プロフィール

(すぎやま たいし)
電力中央研究所社会経済研究所 上席研究員。IPCC第5次報告書第3部会統轄執筆責任者。1993年東京大学大学院修了、同年財団法人電力中央研究所入社。研究分野はエネルギー・環境政策。IPCCでは第4次評価報告書で統合報告書の主著者。2003年からは政府の産業構造審議会環境部会の地球環境小委員会で将来枠組み専門委員会委員等を務める。著書は「これが正しい温暖化対策 (正、続、新)」(エネルギーフォーラム)など。

星野優子  著者プロフィール

(ほしの ゆうこ)
電力中央研究所社会経済研究所 主任研究員。筑波大学大学院修士課程経営・政策科学研究科修了。1993年電力中央研究所入社。研究分野はエネルギー需給動向、温暖化防止政策。

石井孝明  著者プロフィール

(いしい たかあき)
経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒業。時事通信社、経済誌での記者を経て、現在は温暖化、環境、経済問題についての執筆活動を続ける。著書は「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)など。本の感想、連絡はishii.takaaki1@gmail.comまで。

電力中央研究所の温暖化防止政策関連の研究結果はホームページ
http://www.climatepolicy.jp/で閲覧できます。

目次

「気分のエコでは救えない!」Mood Ecology?

はじめに―「気分のエコ」ではなく「効果のある実践」 

第1章 国はCO2を完全に管理できない―理想だけでなく現実から削減策を考えよう 

問題の所在
温室効果ガスが簡単に減るという幻想を抱いてはいけない 

問1 温室効果ガスの排出は、政策で減らせるのでしょうか。また将来の世界のガス排出量はどうなるのでしょうか。 
問2 開発途上国で温室効果ガスの排出量の増加が著しいのですが、これはなぜでしょうか。 
問3 「温暖化で人類が滅びる」など、恐ろしい情報があふれています。どの程度深刻なのでしょうか。 
問4 「IPCCの言葉が言論空間で変化して、間違ったイメージが伝わり、政治の場で誤まった解釈がされている」という主張があります。それはどのようなことですか。 
問5 温暖化問題に向き合うためには、どのような考え方をすれば、適切な解決策にたどり着けるのでしょうか。 

第2章 協力を中心にした国際制度へ―京都議定書の失敗に学ぶ 

問題の所在
失敗から新しい制度作りへ 

問6 温暖化をめぐる国際制度作りの現状はどうなっているのですか。 
問7 欧米の政策のポイントと、国際制度への影響はどのようなものですか。欧米は日本より優れた対策をしているのですか。 
問8 中国やインドなど新興経済国の存在感が温暖化問題でも増しています。開発途上国の主張と動向を教えてください。 
問9 日本では京都議定書への対応が、温暖化政策の中心に置かれてきました。この姿勢は適切であったのでしょうか。 
問10 現状の温暖化対策の問題を是正するための方法はあるのですか。「ボトムアップアプローチ」はどのように進むのでしょうか。 

第3章 日本の強み「物作り」を活かす―過去の成功体験からノウハウを導く 

問題の所在
産業の力を温暖化対策で利用するには? 

問11 「日本の産業界の省エネ活動は素晴らしい」という主張が繰り返されます。本当にそうなのですか。またその理由は何ですか。 
問12 産業界の環境・省エネ対策について、政府の役割はどのようなものだったのでしょうか。 
問13 日本の過去の省エネ経験から、何を学ぶことができますか。 

第4章 再生可能エネルギーをめぐる危険な幻想―巨額の負担を引き受けられるのか? 

問題の所在
コストを考えず進む危うさ 

問14 再生可能エネルギーにはどんな長所がありますか。 
問15 再生可能エネルギーにはどんな短所がありますか。 
問16 日本では再生可能エネルギーの「全量買い取り制度」が検討されています。これはどのような問題を引き起こすでしょうか。 

第5章 効果のない政策にNOを―削減数値目標、環境税、排出権取引を検証する 

問題の所在
無駄な負担がやってくる 

問17 民主党政権が成立を目指している地球温暖化対策基本法は何が問題でしょうか。 
問18 環境税はCO2削減の効果があるのでしょうか。 
問19 排出権取引には温室効果ガスの削減効果はあるのでしょうか。 

第6章 ビジネスと技術で未来を変える―省エネ、電化、学習でバランスの取れた対応を 

問題の所在
「思い」を現実に活かすには? 

問20 温暖化をめぐる国際制度は、今後どのように変化していくのでしょうか。 
問21 世界各国が協力するには、何が軸になるでしょうか。 
問22 温暖化を止めるために、どのような国内政策を行えばいいのでしょうか。 
問23 CO2の排出を効果的に減らすエネルギーの需給体制とはどのようなものでしょうか。 
問24 温暖化対策で賢明な判断をするためには、何が必要ですか。 

あとがき

はじめに

「気分のエコ」ではなく「効果のある実践」
経済・環境ジャーナリスト 石井孝明

 総論賛成・各論不明
 「地球温暖化を止めよう」。このような呼びかけが社会の至るところで目につきます。そして温暖化をめぐるさまざまな情報があふれています。温暖化の進行によって、私たち、次の世代の人々、そして多くの地球上の生命に悪影響が広がると言われています
 それを聞いて、誰もが「何かをしなければならない」と当然の感情を抱くでしょう。しかし自分たちの生活で「具体的に何をすればよいのか」と、戸惑うことが多いのではないでしょうか。いわば「総論賛成・各論不明」という状況です。私たち筆者はこの本で「意義ある行動のために何をすればよいのか」という問題について、読者の皆さんが考える材料を提供します。
 温暖化の進行は温室効果ガスの増加が原因である可能性が高いとされています。その中心は人間が石油や天然ガスなどの化石燃料を使うことによって生じる二酸化炭素(CO2)です。「脱化石燃料」を社会全体で進めることが温暖化を止める方法です。
 しかし化石燃料は私たちが生活で必要なエネルギーを作るために燃やされます。そのためにその抑制は、他者のエネルギー使用を制約する「自由の抑制」、そして対策にかかる「コスト負担」の問題にぶつかります。人間が生きるうえで大切な、自由とお金に制約を加えるために、慎重な対応と利害の調整が必要になるのです。
 私は記者として地球温暖化問題、そして環境問題を取材してきました。これらの問題を観察すると「地球を守れ」という感情を先行させた議論が行われ、効果のない取り組みが自己満足で行われる例が多いのです。いわば「気分のエコ」が行われがちです。もちろん、その背景にある人々の善意は尊重しなければなりません。しかし同じように大切である自由の抑制と費用の問題とのバランスを忘れるべきではないでしょう。
 自由の尊重、そしてコストへの配慮は、今の日本の社会に必要なことです。産業の競争力の低下、そして急速な高齢化など、日本は経済力の衰退が心配されています。それを乗り越えるためには、個人が自由に能力を発揮し、知的生産を営み、経済的成果を出す必要があります。さらに限られた資金を効率的に使って経済活動をしなければなりません。
 日本の国益の中心は「人材」と「物作り」です。産業界が作り出す富、そして個人の政治と経済での自由な活動が、日本の今の豊さと国民の幸せの源になっています。自由の抑制とコスト負担について深い配慮をすることのないまま、温暖化をめぐる規制を増やすことは危険です。そうすると日本人の努力の上によって作られた現在の繁栄を壊すことになりかねません。「エコ亡国」が現実に起こりかねないのです
 どうすればよいのでしょうか。簡単な解決策はありません。私たち一人ひとりが向き合う現実の中で「地球環境の保護」「自由の抑制」「コスト負担」の三要素を満足させる解決策を考えるしかありません。その際に必要なのは、正確な情報を基にできる限り議論を重ね、関係者相互の利害を調整することです。合意のうえで物事を進めることが、私たち日本人が作り上げてきた民主主義のあり方です。

 意味ある議論のために正確な情報を知る
 このような問題意識を取材で交流のある電力中央研究所(電中研)の上席研究員の杉山大志さんに話したところ、共感していただきました。電中研は電気事業に関係するさまざまな研究業績を積み重ねたシンクタンクであり、温暖化政策をめぐる研究や提言でも日本有数の業績を挙げています。
 杉山さんはバランスの取れた現実的な提言を行うことで日本でも世界でも著名であり、私の尊敬する温暖化政策の研究者です。2014年に発表が予定されている国連機関のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告では社会的影響の部門の統轄執筆責任者の一人です。
 日刊工業新聞社の三沢薫さんの尽力で、電中研の研究・調査、そして私の取材で得た知見を、本にする機会をいただきました。これを活かして、私たち筆者は、議論のための正確な情報を、読者の皆さんに伝えたいと思います。
 この本では、素人である私が、誰もが思うであろう温暖化をめぐる疑問を24の質問にまとめました。それを「温暖化の現状」(第1章)、「壊れた国際体制の先行き」(第2章)、「省エネについての日本の産業の歴史と現状」(第3章)、「再生可能エネルギー」(第4章)、「環境税、排出権取引の是非」(第5章)、「日本の採るべき政策、私たちの行うべき行動」(第6章)という6つのテーマに分けました。そして杉山さん、電中研の研究者である星野優子さん、電中研の専門家の皆さんに質問をぶつけ、答えを示す形式にしました。平易で、役立つ情報の提供を心掛けました。
 執筆の中で、筆者らが改めて感じたことは二つあります。一つは机上の空論ともいうべき政策や議論が多く、日本でも、また世界でも「自由の抑制」「費用の負担」という側面からの考察が行われていないという事実です。
 もう一つは希望です。日本にとって必要なことは、世界規模でどのように温暖化問題を解決するのか、そして「物作り」に強みを持つ日本がどのような役割を果たすのかという将来像を描き出すことです。日本の産業界には、省エネなどのエネルギー技術によって、温暖化問題を良い方向に変える力があります。政策の設計を適切に行い、産業界の持つ技術力を使えば、国益と世界への貢献を共に行うことができます。その両立は、私たちの未来を幸せなものにするでしょう。
 私たち筆者はこれまで多くの問題を解決してきた日本人の賢明さを信じています。この本をきっかけに読者の皆さんが、温暖化に関する洞察を深めることを願っています。
 
 2011年2月
 ※本文中で引用した電力中央研究所の論文はネットで閲覧できます
http://www.climatepolicy.jp/

現在在庫がありません