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SCIENCE & TECHNOLOGY
エレクトロニクスのための量子工学のはなし

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ B6判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06289-6
コード C3054
発行月 2009年06月
ジャンル 化学

内容

本書は、これからの電子デバイスの基礎になる量子工学について、そもそも量子とはどんな概念で、それを実際の機器への応用(その原理・メカニズム)するのかまでを解説したもの。一般的にわかりにくい量子工学を技術者の目線からわかりやすくまとめた入門書。電子技術者必読の書。

目次

目次



はじめに



第1章 デバイスの発展経過と量子装置

1.1 電子技術の起源,発展,限界

(1)電子技術の誕生(微弱信号を増幅する3極真空管)

(2)半導体ICの発展と限界(機能素子がトランジスタ,LSIと進み物理限界まで微細化)

1.2 垂直ハードディスク(情報化を支える基本メモリでそのメモリセルのサイズは超LSIの物理限界を超える)

1.3 実用化された量子装置(電子技術で不可能な性能を持つ実用品の例)

(1)レーザ(電子技術による電波の壁を破った光波長の電磁波)

(2)原子発信器(周波標準器の精度を桁違いに向上)

(3)高感度磁気計測(ルビジウム磁力計,SQUID磁束計)

1.4 電磁波の分類

コラム 垂直磁気ハードディスク事業



第2章 量子物性の要点(量子とは何か,技術の基になるその要点)

2.1 電子の運動(微粒子として)

2.2 連続現象の中身

2.3 量子(エネルギーにも分子のような最小単位)

2.4 光量子(アインシュタインによる光電効果発見)

2.5 電子波(ド・ブロイ波)

2.6 電子の自転(スピン),電子磁石

2.7 分子,原子の構造

(1)分子(物質の性質を保っている最小微粒子)

(2)原子構造のあらまし

(3)励起,電離および光の吸収,放射

(4)X線,オージェ電子放射

2.8 反転分布(励起準位の上位にある原子数密度が下位より多い)

2.9 量子井戸と量子ドット

2.10 超電導と磁束量子

(1)超電導のあらまし

(2)ジョセフソン効果と磁束量子

コラム 岡部金治郎博士によるマグネトロン発明のいきさつ



第3章 各種の量子装置

3.1 レーザ

(1)優れものレーザ

(2)原子,イオン,分子レーザ

(3)半導体レーザ

3.2 ルビジウムRb原子発信器

(1)高感度Rb磁力計

(2)発信器の基本とルビジウム周波数標準器

3.3 超電導量子干渉(SQUID)磁力計

3.4 GMRとTMR

(1)トンネル効果とスピンフィルタ

(2)GMR

(3)TMR

3.5 HEMT(高速度トランジスタ)

3.6 フラッシュメモリ(トンネル効果による書き換え自由な不揮発性メモリ)

コラム 青色レーザと光ディスク



第4章 期待される量子装置

4.1 MRAM(TMRをメモリセルとした書き換え自由な不揮発性メモリ)

4.2 量子ドットレーザ

(1)量子ドットの物性

(2)量子ドットの製法(薄膜技術)

(3)量子ドットレーザ

(4)従来技術との差異

コラム デジタル情報の量子



参考文献

索 引

はじめに

はじめに

私たちの家の中を見渡すと、携帯電話、パソコン、薄型テレビ、デジタルカメラ等々、実に多くの電子機器があることに気付く。また、駅の自動改札、銀行のATM、病院の電子カルテなど、社会生活の重要な部分にもこれらの機器が不可欠になっている。

こうした機器を正しく機能させているものが、半導体やストレージ(外部記憶装置)である。これらは機器の中にあって目立たないが近年、ますます小型化し、飛躍的な進歩を遂げている。そしてこの小型・高性能化の元となっているのが、半導体の“最小機能素子”や、ストレージの「ビット(コンピュータが扱うデータの最小単位)」を蓄える“メモリセル”の微小化である。極めて微小な世界では、電子が波の性質を示すことはよく知られているが、いまやこれらの素子やセルはこの電子の波の波長程度にまで小さくなってきているのである。

物質には分子や原子という素量があるため、質量はこの素量単位で増えて行くのであって決して連続して増えていくのではない。これと同様にエネルギーという“モノ”ではないものについても素量がある。これを“量子”という。様々な素子が微小化したとき、この素量としての量子がまさに問題になる。量子としての電子の挙動が素子の動作に様々な影響を与えるのである。

こうした量子物性を基礎にした装置もレーザをはじめとして多くの機器が実用化されている。これらはいずれも従来の“電子工学”による装置・機器と比べて桁違いに高性能である。これからのモノづくりに“量子工学”の知識が必要不可欠なゆえんでもある。本書では、一般に馴染みのない電子、量子の性質を紹介するとともに、これらの応用として実用化されている様々な量子装置・機器の原理と仕組みを取り上げる。モノづくりに携わる様々な方々、これからこうした装置・機器の開発に臨む技術者や学生、また様々な立場でこれに関係される方々の参考になれば幸いである。

本書の執筆に当たって、筆者がご指導いただいている垂直磁気記録の発明者、岩崎俊一教授にこの場を借りて感謝を申し上げます。



2009年5月

小林春洋

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