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おもしろサイエンス
天然染料の科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07966-5
コード C3034
発行月 2019年03月
ジャンル その他 化学

内容

草木染、例えば藍染はよく知られているが、染まる仕組みや歴史についてはそれほど知られていない。植物などの天然染料で色が染まる仕組み、歴史的・文化的背景やいきさつ、思いがけない関わりなど、科学の視点から面白くわかりやすく解説する。

青木正明  著者プロフィール

(あおき まさあき)
天然色工房tezomeya 主宰
http://www.tezomeya.com

1991年 東京大学医学部保健学科卒業
株式会社ワコール入社
スポーツアンダーウェアなどの企画業務に携わる
2000年 株式会社ワコール退社後、株式会社益久染織研究所に勤務
天然染料を含めた染色業務全般を受け持つ
2002年 株式会社益久染織研究所退社
天然色工房tezomeyaを開業
2009年 京都造形芸術大学美術工芸学科非常勤講師を兼任

天然染料のみで染めたアウターウェアブランドtezomeyaを2002年に立ち上げ、オーガニックコットン、吊編み機、力織機風織物などの素朴なテキスタイルに複雑で優しい草木の色目を乗せた、シンプルで飽きのこないデザインと風合いの服作りで好評を得る。オリジナルウェア染色の傍ら個人の衣類を預かり染める「注文染め」も手掛け、これまで3000着以上の服を天然染料でよみがえらせている。その他にも和装用着尺、各種工芸織物用絹糸などの注文依頼もこなしている。
染色手法は、古文献の調査研究と科学的アプローチによる両面から確立。天然染料に関する手法研究と実践から得た技術・知識を国内外でのワークショップや講演で公開し、天然染料の普及に努めている。

目次

はじめに

第1章 ちょっと化学な天然染料の入り口
1  糸、布、繊維ってなに? なぜ染まるの? ─とてもお手軽な染色概論 その1─
2  草木はなんでも染まる? 植物が染料になる理由 ─とてもお手軽な染色概論 その2─
3  シルクとコットンでは染まり方が全く違う! ─とてもお手軽な染色概論 その3─
4  天然染料と金属のカンケイ ─天然染料独特の工程、媒染のお話─
5  ひと筋縄ではいかない天然染料たち ─媒染ではなく他の作用で色濃く染まる草木─
6  ところ変われば色変わる ─生育環境に左右される天然染料の色目─

第2章 歴史と文化からみる天然染料
7  人が染色を始めたのはいつ頃? ─先史時代から使われていた天然染料─
8  シーザーもクレオパトラも愛した貝紫 ─古代地中海世界を虜にした動物染料─
9  古代中国と日本のミステリアスな紫事情 ─東アジアに貝紫はあった? なかった?─
10  ジャパンブルーに隠された意味 ─とても珍しくて、とてもメジャーな藍─
11  昔は藍だった紅花 ─シルクロードの国々を虜にした歴史─
12  紅花は平安貴族の無駄遣いの元凶だった? ─唯一無二の赤を染めた貴重な染料─
13  江戸時代にはすでに謎だった古代の染め ─最高の染色技術を誇った古代の染め師─
14  温泉で作られた江戸時代の媒染剤 ─別府温泉とミョウバンの話─
15  「ブラジル」は天然染料がルーツだった! ─新大陸進出と天然染料の深い関係─
16  染色体をきれいに染める天然染料 ─化学染料にも負けなかったログウッド─
17  若き化学者パーキンの失敗から生まれた成功 ─化学染料発明の物語─
18  化学者とファーブルと茜と藍の物語 ─天然色素の発見と合成競争の攻防─

第3章 色ごとにみる天然染料
19  赤色① 根っこが赤い茜
20  赤色② 日本にはなかった蘇芳
21  赤色③ 酸とアルカリを駆使する紅花
22  赤色④ 虫で染める赤、カイガラムシ
23  青色① 酸化と還元で染まる藍1
24  青色① 酸化と還元で染まる藍2
25  青色① 酸化と還元で染まる藍3
26  青色② 秋限定の透明な青、臭木
27  青色③ 染まらない植物染料、露草
28  黄色① ふたつの刈安
29  黄色② 活躍の場が多い黄色染料、梔子
30  黄色③ 天皇の袍を染める高貴な染料、櫨
31  紫色① 高貴な色の代名詞になった染料、紫草1
32  紫色① 高貴な色の代名詞になった染料、紫草2
33  紫色② よみがえる幻の貝紫染め、アカニシ
34  紫色③ 紫草を使わない紫色、二藍
35  ベージュ・カーキ・黒 変幻自在なタンニン
36  緑色 緑染めに使えない植物の緑

第4章 薬、医学、環境問題と天然染料
37  黄蘗は昔の万能薬 ─ベルベリン─
38  今も医療現場で利用される紫草 ─シコニン─
39  色よりも褪色と薬効が重宝された鬱金 ─クルクミン─
40  ヒトの体内にもある藍の元 ─インジゴとインドール─
41  天然染料と持続可能な社会について

柔軟剤でコットンが濃く染まる
日本人の「青」は青くない
「草木染」は登録商標だった
水ってすごい!

参考文献
索 引

はじめに

 筆者が京都で天然染料のみを扱う染め工房を開業して16年。その間、当工房の染め上げ品をお使いくださっているお客様はもちろん、その他にも企業の方、アーティストやクリエイターさん、小中高の先生、大学の教授さんなど、様々な方々とご一緒する機会を得てきました。
 そうしたご縁を通じて肌で感じるのは、ここ数年、天然染料に対する皆さんのご興味が以前に増して強くなっているな、ということです。
 種々取り沙汰される環境問題、飽和した経済社会の側面のひとつとして指摘される大量生産・大量消費に対する問題提起、そして自然との関わりを主眼にした持続可能な社会の模索などなど。
 現代の社会が持つ様々な負の背景も手伝って、以前に比べて多くの方が天然染料に目を向けはじめているのかもしれません。そういう方々が、天然染料で染めた商品のみならず、その概要・技術・背景・意義などを求めて情報を探しておられるのでしょう。だからこそ、私たちのような小さな染め工房にも足を運んでくださるのだろう、と思います。そして訪れた方に頻繁に聞かれる質問のひとつが、「なにか良い本はありませんか?」です。

 天然染料の染めを扱っている書籍はこれまでもたくさん出ています。それらの書籍は、どの植物がどのような色に染まるのか、そして具体的な染め方はどのような段取りなのか、といったようないわゆるHOWTO本的な性格のものが多いと思います。
 天然染料の染色は工芸界の重要な手法のひとつですので、その手法解説がメインになっている本が多いのは当然です。ですが、「そもそも天然染料ってなんだろう?」「合成染料とどう違うの?」「何で草木で染まるの?」「どんな素材でも染まるの?」「天然染料の染めってやっぱり大変そう……」「で、結局藍染めって何?」といった、普通に不思議に感じることに、身近で気軽に答えてくれるような本は少ないように感じます。

 この本は、「さぁ、これから草木染めをはじめるぞ!」と、とても前向きに天然染料と向き合ってくださっている方のための本ではないかもしれません。
 もちろん、そういう方々が読んでくださっても、血となり肉となるような内容を盛り込んだつもりです。
 ですが、そんな前向きな気持ちになる少し手前、、「天然染料」という言葉に少し興味を覚えた方たちが、更に興味を持ってもっと何歩も先に進んで頂くための後押しとなる情報を提供することを一番の目的に考えて執筆しました。
 アパレルブランドのマーチャンダイザーさんが素材バリエーションのひとつに天然染料の染めを盛り込んでみたい……。
 合成染料メインの染工場が、取引先から打診されて天然染料を新技術に組み込んでみようと思うけど、何から手を付けたらよいのだろう……。
 学校の先生が、実習に草木染めを取り入れてみたいけど、理科や社会との関わりはどうなんだろう……。
 中学生や高校生が、夏休みの自由課題に染色のことを取り上げたいけど何か面白そうなネタはないかな……。
 そんな方々が、「なるほど!」と思って頂けるような、更に言えば、天然染料のことを全く知らない方にも興味を持って読み進めて頂けるような話題を中心に選びました。それぞれのトピックの中では、天然染料の特徴やその科学的背景、歴史的背景などをできるだけ気軽に、しかし正確につかんで頂けるよう記しました。そして、具体的で現代の考え方から離れない視点から解説をするよう心がけました。
 天然染料って何となく良さそう、天然染料って何となく面白そう。でもよくわからないなぁ……。そういった方々がこの本を手に取ってくださり、ひとりでも多くの方がより具体的に天然染料と関わってくださることを願ってやみません。

 最後に、科学的側面からの解説に関して多大なアドバイスを頂いた高エネルギー加速器研究機構・構造生物学研究センター所長の千田俊哉教授、古文献の解説に関して多くの助言をくださった奈良県立橿原考古学研究所の橋本裕行様、ならびに筆者の慣れない執筆作業に御助力くださった全ての皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。
2019年3月
天然色工房tezomeya 青木正明

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