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知らなきゃヤバイ!
“食料自給率40%”が意味する日本の危機

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06444-9
コード C3034
発行月 2010年03月
ジャンル ビジネス

内容

「食料自給率が40%」と言われてもピンとこないのが実情だが、この数字の裏には、このままにしておけない深刻な問題がたくさんある。本書は、日本のそして世界の食糧事情の実態を知ると同時に、今後どうしていけばよいのかをイラストを含めわかりやすく解説していく。

吉田太郎  著者プロフィール

(よしだ たろう)

1961年東京生まれ。筑波大学自然学類卒業。同学大学院地球科学研究科中退。東京都を経て、現在、長野県農業大学校勤務。主な著訳書には、『200万都市が有機野菜で自給できるわけ-都市農業大国キューバ・リポート』『「没落先進国」キューバを日本が手本にしたいわけ』『百姓仕事で世界は変わる』(以上築地書館)、『有機農業が国を変えた』(コモンズ)、自給再考「グローバリゼーションの次は何か」(共著・農文協)『江戸・キューバに学ぶ"真"の持続型社会』(共著・日刊工業新聞社)、『地球を救う新世紀農業・アグロエコロジー計画』(ちくまプリマー新書)などがある。

目次

Chapter 1 食料自給率40%と将来の食料事情 ▼▼▼▼

01 食料危機を経験したキューバから見えてくる「食料自給力」の大切さ
02 自給率がより深刻化!? 担い手の高齢化で10年先に日本農業は崩壊する?
03 世界的に食料が不足すると輸入大国日本は海外の食料事情も考えなければならない
04 工業優位の時代が終われば日本は海外から食料を買うことができなくなる!?

Chapter 2 工業的近代農業はこうして誕生した ▼▼▼▼

05 中世ヨーロッパ農業の小麦収量は現代の十分の一以下だった
06 マメ科作物の活用で小麦生産量を倍増した農業革命が産業革命につながった
07 有機腐植説から化学肥料説へと二転三転した植物に必要な栄養素とは?
08 ヨーロッパはラテンアメリカから輸入した肥料「グアノ」で農業収量をアップできた
09 天才化学者の発明で、人類は大気中の窒素合成に成功する
10 緑の革命はハーバー・ボッシュ法の発明があってこそ実現可能だった
11 人類には窒素が必要だがそれを補うだけのタンパク質が、地球上にはある
12 肉食を減らせば食料自給率はアップする
13 緑の革命の技術には様々な問題があり、ピークオイル以降は使えない
14 「有機農業で世界を養える」という主張が欧米で注目を集めている
15 遺伝子組換え技術には未来はあるか │そこには政治的問題も大きく影響
16 バイオテクノロジーと緑の革命を否定し、伝統農業を高く評価した農業科学技術国際アセスメント

Chapter 3 農業誕生とアグロエコロジー ▼▼▼▼

17 地球は植物と虫の惑星で人間がいなくても十分に繁栄できる
18 アマゾンは人間が作り出した人工林?
19 エネルギー面から見れば格段に効率的だった原始時代の農業
20 人類は資源の枯渇で仕方がなくそれまでの狩猟採集生活をあきらめ農業を始めた
21 灌漑農業で失敗を犯したメソポタミア文明と緑の革命
22 微妙なバランスの上にある熱帯雨林の豊かな生産力の秘密
23 窒素吸収のシンクロ率を高めれば、化学窒素肥料なしでも人類は養える
24 全世界が有機農業に転換しても人々を養うことはできるのか? 今は2つの立場の考え方がある
25 地球と人間にとってとうてい優しいとはいえない米国の有機農業
26 地産地消は有機農業よりも2倍近くも地球環境に優しい
27 脱認証有機農業! あえて「有機」ではなくアグロエコロジーに取り組む

Chapter 4 アグロエコロジー農法を見直す ▼▼▼▼

28 ミミズを利用して養分濃度が高い堆肥を生産し、窒素養分を有効活用する
29 VA菌根菌を利用して作物の養分吸収力を高めリン酸を有効活用する
30 石油不足でトラクターから牛耕の時代へ逆戻り!?だが、そこには大きなメリットも!
31 大規模をめざすことは間違っている!生産性を高めるためには経営規模を縮小するべきなのだ
32 乳苗、疎植栽培、間断灌漑、第二の緑の革命、「SRI農法」で収量を増やす
33 生物多様性が豊かな小規模農業の方が、生態系のバランスが保たれやすく、病害虫管理に有利だ
34 これからの日本に求められるのはラテン流没落力だ。キーワードは「連帯経済」と「経済縮退」
35 このままではいけない!「食料自給力」を高めるための日本への処方箋

キューバは有機農業で100%自給できている?/世界に遅れる日本の情報/世界恐慌と有機農業/永続農業のルーツは日本?

あとがき

はじめに

食料や農業については、今、読み切れないほど数多くの本が出版されています。専門書から家庭菜園入門まで様々ですが、ここ数年で急激に目立ってきたのが、週末農業や田舎暮らしを始める、さらにはビジネスとして農業で起業するといったジャンルの啓発本です。現在の先の見えない景気動向や就職不安、フリーター問題などを反映して、せめて自分の食べる分くらいは自分で作りたい、あるいは、自然の中で悠々自適の生活を送りたいと、生き方としての「農業」も人気を呼び、半農半Xはブームにもなっています。しかし、誰もが自分で農業をやれるわけではなく、圧倒的多数の人々が、外食やスーパー等で買う食材に依存する消費者であることも現実です。パン、緬類から飼料作物まで、日本はそのほとんどを輸入に頼っていて、それなくしては、一日たりとて私たちの食生活はなり立ちません。
一方で、今この惑星上では8億の人が飢餓に苦しんでいます。しかし、少し前までそれは、経済と配分の問題であって、世界的にみれば食料は余っていたのです。ところが2007~08年、1972年以来、初めて世界的な食料不足となりました。幸いなことに日本では餓死者がでませんでしたが、今後も異常気象などを原因として食料不足が起こる危険性があります。
また、この100年で世界人口が急増したにも関わらず、人類が大規模な飢餓に陥らずにすんできたのは、化学窒素肥料をはじめとする近代農業によって作物の収穫が増えたからです。しかし、その化学肥料の原料である石油や天然ガスの先行きもあやしくなってきています。そこで、この本では、農業を「資源とエネルギーを使って食料を製造する産業」として捉えることで、ピーク・オイル以降も日本が食料を輸入・自給できるのかを探っていきます。
Chapter1では、食料自給率40%の日本の現状がいかに危険かを見てみます。Chapter2では、今の日本が輸入している穀類のほとんどを産み出している近代農業がいかにして誕生し、どのような課題を抱えているのかをヨーロッパの農業技術史から紐解いていきます。Chapter3では、農業がなぜ誕生したのか。それが、自然の生態系にとってどのような意味を持ったのかを原始時代にまで立ち返って見てみます。Chapter4では、ソ連圏崩壊と米国の経済封鎖という政治的特殊事情によって、いち早くピーク・オイルを経験したキューバを軸に、アグロエコロジーによる食料生産の可能性について探っていきます。日本は、冬は寒いとはいえ、夏の暑さは熱帯並で、イネももともとは熱帯・亜熱帯の作物です。病害虫の発生も多く、気候が冷涼な欧米に比べ無農薬栽培が困難ですから、キューバのような熱帯農業の方がむしろ参考になると考えるからです。
時間的空間的に大風呂敷を広げすぎたと思われるかもしれません。しかし、今の日本の食料事情はそれほど深刻で、豊かな消費社会はまさに転換期を迎えており、今こそ、過去の歴史の教訓に学びつつ、原点に立ち返って農業のあり方を考え直さなければならない時だと私は感じているのです。このように考える私が、食料問題を考えるうえで大切にしている四文字の言葉があります。それは「奇策なし」です。私の造語ではなく、江戸時代に飢饉を経験した農民たちが子孫に伝えようと石碑に彫った言葉です。
いつの時代にも「発想の逆転」とか「大胆な改革」とか「斬新で奇抜なアイデア」を口にする人がいたということでしょう。それに対して、奇手はないのだ、ただただ、地道な備えをするしかないのだ、という子孫へのメッセージは、飾り気もなく素朴なだけに重く受け止めなければならないと感じます。ですから、この本もある斬新な技術によって一挙に食料自給率がアップするとか、マーケティングとネットビジネスでたちどころに日本の農業問題が解決するといった「奇策」は一切でてきません。結論も明るいものではありません。とはいえ、未来は人々の行動によって変わります。そして、行動は事実を知ることから始まります。「知らなきゃヤバい!」は「知ればある程度はヤバくない」の反語でもあります。
この小冊子が、日本や世界農業のことを考える一助になれば幸いです。なお、出版にあたり、民間稲作研究所の稲葉光國氏及び日本工営の佐藤周一氏からは貴重な写真をご提供いただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

平成22年3月 長野にて                         吉田太郎

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