現在在庫がありません

ロボット・イノベーション

定価(税込)  2,376円

著者
著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-05892-9
コード C3034
発行月 2007年06月
ジャンル 経営

内容

2007年問題の対策として労働代替のロボットが注目されていたり、人口減少時代に対応してサービスロボットが産業として離陸し始めている。本書は、イノベーションの視点から、近未来を見据えたロボット産業のアナリシスとビジネス参入のヒントを提示する。

石原 昇  著者プロフィール

石原 昇(いしはら のぼる)

横浜市立大学大学院経営学研究科修了。野村総合研究所のシンクタンク部門で、NTT民営化・通信自由化の政策立案に従事。その後、総合電機アナリスト兼グローバルリーダーとして、一貫してハイテク産業の調査研究に携わる。2004年に独立。国際投資コンサルタントとして、(株)サイコム・インターナショナルやマスターピース・グループ(株)など複数の企業の取締役、ベンチャーキャピタルや海外投資顧問会社のアドバイザー、東京大学研究員や日本建築学会ユビキタス建築・都市特別研究委員会実証実験小委員委員などを務める。「フラッシュメモリビジネス最前線」(工業調査会、01年3月)、「イノベーション・パラドックス」(ファーストプレス、06年1月)など著書・翻訳書多数。

五内川拡史  著者プロフィール

五内川 拡史(ごないかわ ひろし) 

東北大学経済学部卒。野村総合研究所、野村證券にて、機械・ロボットアナリスト、バンキング、ベンチャーキャピタル業務に従事。2004年に野村グループから独立し、(株)ユニファイ・リサーチを設立。現在、同社代表取締役社長。エレクトロニクス・メーカー、IT系企業、公共系大手企業、中央官庁等に向けて、新規事業の立上げ、先端技術の導入と商品化、R&Dマネジメント、政策立案等の経営コンサルティングおよびリサーチ業務を行う。東京大学産学連携本部共同研究員(02年末〜現)、東京大学先端科学技術研究センター産学官連携研究員、経済産業省ロボット政策研究会委員(05年度)、NEDO採択審査員(05、06年)、などを歴任。

目次

はじめに

第1章 ロボットがもたらすイノベーション
 1.世界が求めるイノベーションの潮流
 (1)「イノベーション25」にみるロボットの未来
 (2)イノベーション理論からみたロボットビジネス
 (3)コンピュータリゼーションからロボタイゼーションへ
 2.ロボット・イノベーションの最前線
 (1)先端融合イノベーションとしての「IRT」
 (2)量産化が始まるロボットスーツ「HAL」
 (3)「今年のロボット」大賞にみるイノベーション

第2章 ロボットの存在意義を考える
 1.ロボットに注目する4つの理由
 (1)少子高齢化社会と安全・安心社会への対応
 (2)技術の成熟タイミングの到来
 (3)産業立国再生の切り札
 (4)新しい文化とスタイルの創造
 2.ロボットとは何か
 (1)ロボットの定義
 (2)ロボットの要素技術
 (3)ロボットの歴史

第3章 ものづくり現場のイノベーション
 1.日本が牽引する産業用ロボットの現状と展望
 (1)製造ラインの自動化とロボット化
 (2)産業用ロボットは自動車向けに進化
 (3)産業用ロボットにおける有望分野
 (4)産業用ロボットの導入課題
 2.産業用ロボット企業の最前線
 (1)ロボットの知能化をリードする「ファナック」
 (2)新世代の産業ロボットを増産する「安川電機」
 (3)ロボット化推進プロジェクトを進める「不二越」
 (4)総合重機の強みを活かす「川崎重工業」
 (5)最強トヨタグループで人づくりも進める「デンソー」
 (6)FAソリューションを総合展開する「三菱電機」
 (7)ロボットを活用した自動化を目指す「キヤノン」
 (8)中小企業にエンジニアリングを提案する「オージーエー」

第4章 生活・サービス分野のイノベーション
 1.民生用ロボットの4つの大分類
 2.事業化に必須な共通プラットフォームと複数市場
 (1)愛知万博プロトタイプ機に見る諸類型
 (2)ロボットの利用シーンと機能パターン
 3.生活・サービス・ロボット企業の最前線
 (1)市販されているロボットの先進事例
 (2)家庭用掃除ロボットで上場を果たした「iRobot」
 (3)画像認識・処理に特化した「エボリューション・ロボティクス」
 (4)清掃ロボットをビジネスにした「富士重工業」
 4.離陸が待たれるロボット群
 (1)オフィス・公共・レスキュー・ロボットの最前線
 (2)ホビー分野の二足歩行ロボットの最前線
 (3)ホームロボットの最前線
 5.期待されるロボット関連・支援産業
 
第5章 ロボット教育の人材イノベーション
 1.先端技術が融合したロボット教育の効果
 (1)ロボット教育の現状
 (2)ロボット教育の課題
 2.ロボットを活用した教育の最前線
 (1)子供から大人までセミナーを開催する「芝浦工業大学」
 (2)チームマネジメントで疑似経営を学ぶ「電気通信大学」
 (3)1人1台のロボットで体系的学習をする「日本工業大学」
 (4)競技を通して技術イノベーションを目指す「ロボカップ」
 (5)イベント事例1:世界最大規模の「国際ロボット展」
 (6)イベント事例2:競う・見る・学ぶ「アキバ・ロボット運動会」

第6章 ロボット・イノベーションの技術経営
 1.産業トーナメントの理論(ソニーの撤退から学ぶ)
 2.コスト・パフォーマンスを満たす「絞る」戦略
 3.ソフトウェア・プラットフォームの競争戦略
 (1)プラットフォームの重要性
 (2)モジュールか垂直統合か
 (3)ロボットOSの現状
 (4)RTミドルウェアの動向

 4.デザインとキャラクター戦略
 (1)デザインの重要性
 (2)ロボット・キャラクターの展開
 5.技術のボトルネックと要素開発戦略
 (1)有力技術の革新スピード
 (2)ボトルネック技術の重要性
 (3)望まれる要素技術の開発
 6.ロボット技術の長期トレンドを読む
 (1)ロボット技術のクロスオーバー
 (2)ロボットの理念型
 (3)ロボット活用の構想力
 7.ロボットの知的財産戦略
 (1)ロボット特許出願技術動向調査
 (2)三位一体を構成する知的財産戦略
 8.ロボットを巡る安全性問題
 (1)テクノロジーと安全性
 (2)ロボットに求められる安全性
 (3)安全性論議の要諦

第7章 ロボット・イノベーションに向けた産業政策
 1.政府・省庁のロボット産業政策
 (1)日本のロボット産業政策
 (2)テクノロジー系の産業政策
 (3)ミッション型プロジェクト
 2.自治体のロボット・クラスター政策
 (1)自治体の地域クラスターへの取り組み
 (2)今後のクラスターの方向性

はじめに

日本がロボット大国と言われて久しい。産業用ロボットでは世界の4割、36万台のロボットが稼動し、ホンダのASIMOに代表される二足歩行ロボット分野でも他国の追随を許さない。また、少子高齢化が進むなか、労働代替や作業の高度化をもたらすとして、今後の期待も高まっている。生産現場の革新と並んで、サービス分野への応用も視野に入っている。

こうした機運を捉えて、2006年に経済産業省は新経済成長戦略でロボット産業を日本のイノベーションの中核を担う一分野として改めて明記した。政府の「イノベーション25」でも、一家に1台の家庭ロボット、ロボットの月旅行などが20の夢に中に取り上げられている。

しかしながら、果たして、「日本のロボット技術は圧倒的優位」という我々の通念に、死角はないのだろうか。足下を見れば、ソニーの民生用ロボット事業からの撤退など、ビジネス面での難しさを感じさせるニュースも報じられている。

過去、自国の優れた技術が、国民経済や社会に還元されることなく消えていった事例は決して少なくない。技術を産業に育て、生活の豊かさにつなげるには、不断のイノベーションが欠かせないのである。

イノベーションの本質を「異質なものの新結合」と喝破したのは、経済学者のシュムペーターだが、この言葉はまさにロボット産業に当てはまる。実際、ロボットは、多数の要素技術が統合された工学システムである。また、擬人化という面からは、「人間」を再構成したものである。活用という意味では、社会的・経済的な存在でもあるため、産業化にあたっては、異分野の人々の広範な協力関係が不可欠なのだ。

学術機関においても、その射程は工学、材料、情報通信、哲学、心理学、脳神経科学、認知科学、生物学、社会学、経済学、経営学から倫理学等にまで、理・文系を超えて及ぶ。

産業化の担い手としては、ロボット・メーカーはもとより、家電・自動車・IT・半導体・電子部品・材料などのメーカー、そして次世代ロボットの活用を考える医療・福祉・運輸・小売・エンターテイメントなどサービス産業が含まれる。銀行・証券・保険・ベンチャーキャピタルといった金融、教育、メディア関係等も加わる。加えて、国や自治体の政策支援も重要な意味を持つ。さらにパーソナル・ロボット分野では、消費者・ユーザーの自発的な協力を引き出すことも必要だ。

ロボット産業の真のチャレンジは、こうした文化も言葉も行動様式も異なる人々の協力関係をどのように構築していくか、というところにある。求められているのは、ロボットがつなぐ「人の輪」なのである。

本書はイノベーションの視点から、ロボット産業の発展と高度化に資することを目指したものである。そのため、イノベーション理論、産業分析、ケーススタディ、企業戦略、技術経営(MOT)を駆使して、ロボット産業の全体像に迫ろうと試みた。問題意識を、技術の詳細や単なるロボット製品紹介にではなく、産業化に向かう大きな流れ、技術と経営の相互依存関係、事業化に立ちはだかる課題、ビジネス・モデル構築に向けてのヒント等を呈示することに置いている。

筆者らは平成18年3月に東京大学先端科学技術研究センターにおいて、経済産業省委託事業「産学連携製造中核人材育成事業実現可能性調査」の一環として、「ロボットを活用した製造中核人材の育成」を検討した。その結果、ロボットの産業確立・発展には、垣根を越えた人々の協力が不可欠との確信を得、これが本書執筆の出発点となった。多岐にわたり、ご指導いただいた東京大学国際・産学共同研究センター客員教授(NPO法人 産学連携推進機構 理事長)の妹尾堅一郎先生並びにご協力いただいた有識者の方々に改めて感謝申し上げたい。本書がロボットに関わるさまざまな人々を取り持つ輪の1つになれば幸いである。

2007年6月                        
著者一同

現在在庫がありません