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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい熱処理の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05540-9
コード C3034
発行月 2005年10月
ジャンル ビジネス

内容

熱処理は、生活用品の庖丁、ナイフ、鋸、鉋などの切削用器具、自転車のチェーン、スプロケットのパーツ、自動車の部品など身の周りの数多く品物に施工されており、産業界ではなくてはならない加工工程の一つである。熱処理の理論はやや難しいと感じられるだろうが、本書ではできるだけ平易に説明し、体験上の事例を上げて入門的なガイドブックに構成している。

坂本 卓  著者プロフィール

(さかもと たかし)

1968年 熊本大学大学院修了
同年三井三池製作所入社、鍛造熱処理、機械加工、組立、鋳造の現業部門の
課長を経て、東京工機小名浜工場長として出向。復帰後本店営業技術部長。
熊本高等専門学校(旧八代工業高等専門学校)名誉教授
㈲服部エスエスティ取締役
三洋電子㈱技術顧問
講演、セミナー講師、経営コンサルティング、木造建築分析、発酵食品開発
などで活動中。
工学博士、技術士(金属部門)、中小企業診断士
著者 『おもしろ話で理解する 金属材料入門』
   『おもしろ話で理解する 機械工学入門』
   『おもしろ話で理解する 製図学入門』
   『おもしろ話で理解する 機械工作入門』
   『おもしろ話で理解する 生産工学入門』
   『トコトンやさしい 変速機の本』
   『トコトンやさしい 熱処理の本』
   『よくわかる 歯車のできるまで』
   『絵とき 機械材料基礎のきそ』
   『絵とき 熱処理基礎のきそ』
   『絵とき 熱処理の実務』
   『絵ときでわかる 材料学への招待』
   『「熱処理」の現場ノウハウ99選』
   『ココからはじまる熱処理』
   『おもしろサイエンス 身近な金属製品の科学』(以上、日刊工業新聞社)
   『熱処理の現場事例』(新日本鋳鍛造協会)
   『やっぱり木の家』(葦書房)

目次

第1章 熱処理に使用する鉄材料



熱処理は食べ物を得るために生まれた!?「必要性から生まれた熱処理技術」

鉄を作ることとはどういうことか「製鉄と製鋼の違い」

鉄と鋼と鋳鉄の違い「鉄は炭素量によって大きく3つに分けられる」

鉄の強度と炭素の役割「C濃度を変え、目的に合った鉄を作り出す」

鋼の選び方「鋼はC濃度によって特性が大きく異なる」

最も利用される実用炭素鋼「一般構造用圧延鋼と機械構造用炭素鋼が代表」

火花により鋼を見分ける「鋼をグラインダで削って、火花を観察」





第2章 金属の性質と鉄の状態



1000℃を超える温度の計測「金属に生じる起電力の原理を応用して温度を計測」

金属の溶融と凝固「金属の固相と液相は凝固点を境にして分かれる」

相とは何か「相は金属の姿や形を表す」

金属の結晶構造と変態「金属はそれぞれ固有の結晶格子を持つ」

応力はなぜ発生するのか「応力には熱応力と変態応力がある」

合金には固溶と化合がある「合金は2種以上の純金属が混ざり合ったもの」

鉄と炭素の状態図「最もポピュラーな鉄の状態図」

材料の組織を見る「材料内部の変化が熱処理の目的」





第3章 熱処理の基本装置



熱処理の概念と目的「文明の興亡に関与した熱処理」

熱処理の加熱炉「加熱炉は熱処理の中心的な設備」

熱処理の冷却装置「冷却にも気を遣わなければいけない熱処理」

熱処理に必要なその他の装置「確実な熱処理を行うために」





第4章 熱処理の手法と操作



焼なまし(1)「完全焼なましと中間焼なまし」

焼なまし(2)「球状化焼なましと均質化焼なまし」

焼ならし(1)「内部応力をなくし、均一な組織の鋼に」

焼ならし(2)「空気冷却を行う焼ならしには安全対策が必要」

焼入れ「急冷することで組織が変わる」

焼入れ用冷却剤「急激に冷やすには冷却剤が必要」

残留オーステナイトとMs点「完全にマルテンサイト組織に変態させる」

硬さの測定を行う「どれくらい硬いのかを確認する」

焼入性の定義「焼入性が大きいと利点が多い」

焼入性の評価「対象物の焼入性を測定する」

合金鋼と焼入性「鋼に含有される元素によってさまざまな特性を発揮」

体積変化と変寸および変形「鋼は熱によって、やっかいな変寸や変形を起こす」

焼割れの防止「焼入れでは最も注意すべき焼割れ」

さまざまな焼入法「焼入れでの変形を防ぐ工夫」

表面対策で酸化や硬さ低下を防ぐ「鋼表面の酸化防止と脱炭対策」

焼戻し「焼戻しで優先させたい性質を得る」

焼戻しの組織と焼戻脆性「焼戻しには急に脆くなる温度がある」

中間焼戻し「低温焼戻しや高温焼戻しでできない特性を付与する」

不完全焼入れ「確実に完全な焼入れと焼戻しを行う」

二次硬化「Cr、Mo、Vなどがさらに硬さを上げる」





第5章 恒温変態を利用した熱処理



恒温変態とは何か「恒温変態で均一な組織を得る」

恒温焼なましとオーステンパー「恒温変態を利用して変形や焼割れを少なくする」

マルテンパーとマルクェンチ「恒温変態曲線の凸部分の回避が鍵」





第6章 表面処理



表面焼入れとは「対象物の表面だけの硬さを上げる」

高周波焼入れを行う「高周波による誘導加熱で表面焼入れを行う」

硬化層深さとは「表面焼入れ後の硬くなった部分の深さ」

浸炭焼入れの理論「高温にして炭素を侵入させる」

浸炭焼入れの実際「充分な浸炭深さを得るための工程」

浸炭焼入れの組織「表面と芯部の組織の違い」

ガス窒化で表面焼入れを行う「窒素により表面を硬くする」

ショットピーニングで表面を硬化「細かい鋼球や砂で表面を硬化させる」

その他の表面処理「耐熱、耐食などの目的でさまざまな方法がある」





第7章 各種の鋼の熱処理



焼入性を向上させた強靱鋼「機械構造用炭素鋼に合金元素を添加」

強度対重量比が良い高力鋼「溶接に適し、引張強さを持つ鋼の開発」

硬くて摩耗に強い工具鋼「工具に適した機能を持たせた鋼」

高速で使う切削工具に適した高速度鋼「工具の摩耗を少なくする」

錆びないステンレス鋼「CrやNiのおかげで錆びにくくなる」

塑性変形をせず破壊に強いばね鋼「何度も伸びたり縮んだりできる特性を付与」

回転を保持する強さを持つ軸受鋼「確実に回るための機能を有する」

鋳造に適した鋳鋼「鋳造で製造工程の簡素化を図る」

風雨にさらされても強い鋳鉄「マンホールや薪ストーブのもと」





第8章 熱処理の管理と品質



熱処理作業の改善「作業設備や環境の向上が品質を上げる」

熱処理工場の管理「確実な管理が確実な品質を生む」

確実な熱処理と品質「処理中には目に見えない欠陥」





【コラム】

●目視での温度計測

●デッドストック鋼材の選別

●車輪の焼ならし

●ひまし油の効果

●焼入れ時の判断とボヤ

●歪み、曲がり対策

●焼きイモ作り

●残留オーステナイトの仕業

●破面は語る



索 引

はじめに

はじめに



熱処理は私達の生活の中で知らず知らずのうちに存在しています。たとえば「身体がなまった」という。「なまった」とは「鈍る」の意味で、身体の内部に力が入らないで、筋肉が弛緩したような気持ちを言い表しますが、これは「弾力性」や「ハリ」がなくなり、力が抜けたような感じなのでしょう。また「焼きを入れる」という表現もありますが、これは「活を入れる」あるいは「気合いを入れる」と同様なことなのでしょう。

熱処理は実際に生活や産業の分野で広く活用されています。生活用品の包丁、ナイフ、鋸、かんななどの切削用工具、自転車のチェーンやスプロケットなどのパーツ、自動車の見えない内部の部品、それら数多くの部品に熱処理を施工して、それぞれが最大に機能を得るよう工夫しています。産業界や生活においてもなくてはならない工程の一つであり、加工が形を変化させるのに対して、熱処理は材料の内部だけを変える、超不思議な処理です。

人類がいつから熱処理の効果を知り、鋼や金属に応用してきたか詳細に知り得ませんが、現存する物から判断して、日本の神話に太刀が登場しますが、それを使った大和武尊の時代もしくは、それを伝承・記載された時代にはすでに刃物に応用されていたのです。そのころから、熱処理という不思議な処理を行っていたのです。

熱処理は施工した形跡が表面に現れず目には見えません。これは熱処理が、材料内部の変化を理論的に応用することを目的にしているからです。つまり、外見は変えずに、内部の組織を変化させるのです。そのため熱処理の良否は外観から評価しにくく、正しい操作が重要になってきます。

熱処理の理論は難しいと感じられるでしょうが、本書ではできるだけ平易に説明し、体験上の事例も上げて入門的なガイドブックに構成しています。本書が、読者の方々のお役に立てば幸いです。



2005年10月

坂本 卓

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