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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい 石炭の本

定価(税込)  1,512円

監修
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06220-9
コード C3034
発行月 2009年04月
ジャンル ビジネス 環境

内容

近年、石炭の使用量が急激に増えてきている。なぜなら、石炭の液化、ガス化技術、クリーンコール技術、水素への応用などの分野で、研究開発が進み、新技術が実用化レベルに達してきたからだ。本書では、石炭の基本から、この新技術を中心に、注目集まる石炭についてわかりやすく解説していく。

目次

目次



はじめに



第1章

石炭っていったいどんなものだろう

1 石炭はどうやってできるのだろう 「石炭の生成・成因」

2 石炭は穴だらけ 「石炭の空隙構造」

3 謎の多い石炭の化学構造 「石炭は何からできているのだろう」

4 石炭の組織はどうなっているのだろう 「マセラル(石炭組織成分)とは」

5 石炭はどんな燃料なのか 「石油、天然ガスと比較した燃料としての特徴」

6 石炭にもいろいろな種類がある 「石炭の分類」

7 石炭はどうやって使われてきたのか 「木炭から石炭そして石油へ」

8 石炭の埋蔵量はどうやって決めるか 「単純ではない埋蔵量計算」

9 石炭はどこにあるのか 「世界の生産量、埋蔵量分布、可採年数の推移」



第2章

石炭の探査 ・ 採掘・輸送・貯蔵

10 石炭はどうやってみつけるのか 「石炭層を探す」

11 石炭はどんな掘り方で取り出すのか 「露天掘と坑内掘」

12 超大型機械が活躍する露天掘技術 「大規模設備で経済性を追求」

13 地下での石炭採掘─坑内採掘 「石炭生産の6割を占める」

14 坑内採掘では通気が大切 「新鮮な空気を送る」

15 坑内採掘には安全確保が不可欠 「大切な落盤、自然発火、出水対策」

16 石炭の価値を上げる“選炭” 「岩石を選別して排除する」

17 石炭を運ぶのはとても大がかり 「鉄道・港・コールターミナル」

18 コールセンターはいろいろな役割をもつ 「輸入炭の受入・貯炭・出荷」



第3章

石炭を上手に使うプロセス

19 石炭を利用するための基本プロセス 「石炭のいろいろな利用法」

20 石炭を燃焼する 「微粉炭に粉砕して燃焼」

21 石炭をクリーンなガスにする 「湿式法と乾式法」

22 石炭を液化する 「石油の代わりに使う」

23 石炭を熱分解する 「石炭化学の中核」

24 石炭を使って鉄を作る 「大量に使われるコークス」



第4章

石炭を利用した発電とは?

25 石油からの代替が進む発電エネルギー 「注目される石炭」

26 石炭をクリーンで高効率に利用する技術 「クリーンコールテクノロジー(CCT)」

27 石炭による火力発電の仕組み 「たくさんの設備が必要な発電所」

28 発電のために石炭を効率よく燃やす 「4つのボイラ技術」

29 発電効率を向上させるための技術 「高温・高圧の蒸気をどう作るか」

30 石炭をガス化、その燃焼エネルギーを使う 「石炭ガス化複合発電とは?」

31 CCSとはいったいなんだろう? 「CO2分離技術」

32 CCSに期待される温暖化防止 「CCSの秘められたポテンシャル─ゼロエミッション」



第5章

発電以外に石炭を利用する技術

33 石炭を加熱すると溶ける?溶けない? 「石炭の粘結性」

34 石炭から製鉄用コークスを作る 「コークスの作り方」

35 石炭から炭素材料も作れるの? 「石炭の応用範囲は広い」

36 石炭中のおよそ半分は使い道のない低品位炭 「低品位炭と高品位炭」

37 低品位炭中の水分・灰分・硫黄分が問題 「高品位炭への改質技術」

38 低品位炭を使えるようにできないの? 「改質技術の具体例」

39 これからのコークス製造技術 「期待されるSCOPE21」

40 オイルシェールも将来有望な資源 「石炭の乾留技術の応用」

41 その他の未利用炭素資源 「流れない油を使うオイルサンド、オリノコタール」



第6章

環境にやさしい石炭資源の使い方

42 煙をきれいにするには 「排煙処理のいろいろな技術」

43 日本の排煙処理技術は世界一 「日本の石炭火力設備は新しい」

44 発生した石炭灰も大事な資源 「セメントや土木分野で使われる」

45 石炭は気体燃料の宝庫 「肉眼では見えない穴が多数存在」

46 石炭採掘時にもメタンは出る 「CMMとCDM」

47 技術の進歩でガスを経済的に取り出す 「CBM(コールベットメタン)の新しい生産法」

48 石炭と二酸化炭素は仲良し 「CBMの増進回収」



第7章

石炭をとりまく国際情勢

49 石炭開発プロジェクトの経済性 「数千億円の投資が必要!?」

50 世界の石炭権益のはなし 「資源保有国と資源会社」

51 石炭メジャーとは何を指すのか? 「メジャーによる寡占化の流れ」

52 石炭の需要と供給動向 「地産地消と輸入・輸出」

53 石炭の需給のギャップを貿易で埋める 「石炭の世界貿易」

54 石炭価格はどのように決まるのか 「石炭価格形成の実態」

55 伸びる需要に、産炭国はどうするか 「インドネシアと中国、豪州」

56 石炭価格の他の燃料価格との連動 「需要によって価格は変わる」

57 石炭先物取引市場の創設 「アジア太平洋市場でも興味津々」

58 石炭から経済的に石油の代替品を作る 「石炭から人造石油の製造事業の海外展開」



第8章

石炭の将来はどうなるのか

59 ガス化を核とするCCTの将来像 「石炭ゼロエミッションへの道」

60 石炭のエネルギー利用で広がる可能性 「石炭利用エネルギー社会」

61 究極のクリーンコールとは 「炭化水素原料としてのプレミアムコールの製造」

62 低品位炭から石油、ガス、一般炭、原料炭代替を作る 「これからの低品位炭の利用技術」

63 将来の炭素材料源としての石炭 「期待される多種多様な用途」

64 これが究極の石炭開発・利用技術 「地下でガスを作る」

65 石炭は将来エネルギーの主役に戻れるか? 「石油・天然ガス・石炭のバランスが大事」



【コラム】

●石炭で苦杯をなめたバルチック艦隊

●炭坑節

●南アフリカSasol社のあくなき挑戦

●石炭産業の衰退と第一・二石油危機以後の石炭見直し

●黒いダイヤと呼ばれた石炭

●石炭の古くて新しい都市ガスとの関わり

●日本の財閥は炭坑から



おわりに

参考文献

索引

はじめに

はじめに



人類は18世紀の中ごろまで薪炭で暖をとり料理をしていました。農耕などの動力は人力や牛馬など家畜に頼っていたのです。石炭が大規模に蒸気機関の動力として用いられるようになったのは1760年から1800年代にかけての産業革命以降です。19世紀には製鉄業が石炭を使って発達し、20世紀前半には化学工業や発電事業に利用され、石炭がエネルギー源、原料の主役となり大量生産、大量消費のための乱掘が行われました。しかし1910年ごろのシェア75%をピークに減退し、1950年代には、石油が石炭に替わって急速に伸びてゆきました。

わが国でも大正、昭和初期には国内の三池、常磐、夕張炭田が開発され、石炭が殖産興業の原動力となりました。明治時代に銀座に燈ったガス灯のガスは実は石炭から造られていたのです。当時、石炭は「黒ダイヤ」と呼ばれ石炭鉱業会社から多くの財閥が誕生しました。しかし、わが国の石炭生産量は、1961年の5541万トンをピークに次第に安価な輸入炭に替わられ斜陽の一途をたどります。1965年には、わが国の一次エネルギー総供給は、現在の3分の1に当たる石油換算約1・69億トンで、その60%が石油、27%が石炭、11%が水力で天然ガスは微量という状況でした。そしてそれから40年の間、わが国は中東諸国から大量の石油を円高基調の追い風に乗り安く輸入できたためにアメリカに次ぐ世界第2の経済大国に発展してきたのです。

現在では、1990年代からクロースアップされてきた地球環境問題が化石燃料消費者に環境負荷コストを転嫁し、エネルギー企業の収益に圧し掛かっています。さらに2005年頃からにわかに騒がれ始めた在来型石油の供給能力が、旺盛な市場の需要に追いつかなくなるのではないかという疑心の中、2008年頭から1バレル100ドルを超える原油価格高騰が現実となりました。米国のサブプライムローンの破綻によってもたらされた金融危機と株価・証券の暴落、世界経済不況は資源ナショナリズムを台頭させ将来の厳しい資源争奪の国際情勢が懸念されます。

では、こんな状況に、資源に乏しい日本はどう対処したらよいのでしょうか。若い世代に将来のエネルギーや資源の供給不安を先送りしないよう政府や企業は長期的洞察を基に最適な戦略を立て危機を最小にする緩和策を早急に実施すべきでしょう。2006年5月の新・国家エネルギー戦略は確かにその目的の一助として策定されましたが、その後、時々刻々と変化する最近のパラダイム変化に即刻再検討を余儀なくされています。一般の国民も資源・エネルギー問題の正しい知識を持つことが大切です。本書はそのための「石炭」についての啓蒙書です。

石炭資源の近年の消費推移をよく見ると、先般の原油価格高騰の影響により、石炭資源の利用見直しと資源量豊富な石炭回帰が喚起されたようです。事実2007年では石炭が世界の一次エネルギーの29%へとシェアを増しています。可採年数が133年と長いことは資源供給リスクの安心感をもたらします。将来のエネルギー高価格時代を見据えて石炭をガス化して環境に適応した液体燃料に変換し高付加価値を付ける石炭の高度利活用のルネッサンスが期待されます。本書はその鍵となり、羅針盤となるでしょう。

このトコトンやさしいシリーズでは、既に「石油の本」と「天然ガスの本」が一昨年と昨年の春に出版されています。本書「石炭の本」を加えると化石エネルギー資源の液体、気体そして固体の御三家のすべてが網羅される3部作となります。どの本も、やさしく理解できるよう「ビジュアル化」「見える化」に心がけ、しかも最新のデータ・資料に基づいた多くの最新技術を紹介しています。皆さんも、本書を手にして今まで忘れかけていた石炭資源の価値と利活用技術を再認識して頂きたいと存じます。

本書の編集と執筆に当たっては石炭鉱山学を専門とする東京大学の島田荘平先生を編集委員長に編集委員会を組織し、(社)日本エネルギー学会会員、(財)石炭エネルギーセンター、(独)産業技術総合研究所、民間企業の石炭技術・事業経営の専門家など大勢の方々のご協力とご尽力により一年という短期間で上梓できました。 誠に喜ばしいことです。一連の3部作を通して小職の良き相談相手となり、巧みに編集事務をこなされた島村常男氏に心から感謝申し上げます。



2009年4月

芝浦工業大学MOT大学院教授 東京大学名誉教授

監修 藤田 和男

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