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品質工学便覧

定価(税込)  20,520円

監修
編者
サイズ B5判
ページ数 916頁
ISBNコード 978-4-526-05950-6
コード C3034
発行月 2007年10月
ジャンル 辞典・用語集・便覧 生産管理

内容

品質工学(タグチメソッド)は、技術開発のリードタイム短縮や原価低減を実現できる手法として注目され、多くの成果を上げている。その品質工学の技術的全貌を日本において初めて集大成したのが本便覧。各分野(業界)ごとの取組み事例が網羅されている。

目次

監修の言葉  
編集の立場から  

▲第Ⅰ編 品質工学概論▲ 
第1章 品質の考え方から機能の考え方へ―1984年までの品質工学の初期―
1.1 タイルの実験と加法性,直交表の役割 
1.2 品質特性からSN比へ 
1.3 実験計画法と品質工学の目的の差 
1.4 SN比の求め方,標準的手順 
1.5 新製品開発への応用 

第2章 製品開発の仕事から技術開発の仕事へ―1985年以降の品質工学の発展―
2.1 難削材の切削技術の開発 
2.2 直交表への割り付けとデータ解析 
2.3 研究開発では機能性を測れ 
2.4 エンジンの基本機能 
2.5 基本機能のSN比,エンジンの場合 

第3章 ロバスト設計に対するマネジメントの役割
3.1 品質工学は消費者の損失の改善 
3.2 製品機能のロバストネスの評価 
3.3 製品機能に対するマネジメントの役割 

第4章  研究と開発のマネジメント
4.1 上流における研究開発 
4.2 基本機能による技術開発 
4.3 新しい2段階設計,品質工学ではばらつきの改善を最初に行う 
4.4 目的機能は標準条件のみで 

第5章 製造における品質水準の評価の損失関数
5.1 品質に関連する企業内の活動 
5.2 品質水準の経済的評価 
5.3 出荷製品の品質水準はマネジメント用に大切
5.4 第2次産業革命は工程のマネジメントの合理化と自動化 

第6章 経営と品質工学による評価
6.1 経営戦略とマネジメント 
6.2 商品品質の設計,金融システムの場合 
6.3 生産性とは何か 
6.4 企業の経営状態の評価,MTシステムによる評価 

第7章 技術開発の戦略
7.1 技術開発の戦略とは 
7.2 技術的手段とマネジメントの役割 
7.3 機能性(性能)の評価 
7.4 直交表による下流条件での再現性の評価と評価部門による評価 

第8章 生産技術と品質工学
8.1 自動加工と生産性 
8.2 難削材の切削技術の開発研究 
8.3 ビーカ実験による重合反応の最適化 
8.4 第2次産業革命における品質工学の役割

第9章 生産活動に対するマネジメントのための損失関数
9.1 フォード社の戦略 
9.2 許容差Δの決め方 
9.3 品質水準の評価,消費者の損失 
9.4 生産部門に対するマネジメント,コストと品質水準のバランス 
9.5 製造のためのマネジメント 

第10章 品質とコストのバランス
10.1 オンライン品質工学 
10.2 車用のキーの寸法のオンライン品質工学,設計の前提条件の明白化 
10.3 工程のフィードバック制御システムの設計
10.4 製造部門のマネジメントと戦略 
10.5 生産速度と品質管理システムのバランス

第11章 条件管理と品質工学の立場
11.1 危機管理と品質工学 
11.2 アクティブノイズに対するロバスト設計のさまざま 
11.3 ノイズの効果の経済的評価 
11.4 アクティブなノイズに対する評価 
11.5 アクティブなノイズを標示因子として取扱う方法 

第12章 品質工学のさまざまな種類の信号
12.1 品質工学と技術戦略 
12.2 ハード製品の場合の信号因子 
12.3 ソフトウェアの信号とは 
12.4 信号間の組合せ効果の検出法 
12.5 品質工学の信号因子の今後 

第13章 商品と技術の創造性のためのR&Dの組織
13.1 創造性とR&Dの組織 
13.2 特命事項と技術研究 
13.3 ソフトの重要性,計測のシステムとMTシステム 
13.4 パターン認識を含む21世紀のシステム製品

第14章 品質工学に関する組織と責任
14.1 品質に関する企業活動とその責任 
14.2 商品企画と品質の設計の方法 
14.3 設計品質とそのテスト 
14.4 品質と製造部門 
14.5 リコール問題とその予防 

▲第Ⅱ編 品質工学の方法▲ 
第1章 シミュレーションによるロバスト設計―標準SN比―
1.1 設計と納期 
1.2 新しい2段階設計―品質工学ではばらつき(標準ロバストネス)の改善を最初に行う―
1.3 プリンタカラーリボンシフト機構のシミュレーション 
1.4 SN比(平均値SN比)の求め方と最適条件
 
第2章 機能設計(合わせ込み,チューニング)の方法
2.1 シミュレーションによる設計研究 
2.2 合わせ込み(チューニング)の方法―目的機能への設計― 
2.3 合わせ込み(機能設計,チューニング)の方法 
2.4 直交展開 

第3章 機能性の評価の数理(1)―全出力の分解とSN比―
3.1 統計学の問題点 
3.2 記述統計による誤差,2乗和の分解の技術的意味 
3.3 効果の加法性とパーセバルの等式 
3.4 ロバストネスの測度,標準SN比 

第4章 機能性の評価の数理(2)―統計と確率,R. A. Fisherの尤度と数理統計―
4.1 フィッシャーの立場,らしさの考え方 
4.2 尤度(らしさ)法 
4.3 正規分布の場合 
4.4 数理統計の方法,χ2検定 
4.5 第1種の過誤,危険率αについての比較

第5章 MTシステムのパターンの診断とSN比―MT法の場合―
5.1 パターン認識 
5.2 診断とは 
5.3 マハラノビス空間 
5.4 精密検診項目の診断 
5.5 肝臓患を中心とする特殊健康診断の例

第6章 MT法の項目診断と選択
6.1 計測項目の選択 
6.2 2信号の水準のSN比の求め方 
6.3 項目の選択のためのシミュレーション実験
6.4 健康診断をめぐるさまざまな問題 

第7章 予測の品質工学―TS法―
7.1 予測のための単位空間 
7.2 単位空間内の直交展開 
7.3 TS法による予測 

第8章 T法による総合予測
8.1 T法 
8.2 T法の手順 
8.3 項目の重要度の評価 
8.4 マルチT法:単位空間のメンバーごとにT法で推定したものを総合する方法 
8.5 これまでのタグチ法の総括 

第9章 製造品質の場合のMTシステム
9.1 製造品質問題,単位空間の選定 
9.2 目的特性と項目 
9.3 項目のとり方,空間分布の場合 
9.4 項目の考え方,時系列データの場合 
9.5 T法による総合推定とSN比 
9.6 原因の探求 

第10章 単位空間が端にある場合―MTシステム,MTA法―
10.1 単位空間が端にある場合 
10.2 MTA法 
10.3 MTA法の応用分野 

第11章 異常の予測や検出のシステムの設計―MTA法―
11.1 危機管理とノイズ 
11.2 使用ミスによるノイズとその対策 
11.3 使用環境ノイズとその対策 
11.4 犯罪などのアクティブノイズとその対策
11.5 車の事故回避システム 
11.6 2乗和の分解による評価 
11.7 自動回避のシステム 

第12章 認識と分類のシステム設計―MTA法―
12.1 認識と分類 
12.2 文字を読む 
12.3 データ解析,単項目の場合 
12.4 複合項目による距離とSN比 
12.5 単位空間内の標準偏差による判定 
12.6 画素数が多い場合のモザイク濃度 

第13章 認識のためのT法
13.1 単位空間内の各メンバーごとの標準SN比と感度 
13.2 ηとβの2項目による単位空間内の距離の求め方 
13.3 識別力の評価 
13.4 認識システムの設計 

第14章 マルチT法
14.1 画像認識の単位空間 
14.2 単空間内の部分空間ごとの局所距離の分布 
14.3 多階の認識システム,単位空間の各メンバーの距離 
14.4 認識のための判定 

▲第Ⅲ編 品質工学の事例▲ 
第1章 機械 ◆事例1◆
1.1 標準SN比によるねじ締めの最適化の研究
1.2 スポット溶接の最適化 
1.3 ダイレクトクラッチドラムの新接合技術開発プロセスの構築 
1.4 電流 ― 電圧特性による手はんだ工程条件の最適化 
1.5 テーラードブランク工法における溶接の機能性評価 
1.6 ショットブラスト工程のパラメータ設計によるショットピーニング化 
1.7 金属材料強度評価の研究 
1.8 シミュレーションによる次世代ステアリングシステムの最適化 
1.9 シミュレーションによる衝突安全性能向上のためのコンポーネント特性の最適化 
1.10 小型DCモータの電力評価による最適化
1.11 射出成形機における可塑化装置の最適化
1.12 マシニングセンタ主軸の回転機能 
1.13 金型加工における一刀彫り加工条件の設定
1.14 微小径ドリルによる難削材穴あけ加工の最適化―失敗実験を成功させるには― 
1.15 感光体クリーニングシステムの最適化
1.16 機械加工の機能性評価のための瞬時電力測定法 
1.17 シミュレーションによる射出成形の評価
1.18 切削加工の電力評価の研究 
1.19 薄肉S字型射出成形品の転写性の最適化研究 
1.20 MTシステムを用いた油圧射出成形工程の診断と予測 
1.21 CAEを用いた鋳造用鋳型設計条件の最適化 
1.22 テレメータリングによるレース車両の異常検出システムの構築 

第2章 電気 ◆事例2◆
2.1 電子回路シミュレーションによる電圧 ― 周波数回路の研究 
2.2 ベルト定着システムにおける電圧 ― 電流特性による金属材料開発 
2.3 交換結合オーバライト光磁気ディスク開発への品質工学の適用 
2.4 テストピースによる電子写真現像システムの技術開発 

第3章 化学 ◆事例3◆
3.1 重合反応の最適化 
3.2 重合反応プロセスの安定化―シミュレーションと品質工学の融合― 
3.3 超短縮塗装前処理剤の最適化 
3.4 ジアゾ感光紙処方の最適化設計 

第4章 薬学 ◆事例4◆
4.1 医薬品の噴霧乾燥の機能性のパラメータ設計による評価 
4.2 漢方薬の造粒に対する新しい動的機能窓法(速度比法)の適用 
4.3 生薬焙煎における製造条件の最適化 
4.4 漢方薬の配合比の最適化とモデル動物による薬効評価の検討 
4.5 蒼朮の化学成分に基づく地理的変異のMTシステムによる鑑別 
4.6 RT法による蒼朮の化学成分に基づく地理的変異の鑑別 
4.7 配合比を変えた漢方入浴剤による足浴効果の最適化 

第5章 医学 ◆事例5◆
5.1 肝疾患の病態評価と劇症化予知を含めた肝移植適応基準の検討 
5.2 MT法を用いた新しい肝移植適応基準の作成の試み 
5.3 MT法による健康状態の予測と健康診断の経費削減 
5.4 MTシステムによる肝疾患の診断 
5.5 漢方問診データのMTA法による定量化の研究 

第6章 食品 ◆事例6◆
6.1 パラメータ設計によるもやしの育成条件の最適化 
6.2 厚焼き玉子のおいしさ(食感)の向上 
6.3 耐熱性菌検出方法の検討 
6.4 醤油醸造技術のMT法による開発―醸造工程の諸条件と麹の出来映え,窒素の利用率および香りの官能検査値の関係― 

第7章 生活 ◆事例7◆
7.1 火災検知システムによる火災の検知 
7.2 RT法による手書き文字の識別 
7.3 中古住宅のTS法による価格予測 
7.4 キャップレートのTS法による予測 
7.5 緑資産と不動産の経済価値のT法による分析 

第8章 計測 ◆事例8◆
8.1 実物標準によるトレーサビリティと測定の不確かさ 
8.2 薄肉射出成形品の3次元的な測定 
8.3 測定者の能力推定の研究 

第9章 オンライン品質工学 ◆事例9◆
9.1 機械加工量産ラインに対するオンライン品質工学の実践 
9.2 オンライン品質工学による生産技術業務の評価と考察 
9.3 半導体工程におけるオンライン品質工学の活用 
9.4 製造現場におけるオンライン品質管理工程図作成の試み 

第10章 ソフトウェアバグ ◆事例10◆
10.1 ソフトウェアバグ検出シミュレーション教材開発と活用成果 
10.2 機械加工セル生産システムにおける制御ソフトウェア評価の効率化 

第11章 経営 ◆事例11◆
11.1 技術者のあり方と品質工学の教育との関わりの検討 
11.2 1デシベルはいくらに相当するか 
11.3 R&D活動への品質工学の導入方法の研究
11.4 アメリカにおける品質工学の歴史 
11.5 アメリカにおける品質工学の教育 
11.6 品質工学の発展における賞の意義 

第12章 取引における機能性評価 ◆事例12◆
12.1 取引における機能性評価の成立 
12.2 紙送りと機能性評価 
12.3 金型の熱処理変形の転写性による機能性評価 

▲第Ⅳ編 品質工学の原点▲ 
第1章 なぜ,実験計画法だったか
1.1 仕様書と設計の違い 
1.2 統計数理研究所 
1.3 工場における改善 

第2章 設計と実験計画法の関わり
2.1 設計の研究 
2.2 機能と性能 
2.3 技術者の責任 
2.4 品質の定義と実験計画法 
2.5 交互作用について 

第3章 科学的研究と測定
3.1 因果関係と加法性 
3.2 理論と現実 
3.3 相手が納得するか 
3.4 測定の誤差 
3.5 繰り返しは無意味 
3.6 はかりの誤差 
3.7 アメリカの繰り返し問題 
3.8 厚生省(現・厚生労働省)での仕事 

第4章 仕事の多様化と実験の失敗の意義
4.1 ペニシリンの開発 
4.2 LD50でよい 
4.3 実験の意味 
4.4 息子の父親への理解 
4.5 コンサルティングの仕事 
4.6 コストを下げる 
4.7 シックスシグマ 
4.8 品質保証の責任 
4.9 再びコストダウン 
4.10 再び品質の定義 

第5章 分布の問題
5.1 正規分布について 
5.2 分布について 
5.3 シューハート博士と管理図 
5.4 3シグマ管理図 

第6章 データのばらつきの扱い方
6.1 データのばらつきの扱い方 
6.2 医学と統計 
6.3 ばらつきは分布では表せない 
6.4 最小2乗法について 
6.5 目的を意識する 
6.6 目的と結果のとらえ方の重要性 
6.7 管理図の考え方 
6.8 管理図はどこで使うか 
6.9 工程調節 

第7章 統計学から品質工学への流れ
7.1 統計学の時代 
7.2 QCRG発足と初期のころの研究 
7.3 SN比から標準SN比へ 
7.4 MT法からMTA法―MTシステムの発展
7.5 これからの展望 

第8章 目的を持つ
8.1 前提条件と目的 
8.2 第1種と第2種の過誤 
8.3 有意差の扱い 
8.4 特性値 
8.5 線点図と交互作用 

第9章 2元配置の実験計画
9.1 2元配置の実験データ 
9.2 自由度について 
9.3 分散の期待値と寄与率 
9.4 有意差検定の方法 

第10章 品質工学の芽生え
10.1 信頼限界について 
10.2 再現性を考えた信頼限界 
10.3 交互作用 
10.4 初版から新版へ 
10.5 データの模造模型 
10.6 目的を忘れないこと 

第11章 山登り法と最適化
11.1 山登り法 
11.2 実験計画法の世界 
11.3 最適化とは 
11.4 ユーザの要求を実現するためには 
11.5 「標準化と品質管理」誌の連載 
11.6 他分野との関係 

第12章 SN比の芽生えと発展
12.1 電電公社(現・NTT)の仕事 
12.2 計測方法のSN比 
12.3 外側因子の概念の発生 
12.4 品質工学の本の出版 
12.5 アメリカの実験における形だけの類似性
12.6 本当の確認実験とは 

第13章 SN比の発想
13.1 バリデーション 
13.2 外側の概念 
13.3 SN比の始まり 
13.4 実物測定の誤差 
13.5 ファンダメンタリズムの問題 

第14章 統計学からの変化
14.1 統計の世界から離れる 
14.2 統計学のスタンダード 
14.3 通信の特許 
14.4 ゼロ点比例式 
14.5 動特性の広まり 
14.6 ベル研のインパクトを再び 

第15章 オンライン品質工学とアメリカの損失関数
15.1 アメリカのオンライン品質工学 
15.2 工程の管理 
15.3 オンライン品質工学の考え方 
15.4 マツダのオンライン品質工学 
15.5 オンライン品質工学のもとの考え方 

第16章 校正周期と損失
16.1 許容差の考え方 
16.2 計量法の公差 
16.3 製造工程の管理 
16.4 経済性の問題 

第17章 抜取検査と製造工程の管理
17.1 抜取検査は不良品まで買う? 
17.2 電電公社の抜取検査 
17.3 計数調整型抜取検査のJISの作成 
17.4 フィルムの傷 
17.5 MTシステムとの共通性 
17.6 法律の世界の損失 
17.7 購入品を調べる 

第18章 抜取検査と損失関数
18.1 検査における建前と本音 
18.2 尤度比 
18.3 測定が技術でなくなるとき 
18.4 損失関数 
18.5 測定の誤差 
18.6 規格値を決めたうえでの損失 

第19章 直交表の始め
19.1 『公差の決め方』に関係して 
19.2 直交表の成り立ち 
19.3 直交表の意味 
19.4 実験回数で直交表を説明する方法 
19.5 直交表の教え方 
19.6 実験計画法との違い 

第20章 実験計画の考え方
20.1 入力エネルギーの考え方 
20.2 実験回数と効率 
20.3 直交表L12の交互作用 
20.4 効率の考え方 
20.5 順位データの扱い方 
20.6 有意差と信頼限界 

第21章 品質工学の課題
21.1 技術は個別対応が必要 
21.2 MTシステムについて 
21.3 事実との整合 
21.4 まとめへ向けて 
21.5 普及に向けて 
21.6 原点討論の重要性 
21.7 おわりに 

▲第Ⅴ編 付録▲ 
1.オンライン品質工学への道
1.1 「オンライン品質工学への道」について 
1.2 オンライン品質工学ロードマップ 
1.3 損失関数 
1.4 製造工程の診断・調節 
1.5 管理システムの検討 
1.6 フィードバック制御 
1.7 予防保全 
1.8 フィードフォワード制御 
1.9 検査設計 
1.10 計測器の校正システム 

2.品質工学の用語
2.1 学会規格の制定 
2.2 基本用語 
2.3 MTシステム用語 

3.品質工学誌発表論文紹介
4.田口玄一の主要著書一覧(刊行年順)
索  引  

はじめに

監修の言葉

 品質工学便覧の発刊にあたり、21世紀の品質工学の抱負を述べる。20世紀に到達した品質工学を一歩進めたのが21世紀の品質工学である。すなわち、SN比は基本機能の出力のばらつきのみに絞り、2段階設計をすることにした。このことはMTシステムでも同じである。MTシステムの機能は、多次元空間に尺度を入れることである。尺度構成は自由である。尺度の精度を評価するのにSN比を用いるとともに、SN比によって改善するときの利得の再現性に、直交表を用いて取捨選択をするのである。このハード面とソフト面の両方の問題について、21世紀の品質工学を発展させたい。

 アメリカのベル電信電話研究所の回路設計者と議論をしたことがある。ベル研究所には、電気に関しては非常に優秀な人がたくさんいる。ある機能をもつような回路を設計し、非常に良いものができる。しかし、それは標準条件であって、研究室の条件で調べると機能が立派である。ベル研究所では標準条件で機能しただけでは駄目なので、その設計が16種類の使用条件で機能するかどうかの信頼性のテストが要求されていた。電源電圧の変化や温湿度の変化、劣化試験の前と後など、16種類のどの条件でも適切に機能すればロバストな製品で、それは非常に良い設計であるということになる。

 問題は、ある条件で機能しないときに、設計を変えて対策してはならないということである。しかし、これはベル研究所の設計者には知られていなかった。たとえば、あるお客の条件で機能しないということがわかると、現場の人や設計者がいって、設計を直せばいいということになるが、それはできない。お客の使用条件というのは、千差万別である。千差万別のノイズを全部考えた設計はできないだけではなく、大体そのようなノイズがわからない。わからないことに対して対策をとる方法について、技術者は訓練されていないのである。

 技術者に能力がないのではなく、そのような訓練を受けていないということに問題がある。結局、ものすごくいろいろなテストをする。そのような信頼性テストを全部やめるべきだというのが、アメリカの技術者に与えた大きなインパクトであり、タグチメソッドと名付けられた理由の1つである。

 いろいろな条件を変えて実験をすることは、試作による設計研究である。実験の場合には設計定数を全部変えることは行わない。なぜならば、実験の場合にはハードの製品を作るから、費用がかかる。また、ハードの製品の場合には、各条件で品物は1個しか作らない。パラメータ設計で直交表L18の各条件で1個より余計に物を作ったら、それは間違いである。ロバストネスというのは、工場を出るときの機能(信号と出力の関係)が、環境を変えても、劣化しても変わらないということである。

 機能が全然駄目なものを工場は出荷するはずがない。市場でトラブルを起こすものを出荷しているということは、設計者の問題である。品質工学では、市場にいって問題を起こさないものを設計するということが、ロバストネスの設計である。しかしそれは同時に、製造のばらつきに対しても強いものなので、不良品もほとんどなくなる。

 シミュレーションにしても、ハードの設計にしても、2段階設計を徹底することである。設計において、信号因子をM、その理想的な機能としての出力をmとする。このmというのは、こうなれば理想的であるということである。これは技術や物理学の法則とは関係がない。このように、21世紀といっても何も変わるわけではない。機能というのは、信号と出力の関係である。こういう信号変数を使って、出力をこうしたい、これは目的機能と違うということを言っておきたい。

 市場条件というのは、研究室の条件とは異なる。コンピュータシミュレーションで使う公式は、実際とはかなり違う。違う式で、最後に市場でどのようになるかを知りたい。その背後には、SN比の最適条件を出したら、標準使用条件で目標曲線・目標値に合わせるようにチューニング(合わせ込み)をするという考え方である。合わせ込みをやったあとの、目標からの誤差分散の逆数が標準SN比である。標準SN比というのは、標準条件で機能が目標値に一致したときの誤差の逆数である。この標準SN比という言葉は、1962年に筆者がベル研究所で働いているときの、ベル研究所の研究テーマであった。ただし、ベル研究所では、計量値の問題ではなく、デジタルシステムの標準SN比を研究した。

 機能という中には、2つの問題がある。まず標準条件において、理想機能にどれくらい近いか、あるいはどれくらい遠いかである。もう1つは、理想機能からずれている機能が、環境や劣化でどのように変わるか、あるいは製品ごとにどのように変わるかということで、これが品質工学の標準SN比である。

 技術者は、「自分のこういう考えでこの理論を作った。あるいはこういう考えで、こういう設計をした」というように、いいかどうかの方法論の議論をしたがるが、それは専門家どうしでやるべき話である。品質工学は、どんな設計であろうと、この設計のモノが市場にいってから問題を起こさないかどうかを予測したいだけである。

 さらに、21世紀はパターン認識による産業革命の時代である。パターン認識の1つの方法として、MTシステムの試行の拡大が行われる。すなわち、21世紀のMTシステムでは、逆行列やシュミットの展開を用いない方法として余因子行列を使い、さらには、これさえも不要とする3種のT法(片側、両側、認識)の提案を行った。「単位集団の選択・項目の選択・単位集団の分割統合などの、情報システムのパラメータ設計の方法」であるから、新しい方法は変数の間にどんなに共線性があってもかまわない。どのような場合にも使えるであろう。さらには、さまざまな事柄の予測を行うことである。経営企画なども含む機能性の評価でもある。人間の行う労働の中のさまざまな判断の正確さの改善で、情報システムの設計が中心となる。

 最後に、品質工学の課題として取引の機能性の評価がある。ISOとかJISの原案作成というものが残っている。評価というのは、機械を買うときに、A社とB社の機械の性能を評価しなければならない。値段はわかっている。どちらのほうが性能がいいのかわからないで買うのはまずい。性能評価をするのにどのような性能評価の仕方をしたらいいのかである。方法はほぼ明確になっているので、これをいかに形にするかである。経済産業省でも研究費を出してくれたのだから、SN比で評価すべきだという考えを理解している人がいるはずである。

 アメリカではすでに「TAGUCHI’S Quality Engineering HANDBOOK」が刊行されたが、今回、「品質工学便覧」が日刊工業新聞社から発刊の運びとなったことは、きわめて喜ばしいことである。これからの日本の社会に対して大きく貢献することが期待される。刊行にあたり、協力された方々に深く感謝をする。

品質工学会名誉会長 田口玄一 

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