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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいヒートポンプの本

定価(税込)  1,512円

監修
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06468-5
コード C3034
発行月 2010年07月
ジャンル ビジネス 機械

内容

ヒートポンプを使うと、大気や地中、河川、海など自然界にある熱を利用して「熱の移動」ができる。需要側でCO2をまったく排出せず、1の電力で6の熱を得ることができる環境にやさしい高効率な省エネシステムだ。本書はその基本的な仕組みと応用をやさしく解説する本。

射場本忠彦  著者プロフィール

(いばもと ただひこ)

1947年 鹿児島市生まれ。
1972年 北海道大学工学部衛生工学科卒業
1977年 東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程博士課程修了(専門は建築における熱環境および建築設備)、工学博士。
1979年 東京電力入社。1984年まで同社技術開発研究所・土木建築研究室で、建築における省エネルギー、氷蓄熱空調システム、大温度差空調、エアフローウィンドウ、温熱感センサなどの研究開発に従事。
1984年 東京電機大学工学部建築学科講師、
1986年 助教授、
1991年 教授。
2006年 改組により未来科学部建築学科教授。

東京電機大学建設技術研究所所長、工学部第一部長、理事、学長事務取り扱いを歴任。現在、常務理事(新キャンパス創設本部長)。
北海道大学大学院 客員教授(2004年から3年間、寄付講座:地中熱利用システム工学講座)
(社)空気調和・衛生工学会会長(2008~2009年)、同学会技術フェロー。

目次

第1章 ヒートポンプとは何か
1 雪の降る朝 「ヒートポンプはどこにある?」 
2 「熱」を移動させるポンプ 「「低い」ところから「高い」ところへ?」 
3 自然の恵みの有効活用 「太陽エネルギーが起源」 
4 エネルギーチェーンに見る本当の効率性「ヒートポンプこそ高効率な熱利用」 
5 大きなCO2排出量削減ポテンシャル「日本のCO2は今すぐ10%減らせる」 

第2章 広がりを見せるヒートポンプ
6 ヒートポンプのいろいろ 「分類から見るヒートポンプの特質」
7 100℃以下の熱はヒートポンプにお任せ 「ヒートポンプの適用用途と温度帯」 
8 ターボ冷凍機からルームエアコンまで 「冷凍 ・ 空調におけるヒートポンプ機器」
9 空調システムの基本 「まず空調の種類を理解しよう」
10 ヒートポンプが給湯を変える 「給湯におけるヒートポンプ機器」 
11 産業プロセスでもヒートポンプ 「産業プロセスにおけるヒートポンプ機器」 
12 床暖にも、融雪にも、農業にも 「床暖用、融雪用、農業用におけるヒートポンプ機器」 
13 日本では空気熱源が主流 「熱源の違いによる分類」
14 灯台下暗し、足下にも熱がある 「大地もヒートポンプの熱源」 
15 未利用エネルギーを回収しよう 「町には熱エネルギーがあふれている」
16 圧縮機はヒートポンプの心臓① 「圧縮方式の違いによる分類(1)」 
17 圧縮機はヒートポンプの心臓② 「圧縮方式の違いによる分類(2)」 
18 自然界にある水も二酸化炭素も冷媒になる 「冷媒の違いによる分類」 

第3章 ヒートポンプの技術変遷と仕組み
19 ヒートポンプはこうして生まれた 「逆カルノーサイクルの発見」 
20 COPの進化 「15年前の2倍以上の効率」 
21 COPが20を超えた! 「インバータターボ冷凍機の開発」 
22 世界初! 「エコキュート」の開発 「CO2冷媒による給湯機」 
23 ヒートポンプで熱を汲み上げる原理 「これが冷凍サイクルだ」 
24 圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器 「要素部品のメカニズム」
25 四方弁とは? 「冷房と暖房はこうして切り替わる」
26 ヒートポンプに適した冷媒とは? 「冷媒は熱の運び屋」 
27 冷媒の状態はモリエル線図を見よう 「COPがわかる、温度がわかる」
28 空気の状態は空気線図を見よう 「冷媒の熱を空気にバトンタッチ」 
29 ヒートポンプの性能はモータで決まる 「高効率モータを手に入れろ」 
30 熱交換器も高効率化 「材質、形状によって効率は変わる」 
31 冷凍サイクル応用編 「ひと工夫で能力増強」 
32 ルームエアコンができるまで 「設計から生産・検査まで一貫マネジメント」 

第4章 ヒートポンプを取り巻く情勢
33 ヒートポンプ普及実績も世界トップクラス 「ヒートポンプ王国〝日本〟」 
34 ヒートポンプを巡る効率基準 「日本の基準、海外の基準」 
35 日本のエネルギー消費構造とヒートポンプ 「増え続けるのは民生部門」
36 Cool Earth─エネルギー革新技術計画 「ヒートポンプは未来に向けてますます進化」 
37 改正省エネルギー法・工場等判断基準 「省エネ法でもヒートポンプを推進」
38 ヒートポンプを取り巻く国際動向 「EUでもヒートポンプは再生可能エネルギー利用技術」
39 未来開拓戦略におけるヒートポンプ 「政府が認めるエネルギー利用技術」 
40 ヒートポンプは「再生可能エネルギー」利用技術 「エネルギー供給構造高度化法とヒートポンプ」41 建築設備設計基準とヒートポンプ蓄熱システム 「平成21年版「茶本」で改定」

第5章 ヒートポンプにまつわる「誤解」を解く
42 エアコンの運転コストは本当に高いの? 「時代の最先端はヒートポンプ空調」 
43 エアコンは本当に寒冷地では効かないのか? 「ヒートポンプ暖房の課題」 
44 寒冷地でもヒートポンプ 「室外機の霜付きはこわくない」 
45 ヒートポンプはヒートアイランドを抑制できるか? 「ヒートポンプは熱を移動させるだけ」
46 未利用エネルギーはどうしたらうまく使えるの? 「薄いエネルギーをいかに集めるか」 

第6章 蓄熱システムとは何か
47 蓄熱システムとは? 「「蓄える」が高効率のキーワード」 
48 なぜ蓄熱するのか? 「いかに熱源機を高効率運転させるか」 
49 実績が示す蓄熱システムの優位性 「ヒートポンプ・蓄熱システムは総合効率が高い」 
50 負荷平準化の取り組み 「原子力発電所2機分のピークシフト」 
51 何に熱を蓄えるか 「水は顕熱のみ、氷は顕熱・潜熱」 
52 水の性質 「一番身近で、一番特殊な物質」
53 水蓄熱システムの種類 「多種多様な水蓄熱槽」 
54 氷蓄熱システムの種類 「水蓄熱よりも高密度に蓄熱」 
55 広がりを見せる蓄熱システム 「産業分野でも応用される」 
56 蓄熱システムと熱回収ヒートポンプ 「需給の不一致を蓄熱で解決」 
57 温度プロフィールを読めれば蓄熱のプロ 「蓄熱槽効率を読み解く」 
58 蓄熱の効率 「蓄熱槽効率と蓄熱効率」 
59 連結蓄熱槽に多くの槽が必要なわけ 「蓄熱槽の連結で温度成層と同効果」 
60 最適な蓄熱システム設計のために 「蓄熱システム設計の留意点」
61 業務用ヒートポンプ給湯機の設計 「ヒートポンプ給湯も蓄熱システムを活用」 

第7章 蓄熱システムにまつわる「誤解」を解く
62 蓄熱システムによる省エネは難しい? 「重要なポイントを系統図で確認」 
63 蓄熱システムは増エネ? 「熱源機の高効率運転でトータルで見れば省エネ」 
64 水蓄熱システムは水質管理が大変? 「溶存酸素濃度を低減する」 
65 氷蓄熱システムを生かす低温度空調システム 「低温送風空調システムを組み合わせる」 
66 高効率チラーは蓄熱でさらに実力を発揮 「インバータターボ冷凍機と蓄熱の組み合わせ」

【コラム】
●ヒートポンプの歴史 
●冷温熱同時取出しヒートポンプ 
●エコキュートの上手な使い方(その1) 
●エコキュートの上手な使い方(その2) 
●熱源機の大は小を兼ねない  
●蓄熱システムの歴史 
●熱源と蓄熱槽の選定 

はじめに

 日本人が冷たい物を食するようになった歴史を興味深く記載した書物に“冷たいおいしさの誕生(村瀬敬子著:論創社)”がある。この中で東京日本橋三越呉服店のパンフレットに登場した電気冷蔵庫「オートフリゴール」の紹介があるので、孫引きし紹介する。
 『オートフリゴールハ電動冷却機トモ称スベキ機械デ、或ル液体ヲ圧縮シ更ニ之ヲ気化セシメテ其ノ気化熱ニヨリテ外周ノ空気ヲ著シク冷却スルノデアリマス。而シテ一旦気化シタ液体ハ再ビ凝縮シテ貯蔵サレルヨウニ出来テ居リマスカラ機械ノ破損シナイ限リ此ノ液体ヲ注ギ足ス要ハアリマセン。(三越呉服店「家庭用電気器具」、大正13年~大正14年)』
 86年前の広報資料として極めて明確に記載されていることに、驚嘆せざるを得ない。さらに、マリリンモンローの映画にも登場する、扉を開放した電気冷蔵庫の前で涼をとるといった図式となり、「店内冷房中」の看板に誘われるようにして享受した“冷房の有り難み”が、深く国民に浸透していったものと想像する。
 さて、本書の主題であるヒートポンプは、電気冷蔵庫、ルームクーラ、ルームエアコンと原理的には同一で、まさに「オートフリゴール」の紹介文にある通りの動作を行う蒸気圧縮式冷凍機のことである。冷凍機というと、その語感から冷やす機械であるが、冷やすと同時に加熱を伴っていることは、電気冷蔵庫の背面の放熱状態を日頃体験しているところである。「オートフリゴール」の紹介文において、冷却→加熱、液体→気体、気化→液化、凝縮→蒸発として読み替えると、「ヒートポンプ」の紹介文に変身する。一般に、加熱を主目的として冷凍機を用いる場合をヒートポンプ(としての利用)と呼んできており、ヨーロッパでは加熱機のことを意図した文言として認識されてきた。いささか強引ではあるが、冷房機能だけを有するルームクーラを用いて、それまで室内空間を冷却していた室内機を屋外に、それまで外気に熱を捨てていた屋外機を室内に逆設置することにより、機能的には暖房機としての役割を果たす。すなわち、ヒートポンプの由縁となる。もちろん、冷房と暖房の切り替えのつど、室内機と屋外機を置き換えるなどできるわけはない。スイッチ一つで冷暖房を切り替える四方弁の登場により、ルームクーラはルームエアコンに変身し“ヒートポンプ”として市民権を得ている。
 ヒートポンプの効率は入力されたエネルギーに対し、冷却や加熱された熱がどれだけ利用できたかのCOP(成績係数:本文参照)で評価される。暖房や給湯の場合、熱源側(蒸発器側、汲み上げる側、ヒートソース)が高温であるほどCOPは大となる。したがって、大気のみならず地下街の排気や河川水などからの排熱利用も行われている。一方、冷房や冷却の場合、放熱側(凝縮器側、放熱する側、ヒートシンク)が低温であるほどCOPは大となるので、海水や河川水などへの放熱利用の他、外気温度が低下した夜間により多くの冷熱(年間冷房の場合)を製造し蓄熱する「蓄熱式ヒートポンプシステム」が指向されている。
 現在、国の施策として“次世代ヒートポンプシステムの開発”が動き始めている。ただ、とりわけここ10年間のヒートポンプ単体としての効率向上は著しく、実用上の限界に近いとまでいわれている。もちろん、新冷媒の研究や寒冷地向けヒートポンプの技術開発など行う必要性は大きいが、ヒートソースやヒートシンクの見直しや開拓、搬送技術や蓄熱技術による支援、熱融通の方法、人体温熱感を含む省エネルギー化の努力、総合的性能評価方法の提案など、周辺技術面は勿論、制度面を含むトータルシステムとしてのアプローチが求められている。そのような社会的趨勢の中、本書が発行されることは時機を得ており、しかも、財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センターに籍を置かれている方々が最新の知見とともに、日頃より肌で感じておられる“ヒートポンプを説明することの難しさ”を咀嚼(そしゃく)し、原稿をまとめられたことは大変意義深い。本書がヒートポンプやその周辺技術の理解の手助けに少しでも寄与できれば幸いである。
射場本 忠彦

執筆者一覧

内海 一朗 
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 蓄熱技術部長)
 
西尾 敏朗 
(株式会社大林組 東京本店 設備工事部 副部長)
 
大井手 正彦
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 蓄熱技術部部長)
 
岩田 光敏 
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 蓄熱技術部課長)
 
吉川 伸也 
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 蓄熱技術部課長)
 
大嶋 邦彦
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 蓄熱技術部課長)
 
花崎 広隆 
(財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター 業務部課長兼蓄熱技術部課長)


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