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勝ち残るための超SE術

定価(税込)  2,160円

著者
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サイズ A5判
ページ数 180頁
ISBNコード 978-4-526-06263-6
コード C3034
発行月 2009年04月
ジャンル コンピュータ・情報

内容

現在のSEには、社会科学(投資、見積、提案)と自然科学(開発、運用、保守)、人間科学(役割、資質、育成)の3分野にわたる総合的な知識・能力が求められている。本書は、その「新常識」を著者らの豊富な経験・見聞をベースにまとめた、SEのための仕事術の指南書。

目次

「勝ち残るための超SE術」 目次



まえがき



1 投資・見積・提案

(「カネ」社会科学中心)

1-1 「システム開発費の1対2対1.5の法則」の非常識

1-2 システム開発費は設計の結果で見積もるものではない

1-3 提案に金を払わないくせに「よい提案を」といわれる

1-4 いわれたことだけ提案していませんか



2 開発・運用・保守

(「モノ」自然科学中心)

2-1 仕事をなくしてしまう「仕組み」の設計をするのが上級SE

2-2 間に合わないシステム開発は意味がない

2-3 リスク管理の王道

2-4 「グローバルスタンダード」という言葉に踊らされるな

2-5 仕様凍結後に「仕様変更」は起こるものである

2-6 チームプレイではやらない方がよいことがある

2-7 「できる」といったが「やる」とはいっていない

2-8 「お客様は神様」ではない、「駄々っ子」である



3 役割・資質・育成

(「ヒト」人間科学中心)

3-1 システム開発の上流工程はアートである

3-2 上級SEはコンピュータの動きではなく人の動きがわかる人

3-3 匠の世界から技術者の世界へ

3-4 経営トップは情報処理技術を知らなくてよい

3-5 トップのリーダシップを必死で引き出せ

3-6 客受けのよい「改善の神様」は問題児

3-7 ITベンダを育てず、自ら首を絞めるユーザ企業

3-8 技術音痴だってよいではないか

3-9 プロジェクトマネージャでなく、プロジェクトリーダを目指せ



あとがき

著者紹介

はじめに

まえがき



この本は、「ITを用いて競争に勝ち抜ける会社にする」使命をもっている人、あるいは、そのことに有効な提案をしなければならない人に、新しい考え方(新常識)を示すものである。

昔の大型機・オフコンの時代に情報処理システムの開発や運用に携わった人たちには、コンピュータエンジニアリングやソフトウェアエンジニアリングなどの技術面の知識が重要であった。それは考えることの大半が、それまで人が行っていた業務処理をITでどのように正確かつ迅速に処理する仕組みに変えるかということだったからである。経営上の課題解決やそのためのユーザ部門との調整は、ユーザの仕事とされていた。ITは「仕事の道具」だったのである。

今の時代、ITは単なる「仕事の道具」ではない。ITは「ビジネスの道具」になったのである。顧客とのビジネスコミュニケーションの道具、マーケティングの道具、ビジネスを変革する道具、新しいビジネスを創り出す道具に進化してきたのである。ITがなければビジネスが成り立たないことも当たり前の時代である。「仕事の道具」から「ビジネスの道具」へ、ITのパラダイムシフトが起こっていると考えられる。

ただ、誤解があると困るので注記する。ITそのものはあくまで「仕事の道具」であることに変わりがなく、ITを利用するときに「ビジネスの道具」であることを意識しなければならないという意味である。

「ビジネスの道具としてのIT」を扱うのは厄介である。それは、IT技術だけ考えて済む問題ではなく、経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」そしてもちろん「情報」をIT技術と一体で考える必要に迫られるからである。ユーザ企業で経営に貢献するシステムを円滑に構築・運用していく使命をもつ人たち、すなわち、システム技術者(上級SEと呼ぶ)やシステム管理者、また、ITベンダの上級SEや管理者、これらの人たちは、IT技術を経営の中で的確に使うことを示さなければならない立場にある。それができないと経営に役立つITの仕組みを作ることができないからである。

このことは、上級SEをはじめシステム関連の管理者に新たな知識・能力が求められることを意味する。新たに必要とされる知識・能力を、昔と比較して図Aに示す。



昔求められていた知識・能力は、自然科学的なものが大半であり、プロジェクト管理のための人間科学的なものが少し必要とされていた。現在は、自然科学と社会科学と人間科学の3つの分野の総合的な知識・能力が求められる時代である。この3つの分野の知識・能力を説明する。



(1) 自然科学的な知識・能力

システムアーキテクチャ、ソフトウェアエンジニアリングなどIT技術面の知識をもち、応用できる能力を指す。昔に比べて技術の細分化が進み、細かく分かれた職種を束ねるための統合的知識・能力が加わっている。



(2) 社会科学的な知識・能力

市場や企業経営に関すること、すなわち、ビジネスの進め方全般に関する知識をもち、応用できる能力を指す。ユーザと会話ができる程度の基礎的なものが必要とされる。



(3) 人間科学的な知識・能力

システムを構築する際のリーダシップに加えて、システムの使い勝手やデザイン、システム利用者の行動心理、SEの教育・育成など、人の行動に関する知識をもち、応用できる能力を指す。



「ビジネスの道具としてのIT」を扱うためには、この3つの知識・能力を総合的に活用できることが必要である。しかし、いまだに自然科学的な知識・能力だけに頼って行動している人や、ITのパラダイムシフトに対応できていない人が多いのではないか。以下に本書が示す新常識の例を示す。

システム開発費の見積もりに関する常識は「概要設計を終えてから、ファンクションポイント法など科学的な方法でシステム開発費を見積もることが望ましい」ではないかと思う。これは「計画時の開発費と実際に発生した開発費の差をできるだけ小さくする」という自然科学的な発想から生まれたものである。

一方、本書は「概要設計の結果として開発費を算定するのではない。自動車の新車開発と同じように原価企画の方法で行う。システムに許容される原価を最初に明確にし、経営上の狙いを実現するのに必要な機能を確認し、その構築方法を工夫することが重要である」と新常識を提案している(本書p.16「?−2」参照)。これは社会科学的な発想から生まれてきたものである。

最近、システム開発・運用を担う職場は若い人に敬遠されている。俗に「3K職場(Kの意味はいろいろあるが、きつい、帰れない、休暇がとれない、結婚できないなど)」といわれているが、敬遠される真の原因は仕事に魅力がないからであると思う。これは上級SEをはじめ、システム関連の管理者の多くが、「経営に貢献している」という実感、つまり「やりがい」を感じられなくなっていることと関係が深いと思う。

本書で示す21の「新常識」は、ユーザ企業の上級SE・管理者、ベンダ企業の上級SE・管理者の仕事に対する取り組み方に深く関係している。筆者らの問題意識を図Bに示す。

本書が読者の共感を得て、より経営に貢献できたと喜んでいただけることを願っている。

日頃から研究会活動を通して、多くの啓示をいただいた大阪電気通信大学名誉教授 石桁正士先生に感謝いたします。

なお、本書に登場する事例は、著者らの経験・見聞を参考にして創作したものである。

[綿田 弘]

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