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知らなきゃヤバイ!
民主党―新経済戦略の光と影

定価(税込)  1,728円

監修
編者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06358-9
コード C3034
発行月 2009年11月
ジャンル ビジネス

内容

民主党政権が誕生した。国民や産業界の関心はさまざまな分野で既存の枠組みがどう変わるかに注がれている。本書は、予測される変化の中でも、とりわけ産業界、経済界にとって大変動となる点に絞り、「いま」が「こう変わる」を具体的かつ鮮明に描く。

高野 孟  著者プロフィール

インサイダー編集長

1944年東京生まれ、68年早稲田大学文学部西洋哲学科卒業後、通信社、広告会社に勤務。75年からフリージャーナリストになると同時に情報誌『インサイダー』の創刊に参加、80年に(株)インサイダーを設立し、代表兼編集長に。94年に(株)ウェブキャスターを設立、インターネットによるオンライン週刊誌『東京万華鏡』の編集・執筆に従事。2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」を担当。07年にサイバー大学客員教授、08年に京都造形芸術大学客員教授も兼任。08年9月にブログサイト『THE JOURNAL』を創設、実験運用中(http://www.the‐journal.jp/)。

著書に『地球市民革命』(学研、1993年)、『最新・世界地図の読み方』(講談社現代新書、1999年)、『滅びゆくアメリカ帝国』(にんげん出版、2006年)、共編『ジャーナリスティックな地図』(帝国書院、2008年)ほか多数。テレビの(ほぼ)レギュラー出演は、テレビ朝日『サンデープロジェクト』(日曜日10時〜)、大阪読売テレビ『情報ライブ・ミヤネ屋』(火曜日14時〜)。

目次

Chapter 1 120年目の大転換 ―民主党政権で何が変わるのか

01 発展途上国型の官僚主導体制から成熟先進国型の民間主導へ
02 「地域主権国家の樹立」こそが民主党の政権運営の基軸
03 直接給付型の政策は官僚主導を転換するための経済政策
04 民主党は、大企業よりも中小企業を重視する政策を打ち出している
05 民主党が確約する独立行政法人への“大ナタ”は、所期の効果を期待できるか?
06 脱米入亜―「東アジア共同体」構想は長期経済成長戦略の入り口
07 確実に増える外国人労働者。移民政策の転換で、移民の受け入れは増える?
08 インタビュー 民主党参議院議員・蓮舫氏に聞く
前向きなメッセージを出し続けることではじめて、政治が私たちの国の可能性を引き出す原動力になる

Chapter 2 民主党の目玉政策で日本がこう変わる!

09 子育て・教育 すぐに行わなければならない少子化対策。「子ども手当」で少子化を防止
10 子育て・教育 子育て支援策は経済を発展させ、新産業をつくる原動力にもなる
11 農業 戸別所得補償制度で、農家の安定的収入を維持する
12 農業 地域で所得と雇用を守りながら自立した経済圏をつくる「6次産業化」政策
13 物流・観光 高速道路の無料化で「ヒト・モノ・カネ」の流れが大きく変わる
14 医療・介護 医療崩壊が進むなか、医療従事者の増員と質の向上を目指す
15 医療・介護 急がれる介護分野の改革、サービス基盤の拡充とマンパワーの充実を
16 医療・介護 「後期高齢者医療制度」廃止、医療体制の混乱は防げるか?
17 企業 行き過ぎた規制緩和を適正化し、派遣労働者の雇用の安定を図る
18 行政改革 コンクリートから人へ―ムダな公共事業を削減し、福祉、医療などの財源を確保
19 環境・新産業 2020年までにCO2を25%削減、「環境・省エネ技術」の特需は生まれるか?

Chapter 3 民主党の経済政策で業界が変わる!

20 金融 より包括的に金融商品取引全般を監視する「日本版FSA」を創設
21 新産業 政府や地方自治体の財政が逼迫するなか、NPOの役割を重視
22 新産業 民主党が掲げる「起業100万社」の目標は達成できるのか?
23 新産業 高齢者や障害者を意識した街づくりを進め、バリアフリー社会の実現を目指す
24 新産業 各地の空港の国際線機能を拡充するとともに、「オープンスカイ政策」を推進
25 新産業 周波数割当制度の抜本的見直しで、新たな電波産業誕生も
26 新産業 インターネットを用いたコンテンツの2次利用促進に答は出せるか?
27 行政改革 PFIを定着させ、行政の効率化、経済活性化を果たせるか?
28 情報 候補者のみならず、有権者にとっても有益なインターネット選挙を解禁
29 情報 納税と社会保障給付を共通番号化、ITベンダーに特需は発生するか?
30 不動産 悪質な行為を規制し、消費者の不利益を防ぐ不動産両手取引の原則禁止
31 スポーツ 地域に根ざしたクラブスポーツを推進し、スポーツ界の底辺拡大を
32 環境・新産業 中山間地域の雇用を創出するとともにバイオマスエネルギーの利用を推進
33 複合的な政策 地域の自立で過疎化を食い止め、地方の再生を
34 政策の影響 「環境・人権」へ大きくシフトする日本のODA(政府開発援助)
35 政策の影響 あまり知られていない大胆な税制改革・規制改革が私たちの生活を変える

COLUMN
民主党政権下で、どうなる郵政民営化?
「事業仕分け」で財政健全化の道は開けるのか?
平成維新を実現するのは“あなた”

参考文献
索引

はじめに

 「日本は、140年前、明治維新という一大変革を成し遂げた国であります。現在、鳩山内閣が取り組んでいることは、いわば、『無血の平成維新』です。今日の維新は、官僚依存から国民への大政奉還であり、中央集権から地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への、国のかたちの変革の試みです」

 鳩山由紀夫首相は、10月26日、衆参両院でのはじめての所信表明演説で、そう述べています。

 この政権交代が、“明治維新に匹敵する”ということは100年か150年に一度あるかないかの一大革命だというのです。「それはちょっと大げさではないか」「たしかにいろいろな変化が始まっているのは日々のニュースを通じて感じられるけれども、何だかまだ政権運営に不馴れで頼りないところもあるし、それほどの実感はないなあ」と思われるかもしれません。しかし、明治維新にしても、そう名づけられたのは後世のことで、その渦中に生きた人々は、一般庶民はもちろん血気盛んな志士たちでさえ、次第に世情騒然となってきたことはひしひしと感じながらも、全体として何が起きているのかはさっぱりわからないまま、それぞれの日常に励んでいたに違いありません。司馬遼太郎氏が生きていて、10年か20年後にいま起きていることを一編のドラマとして描き上げてくれれば、「そうか、あれは平成維新だったのだ」とはじめて納得するのかもしれません。

 明治維新は、徳川幕藩体制265年を終わらせただけでなく、それを含む鎌倉幕府以来700年近い武家政治の時代を終わらせて天皇親政を蘇らせたわけで、それが大政奉還ということですが、実際にそこで始まったのは「薩長藩閥政治」でした。天皇の権威を背景に、維新の主役だった薩長中心の、後に元勲と呼ばれる人たちが内閣と行政機構を握って実質的権力を形成し、国会はあるにはあるが、政府のやることに時にいちゃもんをつけ、時に擦り寄っておこぼれを頂戴しようとする存在にすぎませんでした。やがて大正時代ともなると、薩長とは無縁の首相が国会によって選ばれるようになり、また東京大学出身者を筆頭とするエリートによる近代的官僚制が確立していくわけですが、そうなるとむしろ、官僚が内閣を取り込んで国会を支配して国を動かしていくという図式が定着して、昭和前期の「軍部政治」から戦後の旧大蔵省を中心とする「官僚政治」へと引き継がれてきたのでした。この薩長藩閥政治に由来する、維新から141年、明治憲法発布から数えれば120年に及ぶ「官僚主導体制」が、いま第二の大政奉還の時を迎えているのです。

 誰から誰への大政奉還か―。鳩山首相は「官僚主導から国民への」と言っています。何げないような言い方ですが、実はこれは大変なことを言っている。「国民に大政奉還されてしまって、さて国民の皆さん一人ひとりはどうするんですか」「どういう生き方をするんですか」

 たしかに日本国憲法は前文で「主権が国民に存することを宣言」していて、誰もが「主権在民」など当たり前と思っていますが、われわれは本当に「主権者」であったことがあるでしょうか。

 「いや、私は選挙のたびごとにちゃんと投票していますよ」と言うかもしれませんが、それは「有権者」としてであって、それが「主権者」としてのすべてではありません。鳩山首相は所信表明演説でこう言っています。

 「いかなる政策にどれだけの予算を投入し、どのような地域を目指すのかは、本来、地域の住民自身が考え、決めることです」

 「こうした改革の土台には、地域に住む住民の皆さんに、自らの暮らす町や村の未来に対する責任を持っていただくという、住民主体の新しい発想があります」

 彼は国民に大変なことを求めています。この求めに応じて真の主権者になっていく覚悟があるのかどうかが問われることになります。

 この本は、新政権になって私たちの生活がどう変わるのか、個別のテーマごとに考える材料を提供しようということで、緊急に編まれました。が、それらを通じて、単に旧政権に比べて新政権は「損か得か」というだけではなくて、この国のかたちが120年目の大転換を迎えているなかで、私たちの政治に対する関わり方そのものがまた変革を迫られているのだということに深く思いを致していただくことを願っています。

2009年11月
高野 孟

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