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塗装実務のトラブル対策

定価(税込)  3,132円

著者
サイズ A5判
ページ数 296頁
ISBNコード 978-4-526-05518-8
コード C3043
発行月 2005年09月
ジャンル 化学

内容

塗装の出来具合は、その製品の価値を決定する大きな要因になっている。それだけに塗装は製品表面の保護のみならず美麗さも重要になっている。一方、環境保護の観点から規制が強まる傾向にある。そうした状況の中で直面するトラブル対策を開陳したのが本書。

坂井秀也  著者プロフィール

坂井 秀也(さかい ひでや)
1946年 東京都に生まれる
1969年 武蔵工業大学工学部経営工学科卒業
同大学生産基礎工学研究室研究助手
1970年 富士通株式会社入社 塗装技術係を担当
(工場設備計画,品質管理,工場管理,VE等)
1973年 富士通株式会社退社
株式会社星秀社取締役就任(工場経営)
株式会社工塗技術研究所取締役就任
(新製品開発および販売,システムエンジニアリング)
1992年 技術士登録により,坂井技術士事務所開設
現在,日本工業塗装協同組合連合会技術顧問,
すみだ中小企業センター技術相談員を兼任

目次

はじめに

基 礎 編
1 塗装計画とトラブル予防
  1.1 塗膜を作る  
  1.2 塗装能力と計画管理  
  1.3 現場改善の導入  
  1.4 再塗装のムダ  
2 塗膜の機構と評価
  2.1 塗装実務者の責務  
  2.2 塗膜の成分構成  
  2.3 塗膜の形成機構  
  2.4 塗膜の基本的性質  
  2.5 塗膜の強さ  
  2.6 固形分と溶媒  
  2.7 種類と選定用途  
  2.8 性能と試験  
  2.9 塗膜欠陥と劣化  
3 塗装の基礎知識
  3.1 色彩の知識  
  3.2 塗着効率の向上  
  3.3 機能性塗膜の拡大  
4 塗装における課題
  4.1 新技術の動向  
  4.2 塗装工場の関係法規  
  4.3 環境への対応  

事 例 編
5 塗装設計におけるトラブルと対策
  5.1 塗装目的の明確化  
  5.2 色に関するトラブル事例  
6 被塗物材質におけるトラブルと対策
  6.1 金属  
  6.2 非金属  
  6.3 合成樹脂  
  6.4 木材  
  6.5 ガラス  
  6.6 紙  
7 作業方法におけるトラブルと対策
  7.1 噴霧塗装  
  7.2 静電塗装  
  7.3 電着塗装  
  7.4 粉体塗装  
  7.5 水系塗装  
  7.6 特殊塗装  
8 塗装工程におけるトラブルと対策
  8.1 前処理  
  8.2 中間処理  
  8.3 塗装前  
  8.4 塗装時  
  8.5 塗膜に関するトラブル事例  
  8.6 乾燥時  
  8.7 塗装後  
9 設備機器におけるトラブルと対策
  9.1 設備能力の確認   
  9.2 固定資産としての設備  
  9.3 設備機器購入の確認  
  9.4 設備トラブルの実態  
  9.5 汎用設備の予防管理  
  9.6 設備機器の総合点検  
  9.7 設備費用の内訳  
  9.8 塗装機器の選定  
  9.9 塗装ブースなどの確認  
  9.10 ブース排気トラブルとその対策  
  9.11 工事の変更と追加  
  9.12 塗装関連機器の確認  
  9.13 排水処理装置の確認  
  9.14 塗膜硬化装置  
  9.15 乾燥炉の排気処理方式と特徴  
  9.16 自動塗装機とロボット  
10 工場施設におけるトラブルと対策
  10.1 省エネルギーの活用  
  10.2 工場計画の基本  
  10.3 動線とレイアウト  
  10.4 産業廃棄物の削減  
11 被塗物用途におけるトラブルと対策
  11.1 自動車  
  11.2 電気  
  11.3 建築資材  
  11.4 生活用品  
  11.5 船舶  
  11.6 構築物  

あとがき  

索引  

はじめに

 塗装は,テクノロジーとアートとの調和を追究し続けているが,モノづくりとしての基本は変わらない。色は光によって眼に入力し,脳で判断される原理は不変である。自然の色は美しいが故に,モノによってこれを得ようとする。そして,科学技術の進展によって,カメラやディスプレィなどの表示色数は最近では16,777,216色の再現までと欲求を満たし,私たちの生活にさりげなく浸透している。

 モノづくりの現場において,「失敗」は存在する。「なぜ,起きたのか」「どうすればよいか」という試行錯誤を繰り返しながら,問題解決の糸口をつかもうとしている。このモノづくりに対する科学技術によるアプローチが必要視されているが,現場の実務として吸収する場は薄れている。それを裏づけるかのように,知財競争が世界中を走り,アメリカが開発したものを,日本が製品化し,アジアが量産すれば,開発先の特許や量産先の売り上げのメリットはあるが,道筋をつけた現場技術には見返りがない実態がある。それでも,さらなる飛躍を求めて,企業は前進あるのみである。継続的な事業も常日頃の改善投入によって,自社だけの特異性を活かし,変化する市場に挑戦する姿勢が必要視されている。

 「失敗作から成功品の基本を発掘」し,自社開発によるマーケット拡大を実践している企業も存在するが,多くの塗装専業事業所においては,発注企業からの受託加工であるため,材料面や加工条件面でのクレームやトラブルに取り組んでいる状況である。化学物質や危険物などを取り扱う面からも,ヒューマン・エラーの怖さや「重大な失敗は300回のヒヤリやハットから一回起こる」というあの労働災害で有名な「ハインリッヒの法則:1:29:300確率理論」から予防の重要性もあるが,近年多発している産業事故災害の誘因として管理態勢の甘さが指摘されている。このようなトラブルの真因を探求する上で,現場に出て,クレームやトラブルの現物を見て,現実で具体的な対策を見つけ出す「3現主義」の存在は大きい。

 けれども,現場でのクレームやトラブルは,公開したくないのが本音である。そのため,その現場における問題解決までの時間と費用は大きく,その影響は利益圧縮や工程手順さらには取引問題にまで波及しているのが現状である。塗装現場で発生するクレームやトラブルは,自社のマイナス面をさらけ出すことでもあり,クローズド化しているのが現状である。「間違いから学ぶ」ことにより,再発防止を徹底する意識改革の上で,この自社の弱みや問題を確実に把握し,クレームやトラブルを予防することこそ,自社の体質を強化する基本といえる。特に、塗装のクレームやトラブルの場合,複数の発生因子が関係していることが多く,その原因究明には,多方面からの科学技術的アプローチが必要不可欠な対処方法となっている。このため,塗装に対する工学的な取り組みが必要視されており,まず塗装の基本を追究することが現場課題といえる。

 「クレームやトラブルは,技術の境界で起こる」といわれているように,また塗料のハイレベル化や塗装技術の高度化が進む状況下においては,塗装をめぐるそれぞれの業際技術分野を習得して,その接点技術や複合技術に目を向けることが重要といえる。しかしながら,現実には「再塗装」等の処置で急場をしのぐことで,いつまでも問題の深部はブラックボックス化し,「失敗」を繰り返すことが多い。

 現場で解決できるものならばよいが,解決できない問題は最適情報を入手しなければならず,塗料や機器の技術担当に回答を求めるケースが日常化している。これによる対応の遅れがあればさらなる弊害や損害も起こるため,常に情報収集をしてクレームやトラブルの発生防止に努めることが大切である。このような危機回避を進める上で,企業は自社の経営資源を高める必要がある。従来は,シェア拡大や生産量増加のために,土地などの有形財産をベースとして労働力や設備機械といった物質資本によって事業の拡大をしてきたが,これからは,消費者の所有価値が高度化する中で,事業成果に環境,信頼性,安心安全などを事業評価として確保するため,知的財産権,技能スキルや技術ノウハウ,情報システムなどの無形財産を情報資本として活用するとともに,産学官交流などの人脈やネッワークをベースに事業展開することが重要な経営資源といえる。

 私たちの生活に浸透している塗装の用途は多分野で採用されており,その塗装作業は屋外で行うものと,工場などの屋内で行うものとによって,二分化される。本書においては,伝統工芸としての屋内塗装作業を除き,工場による塗装現場を対象とした。今や塗装業界では常用化している「工業塗装」を取り上げ,現場で発生する塗膜障害や塗装工場の現場改善を主とした内容とした。また,顧客市場の要求を満足させるため新種のクレームやトラブルも存在するが,基本的な取り組みを主体とした。

平成17年6月
坂井 秀也 

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