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テクノロジーがサクサクわかる!
機能塗料

定価(税込)  2,200円

編著
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06593-4
コード C3043
発行月 2010年12月
ジャンル 化学

内容

塗料とは、対象物の美観を整え、保護するもの、また材料の内部に浸透し劣化を防ぐなどいろいろな役割をするが、最近では対象物に新たな機能を付与するモノまで登場してきている。そこでこの本では、塗料とは、そして機能をもった塗料をテクノジーの観点からやさしく解説していく。

菅野照造  著者プロフィール

(すがの てるぞう)
昭和4年生まれ、工学院大学工業化学科中退、工学博士(北海道大学にて取得)。石川島播磨重工業技術研究所で主として船舶および陸上構造物の防食技術開発に従事、日本学術振興会腐食防止代97委員会、表面技術協会、色材協会、日本防錆技術協会、日本鋼構造協会等の各委員会委員長および幹事を歴任、通産省工業技術院の塗料試験法JIS制定医員のユーザー代表、本四架橋防食塗料仕様書の素案作成、土木学会審査委員会代表委員、ほか。船底外板の電気防食法に関する研究で特許、また、船底外板の防汚塗料を開発、国内初の亜鉛容射をベースとした重防食屠塗装法の実用化研究で、国内初の海外輸出橋ニュージーランド・オーランドハーバー橋に適用、画像処理法による塗膜劣化診断法を開発し特許取得、国内の大気腐食に関する研究で日本学術振興会「技術賞」受賞、など。現在「アイ・エス・エス・コンサルタント」技術顧問。主な著作(監修)に「トコトンやさしい鉄の本」「おもしろサイエンス貴金属の科学」(日刊工業新聞社)などがある。

目次

CHAPTER1  "塗料"そのテクノロジーの基礎
01 今の"塗料"は明治以降の洋式塗料
02 塗る行為はアスファルトから始まった?
03 アスファルトには防水性、電気絶縁性、妨振性などの特徴がある
04 塗料は化学合成された樹脂と顔料が基本
05 塗料の基本となる顔料とは
06 塗料は、ワニスからレジン、そして石油化学製品へと発達していく
07 自動車の塗装を変えたラッカー塗料
08 塗料の安定性に優れる注目の「2液混合タイプ」
09 ヨーロッパでは"自然塗料"が環境問題を背景に注目されている
10 日本独自の塗料"漆塗り"と"柿渋"

CHAPTER  目的を実現するためのテクノロジー
11 塗料は大きく分けて3つの使用目的があり、そのための機能をもっている
12 塗料の原料は大別すると2つ
13 塗料の原材料は油性、天然、合成樹脂
14 自然塗料は漆やカシュー系が代表的
15 用途が急拡大の合成樹脂塗料
16 各種の樹脂塗料の構造と特徴
17 防食塗料の最大の武器はシンプルさ
18 "サビを止める"防食塗料の役割はきわめて大きい

CHAPTER3 特別な機能をもつ塗料のテクノロジー
19 塗料の領域を広げる機能塗料
20 多機能効果を持つ優れモノ「ガイナ」
21 環境対応と高機能化がキーワード
22 次世代型塗料の筆頭ともいわれる粉体塗料
23 東京タワーの塗装面積は東京ドーム2個分
24 紫外線に強いフッ素樹脂塗料
25 自動車塗料には最先端の技術が投入されている
26 自動車の下塗りなどで使われる電着塗装
27 塗料に各種の機能を付与する添加剤
28 新幹線はポリウレタン樹脂系塗料
29 鉄道の塗料は、性能も重要だが、コストもポイントになる
30 船舶塗料は溶けるタイプ
31 航空機塗料は剥がしやすいことが大事な条件
32 家屋の外壁はフッ素樹脂塗料がベスト
33 木材用には「キシラデコール」
34 キシラデコールの特徴と組成
35 漆は採取、攪拌、分蒸発などで精製される
36 木の呼吸に耐え得る塗料はまだない
37 木の塗料には木を生かす独自の手法あり
38 日本の漆器の歴史は9000年?

CHAPTER4 塗料を塗るテクノロジー
39 下地処理は省くことのできない作業
40 下地処理には4種類
41 塗装するために守らなければならないこと
42 作業スピードではカーテンフローコーター
43 壁紙(クロス)の塗装は2回塗る
44 日本のピアノの「黒」は漆から始まった
45 コンクリートの老化は塗装次第
46 アルミ塗装はプライマーがポイント
47 アルミの着色はアルマイト処理で
48 リシン仕上げの壁にはカビが多い
49 ハウジング等のプラスチックにはHIPS樹脂
50 塗装もコーティングの一種
51 絵の具は油性塗料の始まり

付録
「塗料」でよく使われる主な用語
参考文献

はじめに

 塗料とは、実に"多彩"なものである。あまり目立ちはしないが、私たちの生活を彩り、気持ちを和らげ、生活を豊かなものにし、物理的にいろいろな形で実生活を支えている。つまり、塗料と、私たちの生活は、切っても切れないもの、といえる。
 塗料は「色彩」と「機能」という「2つ複合商品」といわれる。また、「保護」「美粧」「特別な機能」の「3つの役割(機能)」を持っているともされる。
 例えば、塗料が果たす役割だけを列挙しても、耐熱性、熱反射性、耐油性、防火性、電気絶縁性、導電性、電波吸収性、耐薬品性、防虫性、貼紙防止、防カビ性、ガラス飛散防止、防汚性、防音性、蛍光・夜光塗料等々、いろいろな機能を果たしており、さらに、経済性(省力・省エネルギー・省資源)、安全性の向上、環境保全等々に役立っているのである。
 日本の塗料の現状をみると、生産量は世界第3位であり、"塗料大国"といってもいい。塗料メーカーを見てみると、アジアでは日本企業が上位をほぼ独占している。しかし、一転、世界の塗料市場に目を向けて見ると、その規模は10兆円強とみられ、塗料メーカーは数万社、いや、数十万社あるとも言われ、それこそ"ピンキリ"なのである。
 一方で、日本には、日本独自、伝統的といえる塗料がある。「漆塗り」と「柿渋」である。とくに漆器は、世界的に「ジャパン」と呼ばれ、かつて江戸時代には、生産量約2000トンを誇った。しかし、1960年には約20トンに、そして現在は2トン以下と、世界第3位の塗料大国にしては、実に寂しい限りである。
 塗料の歴史という面から見て面白いのは、自動車である。とくに、塗料の使用において、GMとフォードが凌ぎをけずっていた。また、ドイツでは、早くから「自然塗料」ということを積極的にPRし、その認識が現在、世界をリードしているといってもいい。
 そして今、注目されている塗料が、「ガイナ」だ。この塗料は、宇宙技術開発で生まれたもので、開発したのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)である。ガイナは、「機能性環境改善塗材」とも呼ばれるものだが、一躍注目されたのは、塗るだけで断熱を可能にしたほか、遮熱・結露防止・防音・防汚・空気質改善等々、実に15に及ぶ機能を発揮するとされたからである。塗料もまた、日進月歩で進化しているといえる。
 一方で塗料とは、「塗る」「材料」である。その"塗る"という点からすると、クレヨンなども塗料であり、「塗るという行為は人類の日常生活が人間らしい生活へと進展する頃にはすでに始められていた」と文献にあるから、塗料と人間の関わり合いは、数万年に及ぶものといえる。
 中年の男性に「塗料とは?」という質問をすると「ペンキ」という答えが返ってくる。そしてこのことを最も意識したのは、「銭湯の絵(ペンキ絵)」という答えだった。この銭湯のペンキ絵で使用するのは、何も特殊なペンキではなく、一般に使われているペンキである。そして、それを2?3時間で仕上げる。定番は富士山だが、発祥は大正元年。所は東京・千代田区神田猿楽町にあった「キカイ湯」という銭湯だという。そこの主人の東由松さんが、とくに子供たちに喜んでもらうために画家の川越広四郎氏に依頼し、川越氏は富士山が好きだったことから、富士山を描いた、ということらしい。
 これだけでも、塗料というのは、何やら面白い一面が潜んでいるものと興味がもてようし、まして、塗料をある程度知っている向きには、その専門的な知識や実用的な方法などに加えて、人をも引き付けるネタの仕入れともなろう。
 本書は、より実用的な部分にウエートを置いたものだが、一方では塗料のまた違った一面を垣間見せることにも、それなりに意を注いだ。そういう意味では、楽しみつつ、専門性を磨くのに適したものといってよいだろう。

2010年12月
菅野照造・機能塗料研究会

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