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絵とき「生物化学工学」基礎のきそ

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-06550-7
コード C3043
発行月 2010年10月
ジャンル 化学

内容

生物化学工学はバイオ製品を安定に、安全に、安価に得るための生産技術を体系化したもの。本書は、主に培養プロセスを対象に、実験室規模で得られた研究成果を実用的、工業的規模へとスケールアップするために必要な研究や技術などを事例なども紹介しながら体系的に解説する。また、章末には演習問題を加え、教科書としてより使いやすいよう工夫してある。

種村公平  著者プロフィール

(たねむら こうへい)
1978年 大阪大学大学院工学研究科発酵工学専攻前期課程修了
日立造船株式会社入社、陸機設計所プラント計画部開発設計(砂糖・発酵プラントの計画設計)、同社バイオ事業部主事補(各種発酵プロセスの研究開発)、同社事業開発本部企画部主事(各種廃水処理プラントの研究開発)を経て、1991年より八代工業高等専門学校生物工学科(「発酵工学、培養工学」等を担当)。
現在、熊本高等専門学校生物化学システム工学科教授
博士(工学)

目次

まえがき

第1章 培養システム
1―1 培地  
  (1)炭素源  
  (2)エネルギー源  
  (3)窒素源  
  (4)ミネラル  
  (5)生育因子  
1―2 微生物の生育に影響を与える他の因子  
  (1)温度  
  (2)pH  
  (3)酸素濃度  
  (4)水分  
1―3 培養槽  
  (1)フラスコ類  
  (2)ジャ―ファーメンター  
  (3)生物反応器  
1―4 培養のための基本操作  
  (1)混合撹拌  
  (2)通気  
  (3)培地流入と培養液の流出  
  (4)温度の計測・制御  
  (5)pHの計測・制御  
  (6)溶存酸素濃度(DO)の計測・制御  
  (7)洗浄・滅菌  
  (章末問題)  

第2章 回分培養
2―1 増殖曲線  
  (1)誘導期  
  (2)対数(増殖)期  
  (3)増殖減衰期 
  (4)静止期  
  (5)死滅期  
2―2 比増殖速度と世代時間  
2―3 細胞濃度と基質濃度  
2―4 比増殖速度に影響する因子  
  (1)細胞の種類  
  (2)培地組成と成分濃度 
  (3)培養温度とpH  
  (4)増殖阻害物質  
  (5)溶存酸素濃度  
2―5 Monod式と増殖制限基質  
2―6 基質親和性について  
2―7 その他の比速度  
  (章末問題)  

第3章 連続培養
3―1 平衡と定常について  
3―2 物質収支  
  (1)細胞(菌体)収支  
  (2)基質収支  
  (3)生産物収支  
3―3 ケモスタットとタービドスタット  
  (1)ケモスタット  
  (2)タービドスタット  
3―4 ケモスタットにおける定常値  
  (1)比増殖速度と希釈率  
  (2)基質濃度と細胞(菌体)濃度  
  (3)定常値曲線  
  (章末問題)  

第4章 培養における生産性
4―1 生産性とは  
4―2 連続培養における生産性  
4―3 回分培養における生産性  
4―4 生産性の比較  
  (章末問題)  

第5章 連続培養の応用
5―1 連続培養の問題点  
  (1)純粋培養を長期間維持するのが困難である  
  (2)槽内の均一性を維持するのが困難である  
  (3)系の安定性に問題がある場合がある  
5―2 連続培養の適用例  
  (1)通常の雑菌が利用できない基質を使用する場合  
  (2)通常の雑菌が増殖阻害を起こすような培養生産物が生成される場合  
  (3)特殊な条件下で培養が行われる場合  
  (4)汚染されても問題がない場合  
  (5)馴養操作に利用する場合  
5―3 細胞(菌体)返送を伴う連続培養  
  (1)細胞(菌体)収支と比増殖速度  
  (2)基質収支と細胞濃度  
5―4 活性汚泥法  
  (1)活性汚泥法の指標  
  (2)活性汚泥法の動力学  
  (章末問題)  

第6章 酸素移動
6―1 拡散と混合  
6―2 酸素移動速度  
  (1)分子拡散モデルと拡散速度  
  (2)液境膜における酸素移動速度  
  (3)ガス境膜における酸素移動速度  
  (4)ヘンリーの法則  
  (5)二重境膜モデルによる酸素の溶解  
  (6)酸素移動容量係数(kLa)  
6―3 kLaの計測法  
  (1) 酸素濃度の計測  
  (2)排気法によるkLaの計測  
  (3)排ガス分析法によるkLaの計測  
6―4 kLaと細胞濃度最大値  
6―5 kLaに影響を及ぼす因子  
  (1) 単位実容量当りの気液界面積a  
  (2)液境膜物質移動係数kL  
  (3)kLaを決める要因  
  (章末問題)  

第7章 スケールアップ
7―1 スケールアップとスケールダウン  
  (1)スケールアップ  
  (2)スケールダウン  
7―2 非攪拌通気培養槽のスケールアップ  
  (1)相似形のスケールアップ  
  (2)相似形以外のスケールアップ  
7―3 通気攪拌培養槽のスケールアップ  
  (章末問題)  

章末問題・解答  
索引  

はじめに

 微生物や動植物細胞のもつ機能を利用して特定の物質を生産したり、分解処理したりする場合、これらの細胞を生体触媒としていかに効率良く機能させるかを考える必要がある。生体触媒としては酵素が化学品、食品工業の分野で汎用されるようになった。酵素は基質特異性を有し、特定の反応を触媒するものを選定できれば非常に使い勝手の良い生体触媒であるが、この酵素も微生物などの細胞の生産物であるため、微生物などの特定の細胞を適当な条件下で培養し、その培養液を精製して初めて生産される。
 微生物などの細胞の培養は酵素生産だけでなく、醸造工業、製薬工業、食品工業や排水処理にいたる広範な分野で利用されてきたが、微生物や細胞そのものを生体触媒として利用するプロセスの特徴は、その生体触媒自体が増殖する点にあり、この点が酵素反応と異なる点である。
 本書は高等専門学校の生物工学科での「生物化学工学」の授業で使用するテキストとして編集したもので、微生物などの細胞を培養し、これを増殖させて効率的に利用するために必要な定量的な考え方を解説するものである。定量的な考え方は基本的には数式で表現されるが、本書で扱うのは指数、対数、微積分と簡単な微分方程式までに留めている。
 「第1章 培養システム」では細胞の培養に必要な培地や培養条件についての基本的な考え方、「第2章 回分培養」では微生物などの細胞の増殖のしかたと増殖パターン、増殖活性の表現法および増殖活性に及ぼす環境要因について、「第3章 連続培養」では精度の高い培養条件を探求する手法として用いられる連続培養法の理論、「第4章 生産性」では微生物細胞を生産する培養槽の生産効率(生産性)の定義と連続培養、回分培養における生産性比較、「第5章 連続培養の応用」では細胞返送を併用した基質利用率の高い連続培養法の理論とその応用例として有機性廃水の処理に汎用される活性汚泥法の微生物反応速度論に基づく運転管理の考え方、「第6章 酸素移動」では活性汚泥法等、好気性微生物の培養プロセスで必須要件となる酸素供給についての速度論とこれに基づく培養槽の酸素溶解能の指標kLaの意義、「第7章 スケールアップ」では工業規模にスケールアップする際、特に考慮しなければならない事項について解説する。
 また、各章末尾に章末問題を設け、理解を深めてもらえるようにした。
 「第6章 酸素移動」のなかの一部の図表において、合葉修一先生の著書「生物化学工学」より引用させていただきましたことに深く感謝いたします。また、本書の完成に向けて数々のご援助やご支持をいただいた坂本卓先生、出版に際しご丁寧な支援ご協力をいただきました日刊工業新聞・編集部 天野慶悟様に厚く御礼申し上げます。

2010年10月  種村 公平

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