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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい塗料の本

定価(税込)  1,512円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06052-6
コード C3034
発行月 2008年04月
ジャンル ビジネス 金属

内容

職業訓練大学校の人気助教授と、日本油脂塗料部門の元技術部長がタッグを組み「トコトンシリーズ」に挑む!それぞれ立場の違うプロが、両者の視点から内容構成。塗装という工程が複雑に絡み、一般的にブラックボックスになっている「塗料」をわかりやすく、かつきちんと解説。環境規制による環境対応型塗料、また機能性塗料における可能性など、技術者のみならず、ユーザー側にも塗料・塗装に関する正しい理解が求められている近年、必携の一冊。

中道敏彦  著者プロフィール

1945年和歌山県生まれ。1969年職業訓練大学校卒業。1973年日本油脂株式会社入社。自動車塗料の開発に従事。自動車塗料技術部長、塗料研究所長を歴任。200年日油商事株式会社入社。取締役、日本化学塗料社長を歴任。現在、日本化学塗料株式会社顧問、工学博士(東京大学)、技術士(化学)

坪田 実  著者プロフィール

1949年富山県生まれ。1972年職業訓練大学校卒業。1974年山形大学大学院工学研究科高分子化学専攻修了。1975年職業訓練大学校助手。1985年工学博士(東京大学)。1987年職業訓練大学校助教授。現在、職業能力開発総合大学校専門基礎学科准教授、色材協会理事、(財)日本塗料検査協会理事、日本顔料技術協会理事。82年度色材協会論文賞、2006年度日本塗装技術協会論文賞を受賞。主に、塗膜の物理的性質、顔料補強効果、塗装技術の研究に従事し、論文、総説、解説など多数。

目次

第1章

塗料によって美しく

世の中を彩る塗料「素材を保護し、美観を与えられる材料」

塗料のルーツを探ってみよう「壁画にも漆にも人は色を求めていた遷」

洋式ペイントと日本の塗料工業の発展「洋式ペイントはペリー来航がきっかけ」

どれくらいの量の塗料がつくられているの?「生産量やタイプ別でどれくらい?」

塗料はどんな所に使われているの?「自動車から家庭用まであらゆるところに」



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第2章

塗料の成分を見てみよう

塗料の成分を見てみよう「塗料は多成分混合のハイブリッド製品」

塗料の形態を見てみよう「溶剤型から粉体まで形態によって特徴が決まる」

樹脂を選ぼう「目的・用途に応じた選択が重要」

乾燥するものと硬化するもの「塗料の成膜は物理的と化学的」

顔料を選ぼう「色の表現から充填剤まで」

溶剤を選ぼう「溶解力と蒸発速度が選択のポイント」

添加剤を選ぼう「少量で大きな効果を発揮する添加剤」

塗料をつくる「顔料分散と調色が重要なポイント」

粉体塗料をつくる「溶融混練と粉砕によって製造」



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第3章

塗料の塗り方とよくある塗装欠陥

塗料はこのように膜を形成する「塗料は塗膜になったらチョコとクッキーの2種類のみ」

塗る前に大事な素地調整「素地調整作業は塗料がよく付着するために不可欠」

塗装の憲法 その1「塗装の基本を守って、良い仕上げ」

塗装の憲法 その2「塗装系の原則を守り、塗装工程を着実にこなすこと」

塗料の塗り方「塗装方法の原理を理解し、適材適所に選択しよう」

液膜を転写する高速塗装「塗料を均一な厚みの液膜に加工する塗装方式」

浸せきして塗る方法「塗装の守備範囲は、鉛筆から宇宙まで幅広い」

メッキの原理で塗る水性塗装「被塗物の隅々にまで塗料を移行できる電着塗装」

はけ塗り、ローラ塗り「刷毛塗りの基本手順は塗装全般に通じる極意」

スプレー塗り「ひも状液体と空気を衝突させて霧にする原理を利用した塗装方法」

静電スプレー塗り「静電気を上手に使うと塗着効率に優れた塗装ができる」

塗装欠陥(1)「欠陥の発生機構を理解すれば、自ずと対策が立てられる」

塗装欠陥(2)「塗装の憲法を守って、保護と美観を達成しましょう」



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第4章

いろいろなところで使われる塗料

自動車を塗る「ソリッドカラーとメタリックカラー」

エコを重視した自動車塗装「水性か粉体か、クリヤコートが最後の課題」

車の塗装はこのように補修する「車補修塗装の工程と技能要素」

新幹線車両を塗る「乗用車並みの外観を達成する塗料と塗装」

航空機を塗る「低温にも、油にも強い塗料」

冷蔵庫はこのように塗装する「PCM塗装ラインと塗膜構成」

夢の架け橋、明石海峡大橋を塗る「長期耐久性を実現する塗料と塗装」

東京タワーを塗替える「水性塗料の使用でVOCを75%以上も削減可能」

船舶を塗る「意外と早く塗替える大型船」

安芸の宮島、厳島神社大鳥居の塗替え「現場施工の厳しさと達成感の素晴らしさ」

重要文化財明治の洋館を復元する「分析技術で明治時代の塗料と塗装を解析」

高級木工家具の塗装「製品の良否は木地調整と塗装が大きな決め手」

ピアノはこのように塗る「鏡面仕上げの基本は研磨作業」

新しい漆塗りの世界「植栽型開発漆は魅力たっぷり」

プラスチックの塗装「プラスチックは塗装でよみがえる」



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第5章

こうすればわかる塗料・塗膜の性能

ボテボテ、シャバシャバ? 粘度を測る「ベテランは塗料のかき混ぜ感覚で粘度がわかる」

色を測る・色を表す「可視光の吸収成分を分析すれば色の正体がわかる」

つやはあるの? 光沢を測る「鏡面光沢度で判別できない外観評価には写像鮮映性が有効」

よくくっついているか「くっつく力はどのように生じるのか、どのように評価するのか?」

硬いか、強いか、よく伸びるか?「遊離塗膜の応力〜ひずみ特性からわかること」

塗膜物性は温度、変形速度で大きく変わる「温度、変形速度を変えて、粘弾性体の挙動を解明する」

塗膜の摩耗抵抗「摩耗は摩擦界面の破壊現象のため、要因解明が難しい」

促進試験で劣化を調べる「劣化現象をいかにして短期間で再現できるか?」



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第6章

こんなこともできる塗料の世界

こんなこともできる塗料の世界「多様な機能性塗料を見てみると」

電気抵抗、電磁波を制御する「静電気を逃す塗料、電磁波を吸収する塗料」

熱を制御する「赤外線を反射する太陽熱高反射塗料や耐火塗料」

擦り傷を防止する「スチールウールでこすってもOK、ハードコート」

汚れを雨が洗い流す「自己洗浄性耐汚染塗料は親水性が決め手」

汚染物質を分解する「日本初の注目技術、光触媒塗料」

微生物を抑制する「菌やかびの発生を抑制する」

フジツボやアオノリから船を守る「汚損生物の付着を防ぐ船底防汚塗料」

見る角度によって色が変わる「新しいエフェクト顔料を含む塗料」

光で回路を造る「ICに欠かせない微細加工用フォトレジスト」



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第7章

安全・環境問題とこれからの塗料

塗料を安全に使うために「火気と人体への影響に注意」

塗料と環境問題「大気汚染や土壌・水質汚染への取り組み」

VOCを減らすには「多面的、総合的に行うVOC削減」

ハイソリッド・無溶剤型塗料を使う「より固形分の割合を高めVOCを削減する」

水性塗料を使う「溶剤を水に替えてVOCを削減する」

粉体塗料を使う「VOC削減には理想的な塗料」

これからの塗料技術「環境対応と高機能化が開発課題」





【コラム】

ナヤシとクロメ

軟らかい物と硬い物

どうやって塗料が乾くの?

雷の話

テーブル面の白いシミ

地球とサッカーボール

色々な話





参考文献

はじめに

 塗料は建物、橋梁、船舶、自動車、家電製品、家具など私たちの生活に関わりのあるあらゆる物に使用され、素材を保護し、美観を与える上で無くてはならない材料です。塗料は通常、製品を造る際の最終工程でスプレーなどによって塗り広げられ、乾燥・硬化して製品を美しいものに仕上げます。かつて、塗料と言えば日本では漆、西洋では乾性油を主体にした油性ペイントが主たるものでしたが、第二次大戦以降の合成樹脂の発展に伴い、塗料も多種多様な樹脂が用途に応じて用いられています。

 塗料は通常、1回塗りでは数十μm(μ : ミクロンメーターは1000分の1mm)の厚さに塗られます。因みに台所で用いるクッキング用アルミフォイルが12μm、人間の髪の毛の太さが60μm程度ですから厚さのイメージがわくと思います。高い品質を要求される自動車塗装では錆に強い下塗り、石跳ねに強い中塗り、色彩と屋外環境に強い上塗りの3層構造をとるのが一般的ですが、それでも総膜厚は100μm程度、すなわち10分の1μm程度にすぎません。この厚さの膜で少なくとも10年程度の長期にわたって素材を保護し、美観を保ち続けているのは素晴らしいことだと言えます。塗料はまた色彩面でも重要な役割を果たし、都市景観や自動車をはじめとする工業製品のデザイン上必須の材料になっています。

 ところで、塗料は使う側にとってはやや解りにくい材料かも知れません。それは塗料が樹脂、硬化剤、顔料、溶剤、添加剤などの多くの組成物から構成される、いわばノウハウの塊のような材料である、ということに一因があります。塗料は昔から典型的なハイブリッド材料であり、それ故に塗料配合設計者においても各組成(原因)と性能(結果)の関連を把握するために実験を重ねることが多い材料です。従って、塗料の特性を知るための性能評価の方法は大切で、塗料と塗膜の両方の評価方法について知っておく必要があります。

 塗料は塗装と言うプロセスを経て塗膜になり、初めて最終製品になります。工業製品の多くの部品、部材で製品化のために薄く塗り拡げて、しかも液体から固体に相変化させる材料は他にあまりありません。従って、塗装工程は大変重要で、たとえ塗料そのものが良好であっても、塗装工程に問題があると、例えばぶつ、わき、はじき、たれ、ゆず肌、透けあるいは硬化不良などの欠陥を生じ、良い仕上がりを得ることができません。

 本書では塗料の成分、塗り方に加え、実際に種々の用途で塗料がどのように使われているのか、また、近年注目を集めている機能性塗料にはどのようなものがあるのか、といった内容についてもとりあげています。

 これからの塗料のあり方を考える時、環境問題、とくにVOC(揮発性有機化合物)排出の問題を抜きに話をすることはできません。本書では低VOC塗料としてのハイソリッド塗料、無溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料のそれぞれの課題と対応についても言及しました。

 本書が塗料入門の役割を果たしてくれることができれば幸いです。


 平成二十年三月
 中道 敏彦・坪田 実

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