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知らなきゃヤバイ!
イスラム金融

定価(税込)  1,728円

監修
監修
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06349-7
コード C3034
発行月 2009年10月
ジャンル ビジネス

内容

イスラム金融の一番の大きな特徴は「利息・金利」という概念が禁止されていることで、現行の金融取引とは大きく異なる。しかし、巨額のオイルマネーを背景にこの金融手法が世界で急速にその取引量を伸ばしており、その本質、手法を知ることは急務であり、本書はそれをイラストを含めやさしく解説していく。

楠本 博  著者プロフィール

昭和12年東京生まれ。一橋大学卒、三井銀行入社、八重口支店、本店外国営業部、調査部経済調査課、本店営業部、人事部企画課、ニューヨーク支店などを経て退職。近畿大学教授、八千代国際大学(現・秀明大学)教授、大阪市信用金庫顧問・理事を歴任。金融学者。主な著書に「銀行行動の理論と現実」(東洋経済新報社)、「セキュリタイゼーション」(有斐閣)、「ベーシック金融先物オプション」(経済法令研究会)、「信金の時代」(近代セールス社)、「金融ビッグバンのすべて」(東洋経済新報社)、また翻訳として「変貌する銀行経済」(東洋経済新報社)、「銀行革命新潮流」(東洋経済新報社)など、著書多数。

勅使川原 明  著者プロフィール

昭和22年、前橋市生まれ。早稲田大学卒、群馬銀行入行、足利南支店長、営業推進部主任推進役、審査部主任推進役、東京事務所副所長などを経て、群銀JCB取締役。金融に関するアドバイザーとしても活躍中。

永井隆昭  著者プロフィール

昭和23年秋田市生まれ。日本大学卒、金融経済関係の新聞社編集局長などを経て、現在フリー。主に金融関係の取材・執筆、講演活動を行っている。地域金融研究所客員研究員、TEN FEI ASSOCIATED INC専門領域プロデューサー。著書に「動き出したネット・バンキング」(富士通総研・編、日刊工業新聞社)、「トコトンやさしいお金の本」(富士通総研・編、日刊工業新聞社)、「国際事例集」(地域金融研究所)などがある。

目次

目次



Chapter 1 今、なぜイスラム金融が注目されるのか?

1 イスラム金融は、今や総資産が1兆ドルに達し、80カ国300金融機関以上で手掛ている

2 イスラム金融は、中東産油国の金融資産が膨張していることを背景に、手掛ける金融機関も増加

3 イスラム金融への需要が増し、巨額な資金調達などでメガ銀行が出現してきている4 莫大な「石油資金」を得るため、イスラム金融は日本にとって競争力のある手法である

5 金融庁は「イスラム金融の解禁」、銀行の子会社および兄弟会社の業務範囲にイスラム金融を追加

6 日銀は、「イスラム金融が今後どのような新しい金融サービスを提供できるか」に注目

7 日本がアジア市場のリーダーシップをとるためには、イスラム金融をキーワードとすることが必要

8 イスラム金融が、日本のリテール分野で新しい金融商品を開発する

9 日本でのイスラム金融導入に対しての最大の制約は、日本の法体系



Chapter 2 利子を課することを禁止するイスラム金融の仕組み

10 イスラム金融は、「シャリア」というイスラム教の教えに基づいた金融手法で、シャリア適格が必要

11 「無利子銀行論」│現在の金融体制は経済の歴史からみれば特異な発展の一形態

12 マレーシアのシティバンクが始めたイスラム預金は、日本でも受ける?

13 その形は、投資信託、ベンチャー・ファンド、トレードファイナンス、リース、プロジェクト・ファイナンスなど、一般の金融とほぼ同じ

14 シャリアに基づく助言をし、シャリア適格のお墨付きを与えるシャリアボードは、金融機関から独立した立場にある

15 シャリア・ボードのメンバーは、「シャリア」と「金融取引」に精通し、「英語」に堪能、という条件をみたす



Chapter 3 イスラム金融にはいくつかの形態がある

16 売買の媒介をする「ムラバハ」、リースの形態「イジャラ」、有価証券「スクーク」

17 アジアで急速に拡大するイスラム金融保険「タカフル」は、今後さらに世界に拡大していく

18 「スクーク」は一般金融では有価証券や小切手に相当するもの。現在では200億ドルを突破

19 スクークは、政府が積極的に発行し急成長、民間企業が一般債とスクークを柔軟に組み合わせている

20 スクークの最大の課題は、流通市場国や地域によってシャリアの解釈が違うこと

21 株はシャリア不適格にも見えるが、資本を入れて事業を支援するという意味ではシャリア適格

22 イスラム金融にも投資ファンドがあり、近年では総資産残高は2000億ドルを突破したとみられる

23 イスラム教の禁じる不確実性、投機という要素を含む「デリバティブ」取引もある

Chapter 4 世界各地に拡がるイスラム金融の実態

24 バーレーンには400近い金融機関、保険会社があり、その総資産残高は推計1000億ドル以上。中東最大の集積地

25 バーレーンでは一般銀行とイスラム銀行との関係は密接で、イスラム金融が大きく伸びている

26 サウジアラビアでは、宗教と法が一体で、シャリアが商業行為全般を規制。イスラム金融に関する法はない

27 通常の規制と異なるクウェートのイスラム金融、カタールにも特別の決りが

28 ドバイは、バーレーンに対抗する形でイスラム金融の振興を図っており、多くの金融機関が設立されている

29 マレーシアはイスラム金融を国家目標戦略とし、ドバイを凌ぐ世界のハブとなる

30 マレーシアは国家レベルでシャリア適正を評価、この安定性が同国の強み

31 イギリスでは、ホールセールや大口資産運用など国際金融センターとして、イスラム金融も

32 当座預金、住宅融資、タカフル、さらにイスラム学生預金等々、英国系銀行はイスラム金融に積極的

33 中国本土市場のゲートウェイとしての香港、イスラム金融の“眠れる巨人”インドネシア

34 アメリカは、イスラム金融に関して今のところとくに目立った政策はなし、“地味”な存在

35 中東湾岸諸国が支配するトルコ、交流拡大を期待し、環境作りに努力する韓国

イスラム金融に経済の原点?/イスラムの「最後の審判」

イスラム商人とイスラム金融/「Amanah」のテレビCM

はじめに

はじめに





今、日本の金融界の中でも、金融庁や日銀を中心に「イスラム金融」というものが注目されています。イスラム金融というのは、その名の通りシャリア(イスラム法)にのっとって行われる金融ですが、“イスラム”というと私たちには馴染みが薄く、イスラム金融というだけでは銀行員でもまだハッキリとわかっている人は少ないのではないでしょうか。しかし、イスラム金融は今や確実に世界でそのシェアを拡大しているのです。しかもその伸びは毎年15%を超え、市場規模は約107兆円に達していると推測されています。そして、「シャリアに適格であらねばならない」という条件を除けば、一般の金融とほぼ同じと考えられることもあって、その適用範囲はイスラム圏のみならず、アジア、欧州、アフリカなどにまで拡大しています。

このようなイスラム金融躍進の背景には、いわゆる産油国の“オイルマネー”があります。これまで多くのオイルマネーは、一般的な金融手法で運用されてきましたが、近年、このお金がイスラム金融にも多く流れるようになり、市場規模を飛躍的に大きくしました。

イスラム金融の特徴は、「利子は禁止」であり、「豚肉、アルコール、ポルノ、ギャンブルなどの企業への投資は禁止」、「お金の借り貸しだけのような金融取引はご法度」などです。そして、形ある商品を仲介させた商品売買で利益をあげたり、事業出資することで配当を得たりすることは奨励されています。つまり、イスラム金融は、金利とみなさない投資や商品を仲介させることで成り立っているといえます。その代表的な手法が「ムラバハ」で、これは購入代行であり、住宅購入を中心に広く使われます。

また、投資信託や銀行への預金運用に似た「ムダラバ」(信託金融)や、事業の共同出資に似た「ムシャラカ」(出資金融)、さらに「スクーク」(スクーク債=イスラム債)と言われる債券もあり、イギリス政府は2012年のロンドン・オリンピックの資金調達をスクークで行うとしています。

イスラム金融はまた、今回の世界的な金融危機の中でも比較的影響が軽微と伝えられており、対応が先進国の中でも遅れている日本でも、今後、イスラム金融への注視は、さらに高まって行くことは確実と見られます。そして、今回の金融危機が「世界の金融の大きな変わり目」と見るならば、イスラム金融への注目度合いはさらに大きくなるでしょう。

本書は、そのイスラム金融についての解説書として、とくにバンカーのための手引書として、また、学生や一般人のための「知らなきゃヤバイ!」知識の読み物として、わかりやすく解き明かしたものです。監修は、金融学者で三井銀行(現・三井住友銀行)ОBの楠本博氏、群馬銀行OBの勅使川原宏氏です。

世界には今、さまざまな金融手法が出現しており、今回の金融危機は“お金の一人歩き”が世界的な危機を招いたともいえます。そういう意味でもイスラム金融を知っておくのは、今後の金融を知る上で必要なことです。

なお、本文中でイスラム金融機関や人名などの多くをアルファベット表記にしていますが、これは日本語表記とした場合に必ずしも適切な表現とは言い切れないものが多いためであることをお断りしておくとともに、数値については公表されていないものも多いため、推定の域を出ないケースが多々あり、他の書籍、資料等と食い違う場合がありますので、ご了承下さい。最後に、この企画の実現に努力してくれた日刊工業新聞社出版局の藤井浩氏には心より感謝いたします。



2009年10月

永井隆昭

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