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SCIENCE AND TECHNOLOGY
バイオチップのはなし
−健康、環境を測る−

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ B6判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05787-8
コード C3043
発行月 2006年12月
ジャンル 化学

内容

バイオチップは、生体のもつ機能をハードウェアレベルで実現可能な技術として期待され、その研究開発が進められている。例えばDNAチップによるSNP解析、微生物検出、生物鑑定等をはじめ、アレルギー診断、ガン診断等々の最新情報を解説。

松永 是  著者プロフィール

1949年生まれ.
1974年東京工業大学工学部合成化学科卒業
1979年東京工業大学大学院博士課程修了
1980年7月~1982年3月 東京工業大学資源化学研究所助手
1981年5月~1982年3月 米国マイアミ大学研究員
1982年4月~1989年3月 東京農工大学助教授
1989年4月~ 東京農工大学教授(2004年より大学院共生科学技術研究院生命機能科学部門)
1994年~1996年 東京農工大学共同研究開発センター長併任
2001年4月~現在 東京農工大学工学部長,大学院工学研究科長(2004年より大学院工学府長)併任
〈主な著書〉(編,共著を含む)
バイオ新素材のはなし(日刊工業新聞社),バイオ革命は起こるか(講談社),マリンバイオ(シーエムシー),海からの地球大変革(徳間書店),生命工学への招待(朝倉書店),ほか多数.



目次

まえがき 

1章 バイオチップとは  
 1.1 生体分子の分析・測定を目指した新たなツール 
 1.2 バイオチップの種類と技術 
 1.3 今後の動き―チップの上に実験室を作る 

2章 生命情報の流れ:DNA→mRNA→タンパク質  
 2.1 生命情報の流れ 
 2.2 セントラルドグマ 
 2.3 DNAの構造 
 2.4 DNAの複製 
 2.5 DNA情報の転写 
 2.6 DNA情報の翻訳 

3章 細胞内での生命情報の流れ:タンパク質間の相互作用の重要性  
 3.1 タンパク質間相互作用 
 3.2 細胞内シグナル伝達系におけるタンパク質間相互作用の重要性 
 3.3 一般的なタンパク質間相互作用の検出法 
 3.4 インタラクトームやメタボローム解析へ 

4章 DNAシークエンサー解析の基本  
 4.1 DNAシークエンス 
 4.2 DNAシークエンス技術の原理 
 4.3 DNAシークエンシング技術の発展 
 4.4 ゲノムDNA配列の決定方法 

5章 mRNAの測り方  
 5.1 mRNAの測定 
 5.2 ノーザンハイブリダイゼーション 
 5.3 RT―PCR法 
 5.4 DNAチップによる遺伝子発現解析 

6章 質量分析計でタンパク質解析  
 6.1 タンパク質は何からできているか
 6.2 質量分析計とは? 
 6.3 質量分析計によるタンパク質解析の実際 
 6.4 今後の質量分析計の役割 

7章 DNAチップ開発  
 7.1 DNAチップとは 
 7.2 DNAチップ開発の歴史 
 7.3 DNAチップによるトランスクリプトーム解析 
 7.4 DNAチップの可能性 

8章 DNAチップによるSNP解析  
 8.1 病気のなりやすさは遺伝子が決める 
 8.2 DNAチップを用いたオーダーメイド医療に向けて 

9章 バイオチップによる微生物の検出 
 9.1 微生物とは 
 9.2 さまざまな微生物 
 9.3 病原菌検出における問題点 
 9.4 DNAチップによる病原菌の検出と薬剤耐性の識別 
 9.5 ラボオンチップを用いた微生物の検出技術 

10章 DNAチップの生物鑑定への応用 
 10.1 ゲノム情報による生物の分類 
 10.2 食品中のDNAからの生物鑑定 
 10.3 ゲノム情報を用いた個体の識別と食品トレーサビリティへの応用 

11章 DNAチップの新しいかたち  
 11.1 蛍光ビーズを利用したDNAチップ 
 11.2 磁気ビーズを利用したDNAチップ 
 11.3 ビーズアレイ用DNA回収バイオチップ 

12章 DNAシークエンサーからギガチップへ  
 12.1 ヒトゲノム解析を支える次世代のDNAシークエンス技術 
 12.2 ラボオンチップによるDNAシークエンス 
 12.3 パイロシークエンス法を利用した大規模DNAシークエンス 
 12.4 ギガチップへの応用 

13章 プロテインチップとは  
 13.1 プロテインチップとは 
 13.2 ポストゲノム時代のプロテインチップ 
 13.3 プロテインチップの現状と課題 
 13.4 プロテインチップにより開かれる展望 

14章 抗原抗体反応は分子認識の基本 
 14.1 抗体とは 
 14.2 モノクローナル抗体の作製法 
 14.3 ファージディスプレイ法 
 14.4 抗原抗体反応を利用した免疫測定法 
 14.5 免疫測定のハイスループット化 

15章 バイオセンサによる環境ホルモン,ダイオキシンの計測  
 15.1 環境ホルモン:内分泌撹乱物質とは 
 15.2 環境ホルモンの測定 
 15.3 今後の展望 

16章 アレルギー診断  
 16.1 日本におけるアレルギーの現状 
 16.2 アレルギーとは―感作から発症まで― 
 16.3 Th1細胞とTh2細胞の拮抗による免疫バランス 
 16.4 アレルギー診断の概要 
 16.5 アレルギー診断 
 16.6 そのほかのアレルギー診断 
 16.7 アレルギー診断の課題と今後の展望 

17章 プロテインチップを用いた癌診断  
 17.1 癌診断への癌マーカーの利用 
 17.2 プロテインチップの癌診断への応用 
 17.3 今後の展望 

18章 セルチップを用いた薬剤スクリーニング  
 18.1 セルチップとは 
 18.2 セルチップを用いた新薬のスクリーニング 

19章 ES細胞の利用で臓器チップも夢でない!  
 19.1 ES細胞と再生医療 
 19.2 万能細胞:ES細胞 
 19.3 体内の幹細胞―成体幹細胞 
 19.4 細胞を取り巻く細胞外マトリックス 
 19.5 3次元構造をもつ臓器の作り方 
 19.6 幹細胞を用いた臓器チップの構築の可能性 

20章 未来の姿
―バイオチップを装備したロボットの出現―  
 20.1 バイオチップを装備したロボット 
 20.2 バイオミメティクス技術を利用したバイオロボットの誕生 
 20.3 セルチップから人工細胞の創生 
 20.4 バイオチップを搭載した人型ロボットへ 

参考文献 
索引 

はじめに

 バイオチップとは,一体どんなものなのであろうか.何に役に立つのだろうか.そのような素朴な疑問に答えるために本書の執筆を計画した.
 現在,ヒトゲノムの解析が終了し,このポストゲノム時代において我々は日々研究を重ねている.ゲノム解析で得られた情報をどのように利用し,応用していくかが今後の課題と位置づけられている.そのようななかで,バイオテクノロジーの分野では,バイオチップは必要不可欠なツールとなってきている.
 つまり,今までのような巨視的な解析から微視的な解析への展開が進んでいる.バイオチップがもつその潜在的なハイスループット性,他の解析技術では成し得ない生体内分子の相互作用解析能力は傑出している.さらには,細胞を対象とした研究においては,これまでは細胞を群として扱ってきた.しかし,それでは分析が困難で顕現されてこなかった,1細胞内の生命現象などを探求することを可能にしているのがバイオチップであると考えられる.
 このように述べるとバイオチップは,あたかも研究支援ツールのように感じられるかもしれない.しかしながら,実用化も進んでおり,実際にDNAチップおよびプロテインチップを応用した製品,セルチップ関連製品などが販売され始めている.そして,DNAチップを用いたテーラーメイド医療は,そう遠くない未来に実現可能となるであろう.また,バイオチップは,ラボオンチップと呼ばれるチップ上に,多数のプロセスを組み込んだシステムの一役をも担っている(表紙図参照).
 本書では,バイオチップの現状を理解するために,従来の手法の詳細な説明を加え,またそれを理解するための基礎的な情報もいれることにより,バイオチップについて前知識のない方にも理解が深まるように配慮した.それと同時に最新のバイオチップの現状から今後の展開に至るまでを努めて簡易な表現を用いることにより,学生から専門の研究者の方々にも納得がいくようなレベルで本書をまとめた.
 本書の構成として,まず第1章でバイオチップの概論を説明し,第2章~第6章において最新の知見を織り交ぜつつ,本書を理解するのに必要な要素,従来技術についてまとめた.第7章~第11章においては,バイオチップの先駆けであるDNAチップについて,その作り方から最新の応用分野についてまとめた.そして,第12章~最終章は各種のバイオチップとその応用,さらにバイオチップの未来の姿について著者なりの見解を交えながら紹介した.
 なお,本書をまとめるにあたり,東京農工大学の新垣篤史博士,田口朋之博士,および赤星美樹氏をはじめ私の研究室の大学院生には,資料の収集,整理を助けていただいた.また,前・日刊工業新聞社の武藤朔恵氏には,本書の企画から刊行まで一貫してお世話になった.この場をお借りして,各位に感謝の意を述べさせていただく.

2006年12月 松永 是

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