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絵とき「破壊工学」基礎のきそ

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-06225-4
コード C3053
発行月 2009年03月
ジャンル 機械

内容

「力を受けてものが壊れる」あるいは「力を受けているのもかかわらず壊れない」といった領域を扱う学問が破壊工学である。本書では、破壊工学の諸概念をわかりやすく解説するとともに、この学問が破壊事故を防ぐうえで有益なアプローチと知見を持っていることを示す。

谷村康行  著者プロフィール

谷村 康行(たにむら やすゆき)
1951年4月 山口県生まれ
1976年3月 北海道教育大学釧路校卒業
1982年2月 (株)ホクハイ入社
1992年4月 (学)日本航空学園千歳校(現日本航空専門学校)に勤務
1994年~ (社)日本非破壊検査協会主催の技術講習会講師指導員
2000年4月~航空技術工学科学科長
2006年5月 (社)日本非破壊検査協会 石井賞受賞
●主な著作物
「超音波深傷入門パソコンによる実技講習」(社)日本非破壊検査協会、2000年3月、パソコンで実技演習するソフトウェアを担当(本は、5人の共同執筆)。
「シルクロード遙か」本の風景社、2001年、自費出版恩師原稿の編集。
「DVD非破壊検査入門」(社)日本非破壊検査協会、2005年12月、編集委員。超音波探傷部門を担当。
「絵とき『超音波技術』基礎のきそ」日刊工業新聞社、2007年

目次

はじめに
 
第1章 強度と破壊
1-1 破壊を知る
1-2 ぜい性破壊と延性破壊
1-3 破壊の最弱リンク説
1-4 応力と強度
1-5 引張試験
1-6 弾性変形と塑性変形
1-7 物質の結合力
1-8 原子間力とフックの法則
1-9 理想強度と現実の強度
1-10 分離破壊とせん断破壊
1-11 転位とすべり
1-12 転位のすべりを妨害するもの
1-13 垂直応力とせん断応力
1-14 靱 性
 
第2章 力のかかり方と破壊
2-1 引張り
2-2 圧 縮
2-3 せん断
2-4 曲 げ
2-5 ねじり
2-6 応力集中
2-7 延性材料の破壊と応力集中
 
第3章 き裂と破壊
3-1 応力集中とき裂
3-2 グリフィスき裂
3-3 延性材料のぜい性破壊
3-4 き裂に対する延性材料の抵抗
3-5 き裂先端付近での応力場の激しさ
3-6 応力拡大係数
3-7 破壊靱性
3-8 破壊靱性を考慮しなかった失敗例
 
第4章 部材の中のき裂と破壊靱性試験
4-1 部材の形状と応力拡大係数
4-2 三次元き裂の応力拡大係数
4-3 パソコンでNewmanRajuの解
4-4 き裂先端近傍での塑性域
4-5 破壊靱性試験
4-6 平面ひずみ靭性
4-7 安定破壊と不安定破壊
4-8 弾塑性破壊
 
第5章 時間経過が伴う破壊
5-1 疲労破壊
5-2 金属疲労とサイクル
5-3 金属疲労の種類
5-4 金属疲労のメカニズム
5-5 疲労き裂進展の法則性
5-6 疲労き裂進展の推定
5-7 寿命予測の実際
5-8 材料選択のジレンマ
5-9 腐 食
5-10 応力腐食割れ
5-11 クリープ破壊
 
第6章 き裂の検出と計測の技術
6-1 き裂の検出と計測
6-2 表面き裂の検出
6-3 内部き裂の検出
6-4 き裂の計測
 
第7章 破壊を未然に防ぐ技術
7-1 安全率と安全寿命設計
7-2 フェイルセーフ構造
7-3 損傷許容設計
7-4 公園遊具
7-5 原子力発電所

ミニ実験1 つまようじで転位と転位のすべり体感
ミニ実験2 水飴の延性破壊とぜい性破壊
ミニ実験3 「応力拡大係数を理解するソフト」で遊んでみよう
ミニ実験4 アルミホイルで安定破壊と不安定破壊
ミニ実験5 針金の疲労破壊実験
コラム1 弱点を補強して強い構造を作る
コラム2 力と応力の単位換算
コラム3 金属と延性
コラム4 タイタニック号の事故
コラム5 アラン・グリフィスと航空機
コラム6 応力拡大係数の単位
コラム7 航空機の窓と破壊力学
コラム8 疲労破面の縞模様
コラム9 材料強度のばらつき

あとがき
参考文献
索 引

はじめに

 タイトルから「ものの破壊の仕方」が書いてあると考えて本書を手に取った方がいらしたら、ごめんなさい。破壊の仕方や破壊工作の方法を書いているわけではありません。ものはどうしてどのように壊れるのだろう、力を受けているにもかかわらず壊れず形を保っているのはなぜなのだろう、ものが破壊する条件はどのようなものだろう、ものの破壊が事故につながらないようにするにはどうしたらよいのだろう、これが本書の内容です。

 人類は道具を使うようになってから、次第に大きな力・エネルギーをコントロールできるようになり、そのことで欲求を満たし生活を便利にしてきました。反面、意図しない場面で乗り物・建物・機械などが壊れると、事故につながることがあり、大きな被害が出るようにもなりました。どうしたら事故をなくし安全で安心な生活を送れるのか、人類の知的な探求がこの領域に向かうのは必然です。産業革命以後、多くの事故による犠牲を経て材料力学や構造力学が確立され、モノづくりに活かされてきました。

 材料力学では、力を受けた材料がその形を保とうとする内部の抵抗力を「応力」と考え、それぞれの材料が生じさせることのできる応力の限界をその材料の「強度」とします。応力が強度以下になるように設計をすれば、破壊は防げるといえます。こうして経験や勘に頼るのではなく、応力を強度以下にする合理的な設計が可能になり普及するにつれて、事故は大幅に減りました。

 それでもなお破壊事故がなくなったわけではありません。確実な材料試験のデータを使い、きちんと設計計算がされて作られているにもかかわらずです。とくに、材料中に欠陥があったり、使用中にき裂が発生したりすると、当初想定していた力よりもずっと小さい力で壊れることがあります。

 本書では、ものを壊さないように、事故を起こさないようにするために、材料選択において何に気をつけなければならないのかの観点から、ものが壊れるという現象を考える際の基礎になることを学びます。また、破壊に至る前に兆候を見つけて対処する技術について解説します。破壊とはどのようなことか、破壊を防ぐための技術はどのようなものか、こうした広い領域を工学的に扱うという意味で破壊工学という用語を本書のタイトルにしました。それぞれの領域で専門的に細分化された書籍はありますが、初めて学ぶ人や他の分野にいて教養として学ぼうとする人にとっては難解に見えます。

本書では専門的な学習の一歩手前で、基礎的な考え方を学ぶことを目的とします。また本書では、材料力学が主に扱う弾性変形の範囲を超えて、塑性変形やき裂の進展から最終的な破壊までを考えます。材料力学や構造力学の知識があると理解が深まりますが、そうした予備知識がなくても読み進めることができるように配慮します。

 工学において数式は現実を簡潔に説明する「ことば」であり、未だ経験していない現実を予測できるツールでもあります。さらに本書では数式に頼らない説明を心がけますが、必要最小限記載しています。内容を大まかに掴むのであれば数式を飛ばして読むことも可能です。重要な関係式については、パソコンに計算してもらうフリーソフトウエアを用意しました。そのソフトウエアで遊ぶことで関係式の意味がビジュアルに理解できるよう工夫しています。

2009年3月
著 者

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