買い物かごへ

「設計力」こそが品質を決める
―デンソー品質を支えるもう一つの力―

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-06194-3
コード C3053
発行月 2009年01月
ジャンル 機械

内容

これまでモノづくりを支える源泉は、現場の改善活動や技能といった現場力だと認識されてきたが、より一層の競争力を求めるにはより上流での取り組み、すなわち設計力の増強が不可欠と言われている。本書は、モノづくりの競争力に大きく寄与する設計力について、いかにそれが決定的な意義を持ち、具体的にどんな知識や力が必要になるか、そしてそれらを効果的に生かす開発設計の仕組みをどう構築するかをデンソーの例を紹介しながらわかりやすく解説した読み物。

目次

目 次

はじめに



第1章 なぜ設計力が必要か

1―1 モノづくりはどんな力に支えられて発展したか

1―1―1 どうして設計力を取り上げたか

1―1―2 モノづくりを支えるもう一つの柱「設計力」

1―2 設計にしかできないこと

1―2―1 図面が内蔵する問題点は現場力ではカバーできない

1―2―2 製品の素性を決める設計力、それを実現する現場力

1―2―3 現場力で設計時の目標値を超えることはできない

1―3 現場力と設計力の和が総合力となる

1―4 商品開発の全体のなかで設計力が受け持つ範疇

コラム 海外に知れ渡る日本の“現場力”

コラム 設計部署の“商品”

コラム 製品品質を支える“良し”としない企業風土

コラム 自然は騙せない

コラム マレーシアの自動車産業

コラム 研究と設計とは違う



第2章 設計力はどんな役割を果たしているか

2―1 商品開発のプロセスは長い

2―1―1 モノづくりにはどのくらいの時間が掛かるか ―自動車の開発期間

2―1―2 「開発段階」はなぜ長いのか

2―1―3 図面化だけが設計段階の仕事ではない

2―2 設計段階では具体的にどんな仕事をするか

2―2―1 自動車フルモデルチェンジ時のシステム開発

2―2―2 開発段階から生産段階までを順を追って見てみよう

2―3 設計者には指揮者の能力が求められる

2―3―1 開発段階ではどんな力が必要か

2―3―2 設計段階に必要な力

コラム 商品開発に近道なし

コラム 想定外はいつでも起こる



第3章 新規品と既存品で異なる設計力が 必要になる

3―1 設計者に必要な6つの設計力

3―1―1 つくろうとする製品の曖昧部分を解決する

3―1―2 設計力のなかの先行開発工場

3―1―3 設計力のなかの量産設計工場

3―2 製品の新規性にはレベルがある

3―2―1 全く新しい発想から生まれた“革新的な製品”

3―2―2 幾度かのマイナーチェンジを経て 大幅見直しした製品“次世代製品”

3―2―3 基本方式を変えずに技術・構造・材料を 置き換える“次期型製品”

3―3 既存製品の開発に必要な設計力

3―4 次世代型製品の設計に必要な設計力

コラム ネック技術を大きく交代させる ―次世代製品開発の例

コラム コスト半額目標を達成する―次期型製品の例



第4章 設計の段階ごとに必要なさまざまな設計力

4―1 量産設計ではどんなことをするのか

4―1―1 量産設計(設計プロセス)のねらい

4―1―2 設計が原因の不具合・故障が発生する理由

4―1―3 検討抜けを防止する仕組みづくり

4―1―4 量産設計の流れ―どのように課題つぶしをしていくか

4―2 お客様の欲しいものを具体的な仕様にする構想設計

4―2―1 商品仕様を製品仕様に落とし込む

4―2―2 構想設計で品質の80%が決まるわけ

4―3 品質を決定づける詳細設計

4―3―1 詳細設計で検討する品質

4―4 DRは効果的でないと意味がない

4―4―1 DRはどんな目的、タイミングで行うか

4―4―2 なぜDRをやっても品質問題が起こるのか

4―5 最後の砦、出図可否審議



第5章 どうやって設計力を伸ばすか

5―1 “自工程完結”できる設計力を身につける

5―2 設計リーダーが持つべき設計力

5―2―1 設計プロセスを支えるマネジメント力を備える

5―2―2 マネジメントの質を高めるツールを使いこなす

5―2―3 設計ノウハウの“見える化”によるレベルアップ

5―2―4 設計に必要な判断基準

5―2―5 ハイパーエンジニアになるための個の力

5―2―6 設計部署の風土改革力

5―3 設計者に求められるレベルは限りがない

コラム 間違いだらけのFMEA

コラム 自動車技術の総本山「SAE」

コラム ボトムアップで職場が変わる



第6章 設計力と現場力の相乗効果をねらえ

6―1 設計力と現場力は車の両輪



第7章 構想設計の進め方―実施例

7―1 新製品開発の目標

7―2 開発製品の選定

7―2―1 新製品開発の足場固め

7―2―2 新製品選定の方針

7―2―3 具体的新製品の選定

7―3 ダントツ性能を達成する

7―4 差別化技術によるダントツコスト達成

7―5 構想設計進め方の要点



おわりに 設計者へのメッセージ

はじめに

はじめに

これまで日本のモノづくりは、1970年代のオイルショックやその後の円高、また90年代初頭の大不況と、その都度危機を乗り越えてきたが、その力の源が“現場力”にあることは異論のないところであろう。“技能”“カイゼン”“生産技術”といった生産現場の力が大きな役割を果してきたのである。

しかし、こうした現場力の貢献を踏まえたうえで、筆者はあえて“設計力”こそが日本のモノづくりをいちばん上流のところで支え、成長させてきたと言いたい。では設計力とはどのようなものであり、なぜ大切なのか。それがまさに、この本のテーマである。

ここでいう設計力とは単純な図面の描き方を言うのではない。お客様の期待をモノとして具現化するにはどうしたらいいかを、理論に基づいた方法・手順で“見える化”する力のことを言う。つまり、お客様から注文という形で情報のInputを受けて、それを図面という形に見える化し、現場力へOutputするまでほぼ全ての活動に必要な力である。また別の言い方をするならば、品質(機能・性能・信頼性)を100%達成する方法を明確にするのが設計力であり、設計された中身を100%具現化するのが現場力とも言える。

わが国の現場力は、設計が多少難しい加工を指示(図示)しても、優れた技能、カイゼン、生産技術で乗り越えてきた。しかしながら、いかに現場力が優れていても、もともとの図面の品質が低ければできあがったものはそれなりになってしまう。つまりモノの品質やコストは設計力でほぼ決まってしまうのである。ここに設計力の重要性がある。



2009年は100年に一度と言われる不況に明けた。ここにきて成長に急ブレーキがかかり始めている。しかし、そうした中でもBRICsの自動車市場は米国のそれを上回る勢いであり、インドのタタ・モーターズは30万円を切る自動車を市場へ投入しようとしている。これからは、小さな車からいかに利益を確保するかが大切な課題となる。また、環境面からは自動車のCO2排出量の低減への一層の要求から、ハイブリッド車、電気自動車や燃料電池車など、形は同じでも、従来とは中身が違う「クルマ」への転換も促されるであろう。製品が複雑化・高度化する中で、より根本的な問題の解決が求められ、ますます設計力の重要性が増してきている。

本書は、筆者がデンソーで経験した設計力について、「それは一体何であり、どんな手法で行われるのか」、「設計力を用いた設計開発の実際」や「設計力を伸ばすにはどうしたらよいか」などを可能なかぎり例をあげて紹介したものである。開発・設計段階で品質をつくりこんでいく作業は極めて根気のいる作業となり、問題は山積する。しかし、筆者は、設計に携わる者は、これをやり遂げて初めて「設計者」と呼ぶに相応しい存在になると考えている。

本書が、読者ならびに読者職場の設計力増強の一助になれば幸いである。



2009年1月

寺倉 修

買い物かごへ