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トヨタに学びたければトヨタを忘れろ
すぐに「かんばん」をやめなさい

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05887-5
コード C3034
発行月 2007年05月
ジャンル 生産管理

内容

大手メーカーと中小メーカーでは作っているものや時間も大きく異なり、前者に向けられた手法を鵜呑みにして導入したのではうまくいくはずがない。本書では、トヨタ生産方式の目標を生産性向上と生産リードタイム短縮と捕らえ、そのための手順、人づくり、そして管理上の様々なノウハウを中小メーカー向けにわかりやすくまとめている。

近江堅一  著者プロフィール

近江堅一(おうみ けんいち)
1937年 東京に生まれる
1962年 日本大学理工学部電気科卒業
大手電気メーカー入社、32年間工場管理に従事。7年間(月1回)トヨタ方式の真の実践者より現場指導を受ける。また、デミング賞審査員より15年間方針管理の指導を受ける。これをベースに工場改善体験を重ね、「物の流れ・位置管理法(FL法)」を確立し、社内、協力会社を15年間指導。
生産効率化推進部長、品質管理推進部長、工場長(製造部長)歴任。
1994年 近江技術士事務所設立、企業コンサルタント。
生産性向上(FL法)80工場指導、方針管理による目標達成30社指導、ISO9000認証取得指導32社およびISO9000審査実績398回(617日)。
資格 ・技術士(経営工学)
・ISO9000主任審査員
・経営士

目次

はじめに  
本書の狙い  


第1章  そもそもトヨタ生産方式の目的とは何か

1 トヨタ生産方式は手段と知れ  
 1.1 トヨタ生産方式を導入できない理由   
 1.2 トヨタ生産方式を導入しても定着しない理由  
 1.3 トップは真剣に求めろ   
2 トヨタ生産方式の2つの狙い  
 2.1 利益確保と改善力ある人づくり   
 2.2 2つの狙いを認識  
3 トヨタ生産方式の2本柱  
 3.1 JITとは  
 3.2 自働化とは  
4 トップが本気で体制づくりを行え  


第2章  具体的な目標を立てる

1 トヨタ生産方式を実現させる2つの目標  
 1.1 生産性向上と生産リードタイム短縮という目標   
 1.2 生産性向上25%を目指せ   
 1.3 生産リードタイム半減を目指せ  
2 生産性向上と生産リードタイム短縮が二律背反  
 2.1 改善力をつける基礎  
 2.2 一石三鳥の効果   
3 目標達成のための改善の進め方  
 3.1 改善時間をつくれ   
 3.2 1日改善会をフル活用せよ   
4 目でみる5つの管理板  
 4.1 問題の顕在化による管理  
 4.2 受注管理板の活用   
 4.3 部材入荷管理板の活用   
 4.4 週生産計画管理板の活用   
 4.5 個人別日産管理板の活用   
 4.6 出荷管理板の活用   
 4.7 遅れ情報の早いフィードバック  


第3章  生産リードタイムの短縮

1 ライン化の検討  
 1.1 ライン化   
 1.2 ライン化数   
 1.3 少品種多量生産型、多品種少量生産型、組立加工型の区分   
2 多品種少量生産型の生産リードタイム短縮手順  
 2.1 ライン化数を絞り込む   
 2.2 ネック工程の生産計画の立て方   
 2.3 平均日数の短縮   
 2.4 ネック工程の着手予定日の算出と生産計画  
 2.5 遅れ・進み管理の実施(定時チェック方式)   
 2.6 基準製造ロットおよび平均日数の削減化   
 2.7 多品種少量生産型リードタイム削減のステップ   
 2.8 ストアー管理と予防保守   
3 加工組立型の生産リードタイム短縮  
 3.1 サイクルタイムの時間短縮  
 3.2 糸を張れ  
 3.3 サイクルタイムとタクトタイム  
4 総合リードタイム短縮のアプローチ  
5 事例:制御盤組立の1個流し  


第4章  生産性の向上

1 生産性向上へのアプローチ  
 1.1 付加価値の認識と計画化  
 1.2 工数低減を省人に結びつける  
 1.3 不良や機械故障を減らす   
 1.4 生産リードタイム短縮による生産性向上への貢献  
 1.5 割りつけ方式による生産性向上へのアプローチ   
 1.6 省人化アプローチ   
2 事例1:生産性向上のしくみづくり  
3 事例2:職務充実による生産性向上  


第5章  トヨタ生産方式の導入・定着のための40のポイント


POINT 1 「物申す」のしくみづくり  

POINT 2 機械加工の1個流し  

POINT 3 直注方式で在庫削減し省人化  

POINT 4 魅力ある監督者をつくれ  

POINT 5 拙速でやれ  

POINT 6 計測器校正費を半分削減せよ  

POINT 7 管理者の考え方の枠径を広げよ  

POINT 8 管理基準値を設定せよ  

POINT 9 工程能力値を活用せよ  

POINT 10 「そうは言っても、それはできない」というな  

POINT 11 段取時の調整ロスを減らせ  

POINT 12 ダブル検査はやめよ  

POINT 13 技術士の資格に挑戦せよ  

POINT 14 役に立たないISO9001はやめなさい  

POINT 15 トヨタ生産方式は習い事ととらえよ  

POINT 16 設計課長は設計業務をするな  

POINT 17 生きた是正処置をせよ  

POINT 18 製造管理者はパソコンを使うな  

POINT 19 バラツキを活かした作業改善をせよ  

POINT 20 日産計画書(時間を入れた)をつくれ  

POINT 21 管理納期日を決めよ  

POINT 22 良品をつくる条件をみつけよ  

POINT 23 第一種の誤りに気をつけよ  

POINT 24 現場速効観察法を活用せよ  

POINT 25 製造指示書を点検せよ  

POINT 26 高い目標に挑戦せよ  

POINT 27 隠された問題を顕在化せよ  

POINT 28 改善を継続しよう  

POINT 29 トヨタ生産方式推進責任者の役割  

POINT 30 生産性向上までの2段階ステップ役割・機能  

POINT 31 品質保証と標準時間  

POINT 32 JITにおける監督者の役割  

POINT 33 挑戦目標を達成させるためのユニーク施策の出し方  

POINT 34 プラスチックシートパイプの○空かんばんのしくみ  

POINT 35 営業活動における「客の生の声」を活かせ  

POINT 36 管理者の価値ある瞬間  

POINT 37 大幅な省人に挑戦せよ  

POINT 38 プレス稼働率目標70%の未達の理由 

POINT 39 工程のバランスとネック工程の改善  

POINT 40 1日改善会の回数と管理者の意識変化  

事例 1 M社新庄工場の成果  
事例 2 I社新潟工場の成果  
事例 3 E社御殿場工場の成果 

参考文献  

はじめに

 トヨタ自動車は年間1兆円の利益を出し、その内2000億円は原価低減で出している。この事実はものづくりの奇跡である。そのため、国内をはじめ外国の企業においてトヨタ生産方式の秘密をつかみ、トヨタ生産方式の真髄を自社工場で活かそうとしている。しかしトヨタ生産方式の秘密はなかなかつかめない。その結果、大幅な原価低減ができないし、改善力ある人づくりができないのである。

 筆者はトヨタ生産方式の真の伝達者(実践者)から7年間、月1回現場で指導を受け、その後独立して80工場を指導してきた。これらの体験から中小メーカーへトヨタ生産方式が浸透しない真の理由が実感できる。トヨタ生産方式を導入して、うまくいかない工場はいろいろな理由を挙げているが、それらはことごとく適切でない。

 中小メーカーへトヨタ生産方式は浸透しないのは、ずばり「真のトヨタ生産方式の伝達者(実践者)に指導を受けられない」からである。これが真因である。筆者の定義する真のトヨタ生産方式の伝達者(実践者)はトヨタの生産調査部員(協力会社へトヨタ生産方式を指導する部署)か、トヨタの協力会社でトヨタの自主研(筆者はこれを1日改善会といっている。1日で大きな改善をしてしまう強烈な改善会である)へ参加しているベテラン管理者で中小メーカーの指導体験者、またはトヨタ出身者で協力会社への指導体験のある人である。このように指導者が限定されているため、中小メーカーでは正しいトヨタ生産方式の指導を受けられないのである。

 トヨタ生産方式を自ら体験していない人は、トヨタ生産方式伝達の真の指導者にはなれない。真の指導者は中小メーカーの特殊性をよく理解し、ここに適した方法で指導できる人である。ハサミに例をとってみよう。植木には植木用のハサミ、紙には紙切り用のハサミ、爪には爪切りを使うように、トヨタ生産方式の真の伝達者(実践者)は相手(中小メーカー)によりハサミの使い分けができる人である。

 中小メーカーへトヨタ生産方式を教えることとは、優秀なプレイヤーでかつ優秀なレッスンプロでなければならないのだ。相手を知り、すなわち植木なのか紙なのか爪なのかを知り、どのハサミにすればよいか、すなわちトヨタ生産方式のどの手法をどこにどう適用するかを決められる人が、真のトヨタ生産方式の伝達者(実践者)なのだ。優秀なプレイヤーだけでは中小メーカーへのトヨタ生産方式の指導はできない。

 トヨタ生産方式の手法(徹底したムダとり、ジャストインタイム、自働化、後工程引き、平準化、1個流し、小ロット化、アンドン、大部屋化、多能工化、多工程持ち、フルワークシステム、段取時間短縮、標準作業時間短縮、在庫減、等)をその中小メーカーの特殊性を理解し、そこに適した手法を適用していくことが肝心なのだ。だからいくら手法を知っていても、その手法の適用力がなければ役立たない。この力をもつ力量者がトヨタ生産方式の真の指導者である。

 手法の適用を間違うと前より生産性は落ちてしまう。トヨタが50年の歳月をかけてトヨタ生産方式を構築したとはいえ、トヨタ生産方式を使う側はこの構築プロセスをたどる必要もないし、知る必要もない。確立されたトヨタ生産方式を適切に活用すればよい。ここが重要なポイントなのだ。

 将棋や囲碁における定石(確立された手法)と同じで、この定石(手法)が確立されたプロセスを理解する必要はない。どの局面でどの定石(手法)を使えばよいか、この使い方で勝負が決まるのである。トヨタ生産方式も原理は同じである。定石(手法)を部分的に学んでも実践で使って勝たなければ意味がない。この手法の適用を誤ってはならない。

 さて、本書は大胆な試みであるが、中小メーカーがトヨタ生産方式を取り入れるのに、前述したトヨタ生産方式の真の伝達者(実践者)の指導を受けられなくても本書に従えば、トヨタ生産方式で大きな利益を出し、改善力ある人づくりができる工夫をしたのである。通常、トヨタ生産方式は現場指導でないと伝えられないといわれている。これは本という活字を通してではトヨタ生産方式は伝授できないということだ。しかし本書は「活字」というメディアを通してトヨタ生産方式の真髄を伝える工夫をした。

 これは筆者がトヨタ生産方式の指導を受けた体験および中小メーカーへの豊富な指導体験があることと、ISO9001の審査員で標準化の専門家であること、ならびに経営工学の技術士であるからこの挑戦ができたのである。これが本書なのである。

 筆者はトヨタ生産方式の中小メーカーへの伝播書として、すでに日刊工業新聞社より3冊を出版している。しかし、本書はすでに出版した3冊の総集編として、中小メーカーがトヨタ生産方式を正しく適用する方法と、具体的にトヨタ生産方式の手法の適用事例を追加してまとめたものである。

 筆者は時間がとれる限り大手書店に立ち寄る。どの大手書店にもトヨタ生産方式のコーナーを設け、多くの書籍が魅力的な表現で読者に働きかけてくる。今は多品種少量生産型が主流である。新規1品生産もある。このような状況の中にあるのにトヨタ生産方式の考え方や部分的手法の紹介が主体で、この多品種生産の生産性向上の具体策が展開されている本はない。

 これだけトヨタ生産方式が脚光を浴びているのに実践を説いた本がない。なぜだろう。U社の社長は岩手にある工場においてトヨタ生産方式で工場の活性を図ろうと考え、大手書店を探し、どのトヨタ生産方式の本が一番具体的で役立つか、多くの時間をかけて検討した結果、筆者の「モノの流れと位置の徹底管理法」が良いと決断した。その本を読み、筆者へ指導の依頼がきた。そうしてU社は1年間で生産性向上25%を達成した。

 本書はこの「モノの流れと位置の徹底管理法」よりも、多くの事例を盛り込み、一層具体的にわかりやすく記述した。本書はトヨタ生産方式の一般解説書や入門書ではなく、実践書なのである。筆者の指導例を多く示していることは、本書でトヨタ生産方式を実践してもらう参考手引きのためである。筆者の指導を受けなければトヨタ生産方式を導入し浸透できないということではない。

 中小メーカーの経営者は本書をぜひ一読してほしい。本書は中小メーカーへのトヨタ生産方式の真の伝達書であり、本書によって利益(生産性向上)と改善力ある人づくりを実現させるものである。本書のようなトヨタ生産方式の具体的な伝播書は初めてではないだろうか。もちろん、本書はメーカーだけでなく、どの業種にも適用できる。また、筆者は大メーカーは中小メーカーの集合体と考えられる部分が多々あるため、本書が大メーカーにも十分に適用できるものと考える。

2007年5月
近江 堅一 

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