買い物かごへ

SCIENCE AND TECHNOLOGY
フラックス結晶成長のはなし

定価(税込)  1,728円

著者
著者
著者
サイズ B6判
ページ数 152頁
ISBNコード 978-4-526-06563-7
コード C3043
発行月 2010年11月
ジャンル 化学

内容

フラックス法とは、溶液から結晶を育成する方法のひとつであり、極めて高品質な単結晶を育成することができる。環境調和プロセスとしても期待され、近年、さまざまな分野で応用されはじめている。本書では、このフラックス法に焦点をあて、概要から育成方法のポイントまで、体系的にわかりやすく解説する。

大石修治  著者プロフィール

(おおいし しゅうじ)
信州大学教授(工学部)
信州大学評議員
日本フラックス成長研究会会長
工学博士(名古屋大学)

宍戸統悦  著者プロフィール

(ししど とうえつ)
(前)東北大学准教授(金属材料研究所)
日本フラックス成長研究会副会長
工学博士(大阪大学)

手嶋勝弥  著者プロフィール

(てしま かつや)
信州大学准教授(工学部)
日本フラックス成長研究会常任理事
博士(工学)(名古屋大学)

目次

まえがき

1章 結晶育成とフラックス法
1.1 結晶 
1.2 結晶育成の方法 
1.3 フラックス法の原理と長所 
1.4 フラックス法の歴史 

2章 フラックス法による結晶育成
2.1 フラックスの選択 
2.2 調合物組成 
2.3 フラックス育成実験 
2.4 フラックス結晶育成例 

3章 酸化物フラックスからの結晶育成
3.1 酸化タングステン系フラックス 
3.2 酸化モリブデン系フラックス 
3.3 酸化ホウ素系フラックス 
3.4 炭酸塩および硫酸塩フラックス 
3.5 硝酸塩フラックス 
3.6 まとめ

4章 ハロゲン化物フラックスからの結晶育成
4.1 塩化物フラックス 
4.2 混合塩化物フラックス 
4.3 塩化物フラックスによる非酸素雰囲気での結晶育成 
4.4 フッ化物フラックス 
4.5 まとめ 

5章 溶融金属フラックスからの結晶育成
5.1 溶融金属フラックスからのR-Rh-B-(C)結晶育成 
5.2 溶融金属フラックスからのホウ化物結晶育成時の工夫 
5.3 Sn自己フラックスからの新しいSn含有3元系金属間化合物結晶の育成 
5.4 溶融金属フラックス法の新展開 

6章 フラックス法の応用展開~新規結晶層形成技術~
6.1 容器を使用した結晶層形成技術 
6.2 フラックスコーティング法による結晶層形成技術 
6.3 まとめ 

あとがき

はじめに

 原子やイオンが3次元的に規則正しく配列した単結晶(以下、結晶と記します)は、美しい色や形をもち、その物質の究極の姿(構造)を誇ります。究極の構造は、物質の究極の物性を与えます。実用材料としての機能性結晶は、広く社会に浸透して実力を十二分に発揮し、私たちの生活を便利にしてくれます。また、物質本来の構造や性質を解明するための基礎研究用試料としても、結晶は重要な地位を占めています。
 結晶づくりは、ものづくりの基本であり、基礎科学や工学を力強く推し進めます。結晶づくりの技術は、多くの分野の進展に貢献します。液相からの結晶育成には、融液法と溶液法があります。そのなかで、フラックス法は、無機化合物や金属をフラックス(融剤)として用いる溶液法に属します。過飽和状態の高温溶液から結晶が成長するのです。この方法は、(1)融点よりもはるかに低い温度で結晶を育成できる、(2)成長する結晶は平面で囲まれた自形をもつ、(3)装置は簡便で操作はきわめてやさしい、という特長をもちます。それらの特長は、フラックス法をまさに環境調和型科学技術と呼ぶにふさわしい手法としています。フラックス成長した結晶の例を図に示します。
 科学技術としてのフラックス法は、宝石結晶の育成を目指して19世紀からスタートしました。しかし、大型結晶を育成できる他の方法(ベルヌーイ法)の開発に伴い、20世紀初頭にフラックス法の使用頻度は著しく減少しました。結晶の機能が注目される1950年代に入ると、チタン酸バリウム結晶の育成が契機となり、フラックス法が見直されました。それ以降から現在に至るまで、フラックス法の特長を活かしながら、大型からナノに至る多種類の機能性結晶が育成されています。基礎科学と工学の発展に、結晶材料の開発は必須であり、フラックス法を欠くことはできません。今後、フラックス法の重要性はますます増加するでしょう。
 2006年12月に、フラックス成長と関連科学の学術・技術の向上を目指して、基礎から応用までを研究する「日本フラックス成長研究会」が発足しました。毎年1回、日本フラックス成長研究発表会が開催され、活発な議論が交わされています。毎年2回発行のJournal of Flux Growth (ISSN1881-5316)では、原著論文や解説などの研究成果を発信し続けています。
 本書では、数ある結晶育成法のなかから、フラックス法に焦点を合わせました。おそらく、タイトルに「フラックス」と名のつく世界で初めての書物です。古くから最新に至るまでのフラックス法による結晶育成を紹介しています。本書が、フラックス成長とその関連技術に関心をもつ読者のために役立つことを切に願っています。
 本書の執筆担当は、以下のようです。
 1章 結晶育成とフラックス法(大石修治)
 2章 フラックス法による結晶育成(大石修治)
 3章 酸化物フラックスからの結晶育成(手嶋勝弥)
 4章 ハロゲン化物フラックスからの結晶育成(手嶋勝弥、宍戸統悦)
 5章 溶融金属フラックスからの結晶育成(宍戸統悦)
 6章 フラックス法の応用展開~新規結晶層形成技術~(手嶋勝弥)
 本書の執筆にあたり、長い年月にわたってコツコツとフラックス法を開拓してくださった先達に深甚なる敬意を表します。栄養豊かなその畑に種を蒔き、樹木が成長し、フラックス結晶育成の大きなきれいな花が咲くことを願っています。執筆の機会を与えてくださった日刊工業新聞社出版局書籍編集部の方々に感謝致します。
 
 2010年10月
 大石修治

買い物かごへ