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欧州ファブレス半導体産業の真実
ニッポン復活のヒントを探る

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06569-9
コード C3034
発行月 2010年11月
ジャンル ビジネス

内容

欧州各国政府は産官学を挙げて、半導体に力を入れている。本書では、その欧州半導体産業の現状と戦略、そして課題を、ファブレスビジネスの最先端企業(英国)を例に取り、ファブレスメーカーの本質を解説するとともに、日本の半導体ビジネス復活のヒントを探る。

津田建二  著者プロフィール

(つだ けんじ)
国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長
1972年 東京工業大学理学部応用物理学科卒業
同年 日本電気入社、半導体デバイスの開発等に従事。
1977年 日経BP社(当時日経マグロウヒル社)入社、「日経エレクトロニクス」、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集長、シニアエディター、アジア部長、国際部長など歴任。
2002年10月リード・ビジネス・インフォメーション(株)入社、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。代表取締役にも就任。2007年6月退社。

現在、英文・和文の技術ジャーナリスト。30数年間、半導体産業をフォローしてきた経験を生かしセミコンポータル編集長を務め、ブログや独自記事(www.semiconportal.com)において半導体産業にさまざまな提案をしている。講演活動も年に数回、海外にも年に数回、企業を中心に取材にいく。この他、マイコミジャーナルにて連載「カーエレクトロニクス」を受け持つ。
(著書)「知らなきゃヤバイ!半導体、この成長産業を手放すな」(日刊工業新聞社刊)

目次

Chapter 1 ファブレス半導体を生み出す欧州
1-1 日本の半導体産業との大きな違い
1-2 世界から見る日本の特殊性
1-3 続々生まれるファブレス半導体企業
1-4 ファブレスのメリットは得意な技術に集中できること
1-5 3種類のファブレスが活躍

Chapter 2 なぜ欧州は半導体に力を入れるのか
2-1 欧州域内の共同研究プロジェクト
2-2 欧州トップスリーの苦しみ
2-3 大手半導体のいない英国がなぜ半導体を強化するのか
2-4 サッチャー改革が今でも引き継がれている英国
2-5 英国政府が産学共同、グローバル化を推進
2-6 中小企業だけで世界の大手と戦う
2-7 英国では四つの地域で半導体産業が盛ん
2-8 大学が研究所の役割を果たし起業へ結び付ける
2-9 かつての雄プレッシーが復活
2-10 トランスピュータ卒業生が大活躍

Chapter 3 実績の出てきたファブレス、IPベンダーたち
3-1 携帯電話のプロセッサとして9割以上のシェアを持つアーム
3-2 ミクストシグナルに特化して強い製品を出すウォルフソン
3-3 ブルートゥースだけに頼らないCSRの未来
3-4 グラフィックスIP、コネクティビティIPで市場を広げるイマジネーション
3-5 デジタルラジオで欧州市場に存在示すフロンティアシリコン

Chapter 4 新興勢力のファブレス、賢いチップでイノベーションを推進
4-1 4G通信まで対応可能なソフトウエア無線専用プロセッサ〈アイセラ社〉
4-2 無線通信の小さな基地局フェムトセル市場を狙う〈ピコチップ社〉
4-3 大学発ベンチャーがヘルスケアICを設計 〈トゥーマズ・テクノロジ社〉
4-4 USBでモニタとパソコンをつなぐための半導体チップ〈ディスプレイリンク社〉
4-5 ノイズを出さずに高効率化した電源IC〈カムセミ社〉
4-6 ストリーミングAV応用を狙ったマルチスレッドプロセッサ〈XMOS社〉
4-7 簡単にプログラムできるマルチコア用のソフトウエア〈クリティカルブルー社〉
4-8 ワイヤレス応用を狙った超低消費電力のプロセッサ〈ケンブリッジコンサルタンツ社〉
4-9 小型化、携帯化で大きな市場目指すMMIC
4-10 60GHzのミリ波用CMOSトランシーバを目指す〈ブルーワイヤレス社〉
4-11 ソフトウエアモデムを提供できるIPベンダー〈コグノボ社〉

Chapter 5 大学の意識改革を進める事例集
5-1 産学協同を積極的に進める英国の大学
5-2 ケンブリッジ大学はエレクトロニクスを最重視
5-3 実用化に向けた大面積デバイスもケンブリッジ大学が研究中
5-4 ブリストル大学REDは世界中の企業と研究
5-5 大学という概念を生み出したスコットランド
5-6 頭脳をモデル化した研究を進めるエジンバラ大学ナノテク計画
5-7 ベンチャー精神のエジンバラ大学インフォマティックス学部
5-8 テラヘルツを推進するグラスゴー大学
5-9 有機エレクトロニクスの博士養成所を持つインペリアルカレッジ
5-10 プロセスに注力しコラボで実用化早めるウェールズ大学

はじめに

 半導体・エレクトロニクスの技術ジャーナリストである私が英国革新技術のすばらしさに気が付いたのは、1990年代の終わり頃でした。駐日英国大使館の渡邉悦男氏から、「英国からエレクトロニクス企業の一行が来るので取材してみませんか」という案内をいただきました。当時、全く知らなかった英国企業の人たちにCEATEC展示会場でお会いし、インタビューしました。欧州のデジタル携帯電話の規格GSMのモデム技術を持っているTTMcom社、ブルートゥースチップを設計しているケンブリッジシリコンラジオ(CSR)社、有機ELディスプレイ技術を持つケンブリッジディスプレイテクノロジ(CDT)社などの方々が来日しました。話を聞いて、全く新しい革新的な技術を持っていることに大きな衝撃を受けました。
 当時の私は、日経エレクトロニクスアジアという英文雑誌の編集者をしており、誌面でその内容をレポートしました。それまでの経験から米国のシリコンバレーにおける革新技術はよく知っていましたが、英国にも優れた技術、しかも革新的な技術があることを、それまでほとんど知りませんでした。
 欧州には、半導体メーカーのビッグスリーがいました。オランダのフィリップスセミコンダクターズ(NXPセミコンダクタの前身)、ドイツのシーメンス(インフィニオンテクノロジーズの前身)そしてフランス・イタリア合弁のSTマイクロエレクトロニクスです。95年にこれら3社を取材し、レポートしましたが、この3社以外の欧州の半導体メーカーは3~4社しか知りませんでした。
 その後、フリーのジャーナリストになり、改めて欧州半導体企業を調べてみると、企業数の最も多い国は欧州大陸ではなく英国、続いてイスラエルという意外な結果でした。しかも、ファブレス半導体企業(設計だけに注力し、製造は他社に依頼するビジネスモデル)ばかりでした。
 そのような折、2007年の秋に再び渡邉氏から電話をいただきました。英国の半導体協会ともいうべき、NMI(英国マイクロエレクトロニクス協会)の実力者であるジョン・ムーア氏が来日するので会ってみませんか、という電話でした。NMIは日本のJEITA(電子情報技術産業協会)の電子デバイス部会と似たような組織ですが、英国の半導体企業を中心に、1年に十数回、英国各地でセミナーを開き、エンジニア同士の話し合いと出会いを積極的に進めています。このセミナーには半導体のユーザーとメーカー、設計ツールを提供するベンダーなど、多くの関係者が集います。英国は半導体産業の組織ネットワークを形成しつつあるようです。
 NMIの記事を、私が編集長を務める半導体情報専門サイトの「セミコンポータル」に掲載すると、英国企業をもっとたくさん取材してみませんか、と渡邉氏は提案されました。今度は日本から英国企業を訪問し、その最新技術の話を聞くのです。これは面白い話が聞けそうだ、と思いました。今や世界中の携帯電話に搭載されるようになった半導体プロセッサ回路IPをライセンスしているアーム社のすごさは知っておりましたので、むしろまだ無名のベンチャーを訪問させてほしい、と依頼しました。
 このようにして、英国取材出張旅行が2008年2月に始まりました。取材した内容は、セミコンポータルに掲載しました。最初の訪問では、ロンドンで英国政府の方針について伺い、ケンブリッジとブリストル、バースで半導体企業、大学、大学発ベンチャー育成機関などの話を聞きました。大手半導体企業がいない英国がなぜ半導体に力を入れるのか、とても興味深く、そのテクノロジはやはり革新的でした。
 訪問した企業全てが革新的でしたので、全ての企業についてレポートしようと思いました。全ての企業の話を収容するため、「英国特集」という形でセミコンポータルに連載を始めました。その時以来、毎年2月に1週間、英国企業を訪れ、セミコンポータルに記事を掲載しています。
 この本は、セミコンポータルの全面的な協力の下に実現しました。今回、その時の記事を刷新すると同時に、実績を積んでいるアームやCSRなど、有名企業の「いま」を取材し、書き下ろしとしました。さらに、欧州の半導体全体についても書き下ろしました。
 取材への理解とウェブサイトへの協力に対して、株式会社セミコンダクタポータル代表取締役社長の谷奈穂子さんには大変お世話になりました。深く感謝いたします。
 また、駐日英国大使館の絶大なる協力がなくてはこの本は実現しませんでした。特に、貿易・対英投資部のベン・チェソン氏、渡邉氏、小田幸代さん、大阪の英国総領事館の宮松寛有氏、英国NMIのジョン・ムーア氏、スコットランド国際開発庁のスティーブン・ベーカー氏、英国貿易投資総省のチェット・バブラ氏には、取材のアレンジやディスカッションに多大なる協力をいただきました。
 最後に、本の編集、校正、図版などの作成・進行管理などのマネジメントでは日刊工業新聞社の鈴木徹氏にたいへんお世話になりました。改めて皆様に感謝いたします。

2010年10月

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