買い物かごへ

SCIENCE AND TECHNOLOGY
超純水のはなし

定価(税込)  1,620円

著者
著者
サイズ B6判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-04992-7
コード C3050
発行月 2002年08月
ジャンル その他

内容

半導体や医薬品の製造、原子力発電などのハイテク分野で、自然界には存在しない、不純物ゼロに限りなく近い水「超純水」が重要な役割を果たしている。超純水とはどのような水か、どのような装置で製造されるのか、ナノテク時代の最新技術をわかりやすく解説。

目次

目 次





第1章 水の特異な性質

1・1 コップ1杯の水割りが語る水の不思議 1

1・2 水が持つ強い溶解力 5

1・3 水に溶け込んでいるさまざまな物 9

1・4 水の溶かす力が産業では障害になる 16



第2章 水の不純物による障害

2・1 産業革命で蒸気が動力源に 21

2・2 蒸気をつくるボイラーは不純物が苦手 28

2・3 スケール防止のヒントは,なんとじゃが芋だった 29

2・4 蒸気機関の時代は終わっても,蒸気は消え去らなかった 33



第3章 不純物のない水―純水

3・1 イオン化した不純物を除くイオン交換樹脂 39

3・2 イオン交換装置の開発で高純度をクリア 45

3・3 高度成長期の産業を支えた純水 53

3・4 水質悪化でイオン交換処理にも限界があった 57

3・5 超純水の製造を可能にした膜分離技術 60





第4章 純水から超純水の時代へ

4・1 半導体産業の登場で高まる水の純度への要求 71

4・2 半導体製造工程での超純水の役割 76

4・3 超LSI製造に必要な超純水の水質 77

4・4 半導体ばかりでない,広がる超純水の用途 81



第5章 超純水製造技術はシステム技術

5・1 超純水製造にはシステム技術の結集が必要 85

5・2 前処理システム 91

5・3 1次純水システム 97

5・4 超純水システム 102

5・5 端末配管システム 110

5・6 排水回収システム 112



第6章 終わりなきゼロへの挑戦

6・1 超々LSIはナノテクの結集 121

6・2 超々LSI時代を支える超々純水 123

6・3 ナノテクノロジーとしての超純水技術と今後の課題 126



参考文献 133

おわりに 135

索 引 137

はじめに

おわりに



振り返れば、著者の人生の大半ともいえる約40年を、水とともに生きてきたことになる。京都大学の工学部を卒業後、縁あって、当時水処理という新しい産業で頭角を現しつつあった栗田工業(株)に入社し、研究、開発部門に席を置き、いろいろな経験をさせてもらった。

入社したのは昭和30年代の初頭で、朝鮮戦争の特需によって息を吹き返した鉄鋼などの工業からの受注が活発になり、用水処理の仕事に追われた。その後電力、石油精製、石油化学などの産業が急成長し、純水製造の仕事が増えてきた。しかし急成長の歪みとして、公害問題がクローズアップされ、急きょ排水処理に取り組むことになった。このように次々と水問題が顕在化してきたため、その技術開発に携わる者としては、休む暇もない日々の連続であった。

だがそのおかげで、新しい技術の研究や開発のテーマに恵まれ、技術の壁に挑戦する目標も与えられて励みになった。また開発した技術を現場に適用するうえでは、数々の辛苦も味わったが、その経験が技術者にとっては大きな知的資産となっている。一方、新しい技術の調査や導入で欧米各国を何度も訪ねたが、歴史や風土の違いから日本にはない独自の技術にも出会い、大変興味深かった。しかし水処理技術については、対象となる水の質が違うことなどから、そのまま導入してもうまくいかない場合もあり、まず水そのものをしっかり見つめないといけないと感じたものである。

超純水をつくるには、さまざまな要素技術の結集が必要とされるが、その中でも私は膜技術に大きな関心と興味を抱いている。分離膜はもともとは、生物の体で重要な働きをする半透膜を手本にしたものだ。細胞膜はわずか30 nm程度の薄い膜だが、それを通して養分が吸収されたり、老廃物が排出されたりする。しかも1つの膜で異なる大きさの物質を選択的に出し入れしている。このような優れた分離膜が人工的につくることができれば、超純水システムも大きく変わることになるだろう。

身近にあり、ありふれた物質でありながら、水の本質については解明されていない部分も多い。水がどうして強力な溶解力も持つのかもその1つだが、そのために不純物を含まない純粋な水は存在し得ない。それが分かっていながら、限りなく理論純水に近い水をつくろうと日夜努力するのが、著者のような水処理に携わる技術者の姿なのだ。永遠に達成されない目標を与えてくれる水に、著者は限りない興味と魅力を常に感じている。

2002年6月25日

岡崎 稔

買い物かごへ