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知らなきゃヤバイ!
半導体、この成長産業を手放すな

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06456-2
コード C3034
発行月 2010年04月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

日本で半導体産業が危機的な状況に陥っている中、世界の企業はファブレス、ファウンドリ、IPベンダーなど、分業構造の新しいビジネスが続出している。「今、半導体産業という世界的な成長産業を手放したら、日本の産業界は取り返しのない選択ミスをすることになる」

津田建二  著者プロフィール

(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長
1972年 東京工業大学理学部応用物理学科卒業
同年 日本電気入社、半導体デバイスの開発等に従事。
1977年 日経BP社(当時日経マグロウヒル社)入社、「日経エレクトロニクス」、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集長、シニアエディター、アジア部長、国際部長など歴任。
2002年10月リード・ビジネス・インフォメーション(株)入社、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。代表取締役にも就任。2007年6月退社。

現在、英文・和文の技術ジャーナリスト。30数年間、半導体産業をフォローしてきた経験を生かしセミコンポータル編集長を務め、ブログや独自記事(www.semiconportal.com)において半導体産業にさまざまな提案をしている。講演活動も年に数回、海外にも年に数回、企業を中心に取材にいく。この他、米Semiconductor International誌のAsia Contributing Editor、マイコミジャーナルにて連載「カーエレクトロニクス」を受け持つ。

目次

Chapter 1 半導体は、実は成長産業 ▼▼▼▼

01 世界半導体市場統計は現実を示す
02 シリコンはいつまでも増え続けている
03 シリコンは安定した品質の良い材料
04 半導体製品の広がりは続く

Chapter 2 日本の半導体だけが成長が止まっている ▼▼▼▼

05 かつては世界のトップにいた
06 米国はどうやって復活を遂げたか
07 日本のシェアが落ち続けた原因は何か

Chapter 3 世界は半導体を成長産業と位置付けている ▼▼▼▼

08 世界は水平分業で成長
09 これまで存在しなかった国にも半導体産業が誕生
10 マーケット重視で成功したマイクロン、サムスン
11 半導体産業のない国で半導体を研究開発
12 英国で続出する半導体ベンチャー企業
13 半導体産業の高まりは水平分業にあり

Chapter 4 ムーアの法則が水平分業を促進 ▼▼▼▼

14 半導体の設計も製造も複雑
15 半導体を作る工程にはさまざまな企業が参加している
16 分業するメリットは多い
17 分業化する企業も続出
18 なぜ小さなベンチャーが大手半導体に勝てるのか

Chapter 5 半導体産業の新しい流れ ▼▼▼▼

19 転換期を迎えた半導体産業
20 半導体にソフトウエアを埋め込む
21 ハードウエアだけの電子回路の設計が激減

Chapter 6 世界の半導体産業は組み込みシステムでリード ▼▼▼▼

22 組み込みシステム全体はアナログも加わる
23 組み込みシステムで差別化を図る
24 MEMSは単体では価値は少ない

Chapter 7 半導体はなぜこれからも成長するのか ▼▼▼▼

25 太陽電池やLEDも半導体ダイオード
26 太陽エネルギーを効率よく作り出すのも半導体
27 ヘルスケア分野は半導体がカギを握る
28 電気自動車の半導体、大きな市場を期待
29 スマートグリッド、環境配慮も半導体ならでは

Chapter 8 新しいビジネスモデルを活用 ▼▼▼▼

30 従来の設計・製造のモノづくりからの脱却
31 アーム社、ライセンスとロイヤルティが収入源
32 クアルコムの特許戦略
33 日本没落の原因は結局、経営判断ミス
34 成長のカギは変化への対応力

半導体とは、半分導体・半分絶縁体の不思議な材料/トランジスタはえらい/デジタル時代なのになぜアナログ技術がもてはやされるの/半導体経営に求められる、強いリーダーシップ/台湾のファブレス産業も急速に発展中

はじめに

 なぜ日本の半導体産業の低落傾向が続き、復活させるために何が必要なのか、というテーマをここ十年、考えてきました。技術ジャーナリストとして、半導体産業、エレクトロニクス産業を数十年見てきた経験をもとに、日本を海外の視点で見るということで解が得られないかと考えました。私は、1992年からアジア向けの英文雑誌を編集するようになり、アジアの取材とそれまでの米国での取材などから、グローバルな視点で日本を見るということをやってきました。この視点は、2002年に外資系出版社に移り、米国の技術編集者や技術者と直接話す機会が増えただけではなく、英国や中国・アジアの編集者とも話をするような環境に恵まれたことで、さらに深まりました。

 現在は、セミコンポータルという半導体業界を中心とするウェブサイトの編集ジャーナリストをレギュラーで担当しており、海外の人たちとお話をする機会はさらに増えました。アメリカやイギリス、ヨーロッパに行く場合には1回の出張で数十人のエンジニアやマーケティング担当者と話をします。海外から日本に来る時に必ず立ち寄ってくれる海外の友人もできました。非公式にアメリカ人やイギリス人が今何を考えているのか、生の声を聞くことができます。

 それらの取材を通じて、半導体産業と組み込みシステムとの関係がはっきりと見えてきました。微細化、ムーアの法則、メモリービジネス、ASICビジネス、コンピュータの動向、無線通信の動向、ワイヤレス技術の動向、アナログ技術の動向、デジタル設計技術の動向、製造プロセス技術、デジタル家電の動向、カーエレクトロニクス、常に技術の先頭を行く計測器技術の動向などから、半導体産業が大きく変化しているのが見えてきました。

 そこで、半導体産業が転換期に来ており、その変化にいち早く対応できた企業が成長を遂げ、対応できていないところが遅れているという状況について1~2年、いろいろな講演会でお話してまいりました。それは、半導体技術が設計も製造もすべて複雑になり過ぎたということです。加えて、組み込みシステムと呼ばれる一種のコンピュータシステムがすべての電子機器に使われるようになり、半導体は単なるハードウエアからソフトウエアまでも採り込まざるを得ない状況になってきました。そこで、強い部分をより強く、弱い部分は外から購入するといった、分業化が不可欠になってきました。海外の半導体産業は分業化によって成功を遂げてきています。

 一方、そのような状況のもとにいきなり襲ってきたサブプライムローン問題とそれに伴うリーマンショックによる世界の金融不況が、半導体の世界にも大きな影響を及ぼしました。新聞は電機各社の赤字の原因を「半導体が悪いから」、「半導体が大赤字を生んだ」と書き立て、半導体産業を悪者に仕立てるストーリーができあがっていました。

 私は「半導体は本来成長産業なのに、日本の半導体が悪いからといって半導体産業全てが悪いという書き方は事実ではない」と思っていました。実際、世界の半導体を取材すると、不況が来る前は成長しており、10~30%の営業利益率は確保していました。不況の真っ最中でも赤字になる企業はほとんどありません。世界の半導体が成長しているのに、なぜ日本の半導体だけが成長していないのか、むしろこの点に着目しました。

 そのような折り、日刊工業新聞社の鈴木徹氏に出会い、本の執筆を依頼されました。私は半導体産業の動向を見てきて、それを記すことができる素晴らしい機会に恵まれたと思いました。半導体は未だに成長産業である、しかし日本の半導体だけが成長していない、この2点について書きたいと思いました。今の半導体産業の状況からして、下手をすると日本の電機産業経営者は本来、成長産業であるはずの半導体を手放すかもしれない、という怖さを感じました。半導体を手放すと日本には未来がありません。これは絶対に手放してはいけないことです。

 ですから、この想いを本のタイトルにしました。さらに成長するために世界の半導体企業はどのようにして水平分業化に取り組んでいるかを描き、日本の半導体産業が成長するためのヒントにしました。半導体産業を発展させるために、新しい動向、すなわち組み込みシステムとSoCの関係やASICとの関係をしっかりととらえることが重要で、水平分業化はその解の一つです。もちろん、企業はどうすべきかを自ら考えるべきでしょう。エンジニアが企業経営者に提案してもどうしても受け入れてもらえない時は、スピンオフして自分で起業する手もあります。

 有望な産業である半導体のベンチャーが続々生まれると日本の未来が開け、成長戦略がはっきり描けるようになります。この本では、見えてきた半導体産業と組み込みシステムとの関係、微細化と設計、さまざまな応用と組み込みシステムについて明らかにします。成長戦略を描ける人が一人でも多く出てきてくれば本望です。

 最後に、本を執筆するのにあたり、日刊工業新聞社の鈴木氏をはじめ、関係者には大変お世話になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 また、本のタイトルを決めるとき、いくつかの案を出し、本の趣旨を私の妻に語り、相談しました。「この成長産業を手放すな」というフレーズは妻が考えたコピーです。改めて、私の妻にも感謝します。

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