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実際の設計選書
実際の設計 第6巻
―技術を伝える―

定価(税込)  4,536円

編著
著者
サイズ A5判
ページ数 420頁
ISBNコード 978-4-526-05717-5
コード C3053
発行月 2006年08月
ジャンル 機械

内容

本書は、実際の企業や職場で行われている技術の教育や、伝統工芸の中に見る技術の伝達から、そのエッセンスを取り出し、平易に解説する。設計を中心に、広くものづくり全般にわたり、技術伝承の考え方と実践を紹介。

目次

はじめに  

A編 技術の伝達論  
第1章 なぜ技術の伝達が求められるか  
  1.1  技術の伝達が求められる背景  
  1.1.1 社会の構造変化  
   (1) 人口構成  
   (2) 労働人口構成  
  1.1.2 産業構造変化  
   (1) 企業内人員構成  
   (2) 産業構造変化  
   (3) 技術伝達の有無の差  
  1.1.3 必要とされる技術の変化  
  1.1.4 技術の流出を止める  
  1.2  技術の伝達に求められる内容  
  1.2.1 技術と技能  
  1.2.2 人間組織と伝達  
  1.2.3 組織内で起こっていること  

第2章 どういうときに技術を伝える必要があるか  
  2.1  技術の伝達が必要となる状況  
  (1) 定年退職・世代交代  
  (2) 担当替え  
  (3) 2007年問題  
  (4) 大学での学年進行  
  (5) 事業内容の変更  
  (6) 生産の海外移転  
  (7) 技術導入  
  (8) 転職  
  2.2  時間軸で見た技術伝達  
  2.2.1 技術の系譜  
  2.2.2 技術提携  
  2.2.3 歴史  
   (1) 信玄堤  
   (2) たたら製鉄  
   (3) 伊勢神宮の式年遷宮  

第3章 今どんなことが行われているか  
  3.1  現在行われている伝達活動と問題点  
  3.1.1 新人教育  
  3.1.2 研修・教育  
  3.1.3 OJT(On the Job Training)  
  3.1.4 DR(Design Review)  
  3.1.5 自己学習  
  3.1.6 技術発表会  
  3.2  伝達の媒体  
  3.2.1 伝達の媒体の種類  
   (1) 言葉と絵・図  
   (2) 写真と動画  
   (3) 図と写真  
   (4) 実物,模型,レプリカ  
  3.2.2 媒体の具体的な形  
   (1) 文書  
   (2) 設計図書  
   (3) 報告書・事例集  
   (4) 映像  
   (5) データベース  

第4章 組織の中での技術の伝達  
  4.1  変えてはならないもの・変えなければならないもの  
  4.2  定型業務と非定型業務  
  4.3  技術の伝達の階層性  
  (1) 会社組織  
  (2) 規則・決まり・法律  
  (3) 技術の決まり  
  (4) 技術の内容  
  (5) 技術の伝え方  
  4.4  伝わるものの種類  
  4.4.1 強制してでも伝えるべきもの  
  4.4.2 自然に伝わるべきもの,伝わってほしいもの  

第5章 技術を伝えるとはどんなことか  
  5.1  技術が伝わるとは何か  
  5.2  どんなときに伝わるか・途切れるか  
  5.3  技術の伝達で留意すべきこと  
  (1) 技術屋の通弊を知っておかなければならない  
  (2) 最低限持っていなければならない知識がある  
  (3) 技術は他の技術との関連で捉えなければならない  
  (4) 技術を作る者と利用者との全体サイクルで考えなければならない  
  (5) プル型技術連鎖による伝達が必要である  
  5.4  技術伝達の問題点  
  5.4.1 経験は伝達できるか  
  5.4.2 知識化すれば伝えられるか  
  5.4.3 伝える者と受け取る者との心象の差  

第6章 技術伝達の新しい手法  
  6.1  伝達手法について現在わかっていること  
  (1) 欲しい者が作ると使える  
  (2) 残しても誰も見ない  
  (3) 出来上がったものを伝えてもダメ  
  (4) 自らむしり取るときに身に付く  
  6.2  新しい伝達手法の基本的考え  
  6.2.1 脳科学(応用脳科学)  
  6.2.2 出力形学習  
  6.2.3 個の独立  
  6.2.4 まず“個”,次に“集団で共有”  
  6.2.5 “個人知”と“共有知”  
  6.2.6 思考進化のスパイラル  
  6.2.7 知識化しないと共有できない  
  6.2.8 上位概念に登ることはできるが,下位概念には降りられない  
  6.2.9 観察して理解する  
  6.3  新しい考えを作る新しい手法  
  6.3.1 思考展開図  
  6.3.2 仮想演習  
  6.3.3 逆演算  
  6.3.4 暗黙知の表出  

第7章 技術を伝えるための具体的手法  
  (1) 標準の中に作り込め  
  (2) 作法(さほう)・形(かた)を徹底的に叩き込め  
  (3) マニュアルを自分で作れ,そしてその通りにやってみろ  
  (4) 作業指示書を自分で作れ  
  (5) チェックリストを自分で作れ  
  (6) デザインレビュー(DR)をやれ  
  (7) 知りたいことを知らせろ  
  (8) わかって身に付く形で教えろ  
  (9) 裏図面を作れ  

第8章 技術を伝えるための具体的活動  
  8.1  畑村塾  
  8.1.1 畑村塾の講義の進め方  
  8.1.2 畑村塾の孫発表  
  8.2  科学技術振興機構(JST)の失敗知識データベース  
  8.3  失敗展示会  
B編 技術の伝達の具体例  
第9章 個人間の伝達  
  9.1  水泳上達と個人知  
  9.2  楽器演奏に見る技術習得の段階性  
  9.3  勝負すれば技術は伝わる(テニスと金型)  

第10章 組織内の伝達  
  10.1  本質的なPL対策  
  10.2  合理化に負けない技術伝承への取組み  
  10.3  大学の研究室における技術・知識の伝達  
  (1) 伝える相手が目の前にいる場合  
  (2) 伝える相手が目の前にいない場合  
  10.4  情報を開示し危機感を伝える―小企業の一事例  

第11章 教育での伝達  
  11.1  機械系CAD/CAMの講師をやって悩んだこと  
  11.2  樹脂部品の作り方を教える教育コースを立ち上げた  
  11.3  新入社員教育・専門技術基礎教育  
  11.4  製作体験を重視した初学者設計教育  

第12章 社会での伝達  
  12.1  地場産業としての漆技術の伝承  
  12.1.1 漆の技術  
   (1) 漆の精製工程  
   (2) 製作工程  
  12.1.2 漆技術についての見聞録  
   (1) 考え方および心構え  
   (2) 技術および技術力  
   (3) 時代相  
  12.1.3 伝統工芸品の技術伝承  
   (1) 伝統工芸品の特徴  
   (2) 需要と技術の伝承  
   (3) 技術継承者の要件  
   (4) 伝統工芸の今後  
  12.2  論文による技術・知識の伝達  
  12.3  技術思想のすばらしい伝承体系―特許制度  
  12.4  知らなくて仕事で困ったことを本にして伝えた  

第13章 時間差・空間差のある伝達  
  13.1  油圧ショベルの技術が如何に伝わったか  
  13.2  技術提携と設計図面  
  13.3  保守を通じてソフトウェアの開発技術を伝える  
  (1) ある先輩技術者との出会い  
  (2) 調査  
  (3) 検討  
  (4) 開発  
C編 歴史に見る技術の伝達  
第14章 信玄堤と治水  
  14.1  信玄堤と治水  
  14.1.1 背景  
  14.1.2 信玄堤  
  14.1.3 現代から見た信玄堤  
  14.1.4 知識化  
  14.2  信玄堤実見記  

第15章 伊勢神宮における遷宮  
  15.1  伊勢神宮における技術の伝承  
  15.1.1 伊勢神宮と遷宮  
  15.1.2 遷宮の準備  
   1. 計画作成  
   2. 資材の確保  
   (1) 用材  
   (2) 屋根に葺(ふ)く萱(かや)  
   (3) 装束・神宝  
   3. 要員確保と育成  
  15.1.3 造営  
  15.1.4 後始末(古殿と古材)  
  15.1.5 棟梁の技術伝承  
   1. 見習い時代の技術の獲得  
   2. 棟梁になるまでの技術の獲得  
   3. 棟梁時代の技術伝承  
   4. 遷宮で引き継がれていることと変えられていること  
  15.1.6 伝承の仕組み  
  15.2  伊勢神宮実見印象画  

第16章 たたら製鉄  
  16.1  たたら製鉄の歴史  
  16.2  たたら製鉄のプロセス  
  16.2.1 たたら製鉄の技術体系  
  16.2.2 たたらの構造  
  16.2.3 たたら操業のプロセス  
  16.3  たたら製鉄の科学  
  16.4  たたら技術の伝承  
  16.4.1 技術伝承の体系  
  16.4.2 村下の行う観察・管理  
  16.4.3 木原氏はどのように継承したか  
  16.4.4 どのように伝承しようとしているか  

第17章 伝統的技術の伝達  
  17.1  女性から見た3つの技術  
  17.2  初学者の見た2つの技術  
  (1) このテーマを選んだ理由  
  (2) 見学で直接に知ったことと考えたこと  
  (3) 技術の伝達の視点から見た両者の比較  
  (4) 考察  
  (5) 知識化  
  (6) 2つのインタビューを通じて感じたこと  
  17.3  文化としてのたたらと伊勢神宮  
  17.4  技術の歴史を見る  
  17.4.1 “現地,現物,現人”の3つを実行する  
  17.4.2 そのとき動いている状態を考える  
  17.4.3 “人間”を考える  
  17.4.4 物流を考える  
  17.4.5 大きな歴史の流れを考える必要がある  
  17.4.6 社会の状況を推察する  
  17.4.7 世界の状況を考える  

おわりに  

索 引  

カラー写真集  (巻末)

よもやま話
   日本料理の技術は戦時中に途絶えてしまった  
   働きすぎると技がにぶる  
   会社にも「卒業」が必要  
   入社1年目の実務知識習得あれこれ  
   技術環境を伝える  
   見習い制度は技術革新を呼ぶ  
   自分でスケルトン図を描くと,理解が進む  
   身体障害者となった父が講義をした  
   Project―Based Learningの勧め  
   木曽漆器  
   お六櫛  
   論文ランキング  
   ニューオリンズの水害  
   神社の様式  
   自転車の練習法について  

【参考】 
   大量輸送機関での重要度  
   たたらの鉄による日本刀が伊勢神宮へ  
   たたら製鉄と現代製鉄との比較  
   たたらの科学に挑む永田和宏教授  
   製鉄は自然から作る産業  

はじめに

 本書は,1988年以来刊行している実際の設計シリーズ(本編)に属するもので,「実際の設計―機械設計の考え方と方法」,「続・実際の設計―機械設計に必要な知識とデータ」,「続々・実際の設計―失敗に学ぶ」,「実際の設計第4巻―こうして決めた」および「実際の設計第5巻―こう企画した」に続くものである.本書ではテーマとして“技術の伝達”を取り上げた.

 世の中では“技術を伝える”ことを“伝承”という言葉で表現することが多いが,ここではあえて“伝達”という言葉を使っている.“伝承”という言葉は,時間をかけて確立されたものが世代を超えて,変わることなく引き継がれるときに用いられると考えられる.しかし,“技術を伝える”ことを考えると,受け継がれた“技術”は,絶対に変えてはいけないということはなく,常に周囲の状況に応じて変えていかなければならない.また,本書では“世代を超えて受け継がれる”だけではなく,広くあるところからあるところに技術を“伝える”ことをも取り上げたため,“伝達”という言葉を使うほうが適当だと考え,“技術の伝達”と表現することにした.本書は,そういう意味で,生きていてダイナミックに変化する技術を伝えることを取り扱うものである.

 もともと実際の設計シリーズの本編として,第6巻および第7巻では“先例に学ぶ”,および“先人に聞く”をテーマとする予定で,勉強を始めていた.たとえば,その典型的な例として甲府にある信玄堤について,本を読んだり資料を整えたり,また現地調査を行ったりした.しかし信玄堤を調査した結果,信玄堤を作った当時の技術的な考え方ははるか歴史の彼方に隠れてしまい,その思想は現在に引き継がれておらず,別の構築物で治山・治水が行われていた.技術が伝わるのではなく,技術が途絶え,別の技術が使われていたのである.このようなことを考えたとき,“先例に学ぶ”や“先人に聞く”という考え方では,ダイナミックに変化する技術を取り扱うには不十分だと考えるようになった.

 さらに別の問題が起こってきた.いわゆる“2007年問題”である.戦後のベビーブームに生まれてきた,他の世代に比べて非常に人口が多い“団塊の世代”が経済的な活動を終えて定年になり,実際の生産現場から去っていく,それが最も激しく起こるのが2007年だといわれている.そこで技術が途絶えて生産や社会運営で多くの問題が生じることが懸念され,これが“2007年問題”として広く意識されるようになった.そこで,筆者らが“技術を伝える”ことについて“実際の研究会”で学んできたことを,できるだけ早く本にして世に問うことが,世の中に大きく貢献することだと考え,急遽「実際の設計第6巻」を“技術を伝える”という内容に変えることにした.本テーマは“先例に学ぶ”や“先人に聞く”という内容を十分に包含し,さらに上位概念のものであると考えられる.

 本書の構成と具体的な内容は次の通りである.まず,本書はA編・B編・C編の3つから成る.A編は“技術の伝達論”であり,第1章から第8章までで成り立っている.
 第1章では,なぜ技術の伝達が求められるかについて,今“技術の伝達”が注目される背景,およびそこに求められる内容について述べる.
 第2章では,どういうときに技術を伝える必要があるのかを取り扱う.
 第3章では,技術を伝えるために現在一般的に行われている活動の特徴や,問題点などを取り扱う.
 第4章では,実際に企業などの組織の中で行われている技術の伝達について分析する.
 第5章では,技術を伝えるということはどういうことかを上位概念で見直し,明らかにする.
 第6章では,従来形に取って代わるまったく新しい技術伝達の手法の基本となる考え方を紹介する.これは本研究会で議論を重ねた末到達した結論に基づく伝達手法を,実際に様々な企業の中で実践した結果,非常に有効であることがわかったので,本書であらためて提案するものである.たとえば,この手法は“応用脳科学”とでもいうべき性格を持ち,“出力形の学習”を推奨するものである.また,“個”が独立してそれぞれ考えを作り上げた後,“集団で共有”するという考え方に基づくものである.
 さらに“知”を“個人知”と“共有知”に分けて考え,思考はらせん状に進化することを明らかにする.具体的な事象から上位概念にのぼり,知識化したときだけ“共有”や“知識の伝達”が可能になることを述べる.また,“観察すること”がすべての基になることを主張する.新しい考えを作る具体的な方法として,“思考展開図”“仮想演習”“逆演算”“暗黙知の表出”などを提案する.
 第7章は,技術を伝えるための具体的手法を取り扱う.
 第8章は,技術を伝えるために行われている具体的な手法として,特に筆者の一人の畑村が行っている“畑村塾”を詳しく説明し,また科学技術振興機構(JST)が作った“失敗知識データベース”などを詳しく紹介する.

 B編は,技術の伝達の具体的な例である.約30人の本研究会のメンバーが,自分の日常生活の中,企業活動や生産活動の中で行っている技術の伝達について取り扱う.第9章では“個人間の伝達”を取り扱い,第10章では“組織内の伝達”を取り扱う.また第11章では“教育での伝達”を取り扱い,第12章では“社会での伝達”を取り扱う.そして最後に第13章では,“時間差や空間差のある伝達”について取り扱う.

 C編では,歴史的な技術の現状という視点から,“信玄堤”,“伊勢神宮での遷宮”,“たたら製鉄”の3つを取り上げた.本編の執筆に当たっては,資料などを集めて調査するほかに,現地に赴いて調査し,関係者に取材した.筆者達の主張する“3現(現地・現物・現人)”を実行してまとめたものである.

 第14章では,技術が伝えられなかった例として“信玄堤”を取り上げ,過去に大きな意味を持っていた土木技術が,現在ではその恩恵を蒙りながらも,その技術思想がすべて消えてしまったことについて考察する.
 第15章の“伊勢神宮における技術の伝承”では,1300年にわたり脈々と引き継がれてきた20年に1回行われる伊勢神宮の式年遷宮の技術が,どのように伝えられているかを取り扱っている.
 第16章では,有史以来,出雲で行われている伝統的な鋼の製造法である“たたら製鉄”を取り上げ,その技術がどのように伝達されているかを述べる.
 第17章では,伝統的技術の伝達全般をどのように理解すればいいかについて取り扱っている.

 なお,本書では,“実際の設計シリーズ”の他の本と同じく,ページの余白に“よもやま話”を挿入した.また各章や各事例の最後に畑村や他のメンバーが“蛇足”と称してコメントを付け,話が立体化することを目指した.本文に飽きたときなどに,“よもやま話”や“蛇足”を一服の清涼剤として楽しんでいただきたい.また,もの好きな読者は“よもやま話”だけ,または“蛇足”だけを拾い読みしてみて欲しい.すると,正面から見たのとは異なる技術の面が見えてくるはずである.

 本書の作成に当たっては,“実際の設計シリーズ”本編が刊行されはじめた頃からの読者が年齢を重ね,生産活動を通じて成長し,ついに次世代への技術の伝達を考えるに至ったことを想定している.第1巻から第6巻までを通読すると,技術を学ぶ者が成長するに従ってその考えの広さと深さが変わっていくこと,それを次の生産に生かすのにはどのような考え方をすればよいか,などが実際の経験に基づいて考えられた内容から学び取ることができる.
 詳しくは,本書では次のような読者を想定している.
 ・自分が新たに技術を学び取るときに,昔からある,または先輩が持っている技術を,どうすれば自分のものとして取り込むことができるか,と考えている  人.
 ・自分が技術を持っていて,次世代の人にそれを伝えたいと考えている人.また,伝えたいと考えている人が多くおり,伝えたい大事なことも数多くあるの  に,それを求める人自体がいない状況に気付き,どうすれば欲しくなる人を作ることができるか,と考えている人.
 ・企業の設計や技術担当部門で,技術をきちんと記述し,広める役割を担っている人.
 ・大学や研究所などで,自分が得た知見を他人にきちんと理解させ,伝達することが職務になっている人.
 ・部下や学生の指導などで,どのようにすれば考えを正確に伝達することができるかと悩んでいる人.
 ・あまり難しいことを考えず,とにかく本当のことを伝えるにはどうすればいいかと考えている人.
 ・今までに見たことも聞いたこともないような伝達論なので,面白そうだから覗いてみようと思う人.

 本書の読み方には,たとえば次のようなものが考えられる.
 ・技術の伝達の一般論とその問題点,また新たな考え方を学びたい人はA編の第1章から第8章を順番に読むのがよい.
 ・企業や組織の中で技術の伝達に実際に携わっている人は,まず第9章から第13章を読むとよい.その後,あらためてA編の第1章から第8章を読むと非  常によく理解ができる.
 ・歴史的な技術がどうなっているかを知りたい人は,C編を読めばよい.
 もちろんこれらの読み方だけに限ることなく,自分の好みや目的に応じて好きなように読んでいただきたい.どのような読み方をしても,すべて筆者らが実際に経験したり,議論したり,現地・現物・現人を実行し,深く考えたものであるから,興味を持っていただけると確信している.本書を通読すれば,広く生産活動にかかわる知識や,技術の伝達の全体像をつかむことができる.そしていったんその伝達の全体像を掴むことができたら,必ずや正しく技術の伝達ができるようになる.

 A編“技術の伝達論”の第1章から第8章,および17章のうち17.4節は本研究会の代表である畑村が記述した.B編の第9章から第13章および第17章の17.1~17.3節は,実際の設計研究会のメンバーが個々に自分の実際の体験に基づいて記述した.また,C編の第14章から第16章は,それぞれの事例を担当した者たちが実際に仕事をしている方々に面接し,現地を案内していただいて話の内容を再構築したり,全体像を作ったりしたものである.なお,直接の表現をすると企業秘密に触れたり,関係者に迷惑がかかる恐れのあるところでは適度に記述をボカスなどの工夫を行ったが,本質的な内容は筆者たちの考える事実にすべて基づいている.
 本書の執筆者は次の28人である.そのほとんどが東京大学工学部機械系3学科の旧畑村研究室を卒業した者である.この者達は当研究室で34年続けた設計のガイダンスをそれぞれの時期に受けた後,企業などで様々な仕事に従事し,設計の全体像を自分の頭の中に作り上げた.執筆者の名前を次に記す.
  畑村洋太郎  小野 耕三  矢沢 恒治  近石 康司  手塚 則雄
  岩崎 雅昭  関田 真澄  井原 正登  原  秀夫  草間 俊介
  酒井 幸三  水谷 栄二  米山  猛  山本 佳男  稲城 正高
  松本  潔  梅澤 和彦  足立 光明  一木 克則  土屋 健介
  力久 弘昭  高橋 宏知  畑中 元秀  藤岡 聡太
  藤田 和彦  関田 純子  近石 直子  畑村 太郎

 また,ここに掲げた執筆者のほかに,本編のC編をまとめるに当たり次の方々に多大な協力をいただいた.
  和田 一範  宮間 熊男  木原  明

 以上に述べたように,本書は“技術の伝達”という非常に重要な事柄について,筆者らが考え,実行してきた結果をまとめたものである.読者が本書に刺激を受け,それぞれの活動に活用することがあれば,筆者一同これに優る喜びはない.

2006年8月31日 
「実際の設計研究会」 
代表 畑村 洋太郎 

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