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ベテラン技術者が教える
「熱処理」現場ノウハウ99選

定価(税込)  2,484円

著者
サイズ A5判
ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-06475-3
コード C3053
発行月 2010年05月
ジャンル 金属 機械

内容

熱処理、一見うまくできているようでも、実際にはうまくいっておらず後からトラブルに見舞われることが多い。本書は熱処理にまつわるさまざまなポイント・ノウハウを現場で問題解決に苦労したものを中心に豊富な用語やワンポイント解説で学んでいく実務書。

坂本 卓  著者プロフィール

(さかもと たかし)
1968年 熊本大学大学院修了
同年三井三池製作所入社、鍛造熱処理、機械加工、組立、鋳造の現業部門の課長を経て、東京工機小名浜工場長として出向。復帰後本店営業技術部長。
熊本高等専門学校名誉教授
(有)服部エスエスティ取締役

工学博士、技術士(金属部門)、中小企業診断士
著 書  『おもしろ話で理解する 金属材料入門』
     『おもしろ話で理解する 機械工学入門』
     『おもしろ話で理解する 製図学入門』
     『おもしろ話で理解する 機械工作入門』
     『おもしろ話で理解する 生産工学入門』
     『トコトンやさしい 変速機の本』
     『トコトンやさしい 熱処理の本』
     『よくわかる 歯車のできるまで』
     『絵とき 機械材料基礎のきそ』
     『絵とき 熱処理基礎のきそ』
     『絵とき 熱処理の実務』
     (以上、日刊工業新聞社)
     『熱処理の現場事例』(新日本鋳鍛造協会)
     『やっぱり木の家』(葦書房)

目次

はじめに  

第1章 熱処理の概念
1―1 熱処理とは  
 (1)概念  
 (2)熱処理を制御する要素  
 (3)熱処理対象の鉄鋼  

1―2 鋼の選定  
 (1)熱処理に使用する鋼  
 [事例1] 機械構造の部材にSS400の板材を使用、焼ならしを指示  
 [事例2] 靱性を優先する鋼の焼ならし  
 [事例3] 保安金物に対する焼ならし  
 [事例4] 車軸に中C鋼を選定する理由  
 [事例5] 図面の指示  
 [事例6] H鋼の購入と熱処理の把握  
 [事例7] 軸の指示硬さHs47±3、使用材SCM435  
 [事例8] 土砂搬送用コンベアのシューに使用する耐摩耗材の選定  
 [事例9] 軸S40C材の焼入れ焼戻し  
 [事例10] 軸の調質における2度焼戻し、使用材SNCM439、指示硬さHs42±3  

第2章 一般熱処理
2―1 焼なまし  
 (1)完全焼なまし  
 (2)中間焼なまし  
 (3)球状化焼なまし  
 (4)均質化焼なまし  
 [事例11] タイボルトの焼入れ焼戻し、使用材S35C、指示硬さHs37±3  
 [事例12] 再焼入れ時の焼なまし  

2―2 焼ならし  
 [事例13] 焼ならし温度と結晶粒の成長  
 [事例14] 噴霧の利用と土間の改善  
 [事例15] ワンリンクの打ち疵  
 [事例16] 大型ボスの500℃引き上げ、使用材SCW450  
 [事例17] 溶接品の焼ならし  
 [事例18] 鋳鋼製炭車用車輪の焼ならしと耐摩耗性  
 [事例19] 購入材の組織と仕様  

2―3 焼入れ  
 [事例20] 鍛造品の接線キーの焼入れ、使用材S48C、Hs50±3  
 [事例21] 軸材の吊環の設定と焼入れの姿勢  
 [事例22] 歯車ブランクの調質  
 [事例23] ローラーの質量と焼入性  
 [事例24] 肉厚変化が大きいローラーの焼入れ、使用材はSCM445、指示硬さHs55±3  
 [事例25] 肉厚変化が大きい焼入れ対策  
 [事例26] 減速機出力軸の折損事故と曲がり直し  
 [事例27] ローラー支えカップの焼入れ  
 [事例28] 軸の焼入れ前の形状、使用材S55C、指示硬さHs37±3  
 [事例29] 鋼管の焼入れ  
 [事例30] リングの焼入れ、使用材SCM445、指示硬さHs43±3  
 [事例31] 受皿の硬さ測定、使用材SCMn3、凹みの指示硬さHs50±3、1ロット400個  
 [事例32] 切断用カッターのプレス焼入れ、板厚1.2mm、使用材S55C、指示硬さHs60±3、100枚  
 [事例33] 石炭掘削機械カッターのスプライン付伝動軸の焼入れ、使用材SNCM630、指示硬さHs50±3 

2―4 焼戻し  
 (1)低温焼戻し  
 (2)高温焼戻し  
 (3)中間焼戻し  
 (4)保持時間  
 [事例34] パワーショベルのバスケット用爪の焼入れ、使用材SNCM439、指示硬さHs70±3、1ロット50本  
 [事例35] 歯車研削割れ  
 [事例36] 不完全焼入れと焼戻温度の調整  
 [事例37] 石炭掘削用カッターの出力軸、使用材SNCM616、図面指示Hs45±3  

第3章 高周波焼入れ
3―1 使用鋼と前処理  
3―2 焼入れ深さ  
3―3 焼戻しと残留応力  
 [事例38] スプリンクラーの噴射孔  
 [事例39] ラックの焼入れ、使用材S45C  
 [事例40] 軽量車両用ドライブシャフトの高周波焼入れ  
 [事例41] 受皿の高周波焼入れ  
 [事例42] 大型鋳鋼歯車の歯の焼入れ、使用材SC450、歯部の硬さHs70、歯車外径1m800cm、歯のモジュール16  
 [事例43] 大径ピンの外周焼入れ  
 [事例44] 肉厚変化がある部品の焼入れ  
 [事例45] ハスバ歯車の全体一発焼入れ、使用材S35C、歯部の硬さHs70  
 [事例46] 小径ピン頭を高周波誘導で焼なまし、1日1000本処理  
 [事例47] 扇歯車の高周波焼入れ、使用材S45C、歯部Hs70、1日100個  
 [事例48] 打抜きシートの焼入れ、1ロット350個  
 [事例49] ピストンロッド頭部の孔の高周波焼入れ、使用材SC35C、Hs70±3  
 [事例50] 孔の角形スプラインの高周波焼入れ  
 [事例51] 歯車全体一発焼入れの硬化層パターン  
 [事例52] カムシャフトの高周波焼入れ、使用材SCM415、Hs80  
 [事例53] ウォーム軸の高周波焼入れ、指示硬さHs70±3  

第4章 浸炭焼入れ
4―1 使用鋼  
4―2 浸炭と焼入れ  
4―3 サブゼロ処理と焼戻し  
4―4 浸炭焼入れの品質管理  
 [事例54] カムシャフトの浸炭焼入れ  
 [事例55] ピストンの浸炭と水焼入れ、使用材S09CK、Hs65±3、1ロット50個  
 [事例56] 歯車軸の浸炭焼入れ、使用材SNCM616  
 [事例57] 浸炭防止剤について  
 [事例58] 歯車軸の歯の浸炭硬化層深さ3mmを要求、使用材SNCM415  
 [事例59] 曲がり歯傘歯車の浸炭焼入れ  
 [事例60] 直歯傘歯車(ギア)の浸炭焼入れの変形、使用材SCM415  
 [事例61] 歯車軸(ピニオン)の曲がりと加工方法  
 [事例62] クラッチ歯車の歯端面欠けの対策、使用材SCr415  
 [事例63] 異なるモジュールを持つ歯車の浸炭焼入れ、使用材SCM415  

第5章 ガス窒化
5―1 ガス窒化の理論と方法  
5―2 使用鋼と調質  
5―3 特徴  
5―4 ガス窒化の欠点と対策  
5―5 管理  
 [事例64] キャリアのガス窒化、使用材FCD500  
 [事例65] 遊星歯車のガス窒化  
 [事例66] インペラのガス窒化  
 [事例67] 大モジュール歯車のガス窒化と面圧強さ  
 [事例68] 摺動ガイドシューのガス窒化  
 [事例69] Alバー材の押し出し用金型ノズル部のガス窒化  
 [事例70] カッターのガス窒化  
 [事例71] カムシャフトのガス窒化、SACM645材の白層対策  
 [事例72] 油圧シリンダー用ピストンロッドの折損  

第6章 実用鋼の熱処理
6―1 工具鋼  
 [事例73] 撹拌羽根の脱炭割れ、使用材SKD11、120個  
 [事例74] 工具鋼の無酸化焼入れ、使用鋼Special K  

6―2 高速度鋼  
 [事例75] バイトの焼入れ、使用材SKH2  

6―3 ステンレス鋼  
 [事例76] 鋳鋼のオーステナイト系ステンレス鋼の水靱処理  

6―4 軸受鋼  
 [事例77] 旋回用大型軸受の内輪外輪の焼入れ  

6―5 ばね鋼  
 [事例78] 皿ばねと弾性、1000個以上の多量品  

6―6 高Mn鋼  
 [事例79] ライナーの水靱処理、500~600個の量産品  

6―7 鋳鉄  
 [事例80] 摺動用ベッドの中間焼なまし  
 [事例81] ベッドの高周波焼入れ、使用材FCD500  
 [事例82] キャリアの焼入れ、使用材FCD600  

6―8 鋳鋼  
 [事例83] キャタピラ(履板)の調質、単重15~25kg、月産1000個を超える量産品  
 [事例84] タイヤの高周波焼入れ、使用材SC480  

第7章 熱処理の管理
7―1 教育訓練  
 [事例85] 熱処理技能士の資格取得  
 [事例86] スキルアップ  
 [事例87] 講習会への参加  
 [事例88] 作業基準書の作成  
 [事例89] 検査と記録  

7―2 設備  
 [事例90] 槽内への落下対策  
 [事例91] 浸炭炉の撹拌羽根の切損  
 [事例92] ショットピーニング機の保守  
 [事例93] 搬送設備の検討と自動搬送  
 [事例94] 省力化と無人運転  

7―3 原価管理  
 [事例95] 市況の把握と原価計算  
 [事例96] 突発停電対策  

7―4 安全  
 [事例97] 工場内の安全対策  
 [事例98] ガス窒化炉の安全対応  
 [事例99] ガス窒化炉の自動化  


おわりに  

索引

はじめに

 本書は現場で発生した問題解決に苦労した忘れられない経験と、高専に奉職して研究を重ねた成果および現在実施している工場指導の結果をまとめて、実体験の事例として参考に供した。紹介を進めていくうちに、どの事例でもそのとき日夜苦労した場面が新鮮に蘇ってきた。現場で問題が生じるたびに、その解決のため全身で没頭して取り組んだ。これらの事例は時を超えても皆様に参考になるはずである。技術や自然科学は時を左右しないからである。

 問題の解決のためには1つひとつをよく観察することが最も重要である。観察すると物事の本質がわかってくる。その分析を行って丹念に原因を1つずつ潰していくことにほかならない。その結果、体験したことがのちのち個人の技能や技術の蓄積となり、個人の技量が集合して社内のノウハウを確立することになる。経験と対策は個人の中に収めることなく、詳細に記録を残すことである。後年、誰もがその記録を読み理解すれば、その上に重ねて新しい経験を積み上げることができる。

 熱処理技術は縁の下の力持ち的存在である。問題が生じると設計も営業も、良くも悪しくも熱処理工場に解決策を依頼する傾向がある。第三者から見れば、熱処理はその意味でベールに包まれた技術のように感じるかも知れないが、そこには理論が存在している。しかし、問題の発生は熱処理工場にだけ発生するものではない。設計、素材、前後の加工、組立など全工程に渡っているし、熱処理工場は各部門といつも綿密に連携しなければならない。それが筆者の望む熱処理工場とその他の部門の連携であり接点である。

 事例の中には解決に至るまでの熱処理技術と、関係する相手の接点を何度も説いている。
熱処理工場はある意味では損な部門である。一般に、たとえば熱処理したあと変形が生じると全部が熱処理工場の責に帰すような傾向が見られる。しかし、変形、歪み、曲がりなどは熱処理技術以外にたくさんの要因で構成されている。熱処理技術はその中の1つであることを理解して欲しい。

 熱処理は機械加工のように形状を変化させるわけでもない。熱と冷却の制御あるいは操作で鋼の中身を有効に変換する技術である。その現象から言えば、外部から熱処理の品質を判断できない。熱処理は鋼内部の信頼性を有する技術といえる。

 本書で紹介した事例を参考にして戴き読者の皆様が技能や技術をますます向上されることを念願する。

2010年5月
坂本 卓

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