買い物かごへ

レアメタル資源争奪戦
ハイテク日本の生命線を守れ!

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ 四六判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05813-4
コード C3034
発行月 2007年02月
ジャンル ビジネス

内容

レアメタルは、日本が得意とするハイテク製品の製造に欠かせないが、2003年以降、価格高騰が続き、その安定確保が国家的課題となってきた。レアメタルビジネスの現場に身を置く著者が、自らの経験と情報に基づきレアメタル資源獲得競争に勝ち残る道を提言する。

目次

はじめに   

推薦のことば  小池 百合子  

第Ⅰ章 レアメタルは技術立国日本の生命線
「レアメタル」って何だ!   

先端産業から見たレアメタルの用途   
レアメタルの市場規模はこの3年間で急拡大   
偏在するレアメタル資源分布   
《資料編Ⅰ》各種レアメタル資源のフローと国内市場規模

第Ⅱ章 国際経済を動かすレアメタル

利益なき繁忙のレアメタル供給メーカー   
中国に振り回される日本のレアメタル市場   
インジウムに見るレアメタルの人為的偏在   
新資源ナショナリズムに走る中国、ロシア   
79年のミネラルショックを忘れるな   
資源サイクルから近未来が見えてくる   
レアメタルをめぐる環境の変化と危機の比較   
非鉄メジャーから新資源メジャーへの世代交代   
長期化する資源問題と活発化するM&Aの関係   
世界の資源戦争はこれからどうなる   
世界各国の資源戦略はどうなっているか   

第Ⅲ章 知られざるレアメタル取引の実態
デジタル革命によるレアメタル産業革命   

なぜ価格が短期間に数倍になるのか  
価格決定メカニズムはどうなっているのか   
レアメタル取引に必勝法はあるのか   
気の遠くなるようなレアメタルビジネス   
資源ナショナリズムと投機の関係   
勝ち組のレアメタルと負け組のレアメタル   
レアメタル市況の見方   
《資料編Ⅱ》主要レアメタルの価格推移と変動要因
     
第Ⅳ章 日本のレアメタル産業勝ち残りへの道
国家規模で海外探鉱を支援せよ   

ここまで市況が上がれば国内鉱山の開発も可能だ   
日本の国家備蓄制度を見直せ   
代替材料の開発は日本の仕事   
環境リサイクル分野で産官学共同の技術開発をせよ   
中国に負けてたまるか   
資源開発は外交力による経済圏構築が必要だ   
継続可能な循環型社会を実現するための共生思想   
国家規模で新技術の開発に集中せよ   

おわりに   

はじめに

 最近、新聞、雑誌、テレビなどで、「レアメタル」(希少金属)という言葉や、「資源ナショナリズム」といった言葉を耳にする機会が多くなってきた。
 今、レアメタルに注目が集まっているのは、我々が日常的に使用している液晶テレビやデジカメなどの最先端製品がレアメタルなしには成り立たないからである。例えば、液晶テレビにはインジウムというレアメタルが使われており、デジカメではレンズの屈折率を大きくする働きをもつタンタルというレアメタルが使われている。これらのレアメタルがあるからこそ、デジカメや液晶テレビを小型化することができるのである。さらに、コバルトというレアメタルは、ノート型パソコンのリチウムイオン電池に絶対必要であるといったように、レアメタルは今、産業界において必要不可欠な材料となっている。資源のない日本は、こういった貴重なレアメタルを備蓄しようという空気は今までにもあったが、ここにきて、レアメタルの入手が非常に困難となり、それが日本の産業界にとっての死活問題にまで発展している。これを筆者は「レアメタルパニック」と呼んでいる。
 今のレアメタルパニックの特徴は、ある特定の金属だけが高騰するといった性質のものではなく、世界経済の拡大につれて、すべてのレアメタルの需要が増加したことにある。また、エレクトロニクスや航空・宇宙産業などの先端産業においては、新しい機能をもつ材料を開発するうえでレアメタルが不可欠である。一方、資源国における資源ナショナリズムの動きが急速に活発化してきており、レアメタルパニックがさらに慢性化しても不思議ではないという状況に直面している。資源国においてはレアメタル資源の枯渇が進み、元素によっては供給余力が20年を切っているとの報告がある。したがって資源国の保護政策が加速してきているために真綿で首を絞められるような恐怖心が先に立つ。その結果、過去2年間でレアメタルの価格が4倍にも5倍にも上がってしまった。今や極限状態が飽和点に達し、レアメタル産業界は悲鳴を上げている。
 特に中国は、驚異的な経済発展の中で資源輸出国から資源輸入国へと変化しつつある。現在、中国はわが国にとってレアメタル資源取引の主要な部分を占めるが、この一年で徹底したレアメタル資源の囲い込みを始めた。2006年だけで輸出還付税の完全撤廃、委託加工禁止、資源輸出税の5%から15%の賦課、さらにすべてのレアメタルについての輸出許可証の義務付けの政策が施行された。これらの政策は日本のレアメタル業界にとっては四重苦であり、レアメタルパニックの元凶となっている。
 筆者はレアメタル資源買い付けのために、30年間にわたり世界77カ国を回ってきた。特に中国は訪問回数が170回、ロシアや中央アジアにも合計60回以上の業務出張を行った。レアメタルのビジネスに携わって常に、現場、現物、現実、の三現主義に徹してきた。安定供給、安定品質、安定価格を実現するには鉱山や精錬工場の現場の視点から発想しなければ達成できなかったからである。その意味では多少なりとも日本のレアメタル産業に貢献したという自負がある。
 筆者が30年にわたり奉職してきた中堅商社は、「商社冬の時代」と呼ばれながら2002年頃から最後の生き残りをかけて「選択と集中」の名の下に企業の「解体」が始まった。03年には、日本経済がかつて経験したことのない金融不安の中でついにレアメタル部門は本体から切り離す決定がなされた。いわば、10数名の部下を含む一部門を切り売りするというM&Aを利用したクビの宣告であり、本体の生き残り策でもあった。他の事業部門でも「残るも地獄、進むも地獄」の選択肢の中、他社に吸収されたが、数年後には退職を余儀なくされていった。
 多くの仲間がスピンアウトしてゆく中で筆者は、企業解体の痛みを「レアメタル事業の再構築」という発想に転換し、MBO(マネージメント・バイ・アウト)という手法で日本初のレアメタル専門商社、アドバンストマテリアルジャパン(株)を立ち上げた。長年勤めた商社を退職し、迫り来るレアメタルパニックをチャンスに変えるべくビジネスマンの最後の賭けに出たといっても過言ではない。
 厳しい経営環境の下、新創業した会社には、今まで経験したことのないレアメタルパニックが襲ってきた。当初47億円でスタートした業績は06年では270億円以上を記録した。創業からわずか3年目にして5倍の成長である。そして、その勢いは今後も衰えるどころか、さらに加速度を増しているように思われる。しかし、その影には、あまりにも深刻なリスクが潜んでいる。その危機感の本質を本書で伝えたいと考えている。
 リスクをチャンスに変えたという考え方の反面、我々だけの力では贖うことのできない市場環境になってきたため、このレアメタル市場の本質を皆さんに理解していただき、さらに増幅していくリスクに立ち向かい産業界と共に挑戦していこうというメッセージが本書の目的でもある。
 筆者は1979年のミネラルショックを経験しているが、そのときのリスクを語れる専門家は徐々に減ってきた。過去30年間、レアメタル一筋でやってきた経験を活かし、それを次世代に伝えることが自分の使命だと思っている。しかし、経験をすべて活かすことができれば誰も失敗することはないはずであるが、それほど単純な話ではない。なぜならば相場の動向が過去とまったく同じ動きをしたことは一度もないからである。幸運の女神は常に人間を欺き我々が右往左往する姿を見て楽しまれているような気持ちに襲われることが何度もある。現場にいるものだけが理解できる洞察力であるとか、血尿を出しながら掴み得た「理外の理」といったものが最後には物を言うのだ。
 レアメタルパニックの現状を本書で広く伝えることで、石油危機のときのようにもう一度日本が危機意識に目覚め国を挙げて対処するきっかけになればと思っている。

2007年2月  中村 繁夫 

買い物かごへ