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実際の設計選書
実際の設計 第7巻
―成功の視点―

定価(税込)  3,888円

編著
著者
サイズ A5判
ページ数 448頁
ISBNコード 978-4-526-06556-9
コード C3053
発行月 2010年10月
ジャンル 機械

内容

製品や事業の成否は、設計者・開発者が持っているフィルター(視点)が適切か否かできまる。本書では、どんな分野でどんな視点が必要か、そしてそこからどう自分の考えをつくり、実際の製品や事業として実現していくか、例を引きながらわかりやすく解説している。第7章では、それぞれの分野で求められる視点を正しく捉え、その視点で物事を判断して成功に至った事例を紹介し、そこから一体どんな視点でものを見たのかそのエッセンスを取り出し、わかりやすく解説する。

目次

はじめに

第1章 成功の視点  
  1.1 成功とは何か  
  1.1.1 成功とは社会に貢献すること  
  1.1.2 物事を成功という側面から見る  
  1.2 成功するために必要なこと  
  1.2.1 成功するための一般則  
  1.2.2 成功の方程式  
  1.3 技術の系譜を読む  
  1.4 成功と社会  
  1.4.1 社会の流れを感じる  
  1.4.2 社会の流れのどこに身をおくか  

第2章 視点の置き方  
  2.1 視点とは何か  
  2.1.1 モノを見るとはどういうことか  
  2.1.2 設計における視点  
  2.2 全体を見る視点  
  2.2.1 誰が全体を見るか  
  2.2.2 まんだら図で全体を見る  
  2.2.3 皆で全体を見る(共有知)  

第3章 全てに共通する必須の視点  
  3.1 構成要素を見つけ構造化する  
  3.2 マイクロメカニズムを考える  
  3.3 マクロメカニズムを考える  
  3.4 全体像を捉える  
  3.5 定量化する  
  3.6 時間軸を入れる  

第4章 成功をめざす誰もが知るべき設計の基本視点  
  4.1 機械設計の基本視点  
  4.1.1 力の流れ  
  4.1.2 応力  
  4.1.3 変形  
  4.1.4 疲労  
  4.1.5 振動  
  4.1.6 動特性  
  4.1.7 熱の流れ  
  4.1.8 空間的関係  
  4.1.9 寸法  
  4.1.10 材料  
  4.1.11 加工法  
  4.1.12 安全  
  4.1.13 環境  
  4.2 システム設計の基本視点  
  4.2.1 システムの捉え方と基本視点  
  4.2.2 データの流れと情報伝達  
  4.2.3 構成要素  
  4.2.4 インターフェイス  
  4.2.5 プログラム  
  4.2.6 状態  
  4.2.7 動特性  
  4.2.8 安全  
  4.2.9 環境  

第5章 社会の要求と技術をつなぐ  
  5.1 考えを作る  
  5.2 考えを構造化して思考展開図を作る  
  5.3 思考展開図で要求機能と技術をつなげる  

第6章 次世代の価値を作る  
  6.1 次世代商品の企画  
  6.1.1 視点の転換  
  6.1.2 事例分析(クラウドコンピューティング)  
  6.1.3 「視点の転換」の方法  
  6.1.4 技術の流れと企画  
  6.2 将来を見通す  
  6.2.1 自動車  
  6.2.2 電機  
  6.2.3 原子力発電  
  6.2.4 システム  
  6.2.5 食糧  

第7章 成功事例の視点に学ぶ  
 A. 新技術
  7.1 戦略主導でエコカーの先駆けとなったプリウス  
  7.2 液晶の可能性を信じて実現した液晶テレビ  
  7.3 若手設計者の思いを実現した本格的な音楽携帯電話  
  7.4 計画時に考えつくしたので電子マネーにまで発展したSuica  
 B. 生産
  7.5 充填のマイクロメカニズムが新しい砂型造型法を生み出した  
  7.6 三位一体の考えで高水準の品質・安全・生産を実現した  
 C. 自然
  7.7 中越大地震でも死傷者ゼロだった上越新幹線  
  7.8 自然を活かし大規模な蓄電システムを実現した揚水発電所  
  7.9 社会の安心を追求して原子力発電所の耐震性を向上させる  
  7.10 ハザードマップと地域密着の
          啓発活動で死傷者ゼロだった有珠山噴火  
 D. 時間
  7.11 驚異的な産業寿命を誇る有田焼  

第8章 新しい時代を創造するために  
  8.1 実践から見た視点の持ち方と考え方  
  8.2 成功事例から学ぶ普遍的な知識  
  8.3 これから目指す社会の姿  
  8.4 新しい時代を創造するために  

おわりに  

索引  

よもやま話
   海外から見た日本の製造業は宝の山
   書き手の意図が完結しない電子メール
   例外処理の考え方が世の中の感覚と合わないことがある
   上位概念を通して機械屋とソフト屋がアイデアを交換する
   「所有から利用へ」という変化はいろいろなところで起きている
   クライアント―サーバモデルは万能ではない
   クラウドコンピューティング時代のセキュリティ
   テンプレートだけでは創造はできない
   デザインと機能のバランス感覚とは?
   ちょっとしたメンタルモデルのズレ
   携帯電話のビジネスモデル(1)
   CAD/CAEへの誤解
   携帯電話のビジネスモデル(2)
   灯台もと暗し
   揚水発電技術のその後
   所変われば品変わる
   それぞれの分野が十分な失敗を経験するには200年かかる??
   水に浮かぶ原子力発電所
   安全設計と品質工学について
   原発の安心を実現するために必要なこと
   窯業を温度の視点で見る
   温度についての有田焼と他分野との共通点

はじめに

本書は1988年以来刊行している実際の設計シリーズ(本編)の第7巻目に相当するものである。第1巻は“機械設計の考え方と方法”、第2巻は“機械設計に必要な知識とデータ”、第3巻は“失敗に学ぶ”、第4巻は“こうして決めた”、第5巻は“こう企画した”、第6巻は“技術を伝える”、という内容のものである。この第7巻は副題を“成功の視点”と名付けた。

 本編に着手したのは2006年9月のことである。初めは、副題を‘技術を作る’と称して、それまでになかった新しい技術がどのように着想され、どのように試され、そして、どのように実用に供されていったかを取り上げようとした。そのとき、具体的に取り上げようとしたのは鋳造で使う新しい砂型造形法、新しいスライドメカニズムを持った携帯電話、長く伝統的な技術として伝わっている有田焼の3つであった。作業を進めるうちに、トヨタ自動車のハイブリッドカーであるプリウスの誕生、シャープの液晶のゼロからの開発、JR東日本のカードシステムであるSuicaの開発などの経緯を取り上げることになった。さらに、これらの作業を行っているうちに、モノの生産として、工場の安全についてを、自然災害への対応として、有珠山の噴火のハザードマップと中越地震での新幹線の脱線を、社会システムとして、神流川の揚水発電と原子力発電所の免震システムなどを取り扱うことになった。
 このように様々な現代の技術課題を取り扱ううちに、第7巻の副題として‘技術を作る’では不十分だと考えるようになった。一方、本実際の設計シリーズの第3巻では副題を‘失敗に学ぶ’として失敗の積極的な意味合いを考えてきたが、世の中では本設計シリーズの最も大きな特徴は失敗を取り扱うことであり、実際の設計シリーズ=失敗学というような見方がだんだんと定着してきた。筆者らのグループはこのような見方が定着するのはあまり好ましいことではないと考えた。なぜなら、技術の真髄は創造にあると考えていたからである。それならば、副題を根本的に変えてしまえ、ということになり、皆で協議した結果“成功の視点”と名付け、ここに書いたような様々な具体的な課題を考察し、さらに、そもそも技術的に成功するとはどういうことで、どうすれば創造を成功という結果で締めくくることが出来るのかを考えることにした。
 本実際の設計シリーズでは‘設計’を考えているが、その基本的な考え方は、設計は機能→機構→構造と進むものであること、それを表現するには‘思考展開図’で示すのが適切であること、また、どのような事柄を考え、検討すべきかを一瞥でわかるようにするには‘まんだら図’が良いこと、などである。そこで、これを実行することにして本の構成を考えていくことにした。その結果、本書の構成は
 視点の見方、考え方として
   第1章 成功の視点
   第2章 視点の置き方
   第3章 全てに共通する必須の視点
   第4章 成功をめざす誰もが知るべき設計の基本視点
   第5章 社会の要求と技術をつなぐ
   第6章 次世代の価値を作る
 成功の事例として
   第7章 成功事例の視点に学ぶ
 最後に新しい時代の創造として
   第8章 新しい時代を創造するために
とすることにした。このようにして、作業をすること約4年、2ヶ月に1度ずつ土曜日の朝から晩まで議論と作業をし、さらに必要ならば別途様々な作業を行って本書をまとめてきた。そしてようやく出来上がったのが本書である。

 本書で想定した読者は次のような人たちである。
(i) 今まで全く企画も立案も具体的な設計もしたことのない人で、新たに企画立案や、具体的な設計をやる立場になった時、どんな事柄をどう考えればいいか知りたいと思っている人
(ii) 大学や大学院などの学生で本物の設計をやることになったとき、どんなことを考え、どんな詳細までを考え尽くさなければいけないかを知りたいと考えている人
(iii) 会社で技術開発や製品の設計をやっている人で、自分のやっている仕事に考え落としがあるのではないかと心配になり、何か参考になるモノはないかと迷い、探している人
(iv) 大学や大学院の教員で、自分で立案、設計をしたことがないが、学生に適切な口出しをしたいと思っている人
(v) 会社の技術系の責任者や会社のトップをやっている人で、自分の会社の方向を定めなければならないとき、何をどう考えればいいか、迷っている人
(vi)会社や国の機関で、会社や国の戦略をどの方向に持っていけば良いかを思い巡らせている人
 このような人たちに是非この本を読んでほしいと考えている。

 この本は、普通の設計の教科書とは全く違った内容になっているが、次に挙げる30人近くの仲間が、若い人ではまだ数年、年を取った人では約50年近くの経験を元にして作ったものである。だから、時間軸が非常に長い観察になっていることが特徴である。
  畑村洋太郎  矢沢 恒治  近石 康司  手塚 則雄  関田 真澄
  原  秀夫  淵上 正朗  水谷 栄二  米山  猛  高田 龍二
  松本  潔  伊藤 泰則  藤田 和彦  足立 光明  一木 克則
  土屋 健介  高橋 宏和  畑中 元秀  藤岡 聡太  辻  直志
  滝  俊介  硯川  潤  秋葉 晃介  田中  文  稲垣 貴祥
  関田 純子

 本シリーズは本書を含め、全部で22冊のシリーズである。そのうち本編は、本書を含め7編である。この7編以外のものは個々の著者が自分の経験を元に自分の考えを開陳した物である。しかし、本編の7編は20数年に渡る議論の蓄積を元に作って行ったものであり、第1巻から第7巻までを通して見ると、技術者の辿る一生が反映している。技術者は、初めはごく狭い部分に正確な知識を持つことが要求される。それが、第1巻、第2巻の“機械設計の考え方と方法”や“機械設計に必要な知識とデータ”として表されている。一方、技術者が自ら判断し、自分で決めて行動すると必ず失敗する。それが第3巻の“失敗に学ぶ”である。以後、第4巻“こうして決めた”、第5巻“こう企画した”は技術者が段々と自分の職種の範囲を広げ、組織の中で上位に上っていき、責任を持って仕事をしていくときに必要になる事柄を取り扱っている。そして、第6巻の“技術を伝える”では、いよいよ一連の技術者として通るべき道を通り、そこで獲得したものを次の人たちにどう伝えるかを取り扱った。そして、第7巻ではこのような全ての活動から抽出される一番大事な知識をまとめたものになっている。このように、一人の技術者が辿るであろう経路を7冊の本の形で表現できているのが大きな特徴であり、筆者たちはそのことを最大の喜びに感じている。読者諸氏もこのことを斟酌され、味わっていただければ筆者たちの望外の喜びである。

 2010年10月28日
[実際の設計研究会] 
代表 畑村 洋太郎 

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