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知らなきゃヤバイ!
電気自動車は新たな市場をつくれるか

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06404-3
コード C3034
発行月 2010年02月
ジャンル ビジネス 機械

内容

地球環境問題とエネルギー問題を解決すべく、電気自動車が注目されている。これまで何度となく注目されてきた中で、関係者の間では「今度こそ本物である」という共通認識が高い。本書では、電気自動車の基本的なしくみを押さえつつ、本格普及に向けた取り組みや課題を取り上げ、電動化が変えるクルマの常識についても解説する。

御堀直嗣  著者プロフィール

(みほり なおつぐ)



1955年2月26日、東京都港区生まれ。

玉川大学工学部機械工学科卒。

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本EVクラブ副代表。

自動車誌はもちろん、新聞やWeb等での執筆多数。

著書に『快走・電気自動車レーシング』(オーム社)、『ホンダ・トップ・トークス』(アーク出版)、『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』(中経出版)、『メルセデスの魂』(河出書房新社)、『クルマ創りの挑戦者たち』(山海堂)、『電気自動車が加速する!』『イラスト・図解ハイブリットカーのしくみがよくわかる本』(技術評論社)、『クルマはなぜ走るのか』(日経BP社)、『電気自動車は日本を救う』(C&R研究所)ほか。

目次

CONTENTS





Chapter1 電気自動車がこれまでのクルマの常識を変える



01 ガソリンエンジン自動車よりも先に誕生していた電気自動車がいったん市場から消えたわけ

02 忘れ去られた電気自動車が再び注目されている

03 今後の自動車普及とCO2削減を両立させるための電気自動車の役割

04 燃料電池車はもう一つの電気自動車

05 市販された電気自動車が軽自動車をベースにしている意味

06 電気自動車の構造はきわめてシンプル―三菱i―MiEVの例に見る

07 電気自動車は走行性能面でガソリンエンジン車に劣るのか―三菱i―MiEVの性能比較を例に

08 電気自動車に乗り換えればすべて環境負荷がゼロとなるわけではない

09 なぜすぐにでも電気自動車の一充電当たりの走行距離を延ばせないのか

10 いまに始まったばかりでない電気自動車をめぐる技術や考え方

11 プラグイン・ハイブリッドカーは次世代自動車の候補になる得るのか

12 電気自動車にとってのシートヒーターの意外な役割

13 電気自動車の売りであるはずの静かさがもたらす危険をどのように回避すべきか

14 旧いエンジン車を電気自動車にコンバートして楽しむ





Chapter2 電気自動車が今後の産業戦略を変える



15 ガソリンエンジン車に比べて部品点数が約1/10に減ることで変わる自動車の姿

16 電気自動車にも“産業のビタミン”レアメタルが必要不可欠

17 直近の電気自動車の鍵を握るリチウムイオンバッテリーの開発と量産

18 高性能化するリチウムイオンバッテリーの安全対策

19 日産自動車に見る専用プラットフォームによる電気自動車の量産化

20 目前に迫った日産自動車の量産電気自動車に向けたサービス体制

21 電気自動車は故障が少ない、消耗品が少ない

22 電気自動車は海外でも需要が見込めるのか

23 これまでの自動車のような4年を基本としたモデルチェンジは考えにくい

24 電気自動車によるクルマ生活はこれまでとは趣が異なるものとなる

25 電気自動車の市場は今後どう展開していくか

26 電気自動車市場の拡大に期待できる業界はあるのか





Chapter3 電気自動車が既存のエネルギーインフラを変える

27 充電インフラが整うまで電気自動車の普及は難しいは本当か

28 急速充電設備はどれくらい必要とされるのか

29 実際に充電時にかかる電気料金はいくらぐらいなのか

30 充電そのものだけではないビジネスモデルにはどのようなものが考えられるか

31 電気自動車が電力の需要動向に変化をもたらす

32 ライフサイクルCO2を考えれば原子力発電は無視できない

33 核兵器拡散の可能性を抑える新たな原子力発電技術

34 太陽光発電や風力発電で電気自動車の充電はできるか







COLUMN 電気自動車、無充電で500kmを走破

電気自動車の一日も早い普及を目指すシム・ドライブ社

無限の太陽エネルギーから世界の電力を賄う計画

はじめに

まえがき



電気自動車(EV=Electric Vehicle)周辺の情勢が、動いています。それも、社会全体に影響を及ぼしながら急速に動いていると感じます。

1990年代半ばにも、電気自動車ブームがありました。これは、米国カリフォルニア州で法案化されたZEV(Zero Emission Vehicle)法を受けた動きでした。特に米国市場への依存体質を強めていた日本の自動車メーカーは、市販できる電気自動車開発に必死に邁進しました。世界で持ち回りにより開催される電気自動車シンポジウム(EVS=Electric Vehicle Symposium)も、当時は多くの出展者・参加者が集まり、熱気をはらんでいました。

しかし、1990年代終盤になると燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)が脚光を浴びることとなり、電気自動車は潮が引くように注目されなくなっていきます。97年には、トヨタ自動車から世界初の量産ハイブリッドカー「プリウス」が発売され、電気自動車シンポジウムの中身も、燃料電池車やハイブリッドカーの話題が増えていくようになりました。一時的に業界内で燃え盛った電気自動車の炎は、消えることはなかったにせよ、熾火のようにひそやかに燃え続ける状態が続いたのです。

そこに、富士重工業と三菱自動車工業から、軽自動車を基にした電気自動車発売の動きが起こり、日産自動車からも電気自動車の大量販売の計画が発表されたのです。そして再び、電気自動車ブームが起きました。

今回が、90年代半ばと異なるのは、リチウムイオンバッテリーが実用化されていること、情報通信など社会の変化、そして人々の環境への関心の高さです。

リチウムイオンバッテリーは、すでに携帯電話やノート型パーソナルコンピュータで当たり前に使われています。そして誰もが、海外とでさえ携帯電話で通話できるようになりました。90年代半ばは、まだショルダーフォンや、携帯電話といってもバッテリーケースを持ち歩くような大きさで、今日のように子供を含めた多くの人が持つものではありませんでした。

環境への関心の高まりを背景に、家庭でのオール電化住宅が人気を高めつつあり、太陽光発電を設置する家庭やビルも増えています。

電化による経済性や安全性、利便性の向上と、それに伴う環境負荷の低減が共生し、そこに電気自動車が発売されれば、違和感なく電気で走る自動車を受け入れる素地が消費者の間に広がりつつある今の状況は、90年代半ばと全く違っているのです。

そして自動車メーカーにしてみれば、米国市場で法規制を満たすために売る電気自動車ではなく、不特定多数の消費者を相手に、既存のエンジン自動車と競合しながら電気自動車販売を行うというのですから、開発も販売戦略も、かつてとは雲泥の差です。

それを見て、エネルギー産業や通信産業など、他業種から電気自動車の動向に熱い眼差しが送られるようになってきました。熱い眼差しだけではなく、ガソリンスタンドの減少というように、エンジン自動車が支えてきた産業の変革が起こりつつあり、時代の変貌に将来を不安視する空気もあります。

それらすべてを含めて、電気自動車周辺の動きが急となっているのです。

電気自動車の普及が進むにつれて起こる自動車社会の変化は、これまでの常識では対処できない新たな概念を求めてくることになるでしょう。電気自動車を正しく知らなければ、次への一手を打つこともできません。また、将来の選択を誤るおそれもあります。いま電気自動車をきちんと理解しなければ、急を告げる時代に乗り遅れるかも知れないのです。

執筆に当たって、各自動車メーカーの方々、写真や資料を提供してくださった方々に深く感謝する次第です。なお、本書の情報は、2010年1月現在のものであることを付け加えておきます。



2010年2月 御堀直嗣

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