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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい膜分離の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06489-0
コード C3034
発行月 2010年07月
ジャンル ビジネス 化学

内容

液体や気体を膜に通して不純物・目的物を濾し分ける膜分離は、水処理や電子産業、食品加工、腎臓透析など多用途に使われ、産業と暮らしを支えている。本書では膜分離の基礎から原理、評価法までを広く紹介。

伊東 章  著者プロフィール

(いとう あきら)

北海道留萌市出身
1982年 東京工業大学理工学研究科化学工学専攻博士課程修了(工学博士)
1983年 新潟大学工学部 助手
1986~1987年 米国・シンシナティ大学膜工学研究センター 研究員
1988年 新潟大学工学部化学工学科 助教授
2007年 新潟大学工学部化学システム工学科 教授
2009年~現在 東京工業大学理工学研究科化学工学専攻 教授

●主な著書
「Excelで気軽に化学工学」(共著)(丸善, 2006)
「分離プロセス工学の基礎」(共著)(朝倉書店, 2009)

目次

第1章 膜分離とその仕組み
1 「水の時代」に膜分離
2 分離膜とはどんなもの?
3 細菌を通さない濾過膜
4 目に見えない細かい粒子を除去
5 圧力をかけて純水を得る
6 荷電粒子を選択的に除去できる膜
7 電気を利用してイオン成分を分離
8 濃度差を利用して成分を分離
9 液体を蒸発させて分離
10 水を通さない素材で分離
11 通りやすさの差を利用した分離
12 逆浸透膜で分離ができる原理
13 限外濾過膜で分離ができる大きさ
14 ガス分離膜の通りやすさ
15 ガス分離膜でふるい分ける

第2章 いろいろな分野で使われる膜分離
16 家庭用浄水器に使われる精密濾過
17 浄水場で使われる精密濾過
18 下水処理に使われる精密濾過
19 果汁の濃縮に使われる精密濾過
20 海水淡水化に使われる逆浸透法
21 電子産業で使われる逆浸透法
22 乳業に使われる限外濾過
23 機能性食品に使われる限外濾過
24 海水の脱塩と濃縮に使われる電気透析法
25 人工腎臓に使われる透析法
26 巧妙な分離を行う生体膜
27 ウラン濃縮に使われるガス分離
28 酸素富化膜でガス分離
29 水素の回収に使われるガス分離
30 エタノール濃縮に使われるガス分離
31 シリコーンゴム膜は分離膜の万能選手

第3章 分離膜の製法と膜モジュール
32 分離膜に必要な膜の厚さ
33 非対称多孔質膜の作り方
34 2つの層を形成する相分離の原理
35 中空糸膜とその作り方
36 多孔質膜の作り方①
37 多孔質膜の作り方②
38 ガス分離膜用の薄膜の作り方
39 逆浸透膜の構造と作り方
40 分離膜に使われる高分子①
41 分離膜に使われる高分子②
42 高温や薬品に強い無機膜
43 有機溶媒に侵されない無機膜
44 スパイラル膜モジュールの仕組み
45 平膜モジュールの仕組み
46 中空糸膜モジュールの仕組み

第4章 分離膜の性能評価法
47 最大の透過流束を得るための膜の選定
48 精密濾過膜の細孔径を推定
49 精密濾過膜を通った細菌の数で判断
50 逆浸透膜は塩の分離性能が基準
51 限外濾過膜はタンパク質の分離性能が基準
52 ガス分離膜は圧力差で性能を図る

第5章 膜分離の透過流束と阻止率
53 膜濾過の透過流束を支配する因子
54 透過流束を支配する浸透圧
55 透過流束を支配する濃度分極現象
56 透過流束を支配するゲル化
57 透過流束を支配するケーク層
58 粒子径により決まるケーク層の抵抗
59 透過流束を支配するケーク層剥離
60 濃度分極が阻止率におよぼす影響
61 阻止率から物質移動係数を求める流速変化法

第6章 膜プロセスの基礎
62 膜濾過プロセスの透過流束
63 さまざまな膜洗浄の方法
64 回分式濃縮操作で特定成分を濃縮
65 回分式濃縮操作での透過流束の低下
66 大型プロセスで使われる連続濃縮操作
67 低分子量の塩や糖類を除去する
68 ガス分離膜モジュールのモデル

【コラム】
●膜分離法実用化ヒストリー
●ミネラルとは
●膜分離の父グラハム
●分離技術と膜分離
●海水淡水化の効率化競争

参考文献

索引

はじめに

 膜分離は化学工学という工学分野での「分離技術」の1つとして位置づけられます。工業的な分離技術には蒸留法、吸着法などいくつかの方法があり、ある分離の目的に対して常に競い合っています。例えば発酵液からエタノールを分離するという目的を達成するために、蒸留法、吸着法、抽出法、膜分離法などの各種分離技術が競っており、その中で条件に応じて最も効率的な技術が実用化されます。
 分離技術は一般に気液平衡などの「自然現象」を分離の原理としているので、本質的な技術的発展はあまり期待できません。しかし膜分離は目的の分離機能を持つ新たな膜を開発すれば、それまで不可能だった分離を実現できる可能性があります。膜分離はこの点で技術的発展の期待が持てる特異な分離技術です。実際、非対称膜の作成による海水淡水化、限外濾過膜によるチーズホエーの処理、ゼオライト膜によるエタノール/水の分離など、新しい分離膜の開発により分離の夢を実現してきた実績があります。
 それらの技術開発の結果、今日多くの応用がなされている膜分離技術ですが、主に工業的な応用で身近なものでないためと、比較的新しい技術のため、膜分離全般を解説した本は未だに少ないのが現状です。専門の化学工学の教科書でも膜分離の章があるものはあまりありません。
 しかし、膜分離技術の今後の発展のためにも、専門以外の技術者に膜分離技術を概説する本の必要性が出てきています。家庭用浄水器など身近な応用もありますので、それを入口として一般の方々に膜分離技術の現状を紹介することも、また新たな膜分離の応用を見いだしてもらうきっかけになるかもしれません。
 今回この「トコトンやさしい」シリーズで、一般にはあまり知られていない化学工学の膜分離技術を一冊にまとめ取り上げていただいたのはたいへんありがたいことと感謝しています。
 筆者はガス分離膜を中心に研究してきたものですが、液系の膜濾過についても経験があります。新潟大学在職中に、我が国の食品分野での膜技術をリードしてこられた渡辺敦夫教授(現MRC(食品膜・分離技術研究会)会長)とご一緒する機会に恵まれ、食品膜技術をご教授いただき、また食品加工の分野でナノ濾過、限外濾過に経験を持つことができました。筆者の膜濾過からガス分離までの広い経験が本書のような膜分離全般を紹介する入門書を執筆するのに役に立ちました。
 本書の構成はユニークです。実際の応用例を前半で紹介し、後半でその工学的基礎・原理を解説するという構成になっています。また、分離膜や装置のイラストを多数掲載しました。これらのイラストにより、膜分離の原理や応用が専門書よりもわかりやすく紹介できました。後半は式やグラフが多くなりましたが、膜分離工学の基礎事項は漏れなく説明したつもりですので、専門書に進む導入としていただきたいと思います。本書の記述の多くは膜工学の標準的教科書である”Membrane Technology and Applications”(参考文献6)を参考にしました。本文の記述やイラストには多くの文献、膜メーカーの資料を参考にしていますが、参考文献として示したのは一部のみであることをお断りしておきます。
 技術は技術者がある夢を実現しようと試行錯誤することで発展します。その夢を実現するための技術的課題(「これとこれを分けたい」)が膜分離技術で解決できるかもしれません。専門外の方に本書で膜分離を知っていただき、膜分離の助けで技術者の夢が実現できることこそ筆者が期待するところです。

平成22年7月 
伊東 章

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