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早わかり トルコビジネス

定価(税込)  2,376円

編者
サイズ A5判
ページ数 280頁
ISBNコード 978-4-526-06421-0
コード C3034
発行月 2010年03月
ジャンル ビジネス

内容

トルコはNEXT11やVISTAの一角を担う新興経済発展国で、中東アジア・ヨーロッパへの地理的な近さ、豊富な労働力の点から企業の進出先として注目が集まっている。本書はトルコに進出を考える企業関係者に向けて、国の歴史的背景、政治形態、国内ビジネスの特徴(財閥情報)、日系企業の進出事例などを中心に解説する。

目次

目次



序章 トルコでのビジネスチャンス



第1章 トルコという国

1.1 歴史的背景と政治

1.2 経済概要

1.3 社会構造と消費

1.4 欧州との関係



第2章 トルコの産業

2.1 基幹産業

2.2 財閥中心の大企業グループ

2.3 金融・銀行部門の成長

2.4 トルコ企業による海外進出



第3章 地域経済と産業インフラ

3.1 トルコの地域経済概観

3.2 物流動向─未発達なシルクロード─

3.3 通信

3.4 エネルギー事情



第4章 投資動向と環境

4.1 投資環境の改善と発展

4.2 会社の設立

4.3 投資インセンティブ

4.4 会計実務・法定監査と各種税務



第5章 貿易

5.1 貿易構造

5.2 輸出

5.3 輸入

5.4 トルコの関税制度と貿易双務協定



第6章 労働環境

6.1 労働事情

6.2 賃金

6.3 教育制度?



第7章 日本との関係

7.1 投資

7.2 貿易

7.3 日本政府の対トルコODA



第8章 ビジネス界の経験と展望

8.1 日系企業のトルコでの生産・販売戦略の展望と問題点

・バンドー化学

・トヨタ自動車

・YKK

・丸 紅

・日本郵船(NYK)

8.2 トルコ企業から見たビジネス展望

・アナドル・グループ

8.3 トルコとの付き合い方?アナトリアン・スタイル理解の一助?



あとがき



〈執筆者一覧〉

石原圭昭

ジェトロ イスタンブール事務所 所長

執筆担当…3.4、4.2、4.3、5.3、6.1、6.2、7.1、8.1、あとがき

中島敏博

ジェトロ イスタンブール事務所 副所長

執筆担当…序章、第1章、第2章(2.4を除く)、第3章、4.1、4.3、第5章、6.3、7.3、8.2、8.3、コラム

佐野充明

ジェトロ 東京本部 貿易開発部アジア支援課 課長代理

執筆担当…2.1、2.4、7.2、8.3

向山光浩

プライスウォーターハウスクーパース(PWC)

トルコ事務所会計士

執筆担当…4.2、4.4、6.1

はじめに

序章 トルコでのビジネスチャンス



親日国トルコ



トルコは、2003年にゴールドマンサックスが発表した、発展が著しい新興市場、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)には含まれていない。07年にトルコはこれら諸国に次ぐネクストイレブン(NEXT11)に含まれたが、どこがBRICsに劣るのだろうか。BRICsの共通点はよくいわれるように「広大な国土、巨大な人口、豊かな資源」とされる。この点では確かにトルコは分が悪い。しかし、トルコには他国にはない魅力、優位性もある。特に私たち日本人にとっては、トルコ人の親日性は代えがたい魅力である。

明治23年(1890年)9月16日、オスマン帝国の特使を乗せた軍艦エルトゥールル号が日本からの帰路、和歌山県串本沖で遭難した際に、日本側が見せた献身的な救援活動や義捐金送付を行ったことが、両国の友好関係の基となり、その後のトルコ共和国建国の際にも、初代大統領となるケマル・アタテュルクが西欧化による近代化を進めるに当たって、同じ道を歩んだ明治日本に範を求めたなど、親日にかかわるエピソードには事欠かない。その背景が、イラン・イラク戦争の勃発でテヘラン空港に取り残された在留邦人を、トルコ側のすばやい対応でトルコ航空が脱出させたことにつながったことも忘れてはならない。



ビジネスチャンス

もちろん親日国というだけでは、ビジネス・ガイドの対象とはならない。世界的にも勃興する新興市場のひとつとしてトルコに対する関心は非常に高い。リーマンショック後の世界的な金融危機は、トルコにも多大な悪影響をもたらしたが、その中ですらトルコに対する関心は衰えず、今では危機収束後の有力なターゲットとして見る向きすらある。

その背景には、周辺国市場をも睨む地政学上の戦略的優位性、消費と労働力をもたらす潤沢な若年人口といったポテンシャルもあるが、2001年のトルコ経済危機を教訓に進められた構造改革の成果によって、強固な基盤を持つようになったことも重要である。この結果、トルコは02年から07年にかけての5年間に年平均7%という高成長を実現させ、海外からは総額579億ドルの直接投資の資金が流れ込んだ。特に05年にEU加盟交渉が始まってからは、06〜08年に年平均200億ドルを集めている。

このようにトルコに投資した外資系企業の多くは、次にトルコ人の勤勉な仕事振りに驚く。トルコは7,200万の人口を擁するだけでなく、平均年齢が28.5歳という非常に若い国である。そのトルコ人に対する評価が、「勤勉で、優秀である」ということは、企業の将来性も大いに期待できるのではないだろうか。もちろん彼らは貴重な労働力であるだけではない。学歴や経験を積んだものたちは、あらゆる世界で活躍している。

一方でトルコも、他の新興国と同じような問題を抱えている。格差による階級意識、消費先行、コスト急騰、脆弱なインフラ、R&Dにあまり重きを置かない、長期戦略の厚みがないなど、枚挙にいとまがない。しかし、インフラや技術にかかわるものなど、これらの弱点のいくつかは、私たちが補完できるものもある。



変化する国

経済だけでなく政治的に見てもトルコは変化する国である。トルコ共和国は、建国以来、政治と宗教を切り離した厳格な世俗主義を標榜している。しかし、数世紀に及ぶイスラムの伝統は、トルコ人の社会の中で歴然と存在している。冷戦下の貧しいトルコが、ヨーロッパに追いつくために、脇目も振らず自己主張していた頃は、そのことに疑問を呈する人々は目立たなかった。しかし、トルコ人の一部がある程度の豊かさを獲得し、消費の欧州化が進む一方で、取り残された大多数の人々が、自らのアイデンティティへの回帰に目を向け始めたように思われる。そして、EU正式加盟に向けたヨーロッパ・スタンダードの導入による「自由化」のもと、これまで抑えつけられていたこれら勢力の反動が、経済を巻き込んだ巨大なうねりとして見られるようになっている。

そのうねりの中に中間層の成長を促す動きも見られる。現在のトルコは、所得格差がもたらす階級構造的な社会にあり、中間層の成長は遅々としているが、現政権の政策は、保守的な地方のビジネス勢力を開放させつつあり、こういった新興勢力に機会を提供している。これまでのトルコ=イスタンブルの図式は崩れ、地方需要の拡大は新しいビジネスチャンスにつながり始めている。

現在のトルコは、イスラムの伝統を強く持つ世俗国家として、保守的な伝統すらビジネスチャンスに変えることができるような国に深化しつつあるのかも知れない。本書は、トルコでのビジネスを考える方々に、こういったトルコの基礎知識や背景を提供することを目的に書かれたものである。トルコでのビジネスのヒントや切っ掛けになればこの上なく幸甚である。

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