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平均値分析入門

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 148頁
ISBNコード 978-4-526-06485-2
コード C3034
発行月 2010年06月
ジャンル 生産管理

内容

本書で紹介する「平均値分析法」は、管理図の考え方(グラフ的手法)を応用した実験データの解析法。従来の「分散分析法」が主として数値を見て判断していたのに対して、グラフに表示して検定と推定ができ、初心者・初級者でも容易に使いこなすことができる。

前野澄夫  著者プロフィール

(まえの すみお)
1923年生まれ
慶應義塾大学工学部 卒業
藤倉電線(現フジクラ)を経て
茨城大学工業短期大学部(現工学部)教授
日本橋女学館短期大学(現日本橋学館大学)教授
日本規格協会品質管理方式研究会委員
品質管理ベーシックコース(日科技連)講師を歴任
  工学博士
  技術士(生産管理)
共著 「MIL―STD105B抜取手順と抜取表(解説付)」日本規格協会
共著 「MIL―STD105C抜取手順と抜取表(解説付)」日本規格協会
共著 「MIL―STD105D抜取手順と抜取表(解説付)」日本規格協会
共著 JIS Z 9015計数調整型抜取検査マニュアル  日本規格協会
共著 抜取検査演習  日科技連出版社

目次

はじめに

1. 平均値分析の基本的方法とX―管理図との違い  
実施例1

2. 1元配置の実験  
2.1 因子Aの解析  
2.2 最小有意差の領域の求め方  
2.3 最小有意差領域(所望のAの水準基準)  
2.4 母平均の推定  
2.5 分散分析表  
補遺 生データおよび総平方和の分解と図解  

3. 2元配置(繰返しあり)の実験  
3.1 主効果と交互作用効果の図解  
3.2 データの構造から求めた交互作用効果の図解  
実施例2
3.3 交互作用A×Bの解析  
3.4 最小有意差領(所望のAB組合せ基準)  
3.5 交互作用効果A×Bが有意の場合(AB組合せ水準の母平均の推定)  
実施例3
3.6 交互作用が有意の場合と有意でない場合の相違点
(AB組合せ水準の母平均の推定)  
3.7 交互作用A×Bの解析  
3.8 因子AおよびBの主効果の解析  
3.9 最小有意差領域(所望のA,B各水準基準)  
3.10 AB組合せ水準の母平均の推定  
3.11 分散分析表  
補遺 生データおよび総平方和の分解と図解  

4. 2元配置(繰返しなし)の実験  
実施例4
4.1 生データのグラフ  
4.2 因子AおよびBの解析  
4.3 因子Aの最小有意差領域  
4.4 因子Aの母平均の推定  
4.5 分散分析表  
補遺 生データおよび総平方和の分解と図解  

5. 乱塊法(1因子実験)  
実施例5
5.1 生データのグラフ  
5.2 因子AおよびRの解析  
5.3 因子Aの最小有意差領域  
5.4 生データおよび平方和の分解と図解 
5.5 分散分析表  

6. 乱塊法(2因子実験)  
実施例6
6.1 交互作用A×Bの解析  
6.2 因子A,BおよびRの解析  
6.3 因子AおよびBの最小有意差領域
6.4 AB組合せ水準の母平均の推定  
6.5 繰返しのある2元配置と繰返しのない2元配置の反復(乱塊法)との比較  
6.6 分散分析表  
補遺 生データの分解および総平方和の分解と図解  

7. 直交配列表による実験  
7.1 直交配列表とは  
7.2 2水準の実験  
7.3 推 定  
7.4 平方和の求め方  
7.5 平均値分析と分散分析  

8. 直交配列表(L8)による実験  
実施例7
8.1 交互作用と誤差の列の求め方  
8.2 要因の割付と基本統計量および誤差分散の求め方  
8.3 平均値分析  
8.4 分散分析表  

9. 直交配列表(L16)による実験  
実施例8
9.1 要因の割付けと基本統計量および誤差分散の求め方  
9.2 平均値分析  
9.3 分散分析表  

付録  
【1】 平均値分析において,UDL,LDLを求める式について  
【2】 平均値分析用係数h(α;κ,f)はどのようにして求めたか  
【3】 平均値分析と分散分析との関係  

索引

はじめに

 絵は、人類の発生とともに自然発生した。古代人の情報伝達はもっぱら絵であった。文字の起源はたかだか3,000年に過ぎないと言う。絵は生まれながらにして誰にでも理解できるという強みを持っている。我々は異国を旅するとき地図なしには歩けない。明治の初期には、文字の読めない人々にも分かるように、軽犯罪の法律を絵によって周知させたと言われる。今日では、おびただしい情報も絵、映像、写真、グラフ化によって一目して分かる。

 ヒストグラム、パレート図、特性要因図、管理図、散布図などQC手法のめざましい普及もグラフ化なしには考えられない。ところが,分散分析になると初心者にとっては分かり難い。一般にグラフ化されていないからと思われる。そこでE.R.Ott(1967)はグラフによる解析法―平均値分析―を開発した。この手法は、管理図の考え方を実験データの解析に拡張したもので分かりやすい手法である。分散分析と平均値分析は両者共に、母平均の間に違いがあるかどうかを検定している。分散分析は、平均値間の分散と誤差分散の比によって、平均値間に差があるかどうかを検定する。これに対し平均値分析は、直接平均値をグラフ化し、平均値間の違いは見かけ上なのか、それとも真の違いなのかの領域を図解する。その後、E.G.Schilling(1973)、P.R.Nelson(1993)は、分散分析によって解析される手法のほとんどが平均値分析で解析できることを示した。

 E.G.Schillingは、彼の論文においてE.R.Ottの業績について次のように讃えている。「グラフによる解析法―平均値分析―以上にShewhartの霊に対し手向けの言葉を与えるものはないであろう。彼はShewhartの管理図を実験データの解析に適用するに当たって、合理的な拡張と理論的根拠を与えた。また、統計的有意性と同時に工学的意味を与えた」。E.G.Schillingの平均値分析に関する論文は、1974年ASQCの年次大会においてBrumbaugh賞が与えられている。

 分散分析はどの要因が有意なのかを示すだけであるが、平均値分析はどの要因のどの水準、または水準組合せが有意かを示す。

 H.Scheffe(1947)は“分散分析は犯罪の存在を教えるだけであるが、管理図は同時に犯人の隠れ家も教える”と言っている。管理図はそのまま平均値分析に置き換えることができる。

 平均値分析は、平均値をグラフ化して因子の水準間の効果を直接比較する。そのため水準による上昇、下降あるいは曲線等の傾向や水準の相対的大きさが一目して分かる。

 グラフ化は分散分析においては補助的な手段であるが、平均値分析においてはメインな手段である。

 分散分析と平均値分析との検定結果は、ほとんどの場合同じである。ただし、分散分析は平均の均一性から離れているすべての水準に対して鋭敏である。これに対し、一つの水準だけが平均の均一性から離れている場合、すなわち異常値の検出力は平均値分析の方が優れる。E.R.Ottは、“多くの工業実験においては有意な因子の水準または因子の組合せ水準を検出したい場合が多い。この場合の検出力は平均値分析の方が高い。”と言っている。

 本書の目的は、初心者のために実施例を用い平均値分析を分かりやすく解説することにある。また、その結果を分散分析と比較する。このことは、平均値分析を行った後に分散分析を行わなければならないという意味ではない。両者は共に独立した手法であるからである。分散分析を行えばどのような結果になるかの比較である。

 平均値分析は、実験誤差が求められれば容易に解析できる。

 したがって、実験誤差の求め方さえ分かれば、その背景を知らなくても容易に解ける。しかし、本書では「補遺 生データおよび総平方和の分解と図解」をその背景として各章の末尾に解説する。ここには、初心者にとって分かり難い実験データの分解(データの構造)についても図解する。これらをすべて具体的な数値を用いてグラフ化する。「分けることは分かることだ」という。分解することによって、ブラックボックスの中味が明らかになる。総平方和は要因間平方和と誤差平方和に分解できる。このことは、一般に数式によって示されるが、初心者には分かり難い。本書ではこれを数式によらないで、具体的な数値によって分解できることを示して図解する。繰り返しをランダムに入れた場合の2元配置と、繰り返しを乱塊法で入れた場合の2元配置の比較についても、これらの図解は初心者にとって役立つものと思われる。総平方和の分解は分散分析の基礎をなすものであり、これから分散分析が行えることを示す。

 一般に交互作用の有無の概念として、2つの因子の組合せ水準のデータの平均値のグラフが用いられている。本書では具体的な数値でこのデータを分解し、交互作用効果そのものを詳細に図示する。交互作用のある因子組合せ水準の平均値は、交互作用を無視した因子組合せ水準の平均値の部分と交互作用効果の部分に分解できる。具体的な数値でそれらを図解し物理的意味を明らかにする。また、交互作用の検定としては、2つの因子の組合せ水準のデータの平均値のグラフの傾き度の比較による方法と、交互作用効果そのものを取り出して解析する方法がある。前者の方が直感的に分かりやすい。

 なお、最大値、または最小値を基準にした最小有意差領域を図示する。これによって所望の値と有意差がない水準、または水準組合せがあるかどうかが一目して分かる。

 平均値分析用係数はどのようにして求めたか、また、平均値分析と分散分析との間にはどのような関係があるか等については、付録に記載した。

 しかしながら、この付録の理解がなくても平均値分析を行うには一向に差し支えない。このことは管理図の数理を知らなくても、管理図を自由に使うことができるのと全く同じである。我々は、車を運転するのに熱力学の知識を必要としない。車の運転方法さえ会得すれば、運転に不自由を感じることはない。

 付記 平均値分析計算表の数値の桁数については、有効数字以上に多い桁数になっている。ただし、桁数の少ない数値で表示してあるのは、例えば割り算の計算で8桁以内で割り切れた場合であって、最終桁を超える「0」の表示(8桁以内)を省略してある。

 本書について、ご検討ご助言いただいた安部季夫(元)埼玉工業大学教授、赤尾洋二(元)山梨大学教授、荻原允隆(元)群馬大学教授に厚く感謝いたします。

 2010年3月
 前野 澄夫

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