買い物かごへ

調達・購買<戦略決定>入門

定価(税込)  2,160円

編著
著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-06478-4
コード C3034
発行月 2010年06月
ジャンル 経営 ビジネス

内容

バイヤーの購買基準(コスト戦略、サプライヤー戦略、契約戦略など)とその評価軸を、規定のものを盲信しないで自分の力で設け、自らの業務とその業績にしっかりと活用するための本。調達・購買の現場プロが練りに練って「10年先まで使える理論本」として作り上げた調達・購買本の決定版。

坂口孝則  著者プロフィール

(さかぐち たかのり):本書の5・6章を担当
調達業務研究家。調達購買マネジメント取締役。大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。調達、購買、原価企画を担当。バイヤーとして担当したのは200社以上。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。メールマガジン「世界一のバイヤーになってみろ!!」執筆者。著書に『調達力、購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』(以上、幻冬舎新書)、『会社の電気はいちいち消すな』(光文社新書)、『激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ』(徳間書店)、『利益は「率」より「額」をとれ!』(ダイヤモンド社)などがある。

倉布 惇  著者プロフィール

(くらぬの じゅん):本書の1・2章を担当
大学院修了後、大手メーカーに就職。同社にて工場の工程改善・生産技術開発・生産システム設計などの生産技術部門や原価企画部門を担当した後、購買部門に異動。さまざまな品目の調達・購買実務の担当を経て、現在は主に原材料を担当。特に木質材料の専門家であり、学術的なことまで精通したバイヤーとして定評がある。調達・購買の実務の他にIPO立ち上げ、グリーン調達などの数々のプロジェクトも経験。調達・購買分野の日本国内での地位向上のために活動を続けている。

四宮知之  著者プロフィール

(しのみや ともゆき):本書の7・8章を担当
大学卒業と同時に大手メーカーに就職。同社にて購買部門に配属となり、事業部を点々と異動。その間、購買システムの立ち上げを二度、コストダウンプロジェクトの旗ふりを二度経験。上下関係とネクタイ嫌い。2005年に購買ネットワーク会に出会い、バイヤーの地位向上のために活動を続けている。購買ネットワーク会元幹事。

牧野直哉  著者プロフィール

(まきの なおや):本書の3・4章を担当
「購買ネットワーク会」幹事。神戸大学非常勤講師。新規サプライヤー開拓、サプライヤーとのリレーション改善、 海外調達のエキスパート大学卒業後、大手重工業メーカーへ入社。 小型発電プラントの輸出営業を担当し、東南アジア、 中国へ進出する日系企業のインフラ整備と、オペレーションの支援事業に従事。その後、資材調達部門へ異動し、機械組立用部品を調達するバイヤーとなる。これまでに担当したサプライヤーは国内外合わせ500社以上。シンガポール、ベトナムでの現地工場立ち上げでは、現地でのサプライヤー開拓の中心的存在となり、ここ数年は一年の1/3以上を、東南アジア、中国等海外で過ごす。 現在は外資系機械メーカーにて、アジア太平洋地域のサプライヤー開拓と、各拠点との資材調達・ 購買システム統一化構築プロジェクトに従事している。ブログ「買うを楽しむバイヤーのブログ~Feel the Joy of Buying」執筆者。

目次

LESSON 1
材料獲得戦略
~市場情報の選別が材料調達の世界を開く
1.材料獲得は情報獲得と同義である
2.材料は再び高騰するのか?
3.短期的な価格変動の捉え方
4.中長期的な価格変動の捉え方
5.資源メジャーの戦略と日本政府の戦略
6.激変する材料調達の中でバイヤーがなすべきこと(1)
 サプライソースの多様化
7.激変する材料調達の中でバイヤーがなすべきこと(2)
 備蓄の確保
8.激変する材料調達の中でバイヤーがなすべきこと(3)
 能動的な材料調達

LESSON 2
マーケット型価格決定戦略
~市場動向が導く本当の購買価格
1.夜のスーパーマーケットで会った女性が教えてくれたこと
2.マーケット価格の決まり方
3.ナフサ関連係数を用いた価格分析と交渉への適用
4.需給バランス指標を用いた価格分析と交渉への適用
5.金属市況における価格分析と交渉への適用
6.市況商品の買い方~当用買いか、まとめ買いか?
7.市況商品の買い方~リスク回避法

LESSON 3
バイイングポジション戦略
~バイヤーの立ち位置で戦略は変わる
1.成功事例が活用できない理由
2.ポジショニングとは
3.ポジショニングの活用ステップ
4.ポジショニング活用の事例(1) 海外調達
5.ポジショニング活用の事例(2) 交渉
6.ポジショニング活用の事例(3) 開発購買

LESSON 4
自社評価戦略
~自社を評価し、自社を評価してもらうことに真剣に取り組む
1.「我々は半分しか理解できていない」という真実
2.「なぜできないの?」と思うバイヤーができていないこと
3.自社評価とは何か?
4.自社評価方法(1) セルフアセスメント
5.自社評価方法(2) サプライヤーからの評価
6.自社評価方法(3) 自社評価とサプライヤー評価の対比
7.評価結果の展開

LESSON 5
調達コスト決定戦略
~バイヤーのためのCVP(損益分岐点)分析講座
1.コスト低減は率より額、利益も率より額を目指せ
2.損益計算書を読みこなせ
3.固定費と変動費とは何か
4.総コスト線と売上線
5.企業の利益はどのように計算するか
6.企業ごとの変動費率・固定費と利益の出方
7.CVP分析が拓く世界
8.CVP分析は調達・購買の必要性を抉り取る
9.非サンクコスト固定費とサンクコスト固定費

LESSON 6
サプライヤー戦略
~統計学を上手に使った調達戦略上の評価軸構築のすすめ
1.なぜ企業は稼ぎ続ける必要があるのか
2.100万個の貯金箱
3.1万円は同じ1万円ではありえない
4.この投資は認めるべきか
5.統計学の基礎が導く新たな世界
6.標準偏差がわからずにリスクはわからない
7.発注数がもたらすサプライヤーのリスク増減
8.なぜ系列発注は優れていたのか
9.価格低減は平均値では測れない
10.競合は本当に正なのか

LESSON 7
契約戦略
~バイヤーのための清く正しい契約書講座
1.契約と契約書
2.契約書はなぜ必要なのか
3.契約書と法律の関係とは
4.契約書をつくるにはどうしたらいいの
5.紛争になったらどうするか
6.弁護士は交渉の専門家だから任せて安心?
7.契約書を超えた購買とは

LESSON 8
貿易戦略
~知らないと損をする、貿易に関する常識と規則
1.貿易という難題
2.危険負担と所有権と決済と
3.輸入の際にかかるコストを忘れるな
4.輸出より輸入は簡単?
5.わかりづらい輸入諸掛
6.関税を知らないと損をする
7.貿易に関わる法律に気をつけろ

はじめに

はじめに

「何かがわかる。だけど、何かがわからない」

 世界数十カ国を巡りながら、さまざまなサプライヤーと交渉していた私に、一つの疑問が浮かびました。調達・購買という仕事にそれまでずっと携わりながら、まだ私は勘や経験のみに頼ってその怪物と格闘していたのです。「材料の調達」「市況品の価格決定」「サプライヤーリレーションシップ」「サプライヤー評価」「調達計画の立案」「見積り分析」「契約の戦術」「グローバルソーシング」……ありとあらゆることを、なんとなく指針を立て、それでいながら大部分を直感に依存していた自分がいました。

 そこから、私はさまざまな書籍を読みあさることになったのです。もちろん、それは書籍に限りませんでした。インターネットや講習会、個人との情報交換等々、さまざまなことを試してみたのです。その過程で学んだこともあります。でも、そのすべてが私の完璧な回答にはなりませんでした。「何かがわかる。だけど、何かがわからない」。

 終わりなき納期交渉を続け、縮まらない目標コストを1円でも近付けようと交渉を続け、品質トラブルに翻弄されながら、週末に私はバイヤー有志4人でささやかな試みを開始しました。それは、これまでの経験を活かし、そして現場で実証を繰り返しながら、調達・購買戦略の理論を確立させることだったのです。杓子定規な計算式だけの理論など役に立たない。だけど、現場にまさに今日も立っている私たちなら、実務に耐えうるまったく新しい理論が構築できるのではないか。その「わからない何か」に形を与え、それを一つの知識体系にまで昇華することができるのではないか。そう私は確信したのです。

 現場を離れた人たちが語る理屈は、私たちには響かない。だけど、理屈なき経験主義も私たちは求めていませんでした。学術的な要素をふんだんに入れつつ、そこに「現場で役立つこと」というフィルターをかけ、一つひとつの理屈を濾過していくこと。そして、その試みは本書という形をとって、みなさんに提示する機会が与えられました。

 本書は、これまでに類書のない真の教科書になっていると自信を持っています。この本の執筆者の全員が現役バイヤーであり、調達・購買の現場において現在進行形で起こっている出来事をベースに、独自の視点で、新たな理論の境地を切り開いているのです。

 そして、本書はこのような特徴を持っています。
・類書にない、「材料獲得戦略」「バイイングポジション戦略」「調達コスト決定戦略」「契約戦略」等の知識を伝達している
・図表を多用し、初学者から(およびベテランまで)理解しやすい構成となっている
・実務に即して書かれているため、明日からの調達・購買業務に変化をもたらす

 また本書は、私たちの「調達・購買私塾」をベースにしたものです。この「調達・購買私塾」とは、共著者の坂口孝則が2008年12月に提案したもので、2009年3月から継続して開催しています。叡智と経験を共有し、互いに成長できる講義であり、日本の調達・購買界で唯一の刺激的でスリリングな場です。これまでの調達・購買に疑問を持っている人たち。知的バイヤーへの一歩を踏み出すことで、現在の調達・購買界の限界を突き破りたい人たち。そんな志を持っているバイヤーは少なくありません。私たちにとって、私塾の開催は、むしろ必然でした。

 私たちの志の行先は、読者をこのような高みに上げることにあります。
・想定読者である28歳から35歳のバイヤーが、他を引き離す自己成長を遂げる
・本書の実践により、3年後には社歴に残る伝説のバイヤーになる
・仕事内容にも変化を起こし、(1)新人教育を任される側になり、その後
 (2)部内コンサルとなり、(3)企業買収(会社を買う)まで携わることができる

 天然資源に乏しく、加工貿易立国として成り立ってきた日本は、そもそも海外から原材料を仕入れないと経済そのものが成り立ちません。そんな国にも拘らず、バイヤーという「買う」ことを生業とする職業があまりにも蔑ろにされているのではないでしょうか。そんな現状を憂い、嘆くだけでなく、変えたいという現役バイヤーの想いがこの本には詰まっています。日々行われている「買う」という行為に、バイヤーとして培ったエッセンスを加え、これまで述べられていない異分野とハイブリッドすることで、具体性を兼ね備えた理論構築を目指しています。

 この本は、私たちが紙上で開催する「私塾」というつもりで書きました。そもそも私塾とは、公的な教育機関とは一線を画し、塾主の想いと、開催主旨に共感する有志者によってつくられたものです。江戸時代後期に活発に活動した日本全国の私塾は、後の明治維新と、それに続く近代日本の発展に貢献する多くの人材を輩出しています。今、多くの企業にとって、調達・購買改革は依然道半ばと言えるでしょう。しかしこの本が、のちの調達・購買界に大きな足跡を残し、偉大なる通過点となることを期しています。
 4名のバイヤーが紡ぎ出した理論を、読者の皆様の普段の仕事に活用していただけることを、心より祈って。

2010年5月 執筆者を代表して 牧野直哉

買い物かごへ