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絵とき「熱処理」基礎のきそ

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06262-9
コード C3053
発行月 2009年04月
ジャンル 金属 機械

内容

熱処理を中心とした表面処理に関するひととおりの知識をわかりやすく解説。熱処理の理論はやや難しいと感じられるだろうが、本書ではできるだけ平易に説明し、体験上の事例を上げて入門的なガイドブックに構成している。

目次

目 次



はじめに

第1章 熱処理の基礎

1―1 材料と元素記号

1―2 鉄ができるまで

1―3 鉄と鋼と鋳鉄

1―4 鉄と炭素の状態図

1―5 変態と熱処理

1―6 Fe―Fe3C状態図内の組織

1―7 合金元素の働き

1―8 鋼の焼入性



第2章 熱処理の技術

2―1 温度計測

2―2 応力について

2―3 成分燃焼と火花

2―4 熱処理の概念

2―5 熱処理の設備

2―6 熱処理の操作

2―7 焼入用冷却剤

2―8 関連する現象と熱処理手法および考え方



第3章 加工熱処理と恒温変態の利用

3―1 鍛造焼入れ

3―2 恒温変態の理論

3―3 恒温変態を利用した熱処理



第4章 表面硬化

4―1 浸炭焼入れ

4―2 火炎焼入れ

4―3 高周波焼入れ

4―4 硬化層深さ

4―5 窒化処理

4―6 ショットピーニング



第5章 実用鋼と熱処理

5―1 一般構造用圧延鋼

5―2 機械構造用炭素鋼

5―3 機械構造用合金鋼

5―4 工具鋼

5―5 浸炭鋼

5―6 窒化鋼

5―7 高速度鋼

5―8 快削鋼

5―9 ばね鋼

5―10 軸受鋼

5―11 高マンガン鋼

5―12 ステンレス鋼

5―13 耐熱鋼

5―14 鋳 鋼

5―15 鋳 鉄

5―16 焼結鋼



第6章 熱処理の欠陥事例と管理

6―1 異種材の排除

6―2 熱処理の評価と管理

6―3 材料試験と機械的性質

6―4 空気焼入れ鋼の熱処理

6―5 焼入歪

6―6 割れの観察

6―7 浸炭焼入れのトレサビリティ

6―8 高周波焼入れと温度測定

6―9 混合機の羽根材の使用経緯

6―10 鋳鋼の焼ならし

6―11 冷却剤の管理

6―12 基準書、マニュアル書の作成



おわりに

はじめに

はじめに

産業機械メーカーに就職した筆者が、1ヵ月の新入社員教育を受けたのち、はじめて職長として配属された職場が熱処理工場でした。

工場の人員は、1名の職長と老若あわせて40余名の作業者で構成され、24時間の3交代制で毎月総重量100トンを超える熱処理を行っていました。熱処理工場は、産業機械製作の工程内の1部門でしたから、自社製品に使う部品の“焼入れ焼戻し”、“浸炭焼入れ”、“高周波焼入れ”などを中心に、数パーセントの売上げながら社外から持ち込まれた部品の熱処理も手がけていました。

職長という立場で配属されたものの、作業者には熱処理一筋のベテランもいましたから、監督をしながら作業の指示を出すためには、実務のなかで必死に勉強しなければなりませんでした。そのため厳しい係長が付きっきりで指導してくれました。

最初は火色の目測でした。練習用のNi(ニッケル)製ボールを加熱し、火色を目視して温度を当てるというものです。毎日毎日、焼けたボールを睨みながら熱電対で温度計測をするという訓練を繰り返した結果、2カ月後には誤差10度以内に当てることができるようになりました。火色の目測は、高周波焼入れなど計器による計測をしないで加熱する場合や、日常の作業の監督にたいへん有効な技能です。

こうした訓練の後、いよいよ新人監督業が始まりました。少し慣れるにつれて熱処理の問題点が分かり、図面に書かれた熱処理の指示にも疑問が生じてきます。とはいえ熱処理は日々そのときが勝負です。仕事は余裕のある判断や処理を待ってくれませんから、ついつい急いで済ますことを優先してしまいます。だから図面の指示する数字を鵜呑みにし、たとえ疑問が湧いてきても追求が疎かになりがちになります。

しかし、設計者が図面に描いた内容の背景は何かを推し量り、その部品の材料の選定と指示した数字を納得して作業を行うことができれば、熱処理の結果は間違いないものとなります。それには部品の機能を確認したときに、おかしいという疑問点があれば設計者と相互に検討を重ねて図面を修正することが必要です。熱処理は多くの場合、単純に図面通りの処理を行えばよいというわけではないからです。

正しい熱処理を行うためには最初に材料の本質を把握することが重要です。材料を知らないで熱処理を行うことにはできません。さらに熱処理は信用や信頼が最も必要な作業だと言えます。たとえば図面に焼入れ焼戻し(調質)の硬さを指示した数字があるとします。材料に応じて正しく調質し、硬さを指示通りの値に合わせるには、本来ただ1つの正しい作業方法しかありません。しかし、“とりあえず”この数値に収める方法ならば幾通りも存在しています。すなわち熱処理の過程でうまく行かなかったときでも、後工程で手直し指示する硬さにして合格にすることができるのです。熱処理は材料内部の改変ですから、正しく処理が行われたか否かを外観から判断することができません。ここに“品質の信頼性”という基本的な事柄が重要である理由があります。熱処理に関係する技術者はいつもこの点を念頭において作業と管理監督を進めていかなければならないのです。

本書では、熱処理の基礎をやさしく解説すると同時に、筆者が実際に体験した実例を紹介してあります。入門書、概論として大学・高専や工業高等学校の教科書あるいは企業内の新人教育に最適な内容としたつもりなので、ご活用いただけたら幸いです。



2009年4月 坂本 卓

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