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LED植物工場

定価(税込)  1,944円

著者
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サイズ A5判
ページ数 152頁
ISBNコード 978-4-526-06603-0
コード C3034
発行月 2011年01月
ジャンル ビジネス 化学

内容

照明の分野では白熱灯や蛍光灯からLEDへの代替が進んでいるが、植物の栽培光源としてもLEDは多くの長所をもつため、新しい産業として期待される植物工場において今後、栽培光源の主流になると考えられる。本書は、LED照明の植物工場への応用をわかりやすく解説する。

高辻正基  著者プロフィール

(たかつじ まさもと)
1962年、東京大学工学部応用物理学科卒業。
同年、日立製作所に入社し、中央研究所主任研究員、基礎研究所研究主幹を歴任。
1974年から植物工場の研究を始める。
1991年から2007年まで東海大学開発工学部教授。
2004年から2009年まで東京農業大学客員教授。
2008年、経産省と農水省が共同の農商工連携研究会植物工場WG座長。
現在、(財)社会開発研究センター理事、植物工場・農商工専門委員会委員長、日本生物環境工学会名誉理事長。
主な著書:
「地球と人類は持続するか」(裳華房)、「文理シナジーの発想」(丸善)、「完全制御型植物工場」(オーム社)、「図解 よくわかる植物工場」(日刊工業新聞社)

森 康裕  著者プロフィール

(もり やすひろ)
2003年、東海大学大学院理学研究科博士課程修了。
2003年から東海大学理学部非常勤講師。
光半導体光源を用いた植物栽培に関する研究に従事。
主な著書:
「CD‐Rマル秘上級テクニック」(インプレス)、「CD‐R/RW活用とメディア選び」(インプレス)、「DVD/CD‐Rパーフェクトデータ」(三才ブックス)、「CD‐R・DVD-Rマスター」(三才ブックス)

目次

第I章 植物工場ビジネスの現状
植物工場のタイプ
植物工場の研究開発の歴史
植物工場の三つの波
植物工場の実用化の経過
各社の植物工場
店舗併設型植物工場(店産店消)
韓国でも関心高まる植物工場
生産コストと技術課題
成長率と生産コスト
生産コストと初期導入コストの概算
消費者の認知と生産者の表現
現状の基本的認識
コラム 植物工場・農商工専門委員会

第II章 栽培用光源としてのLED
植物の光反応
いろいろな色素の働き
光強度の単位
光強度の換算係数
必要な光束の求め方
栽培用光源の種類と比較
CCFLの特徴と発光原理
LEDの発光原理と種類
LEDの利点と欠点
LEDによるパルス照明
植物栽培用LED照明の実情
LED植物工場の照明設計
4元系赤色LED素子
照明設計上で重要なLEDの電気的特性
植物工場用LEDパネルの作り方
導光板方式のLED面光源パネル
植物工場用LEDライン光源
補光栽培に利用されるLED
コラム 植物工場とクラウドシステムの融合

第III章 LED照射下での植物の生育
LEDとLDによるレタスの生育
LEDとLD照射下での光合成速度測定方法
LEDとLDによる花卉の培養
LEDの波長が短日植物と長日植物の開花に与える影響
開花制御が可能なLEDインテリア照明
LEDによるイチゴ栽培
LEDによる薬草などの栽培
コラム 地球環境と植物工場

第IV章 LED植物工場の実際
世界初の完全制御型LED植物工場「コスモファーム」
コスモファームの照明技術
コスモファームの生産工程
LED栽培されたレタスの特徴
大型LED植物工場の将来性と課題
店舗併設型小型植物工場「シェフの農園」
シェフの農園の照明技術
シェフの農園の野菜栽培方法と採算性
店舗併設型小型植物工場の将来性と課題

索 引

はじめに

 2009年に植物工場に対する国の支援が決まったことがきっかけになって、いま植物工場は第三次のブームを迎えて賑わっています。近年の食の安全・安心への志向、異常気象の頻発を背景にして、野菜の安定供給、品質の均一性、無農薬、清浄を保証する植物工場野菜への関心が企業や消費者の間で高まっています。産官学で研究開発の動きが急ですが、現状ではいくつかの問題が未解決のまま残されています。工場野菜はコストが高い、エネルギー多消費である、消費者や流通業者によく知られていない、独特のシャキシャキ感はあるものの露地物に比べてはっきりと美味しいとか栄養価が高いとは必ずしもいえない、などの問題です。
 これらの問題はいずれ解決されていくと思われますが、一つ根本的な技術的問題があります。それは、現状の実用化植物工場のほとんどが光源に蛍光灯を使用している点です。蛍光灯はたしかに安くて使いやすい、したがって現状ではもっとも有力な光源です。しかし、植物は特定の赤色と青色、とくに特定の赤色によってよく育ちます。生育がよくなるばかりでなく、美味しく栄養価の高い野菜ができる傾向にあります。ところが、蛍光灯にはこの特殊な赤色と青色の割合が非常に少ないのです。したがって、現状の工場野菜ははっきりいって、露地物と差別化できるほど美味しくはないし、栄養価も高いわけではありません。安定供給、無農薬、清潔の三点で勝負しているわけです。
 一方、現時点では価格が高いLEDは、実用化植物工場には本書で詳しく紹介するクピド・フェアでしか使われていません。しかし、半導体素子の技術進歩は早いので、将来、LED植物工場が普及することが大いに期待されています。というのは、LEDには植物の好む特定の赤色と青色のものがあるので、これを使うと野菜の品質が高まる、つまり生育がよく栄養価の高いものができやすいからです。また、LEDは熱線を含まないので野菜に近接でき、空間の節約になります。さらに省エネになることはよく知られています。だから、たしかにまだ実用化植物工場は少ないものの研究には盛んに使われているわけです。
 本書は、このように将来性のあるLED植物工場についての最初の入門書といえるでしょう。LEDの原理からいろいろな植物栽培への展開、実用化例の紹介が中心になっていますが、植物工場を理解するための基礎となる知識と技術の説明ももちろん必要です。さらに現状の大部分を占める蛍光灯植物工場の紹介や未来の動向についても解説しました。
 振り返ると、高辻が1991年に新設の東海大学開発工学部で研究室をもつことになった3期生に森がいました。1993年ごろで、LEDやLDを栽培光源として利用しようというアイディアが生まれました。そのころはまだ赤色LEDしかありませんでしたが、同年末に日亜化学工業が世界に先駆けて青色LEDを開発したので、直ちに赤色と青色のLEDを使った栽培実験に着手しました。これを研究室の中心的なテーマにし、他の学生も加えて精力的にデータを集積しました。これが森の卒業論文、ひいては学位論文の成果になったわけです。さらに、これらのデータが後のLED植物工場の基礎データになりました。その後もLED植物工場関連の研究開発を幅広く続けた結果が、本書につながったといえるでしょう。
 本書が植物工場の現状を把握し、LED植物工場に関心のある多くの方々のお役にたてば幸いです。

2011年1月  著者

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