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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい界面活性剤の本

定価(税込)  1,512円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06526-2
コード C3034
発行月 2010年09月
ジャンル ビジネス 化学

内容

界面活性剤は、界面(物質と物質の境界面)に働いて界面の性質を変える物質。食品、洗剤、化粧品といった身近なものから、工業的な利用分野まで幅広く利用されている。本書は、「物質と物質をつなぐ」という現象の面白さをやさしく伝えるとともに、裾野が広い界面活性剤の活用事例を紹介する。

阿部正彦  著者プロフィール

(あべ まさひこ)
1947年 生まれ。
1970年 東京理科大学工学部工業化学科卒業、1972年 東京理科大学大学院工学研究科工業化学専攻修士課程修了。同年 東京理科大学理工学部工業化学科 助手、その後、講師、助教授を経て、1997年 同大学並びに総合研究所界面科学研究部門 教授。その後、総合研究機構先端材料研究センター長、同機構物質界面化学研究部門長などを歴任。
現在、東京理科大学理工学部工業化学科 教授、同大学大学院理工学研究科工業化学専攻 教授、東京理科大学総合研究機構ものづくり・先端計測科学部門長。工学博士、色材協会 会長、日本油化学会 副会長、材料技術研究協会 副会長、日本化学会 理事。

坂本一民  著者プロフィール

(さかもと かずたみ)
1946年 生まれ。1969年 東北大学工学部応用化学科卒業、1971年 東北大学工学部工学研究科応用化学専攻修士課程修了。同年 味の素㈱入社、中央研究所応用研究部第2研究室 室長、アミノサイエンス研究所応用研究部 部長、㈱資生堂特別技術顧問、㈱成和化成取締役研究部長、横浜国立大学 客員教授などを歴任。
現在、千葉科学大学薬学部生命薬科学科 教授、東京理科大学理工学部 客員教授。理学博士。

福井 寛  著者プロフィール

(ふくい ひろし)
1950年 生まれ。1972年 広島大学工学部醗酵工学科卒業、1974年 広島大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 ㈱資生堂入社、香料開発室長、メーキャップ研究開発センター長、素材・薬剤研究開発センター長、特許部長、フロンティアサイエンス事業部長、資生堂医理化テクノロジー㈱社長などを歴任。
現在、福井技術士事務所代表。工学博士、技術士(化学部門)、日本化学会フェロー、東北大学未来科学共同研究センター 客員教授、東京理科大理工学部 客員教授、大同大学情報学部 客員教授。

目次

第1章 界面活性剤ってなに
1 混ざり合わないものを調和する力「身近にある界面活性剤」
2 目立たないけど役立っている界面活性剤「身近なところでも活躍する界面活性剤」
3 界面活性剤の基本的な性質「分子集合体の性質」
4 界面活性剤はどうしてできたの? 「石鹸とともに歩んだ界面活性剤の歴史」
5 界面活性剤の工業化 「さまざまな発明が生まれた」
6 界面活性剤はどのくらい使われているの? 「大量に消費される界面活性剤」

第2章 さまざまなところで使われている界面活性剤
7 衣服が変わる 「衣類の染色や風合いを決める」
8 グルメも納得 「食品に乳化剤として使われる」
9 快適に住むために 「混和剤としての高い性能を持つ」
10 さまざまな彩りに協力 「塗料、インクに使われる界面活性剤」
11 衣料も皿もこんなにきれい 「洗濯や食器洗いの洗剤に利用」
12 紙を作る 「製紙や再生紙製造に利用」
13 美しさへの貢献 「ファンデーションからメイク落としまで」
14 食料自給率を高める 「肥料と農薬で活躍」
15 プラスチックに利用される 「帯電防止や曇りの防止」
16 医薬品の吸収を手助け 「適した量を適した場所に」
17 微生物から私たちを守る 「消毒、抗菌作用」
18 半導体製造には欠かせない 「隠れた情報産業の担い手」
19 泡の意外な使い方 「浮遊して分離する能力」

第3章 界面活性剤の働き
20 まず吸着ありき 「濃度が周囲より増加する現象」
21 溶けないものを溶けたように 「可溶化で安定」
22 優れもののマイクロエマルション 「両連続構造を持つ」
23 水と油が仲良く同居 「水と油が混ざり合う乳化」
24 分散をコントロール 「分散した粒子の安定化」
25 泡を作り、泡を消す 「厄介者の泡を壊す」
26 汚れをきれいに取ろう 「ローリングアップと乳化作用」
27 水も弾くし錆も防ぐ 「防錆剤の活躍」
28 濡れて初めて機能が現れる 「拡張濡れ、付着濡れ、浸漬濡れ」
29 バチバチ君さようなら 「静電気の発生を抑える」
30 滑る? 滑らない? 「潤滑性能の向上」
31 小さな小さなカプセルの話 「人工臓器や接着剤などに利用」
32 生体膜から学びました 「リポソームを作る」

第4章 いろいろな界面活性剤
33 いろいろな界面活性剤 「界面活性剤の分類」
34 生活に欠かせない界面活性剤 「アニオン界面活性剤」
35 リンスも消毒もこなすタイプ 「カチオン界面活性剤」
36 アニオンにもカチオンにもなれる界面活性剤 「両性界面活性剤」
37 どんなタイプとも一緒に使える界面活性剤 「ノニオン界面活性剤」
38 サラサラ化粧品を支える界面活性剤 「シリコーン系界面活性剤」
39 水にも油にも強い界面活性剤 「フッ素系界面活性剤」
40 双子のパワーで効率アップ 「多鎖・多親水基型(ジェミニ型)界面活性剤」
41 大きいことはいいことだ 「高分子界面活性剤」
42 生物が作る界面活性剤① 「リン脂質、リポアミノ酸など」
43 生物が作る界面活性剤② 「高分子タイプおよび糖脂質」

第5章 界面活性剤の作るいろいろな構造とその解析方法
44 マッチ棒細工のような多彩な形 「界面活性剤の作るいろいろな構造」
45 吸着膜を調べる 「吸着膜は超薄膜」
46 ミセルを調べる 「動き回る柔らかい構造」 1
47 液晶を調べる 「整列した柔らかい構造」
48 水和固体を調べる 「整列した硬い構造」
49 水滴はなぜ丸い? 「表面張力の不思議」
50 シャボン玉の色 「光と薄い石鹸水の膜が織りなす色模様」
51 1滴の油で波をしずめる 「単分子膜研究の歴史」
52 濡れの不思議 「濡れと接触角」
53 泡の不思議 「泡立ちと泡もちの違い」
54 にごりの不思議 「サスペンション、エマルション、エアロゾル」
55 生体膜と生命 「2分子膜とリポソーム」
56 粘りを測る 「物質の流動と変形を扱うレオロジー」
57 口の中でとろけるチョコレートの秘密 「構造の安定性や変化を熱で調べる」
58 油と水が混ざると? 「乳化物の作り方、調べ方」
59 油が水に溶ける? 「熱力学的に安定なマイクロエマルション」

第6章 安全・環境面などで進化する界面活性剤
60 界面活性剤の安全性 「リスク情報の共有」
61 環境への負荷を低くする 「生分解性、ジェミニ型、バイオサーファクタント」
62 微生物が界面活性剤を分解 「界面活性剤の生分解性」
63 光が界面活性剤を分解 「界面活性剤の光分解」
64 原油の効率的な回収 「界面活性剤を使ったエネルギー生成」
65 機能性材料を作る 「界面活性剤を鋳型とした材料」
66 温度で形が変わる 「温度応答性界面活性剤の利用」
67 光で形が変わる 「光応答性界面活性剤の利用」
68 界面活性剤がもたらす未来生活 「さまざまな分野で活躍が期待される」
【コラム】
●乾燥した泡 ●目に青葉 ●ロウソクの炎 ●際(きわ)の橋架け ●宮沢賢治とコロイド化学 ●硬い泡(コンクリートや固体の泡)

参考文献
索引

はじめに

 最近、いろいろな場面で「界面活性剤」という言葉を耳にする機会が増えてきました。毎日のように使っている石鹸と洗濯物を洗う合成洗剤とはどこがどう違うのだろう? 一度でもこんな疑問を持たれた方に本書がお答えします。
 私たちが毎日の生活を安心で豊かに営むためには、身だしなみ、清潔、健康、便利、環境という言葉がキーワードであり、その実現のためには界面活性剤という物質の存在(利用)が極めて重要になってきます。このように表現しますと、界面活性剤は洗浄剤であるとイメージされるでしょう。しかし、界面活性剤は身近な製品の中にたくさん使われています。例えば、シャンプーやクリームなどの化粧品の中に、チョコレート、ケーキ、パンなどの食品や医薬品の中にも使われています。
 一方、工業的な利用に目を転じると、古新聞などの古紙の再生にはインクを取り除く脱墨工程が不可欠であり、界面活性剤(脱墨剤)が使われています。また、20世紀中頃まで冷媒や溶媒として大量に使われていたフロンはオゾン層の破壊物質として嫌われ、その代替物質の1つとしても界面活性剤が使われています。さらに、工場や作業現場で働く人の環境をクリーンにするための粉塵防止剤としても使われています。
 海に目を向けると、事故などにより大型タンカーから大量に流出した原油に界面活性剤(流出油処理剤)を散布すると、細かな油滴となることでより分散して油の表面積を飛躍的に大きくし、短時間で分解させることができます。一方、石油備蓄タンクや石油コンビナートの消火システムには、界面活性剤を主成分とする消火剤が組み込まれています。
 また界面活性剤はエネルギー源の確保にも深く関係し、界面活性剤水溶液を注入したマイセラーポリマー攻法を適用すると、探鉱費を別にすれば同じ規模の新規油田の開発に匹敵するほどの大きな価値があるといわれています。
 このように多方面で、かつさまざまな用途で使われている界面活性剤は、これまでに数千種類にも及びますが、今日でも新しい界面活性剤がどんどん開発されています。本書では、古くて新しい界面活性剤をトコトンやさしく解説することを念頭に置きながら、それぞれの筆者が得意とする項目を分担し6章にまとめることにしました。
 第1章は「界面活性剤ってなに」と題して概念的な観点から書かれています。第2章は「さまざまなところで使われている界面活性剤」と題して衣料・食品・土木建築・印刷・農業・プラスチック・電子情報産業などでの利用が書かれています。第3章は「界面活性剤の働き」と題して界面活性剤の機能について書かれています。第4章は「いろいろな界面活性剤」と題して界面活性剤の種類別にそれぞれの特徴が書かれています。第5章は「界面活性剤が作るいろいろな構造とその解析方法」と題して構造とその解析に不可欠な測定法が他書では見られないほどわかりやすく書かれています。第6章は「安全・環境面などで進化する界面活性剤」と題して界面活性剤の安全性・環境への影響、界面活性剤の分解、界面活性剤の有効利用などについて書かれています。限られたページの中ですが、図表、イラストを使うことで最大限の情報を盛り込むことができたと思います。
 本書は、できるだけやさしい説明を心がけたために、あいまいさなどが残っている部分があるかも知れませんが、そのような箇所があればぜひ教えていただきたいと思います。
 また、本書の出版にあたり多くの文献や資料などを参考にさせていただきました。資料を提供していただいた方々に厚くお礼を申し上げます。最後になりますが、日刊工業新聞社の奥村功さんをはじめ関係者各位に大変お世話になりました。ここに改めて感謝申し上げます。
2010年9月   阿部 正彦/坂本 一民/福井 寛

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